ライフキャリアとは、多様なキャリアをトータルした生き方のことです。ここではライフキャリアについて解説します。
目次
1.ライフキャリアとは?
ライフキャリアとは、ライフとキャリアを組み合わせた言葉のこと。
ライフキャリアは、「企業に勤めて働くといった限定的な意味でのキャリア」「家庭や趣味など日常生活全般」「地域活動といった社会的な役割」などを総合した「生涯を通した生き方」を意味します。
「企業における経歴を指すワークキャリア」「生活全般にかかわるライフキャリア」といった2つのキャリアから、自分自身のあり方をどうプランニングするのか、その重要性を表しているのです。
ライフキャリアの「4つのL」
サニー・S・ハンセン氏は著書「統合的人生設計(Integrative Life Planning)」のなかで、ライフキャリアには4つのLがあると言います。
- 仕事を指す労働、Labor
- 教育を意味する学習、Learning
- 趣味や遊び、社会的活動などを意味する余暇、Leisure
- 子育て、介護などを象徴する愛、Love
2.ライフキャリアはなぜ注目されているのか?
ライフキャリアが注目を集めている背景にあるのは、従来の日本型雇用が崩壊している点。年功序列や終身雇用に象徴される従来の日本型雇用が崩れ、大企業への就職が人生の安泰といった考え方は成り立たなくなりました。
また人生100年時代ともいわれるように、高齢になっても働き続ける人が増えています。そのため企業としての役割が、雇用継続から社会で活躍できる人材支援にシフトしてきたのです。
3.人生100年時代とライフキャリア
人生100年時代とは、「LIFESHIFT(ライフ・シフト)の著者、リンダ・グラットン教授が提言した言葉です。下記のように、マルチステージでキャリアプランを考える必要性を説いています。
- 寿命が100歳前後まで伸びる超高齢化社会が到来する
- 個人や企業などの組織、国家もライフコースの見直しが喫緊の課題になっている
「副業や転職などを通したワークキャリアの柔軟な変化への対応」「育児や介護などの家庭生活やボランティアといった社会的活動を通したライフキャリアの構築」をライフキャリアとして実現していくことが重要です。
新たにくわわるステージ
人生100年時代とライフキャリアにおいて、新たにくわわるステージは以下の3つです。
- 自分に最適な仕事や生き方を世界中から探すステージ、エクスプローラー
- 独立して生産的生活に取り組むことで学んでいくステージ、インデペンダント・プロデューサー
- 違った種類の活動と同時平行して行うステージ、ポートフォリオ・ワ-カー
4.ライフキャリアを描くメリット
ライフキャリアを描くメリットは3つです。それぞれについて解説しましょう。
- モチベーションの向上
- エンゲージメントの向上
- 視野の拡大
①モチベーションの向上
ライフキャリアを描くようになると、従業員の意識が変化します。企業のために働く労働者でしかない意識が、仕事をとおして自らの人生の目標に向けたキャリアを積み重ねているという認識に変化するのです。それにより自ずとモチベーションも向上します。
②エンゲージメントの向上
企業が従業員の描いた自分自身のライフキャリアを把握できれば、従業員の希望に沿ったキャリアデザインを提供したりサポートしたりしやすくなります。業務内容だけでなく雇用形態などにも配慮が行き届けば、エンゲージメントも向上するでしょう。
③視野の拡大
従業員が「自分のキャリアは自分で構築する」といった意識を持てるようになると、仕事に対する姿勢も大きく変化します。
たとえば広い視野を持つようになったり積極的に取り組むようになったりするのです。また社内外を問わずさまざまな場面で能動的な活動が期待できます。
5.企業が取り組めるライフキャリア支援
企業が取り組めるライフキャリア支援とは何でしょうか。3つのライフキャリア支援について解説します。
- パラレルキャリア
- 越境学習
- リカレント教育
①パラレルキャリア
「生活に必要な収入の基盤を作るための本業」「自分の興味や関心がある分野や得意とする分野で築く第2のキャリア」を同時に追い求めること。パラレルキャリアは副業とは異なり、必ずしも報酬を伴う必要はありません。
②越境学習
所属している会社組織や職場を一旦離れ、今までとはまったく異なる分野で新たな体験して、新しい視点を習得する学習のこと。たとえば非営利法人への出向やビジネススクールの受講、ワーケーションの実施などです。
③リカレント教育
学校教育を終えて社会に出た後、必要なタイミングで教育を受けること。企業は、「退職して留学する」「転職や起業を始める」「定年後に今までと違った仕事に就く」といった仕事と教育の繰り返しについてサポートできます。
6.ライフキャリアレインボーとは?
ライフキャリアレインボーとは、レインボーカラーのようにキャリアを積み重ねること。仕事といったキャリアや家庭における役割、趣味や特技、地域活動といったキャリアをレインボーカラーに見立て、複数のキャリアを同時に構築していくのです。
またそれらを使いわけると人生を充実させながら豊かな暮らしを送れます。ライフキャリアレインボーは、ライフキャリアを深めていくなかで考えられた概念です。
アーチモデルとの違い
アーチモデルとは、下記のように見立てた概念です。
- アーチの左側の柱をパーソナリティ、才能、価値観といった内的な個人的要因
- アーチの右側の柱を社会政策や労働市場、経済といった外的な社会環境的要因
- 柱と柱に支えられているアーチを、自己、役割自己概念、発達段階
7.ライフキャリアレインボーの構成要素
ライフキャリアレインボーの構成要素について、それぞれのステージやロールごとに解説します。
- 5つのライフステージと年齢
- 8種類のライフロール
①5つのライフステージと年齢
5つのライフステージは年齢ごとにわかれています。
成長段階(0-15歳)
「義務教育を含む学校生活や集団生活」「家族との相互関係」のなかで、自分を形づくる成長期間です。将来の仕事や関心や興味への積極性を高める時期といえます。
探索段階(16-25歳)
学校や家庭生活といったステージで積み重ねた学習や経験などをもとに、仕事に関する要件を理解して実際に仕事に就く期間です。
確立段階(26-45歳)
「自分の生涯の仕事を模索する」「徐々にキャリアビジョンを明確化していく」「目標とした仕事の達成に向けて専門性を高め、確立していく」期間になります。
維持段階(46-65歳)
成長段階や探索段階、確立段階を経て手に入れた技術や知識などをもとに新しい能力を身に付けながら、これまでに会得した経験や思考、地位を守る期間です。
下降段階(65歳以上)
年齢が上がるにつれ衰えていく精神力や体力などを冷静に考え、仕事などの活動からフェードアウトする一方、退職後のセカンドライフの満喫を始めます。
②8種類のライフロール
ここでは、8つのライフロールごとに解説します。
子ども
子どもとは、未熟な存在かつ一日のほとんどの時間を家庭で親に保護されながら親と共に過ごす存在のこと。成長にしたがって、子どものライフロールから離れていきます。
学生
学生とは、小学校や中学校、高等学校や大学までの学校教育を受け、学業にまでの学業に取り組むこと。キャリア形成の土台となる知識を得る時期にあたります。
職業人
職業人とは文字どおり、収入を得るために仕事をする人です。それまでに身に付けてきた知識、能力などを生かして就労する人で、正社員やアルバイト、自営業やフリーランスなどは問いません。
配偶者
配偶者とは、夫や妻としての役割です。ここでいう配偶者は、法律上での夫婦だけではありません。事実婚を選択したパートナーも配偶者に含まれます。
家庭人
家庭人とは掃除や洗濯、炊事や日曜大工、買い物といった、家庭生活を維持するために必要な家事などを担う人です。もちろん家庭人に男女は問いません。
親
親とは、子どもに対する養育者としての役割のこと。衣食住や安全、教養やしつけ、精神的サポートなど、子どもが社会で生きていくための必要なものを身に付けさせる役割が期待されています。
余暇人
余暇人とは、自分の好きなことを楽しむ人。たとえば読書やスポーツ、ゲームや旅行、映画鑑賞などの娯楽全般を楽しむ人です。余暇を楽しむために、生活基盤を固める必要もあります。
市民
市民とは、社会の構成メンバーのこと。ボランティアや社会福祉活動、政治活動や教育活動などに、報酬が伴わなくとも積極的に参加・貢献する人のことです。
8.ライフキャリアレインボーによる人材育成
ライフキャリアレインボーによる人材育成とは、研修を開き、社員にライフキャリアレインボー図を書いてもらって、現状や将来のキャリアを考えるきっかけとするもの。ライフキャリアレインボーによる人材育成手順は以下のとおりです。
- 設定するライフロールの数を決める
- 各属性をレインボー1本として塗りつぶし、虹のように重ねていきながら人生を表現してライフキャリアレインボー図を完成させる
- 現状について考える
9.ライフキャリアレインボーを用いたワーク例
ライフキャリアレインボーを用いたワーク例があります。ここでは、4つのワーク例をあげながら簡単に解説します。
また、ライフキャリアレインボーによって、仕事だけでなくさまざまな分野がキャリアになると認識できるのです。
- 楽しかったこと
- 大切にしたいと思うこと
- 充実感を得たこと
- 一生懸命になれたこと
そしてそのなかから自分の強みや価値観などを見極め、ライフキャリアの道筋を見つけていくのです。
- 何になりたいか
- 何をしたいか
- 何を手に入れるか
などを描いていきます。これは抽象的でも構いません。しかし具体的なプランのほうが、そこに向けてのビジョンを明確に定められます。
- どれだけの時間を費やすか
- どれだけの労力をかけるか
将来をプランニングします。数年後にあるべき姿が分かれば、逆算して今、何をすべきかが自然と見えてくるでしょう。