ロジハラ(ロジカルハラスメント)とは? 原因と対策、具体例

ロジハラとは、相手を論理的に追い詰めて嫌な思いをさせるハラスメントを指す語です。具体例や悪影響、改善策および対処法について解説します。

1.ロジハラ(ロジカルハラスメント)とは?

ロジハラ(ロジカルハラスメント)は、論理や理屈(ロジック)で相手を追い込み、精神的な苦痛や不快感を与えるハラスメント行為のこと。論理的なコミュニケーション自体に問題はありません。しかしロジハラは、相手を追い詰めたり、正論を押し付けたりすることを目的とします。

ロジハラを受けた相手は自信を喪失し、他者とのコミュニケーションに恐怖を感じたり、パフォーマンスが低下したりする可能性もあるのです。

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2.ロジハラの具体例

相手を傷つけようとして意図的にロジハラを行うケースも見られるものの、自分がロジハラをしていることに気づいていない人も少なくありません。ロジハラを防ぐためには、どのような言動がロジハラに該当するか、理解することが重要です。

部下のミスを過剰に叱責する

ミスをした社員に対して、過剰な非難を行うとロジハラと見なされる可能性もあります。

たとえば上司がミスをした部下に「いつまでに再発防止策を考えられるか」と尋ねて、部下が「2日後に」と答えると「その間にミスが再発したらどうするのか」「本当に2日でよい解決策が出るのか」などと問い詰める発言などが該当します。

理論的には正しいかもしれないものの、部下は精神的な圧力を受けて萎縮してしまうかもしれません。

自分の意見を曲げない

ロジハラを行う人は、自らの立場や意見を絶対的な正論として主張し、他者の意見に耳を傾けない傾向にあります。

たとえば部下に意見を言わせておきながら、「それは間違っている」「こう考えるのが普通だ」と切り捨てる発言などが該当します。

相手の立場や感情に配慮せず自らの主張を貫こうとした結果、相手の声を無視して無力化し、精神的な苦痛を与える恐れもあります。自身の考えが100%正しいとは限らないので、一方的な押し付けによる議論は避けましょう。

相手に共感・配慮のできない発言

相手の感情や立場に共感・配慮できない言動も、ロジハラと見なされることがあります。

たとえば同僚が仕事のストレスで愚痴をこぼしたときに、「それはあなたの責任だからもっと努力すればよい」といった相手の感情に配慮しない発言などが該当します。

相手の感情や状況を理解しないコミュニケーションは、社内の人間関係が悪化する恐れもあります。

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3.ロジハラの何が悪いのか?

ロジカルな思考や議論は説得や課題解決に役立つため、ビジネスシーンにおいては重要なスキルです。しかしロジハラは、相手の感情や状況に十分に配慮しない一方的な議論となり、相手にネガティブな印象を与えてしまうため、問題視されているのです。

とくに「反論は認めない」「どちらが正しいか思い知らせてやる」といった気持ちがあると、攻撃的な言葉を使ってしまい、相手に不快な思いをさせかねません。

上司が部下へロジハラを行った場合、両者には上下関係があるためパワハラととらえられることもあるのです。

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4.ロジハラと正論の違い

正論とは、事実や論理にもとづいて正しいと認められる議論や主張のこと。正論であっても、時と場合によってはロジハラになりえるため注意が必要です。

また伝え方を誤った場合も、正論ではなくロジハラと捉えられるかもしれません。ここでは正論とロジハラの違いを解説します。

相手を傷つける

適切に正論を用いると、事実や論理にもとづいて議論が進み、対話を深めて合理的な解決策を見つけやすくなります。

一方ロジハラは正論で相手を説き伏せようという攻撃的な意図を持って、相手の立場や背景などを考えずに正論で詰め寄るのです。対話の品質を低下させるうえに、相手の自尊心や自信などを傷つけかねません。

本人に相手を傷つける意図がなかったとしても、相手の捉え方によってはロジハラと見なされる場合もあるため注意が必要です。

一方的なコミュニケーション

正論では道理に沿った対話を展開し、お互いの理解と納得を高めて双方向のコミュニケーションを促進します。

一方でロジハラは、「自分が正しい」「自分の意見を認めさせる」という結論ありきの対話であるため、相手の意見や立場を考慮しない一方的なコミュニケーションになりやすいのです。

ときには攻撃的な口調で圧迫感を与えて萎縮させ、自分の理論を展開して相手の意見を封じ込めるといったケースも見られます。

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5.ロジハラがもたらす悪影響

ロジハラが横行すると、社内にさまざまな問題を引き起こすかもしれません。ロジハラがもたらす悪影響を説明します。

従業員のメンタルやモチベーションへの悪影響

ロジハラで攻撃的な言動や否定的なフィードバックが横行する環境では、社員が継続的なストレスや不安を抱えてしまい、社員のメンタルヘルス悪化につながる場合もあります。

メンタルヘルスが悪化した社員は、仕事に対するモチベーションやパフォーマンスが低下するでしょう。この状況はうつ病といった精神疾患になりかねません。実際にロジハラが原因で、休職や離職したケースも見られています。

そのため正論であっても「業務の適正な範囲を超えた指導」だと認められると、パワハラに該当するという見解もあるのです。

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チーム・職場の雰囲気や生産性への悪影響

ロジハラで社員が攻撃的な言動を受ける環境では、相互の信頼やコミュニケーションが損なわれ、職場全体の協力関係が弱まる可能性もあります。

ロジハラの被害を受けた社員は萎縮し、周りの社員には「自分も同じ目に合うかもしれない」という恐怖や緊張感が生まれ、自由に意見を言えない雰囲気が醸成されてしまうからです。

このような環境では社員のパフォーマンスや生産性が低下し、組織の弱体化を招きかねません。改革や成長も鈍化するでしょう。

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6.ロジハラをする人の特徴|ロジハラが起こる原因

ロジハラをする人は、自己中心的で攻撃的な行動を取る傾向があります。ロジハラを行う人の具体的な特徴について説明しましょう。

自分が正しいと思い込んでいる

ロジハラを行う人は、自らの意見や立場を絶対的な正論とみなす傾向にあります。そのため他者の異なる見解を受け入れず、自身の考えを一方的に押し付けてしまいがちです。

信念を持つこと自体は問題ないのですが、しかしその信念を堅持することを重視するため、他者の立場や感情を考慮せず、自己中心的な言動で他者を傷つけてしまうことがあります。

また自身の考えが誤っている場合は正論とはならず、相手からの信頼や信用を失うかもしれません。

自分の優位性を示したい気持ちが強い

自らの正当性を主張し、相手よりも優位な立場に立とうとしてロジハラが起こるケースも存在します。

このような人は普段から自己の優越感や自尊心を満たしたいという欲求を持っていることが多いようです。とくに自分に自信がない人は、他者よりも優位に立ちたいと考えて、無意識に攻撃的な言動や意見の押し付ける傾向にあります。

想像力・共感性に欠ける

ロジハラを行う人は、他者の感情や立場に共感する能力に欠けるのも特徴です。

「相手のために正しいことを言ったまでだ」と考え、相手がどう受け取るかを気にせず正論を押し通します。無意識にネガティブな表現を使い、相手の怒りや反感を買うことも少なくありません。

過剰な叱責や正論の一方的な押し付けはロジハラとみなされる恐れもあります。正論を述べる場合でも、相手を傷つけないかどうかを慎重に考慮することが重要です。

相手を自分より下だと決めつけている

自分より下と見なした相手がいる人は、自分の優位性を高める、あるいは相手の誤りを正そうと考えてロジハラを行う可能性があります。

とくに自分のポジションや能力の高さに固執している人ほどこの傾向が見られ、相手が反論しても攻撃的な態度でさらに攻撃的な言動や一方的な主張で応じるでしょう。

実際に上下関係や役職など立場の差がある場合は、ロジハラではなくパワハラと見なされる可能性もあります。

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7.ロジハラの改善策

ロジハラの改善に取り組む場合は、ロジハラを行う当事者の意識を根本から変えることが重要です。ロジハラを改善する策を解説します。

アサーティブコミュニケーションを学ぶ

アサーティブコミュニケーションとは、他者の意見や立場を尊重しつつ、自身の考えや気持ちを明確に伝えるコミュニケーションの手法。アサーティブ(Assertive)は「積極的な」といった意味を持ちます。

ロジハラを行う人は、相手の感情や立場を無視し、自己主張を押し付けがちです。アサーティブコミュニケーションのスキルを磨くと、対話のなかで事実と自分の考えを述べ、相手へ提案と行動の選択肢を提示できるようになります。

相互理解が深まるため、ロジハラの発生を抑えられるでしょう。

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伝え方・言葉遣いに気を付ける

ロジハラを防ぐためには、相手を不快にさせない言葉遣いや姿勢が求められます。相手を攻撃するような強い言葉や言い方は避け、代わりに共感や理解を示す表現を用いることが重要です。

また姿勢、表情、声のトーン、手ぶりといった「非言語コミュニケーション」も印象を左右する要素。睨みつける、低い声で返答するといった態度は、相手に圧迫感を与える恐れがあるため避けましょう。

意見の違いを受け入れる

ロジハラを行う人は、「自分が言うことは正しい」と思っているため、相手の意見を聞き入れない傾向にあります。

しかし一方的なコミュニケーションは単なる押しつけであり、相手の理解や納得を得るのは難しいでしょう。自分の意見を主張する際は相手の立場や視点を尊重し、柔軟性を持って対応すると良好な対話や協力関係を構築できます。

ハラスメント研修を実施する

社員に対してハラスメント研修や教育プログラムを実施し、ロジハラの定義、その影響、適切なコミュニケーション方法などを学ばせましょう。ロジハラを行っている人のなかには、自らがロジハラを行っていることに気づいていないケースも見られるからです。

2022年4月に労働施策総合推進法に基づいた「パワーハラスメント防止措置」が施行されたこともあり、ロジハラを含めた各種ハラスメント行為を起こさない環境や風土の構築に取り組む必要があります。

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8.ロジハラを受けた際の対処法

ロジハラは精神的な負担を被ることが多いため、自身の身を守るためにもロジハラを受けた際の対処法を知っておきましょう。

相手と距離を取る

ロジハラを行う人に対しては、無理に対応する必要はありません。ロジハラを受けた場合、精神的な負担を避けるために、相手と距離を取ることが効果的です。

感情に振り回されず冷静に状況を判断したうえで、最低限必要な会話だけにとどめましょう。それ以外の会話やコミュニケーションもできるだけ減らすとよいでしょう。一対一ではなく、第三者を交えて話すようにすると、冷静さを維持しやすくなります。

相手の話を最後まで聞いて受け止める

ロジハラをする人に対抗すると、状況を悪化させることがあります。そのため相手の話を最後まで聞いて受け止めることが重要です。相手の意見や感情を尊重して冷静に対応すると、相手の攻撃的な態度を和らげることができる場合があります。

ロジハラを行う人は「自分の意見や考えで相手を納得させたい」という欲求があるため、無理に抵抗するのではなく「確かにそうですね」「検討します」といった受け入れる姿勢を見せることがポイントです。

どんな言い方であっても傾聴し、冷静に受け入れる術を身につけていれば会話のストレスを減らせるでしょう。

上司や人事に相談する

ロジハラを行う相手と日常的に向き合わねばならない場合は、一人で抱え込まずに上司や人事部門に相談することが重要です。ハラスメントの相談窓口が設置されていれば、そちらへ相談するのもよいでしょう。

いずれにしてもロジハラに関する相談があれば、企業は被害者および加害者への対応と再発防止に取り組まねばなりません。「自分が我慢すればよい」と思わず、自分を守るためにも早期に相談すべきです。