時価総額とは? 日本・世界の株式時価総額ランキング、計算方法

時価総額とは株価に発行済株式数をかけた数値で、企業規模を測る指標のひとつです。この記事では時価総額について詳しく説明します。

1.時価総額とは?

時価総額とは、企業が公表している発行済み株式数に、そのときの株価をかけたもの。

つまり企業が発行するすべての株式の総額で、企業の価値や規模を表しているのです。時価総額が大きい企業ほど規模や資産が大きいため、企業価値が高いと市場から評価されます。

株式数が多く株価の高い企業ほど運転資金が潤沢であるため、投資の対象として注目されやすくなるのです。なお株式数が少なくても株価が高ければ、倒産のリスクが低い企業として良い評価を得る場合もあります。

時価総額を使うと国内外企業の比較が容易になる

時価総額を活用すれば、国内外の企業規模や価値などをかんたんに比較できます。新事業立ち上げやM&A(合併や買収)、あるいは企業価値向上戦略などを実施する前、同業他社との比較や企業研究、市場調査などの指標に時価総額を用いる場合もあるのです。

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2.日本・世界の株式時価総額ランキング

日本では時価総額のランキングを定期的に発表しており、ランキング結果は企業の知名度などに大きく影響するのです。

日本の時価総額ランキング

2021年10月時点における日本国内の時価総額ランキングの上位は、以下のとおりです。

  • 1位 トヨタ自動車 30兆9332億円
  • 2位 キーエンス 15兆1761億円
  • 3位 ソニーグループ 14兆7796億円
  • 4位 NTT 12兆1119億円
  • 5位 リクルート 11兆3527億円

トヨタの株価は2,000円前後、発行済株式数は約163億株です。一方のキーエンスの株価は6万5,000円前後、発行済株式数は約2億4,000万株でした。

世界の時価総額ランキング

続いて2021年10月時点の世界の時価総額ランキングです。

  • 1位 アップル 約262兆1,405億円
  • 2位 マイクロソフト 約241兆360億円
  • 3位 サウジアラムコ 約213兆2,228億円
  • 4位 アルファベット 約202兆1,592億円
  • 5位 アマゾン 約184兆3,869億円

日本国内で1位だったトヨタ自動車は、世界全体になると35位にランクインしています。

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3.時価総額の計算方法

時価総額の計算式は「株価(投資家の需要によって毎日変動)×発行済株式数」。どちらも株式情報サイトに掲載されています。

企業に投資するメリットがあると株式が買われていくため株価が上がり、メリットを感じられなければ株式が売られていくため株価は下がるのです。なお発行済株式数は企業が増資を必要とするタイミングで増加します。よって毎日変化するものではありません。

計算の例

時価総額の計算例をご紹介します。

  • 1株1000円の株式を100株発行している企業の場合:1株1,000円×100株=時価総額10万円
  • 1株500円の株式を500株発行している企業の場合:1株500円×500株=時価総額25万円

1株当たりの株価が少なくても、発行している株式の数が多ければ時価総額は高くなります。

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4.時価総額が高い企業、低い企業それぞれの特徴

時価総額が高い企業の特徴

業績が良く収益の高い企業であるため市場からの信頼も高く、時価総額がさらに高まりやすいです。

投資家が進んで投資をするため発行される株式数が増え、企業は資金調達しやすくなります。よって安定した事業運営あるいは新事業の展開が可能となるのです。

また時価総額の高さは企業価格の高さを表すため、他社から企業買収されにくくなります。

時価総額が低い企業の特徴

投資家があまり株式の取引を行わないため、企業が資金を調達しづらい傾向にありますまた「運転資金不足から倒産する」「時価総額が少ないので企業買収の対象になりやすい」というリスクもあるのです。

ただし小規模企業でも、今後成長する可能性は大いにあります。一度事業の成功を収めれば市場で話題になり、株価が急上昇して時価総額も大きく変動するでしょう。

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5.時価総額が増加する要因

時価総額が増加する要因にあるのは、利益の増加や知名度の向上などさまざま。時価総額が増加する要因について説明します。

  1. 株式の発行
  2. 利益の増加
  3. 純資産の増加
  4. 投資家の期待の高まり
  5. 企業の知名度の向上

①株式の発行

1株あたりの株価が安くても、発行している株式の数が多ければその分時価総額は高くなります。

先ほど紹介した時価総額のランキングで国内1位だったトヨタ自動車の時価総額は、約30兆9,332億円。株価は2021年10月時点で1株約2,000円、発行済株式数は約163億株です。

2位だったキーエンスの時価総額は約15兆1761億円。1株約6万5,000円、発行済株式数は約2億4,000万株でした。株価は安くても発行している株式の数が多いと時価総額に大きな差が生じるとわかります。

新株の場合

新株とは、新しく発行する株式のこと。新株を発行すると発行済みの株式の数が増えるので、時価総額は高くなります。しかし発行すれば必ず時価総額が高まるというわけではありません。

投資家の需要がなければ株価が下がるからです。資金不足を解消するため株式を発行した結果、成長の期待感が薄まって株価が下がるケースも考えられます。

優先株の場合

優先株とは、普通の株式よりも優先的な権利がついている株式のこと。たとえば「配当金を多く受け取れる」「企業が解散したとき優先的に企業の財産を受け取れる」などです。

優先株は1株あたりの株価が普通の株式よりも高い傾向にあるので、その分時価総額も高まりやすいといえます。ただし優先株は発行に手間がかかるといったデメリットもあるため、日本国内ではあまり浸透していません。

②利益の増加

企業の利益が増加すると市場での評価が高まり、株価が上がって時価総額も高まる傾向にあります。ただし利益増加を発表しても、それが投資家側ですでに予想済みの場合、例外となるのです。

増加した利益率や利益額が想定範囲だった場合、株価の上昇は見られないでしょう。もちろん赤字続きになると株価が下がり、時価総額は低くなると考えられます。

③純資産の増加

純資産が増加すると株価が上がり、時価総額は高まる傾向にあります。なぜなら投資では企業の「PBR(Price Book-valueRatioの略で、株価純資産倍率と呼ばれる)」も参考にするからです。

PBRは「純資産÷発行済株式総数」で算出し、PBRが高いほど純資産が多く、負債が少ない安定した企業であると意味します。そのため純資産が増加すると市場で企業価値が高まり、株価の上昇につながるのです。

④投資家の期待の高まり

投資家の意向によって株価が変動する場合もあるのです。投資家は企業の業績や将来性を踏まえて株式を購入します。企業の将来性が高まるほどその企業に投資する人が増え、株価が上昇して時価総額も高まるのです。

反対に企業の業績が悪く将来性に期待もできないと投資家に見なされた場合、株式の需要は下がって時価総額も低くなるでしょう。

⑤企業の知名度の向上

企業の知名度やイメージが向上すると、時価総額も高まりやすくなるのです。

たとえば企業の製品やサービス、あるいはブランドがニュースやインターネット上などで取り上げられると、多くの投資家から注目を集めるでしょう。そしてその企業への期待値が高くなり、株の需要も高まって株価が上がり、時価総額も高まるのです。

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6.時価総額が増加するメリット

時価総額が増加するとどのようなメリットを得られるのでしょう。ここでは5つのメリットについて説明します。

  1. 信頼度が高まる
  2. 人材確保がしやすくなる
  3. 経営戦略の選択肢を増やせる
  4. 融資を受けやすくなる
  5. 従業員のモチベーションアップにつながる

①信頼度が高まる

時価総額が高い企業は、業績が良く純資産も多いです。時価総額が高いほど市場における企業価値も高まり、投資家からの信頼度や期待度も向上します。

株価が上がりやすくなるので、株式による資金調達の効果が大きくなるでしょう。資金調達を成功させればさらに経営が安定し、市場での評価がより高まります。

②人材確保がしやすくなる

求職者は企業の価値や将来性、安定性なども判断材料にして、就職したい企業を選びます。時価総額が高ければ一般的な認知度も上がり、将来性や安定性がある企業と見なされて人材が集まりやすいのです。

価値が高い企業には優秀な人材が集まりやすいため、さらに利益が出やすくなり、企業の価値や株価が向上して時価総額も高まっていくでしょう。

③経営戦略の選択肢を増やせる

企業価値が高まるため、経営戦略のひとつであるM&A(Mergers(合併)andAcquisitions(買収)の略)で有利になります。事業承継や事業規模の拡大など、経営戦略として実施されるのも少なくありません。

M&Aで譲渡する側つまり譲渡企業の場合、M&Aの交渉時、良い条件にて事業を売却できます。

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④融資を受けやすくなる

利益が出ている優良企業と見なされるため、金融機関からの融資で有利になるのです。金融機関は企業の返済能力を考慮して融資の可否と融資金額を決定します。このとき融資対象企業の時価総額も、検討材料の1つになるのです。

企業価値が高ければ、融資した際に不良債権になる可能性が少ないと判断され、金融機関の審査において有利になります。

⑤従業員のモチベーションアップにつながる

ストックオプション(企業側があらかじめ定めた価格(行使価額)で、自社の株式を購入できる権利を従業員に付与する仕組み)を導入していると、従業員に利益が発生するため、モチベーションの向上が期待できるのです。

ストックオプションで購入した自社の株価が上昇すれば、従業員はキャピタルゲイン(行使価格と株価との差額)を得られます。株価の上昇で企業の時価総額が上がればキャピタルゲインも増えるため、モチベーションアップにつながるでしょう。

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7.時価総額を高めるために必要なこと

時価総額を高めるには、市場での企業価値を高めなければなりません。時価総額を高めるために必要なことを説明します。

  1. 企業の価値を高める
  2. 生産性を向上させる

①企業の価値を高める

企業の価値を高めると多くの投資家が自社株を買うため、株価が上昇して時価総額も高まります。

企業価値を高める方法として挙げられるのは、

  • 収益性や生産性の向上
  • 人材育成
  • マーケティング
  • ブランド価値や投資効率の向上

など。そのうちもっとも重要なのは収益性の向上です。

②生産性を向上させる

生産性を向上させると業績も向上し、企業価値と時価総額も高まります。

生産性を向上させる方法として挙げられるのは、

  • 人材配置を正しく行う
  • 生産管理ツールを導入する
  • 従業員のモチベーションを上げる
  • 無駄な業務を削減する

などです。

また生産性の向上によって、時間外労働が減少するというメリットもあります。