国の公共サービスを国・民間の両者で入札して事業者を決定する市場化テスト。コスト削減や民間業者の新たな市場開拓など、さまざまなメリットがあります。そんな市場化テストの意味や問題点、市場化テストと民営化の違いについてご紹介します。
「市場化テスト」とは?
市場化テストとは、国や自治体が運営してきた公共サービス(水道事業やハローワーク関連事業)を国だけに任せるのではなく、民間事業者も公共サービスの担い手になれる制度です。
官民が平等な条件のもとに競争入札を行い、サービス内容と価格面で優れた方が公共サービスの担い手となれる制度であり、公共サービスの質の向上と経費削減を両立することが可能です。
市場化テストで国と民間事業者を競わせることで、公共サービスに携わる人々の意識を変える効果や、民間事業者に新たな市場創造につながるとも言われています。
市場化テストの事例と民営化との違い
市場化テストによって民間事業者に運営されるようになったものに、ハローワークの関連事業や、かつての社会保険庁が行っていた国民年金保険料の収納事業などがあります。これらは国や自治体が入札を行わず、民間事業者同士が入札をした特例的な市場化テストです。
民間が事業を請け負うと言えば、日本では小泉内閣による郵政民営化によって郵政事業が民営化されましたが、実は市場化テストと民営化にはその法的な責任において違いがあります。
民営化された事業は、何か問題が発生した時に責任を負うのは当然ながらその事業者であり、国や自治体側は責任を追及されることはありません。
しかし、市場化テストによって民間が運営するようになった事業では、問題や事故を起こした事業者側も責任は問われますが、最終的な責任を負うのは事業を発注した国です。現在のところは、ここが市場化テストと民営化の大きな違いとなっています。
市場化テスト(官民競争入札制度)の問題点
市場化テストで公共サービスを民間に任せることによって業務が効率化されるため、コストの削減やサービスのさらなる拡充につながっていく可能性があります。
しかし、民間事業者が公共サービスの担い手になることで、デメリットになる可能性もあります。民間事業者は利潤の追求が主目的のため、ビジネスとして事業を展開するあまり、効率を優先し過ぎてしまう場合があります。
その結果、公共サービスの利用者が満足なサービスを受けられなくなってしまう可能性があります。
また、近年問題となっているのが、民間事業者が公共サービスを官民競争入札制度によって入札するものの、条件が厳しいために落札する企業が1つも出ない、あるいは落札しても従業員が悪条件で労働させられているという問題です。
企業は公共サービスの担い手となるためにギリギリの条件で入札を行っているため、従業員の低賃金化、サービスの質の低下という悪循環に陥っています。
企業としては、市場化テストのメリット・デメリットを研究するとともに、自社が持つ強みが公共サービスにどう活かせるのか、事業として成り立っていけるのか、慎重に見極めることが必要です。