産前産後休業とは、妊産婦の母体の保護を目的とした休業制度のことです。最近、利用する人が増えているので、人事や労務担当者は正しく理解しておかなくてはいけません。申請書の計算方法、提出期間などについて解説します。
「産前産後休業」とは?
産前産後休業とは、妊産婦が出産前後に取得できる休業のことです。以前は大企業に利用者が偏っていましたが、最近では中小企業の現場でも利用者が増えています。平成26年4月からは産前産後休業中の社会保険料免除制度もスタートするなど、法的な整備が進んでいることも後押ししているといえるでしょう。
産前産後休業の対象者は産前6週間以内、産後8週間以内の妊産婦です。企業は産前6週間以内の女性から休業申請があった場合、これを拒むことはできなくなっています。また、産後8週間を経過していない女性を就業させることもできません。ただし、産後6週間で女性本人に復帰したい希望があり、医師からも健康上の支障がないと認められた場合には業務に就かせることができます。
まずは産前産後休業取得者申出書から
産前産後休業は産前産後休業取得者申出書からスタートします。インターネットを検索すると産前産後休業取得者申出書のフォーマットがいくつかあるので利用してみるのもいいでしょう。
産前産後休業で休業期間の所得を保障するためには、健康保険の出産手当金が使用されます。出産手当金がいくらもらえるのかも、インターネット上のサイトで計算することができます。出産予定日、実際の出産日などを入力するだけで自動的に算出されるため大変便利です。
たとえば休業期間が2017年3月7日から6月12日だった場合、社会保険料免除額は84,276円、出産一時金は420,000円、出産手当金は435,806円となります。2017年5月に420,000円、2017年7月に435,806円が支給されるため、入院費用などに当てることも可能です。
正社員でなければ利用できないのか?
産前産後休業は正社員以外でも取得することができます。派遣社員、契約社員、パートタイマーなどの非正規雇用者でも産前6週間の女性であれば誰でも申請することができますし、同様に産後8週間を経過していない女性は雇用形態を問わず就労させることはできません。
以上のように産前産後休業は雇用形態と関係なく利用することが可能ですが、女性のみの利用に限定されているという点に注意しましょう。一方、育児休業は男女ともに取得することができます。いずれにせよ、産前産後休業は誰でも利用することができるということを人事は周知する必要があるといえます。また、気軽に使うことができるように各社員の意識改革をはからなければいけません。
産前産後休業に関して人事がすべきこと
人事として産前産後休業に取り組むことは、まず、妊娠の報告を受けた時に妊娠、出産、育児に関して会社がどのような取り組みをしているのか資料を配布することです。就業規則で通院休暇、休暇時の給与の取扱いについてどうなっていのか等、社員と再確認するようにしましょう。
妊娠中というのは体調も不安定になりがちなので、会社として健康面に配慮する必要もあります。妊娠している社員から勤務期間中に通院したい等の申し出を受けたら、必ず許諾するようにしましょう。出産予定日を確認し、産前休業の開始日を決め、職場復帰への意志や時期等についても、できるだけ具体的に話し合っておきたいところです。また、一度決めたことに対しても、不測の事態も発生しがちな姙娠・出産なので、柔軟に対応することをおすすめします。