マイクロ法人とは? 作り方、個人事業主の節税、メリット

マイクロ法人とは、社長が従業員を雇わずに事業を行う事業形態のことです。ここではマイクロ法人の事業内容例や設立のメリット、マイクロ法人の作り方などについて、解説します。

1.マイクロ法人とは?

マイクロ法人とは、従業員を雇わず会社の代表が一人で経営する会社のことです。事業に必要な出資や資金調達、会社の設立から経営、営業に会計、納税申告まですべて一人で行います。税金や社会保険量の負担軽減のために個人事業主が設立するケースが増加しています。

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2.マイクロ法人を設立するメリット

マイクロ法人を設立するメリットは下記の3つです。

このほか、肩書が「個人事業主」から「株式会社(または合同会社)代表取締役」になるため、社会的に印象が高くなるというメリットもあります。社長の肩書によって事業の信頼性アップ、新規顧客の獲得につながるかもしれません。

  1. 社会保険料を節約できる
  2. 所得税と住民税を節税できる
  3. 損金算入できる範囲が広い

①社会保険料を節約できる

個人事業主の場合、原則として国民健康保険に加入しなければなりません。しかしマイクロ法人を設立して「会社員」になれば、公的保険は国民健康保険から健康保険になります。条件を満たせば国民健康保険料の半分以下に抑えられるのです。

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②所得税と住民税を節税できる

節税効果が期待できるのは社会保険料だけではありません。課税所得をもとに算出される所得税と住民税も節税できます。

マイクロ法人の場合、個人事業主としての売上はマイクロ法人の売上となり、報酬は会社から役員として受け取るかたちになります。この法人から受け取った給与には「給与所得控除」の適用が可能です。

つまり法人を経由して給料収入とするため所得控除を受けられるようになり、結果として所得税と住民税を節税できるのです。

③損金算入できる範囲が広い

マイクロ法人は個人事業主に比べて損金算入、つまり経費計上できる範囲も広くなります。個人事業主では経費計上できなかった生命保険や家賃、出張手当や自動車保険料などもマイクロ法人の損金として計上可能です。

個人の場合、とくに生命保険や医療保険の保険料はどれだけ高い金額を支払っても、各種控除でそれぞれ最大4万円ずつしか控除できませんが、法人になれば掛け金の大きさに比例して損金算入できます。

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3.マイクロ法人を設立するデメリット

マイクロ法人の設立には社会保険料の節約や所得税の節税などさまざまなメリットがある一方、いくつかのデメリットも存在します。ここではマイクロ法人設立のデメリットを3つの視点から説明します。

  1. 設立の際には初期費用がかかる
  2. 事務作業の手間がかかる
  3. 法人用の銀行口座を用意しなければならない

①設立の際には初期費用がかかる

個人事業主として事業を開始するための初期費用は基本的に発生しませんがマイクロ法人を設立する際、以下の費用が発生します。

  • 設立費用:株式会社の場合は約25万円、合同会社の場合は約10万円
  • 税理士費用:経理手続きに税理士を雇う場合は年間20~30万円
  • 住民税の均等割分:事務所が所在することで課税され、事業が赤字でも支払わなければならない。法人住民税5万円+地方税2万円=7万円

②事務作業の手間がかかる

マイクロ法人とはいえ法人は法人です。法人事業概況書や勘定科目内訳書など、個人事業主には不要な書類を作成しなければなりません。

また確定申告も個人と法人、両方の申告が必要です。確定申告を税理士に依頼する場合は法人、個人の両方を頼むことになるため手数料も高くつきます。

③法人用の銀行口座を用意しなければならない

マイクロ法人の設立時、法人用の銀行口座開設が必要です。法人口座の開設は金融機関の審査も厳しく、十分に準備を整えておかないと審査に落ち、業務の開始に支障をきたす可能性があるでしょう。

また自宅やバーチャルオフィスでの申請は会社の実体がないと判断され、口座開設の審査に落ちてしまうことも。そのほか会社の資本金が少なかったり、事業内容があいまいだったりする場合も審査に落ちやすくなります。

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4.マイクロ法人の作り方

マイクロ法人の設立方法は、基本的に一般の法人会社と同じです。定款や書類作成に不安を感じる人は、法人設立代行会社や行政書士などに依頼するとよいでしょう。ここではマイクロ法人の作り方を4段階にわけて説明します。

  1. 法人設立の準備をする
  2. 会社登記の手続きをする
  3. 社会保険の手続きをする
  4. 各書類を提出する

①法人設立の準備をする

まず登記前に法人設立の準備をしておきます。具体的には以下3つの準備です。

  • 会社概要を決める:事業目的や商号、資本金や決算月などを決め、法人実印を作る
  • 定款の作成:会社の事業内容や運営方法など、各種決まりごとを記載した定款を作る
  • 資本金の払い込み:法人としての事業遂行に必要な資本金を設定する

②会社登記の手続きをする

続いてマイクロ法人を新たな会社として申請する「登記申請」を行います。以下の必要書類をそろえて、管轄の法務局に提出しましょう。

  • 登記申請書
  • 印鑑証明書
  • 定款
  • 就任承諾書(設立時役員のもの)
  • 出資金の払い込みを証明する書類など

必要な情報を弁護士や行政書士に伝えて、手続き代行を依頼するのも可能です。

③社会保険の手続きをする

マイクロ法人でも、法人である以上健康保険、厚生年金保険の被保険者となります。「一人会社だから社会保険加入の義務はない」というのは間違いです。

健康保険や厚生年金保険を適用すべき事業を開設したときは、事実発生より5日以内に「健康保険・厚生年金保険新規適用届」を提出します。提出には「法人(商業)登記簿謄本」と「法人番号指定通知書のコピー」の添付が必要です。

④各書類を提出する

最後に各書類を提出してマイクロ法人の設立が完了します。提出先や提出書類は以下のとおりです。

  • 税務署に提出する書類:法人設立届出書(2か月以内)、給与支払事務所等の開設届出書(1か月以内)、青色申告承認申請書(必要に応じて。3か月以内)、源泉所等税の納期の特例に関する申請書(必要に応じて)
  • 自治体に提出する書類:法人設立届出書(提出期限は各自治体により異なる)

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5.マイクロ法人設立の注意点

マイクロ法人の設立手続き自体に難しいことはありません。ただしサラリーマンは社会保険料を節約できない、本業とは違う業種を選ぶなど、いくつかの注意点もあります。

  1. サラリーマンは社会保険料を節約できない
  2. 本業とは別の業種を選ぶ
  3. 自宅とは別に事務所を用意する
  4. 資本金は最低100万円用意する
  5. 売上によっては個人事業主の方がよい場合もある

①サラリーマンは社会保険料を節約できない

自身が設立したマイクロ法人以外の会社に所属している場合、雇われている会社で社会保険に加入している状況になります。よってマイクロ法人設立による社会保険料の節約はできません。つまりサラリーマンにマイクロ法人は基本、不要です。

②本業とは別の業種を選ぶ

先に触れたとおり、マイクロ法人の事業と個人事業主の事業は別にする必要があります。これは税務署が「なんらかの意図があって所得を分散しているのではないか」「実質同じ事業ならまとめて課税すべきなのでは」と判断するのを避けるためです。

③自宅とは別に事務所を用意する

自宅と事務所が同じ住所のままでは、ビジネス関連の郵便物受取や取引先訪問の際にトラブルが発生する可能性もあります。取引先からの信用性にもかかわるため、自宅とは別の住所に事務所を用意しておくとよいでしょう。

登記利用や電話の取次ぎ、郵便物の受け取りなどに対応しているバーチャルオフィスを活用するのもオススメです。

④資本金は最低100万円用意する

2006年の改訂によって、資本金1円からでも株式会社を設立できるようになりました。ただし法人立ち上げには定款印紙や認証にかかる資金をはじめ、さまざまな費用が発生します。

また資本金が少ないほど事業の実体に懸念を抱かれるため、現実的には最低でも100万円程度用意しておくと安心です。

⑤売上によっては個人事業主の方がよい場合もある

マイクロ法人を設立したからといって、必ずしも節税効果が期待できるとは限りません。もちろんある程度収入が得られていればマイクロ法人設立による節税効果を得られます。しかし条件を満たさない場合、個人事業主のほうがコストを抑えられるかもしれません。

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6.マイクロ法人設立が違法になるケース

赤字経営が続き、売上がない状態でも違法にはなりません。しかし事業の運営によっては違法と判断されるケースがあるのです。それぞれについて解説しましょう。

  1. 事業の実体が確認できない
  2. 脱税を目的としている
  3. 営業活動がない

①事業の実体が確認できない

個人事業主がマイクロ法人を立ち上げること自体に違法性はありません。ただし事業の実体が確認できない場合、違法と判断される恐れもあるのです。

所得税法第12条「実質所得者課税の原則」でも、実体のない法人の収入は認めないと明記しています。マイクロ法人を設立する際は、事業活動の実体を明らかにしましょう。

②脱税を目的としている

マイクロ法人の設立は合理的な節税方法であるため、節税目的でマイクロ法人を設立すること自体は違法になりません。

ただし税法の予定範囲で税負担を軽減しようとする「節税」ではなく、課税要件があるにもかかわらず、故意に隠して課税を不法に免れようとする「脱税」は犯罪です。

売上を故意に除外したり、架空の経費を計上したりして所得を圧縮すると脱税とみなされ、厳しい罰則を受けるでしょう。

③営業活動がない

マイクロ法人と混同されやすい業態に「ペーパーカンパニー(登記登録されているものの営業活動のない会社)」があります。節税目的で設立されるという意味ではマイクロ法人と同じであるものの、実際に事業を行っているかどうかに大きな違いがあるのです。

ペーパーカンパニーでは実際に事業を行っていませんが、マイクロ法人では実際に事業を行っています。

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7.マイクロ法人の事業内容例

マイクロ法人の事業内容と個人事業主の事業内容は重複できません。あくまで本業と切り離した別の事業内容とする必要があるのです。ここでは事業内容の一部を説明します。

  1. せどり
  2. インフルエンサー
  3. 不動産
  4. コンサルティング
  5. 配送業

①せどり

商品を安く仕入れて高く売り、差額を利益とする事業のこと。海外のECサイトや実店舗などから商品を安く仕入れ、Amazonやメルカリなどで販売します。初心者でもはじめやすい副業として注目を集めているのです。

②インフルエンサー

ブログやSNS運営を通じて広告収入を得る「インフルエンサー」もマイクロ法人に人気の事業です。利益を度外視してライティングやマーケティングの勉強として挑戦し、長い時間をかけて広告収入を得られるのもメリットでしょう。

③不動産

不動産の賃貸収入も、マイクロ法人としての収入にあてられます。不動産所得は社会保険料の削減や給与所得控除による節税も可能なため、節税を目的にマイクロ法人化する人も存在するのです。働かずに収入を得られるため、時間的な余裕も生まれます。

④コンサルティング

近年、コンサルタントとマイクロ法人を組み合わせて起業する人も増えました。コンサルティング業の場合、ほか業種に比べて在庫保有や固定資産などの初期投資費用を少なく抑えられるため、起業後早いうちから利益を確保しやすいのです。

⑤配送業

「UberEats」「Wolt」に代表されるフードデリバリーサービスも、マイクロ法人に人気の事業。特別な専門知識やスキルが必要なく、稼げるようになるまで時間もかからないため、比較的挑戦しやすい事業でもあります。