マイクロラーニングとは、短時間で学習するスタイルのことです。ここではeラーニングとの違いや注目される背景、メリットやデメリットなどについて解説します。
目次
1.マイクロラーニングとは?
マイクロラーニング(Micro Learning)とは、1回数分程度の動画や細分化されたWebコンテンツなどを使用する学習方法のこと。一般的に、1本の動画再生時間は1~5分程度です。
よって特定の学習方法について、限定するものではありません。そのため動画視聴だけでなくクイズ形式やSNSの活用など多種多様の形態があります。またパソコンはもちろん、タブレットやモバイル機器などさまざまなデバイスで視聴、学習可能です。
eラーニングとの違い
マイクロラーニングのルーツは従来のeラーニングにあります。
eラーニングはLMS(Learning Management System:学習管理システム)を利用して配信されるのが一般的です。しかし1コンテンツの時間が数十分から1時間程度におよぶものが多く、短時間で気軽に学びたい人には不向きでした。
そこでコンテンツの作成、視聴のハードルを下げて、手軽な学びを提供しているのがマイクロラーニングです。
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2.マイクロラーニングが注目される背景
マイクロラーニングが注目されるようになった背景にあるのは、下記のとおりです。ここではマイクロラーニングが注目されるようになった背景について、解説します。
- 短時間の学習が、多忙なビジネスパーソンのライフスタイルにマッチ
- ビジネスパーソンを取り巻くシステム環境や志向の変化
- 従来の研修スタイルは非効率だった
①短時間の学習が、多忙なビジネスパーソンのライフスタイルにマッチ
先にも触れたとおり、従来のeラーニングは1回の想定学習時間を30分から1時間程度としています。学習者はこの時間のあいだパソコンの前に座ってコンテンツを視聴する必要がありました。
しかしこのスタイルには「まとまった時間の確保が難しい」「集中力が続かず非効率的」というふたつの問題がありました。そこでこれらを解決する学習方法として、短時間で集中して学べるマイクロラーニングが注目されるようになったのです。
②ビジネスパーソンを取り巻くシステム環境や志向の変化
Z世代(1996年頃から2010年頃に生まれた人)やミレニアル世代(1980年代から2000年代初頭に生まれた人)による志向、システム環境の変化も、マイクロラーニングが注目されるようになった理由のひとつ。
「デジタルネイティブ」とも呼ばれる彼らは、モバイルデバイスが普及した時代に育ってきた世代です。スマートフォンやタブレット端末を使ったマイクロラーニングとの親和性が高く、短い動画を繰り返し見る学習方法を好む傾向にあります。
③従来の研修スタイルは非効率だった
これまでの研修といえば、一か所に大勢が集まり時間をかけて教育するというスタイルでした。かつてはそうしてじっくりと研修を行う余裕もありましたが、業務量が増えた現代、長時間の研修に人材を送り出す余裕がなくなりつつあります。
また研修コンテンツも時代の変化に合わせて次々作り直さなくてはなりません。その点1コンテンツの時間が短いマイクロラーニングなら、ひんぱんな情報更新にも柔軟に対応できるのです。
3.マイクロラーニングのメリット
マイクロラーニングには下記のような3つのメリットがあります。
- 手軽に学習できる
- 学習内容が記憶に定着しやすい
- コンテンツの作成や修正が容易
①手軽に学習できる
コンテンツの一つひとつが短時間であるマイクロラーニングは、これまでのように何時間もパソコンの前に座る必要がありません。スマートフォンやタブレット端末を使って、移動中や業務の隙間時間などさまざまなタイミングで学習できます。
また短時間のコンテンツに要点が詰め込まれているため、重要箇所をおさえた学習が可能です。一回の学習にかける労力がおさえられるため、気軽に取り組めます。
②学習内容が記憶に定着しやすい
一回の学習に時間をかけるより、短時間の学習を繰り返したほうが効果的というのは広く知られています。どこにいても気軽に学習できるマイクロラーニングは本人の意欲次第で繰り返し何度も学習できるため、記憶に定着しやすいのです。
また人間の集中力は15分周期といわれています。ひとつのコンテンツを60分間学習し続けるより、15分のコンテンツを4回にわけて学ぶほうが高い学習効果が期待できるのです。
③コンテンツの作成や修正が容易
マイクロラーニングは学習者だけでなく教材作成者にとってもメリットがあります。
数十分~1時間ほどかけて行う研修スタイルの場合、必要な教材を作成するのも容易ではありません。とくに法律や制度など改正されやすい分野はひんぱんな修正、更新が必要です。
一般的にマイクロラーニングの1コンテンツは1~10分程度と非常に短い時間です。つまり教材の作成や修正にかかる時間や工数も少なく抑えられます。
4.マイクロラーニングのデメリット
マイクロラーニングは手軽に学習可能であり、内容が記憶に定着しやすい反面、いくつかのデメリットも存在します。
- 複雑な知識の学習には不向き
- システムにコストが必要
①複雑な知識の学習には不向き
短時間で学ぶマイクロラーニングにはどうしても限度があります。専門知識をじっくり習得させるための詳細説明を、数分のコンテンツにおさめるのは困難です。
短時間にまとめた結果かえって理解しにくくなったり、必要な知識を十分取得できなかったりするおそれもあります。
複雑な知識の習得が必要なものや対人スキルが必要なものにマイクロラーニングは不向きです。これらには直接指導やeラーニング、双方向型研修が適しています。
②システムにコストが必要
マイクロラーニングを導入する際、各種システムの準備が欠かせません。教材作成やICT整備、コンテンツの管理や更新などさまざまなシステム管理が必要になるからです。
システム管理を外部に委託した場合はもちろん、費用が発生します。社内運用の場合は管理コストが、社外運用の場合は委託コストが発生するのもマイクロラーニングのデメリットです。
5.マイクロラーニングを効果的に進めるポイント4つ
効果的なマイクロラーニングを行うためのポイントは、下記の4つです。
- シンプルな構成にする
- 自発的に学べる環境づくり
- ほかの研修と併用する
- 学習プランを社員の育成履歴に反映させる
①シンプルな構成にする
マイクロラーニングの強みは短時間での学習。短時間に収まらないからといって続編をいくつも作ったり、コンテンツを分割したりするとマイクロラーニングの強みが失われてしまいます。
たとえ「あれも伝えたい」「これも必要」と盛り込みたい情報が多くあっても、短時間の教材にならない場合はいさぎよく取捨選択しましょう。短時間におさめると、伝えたい内容はより明確になります。
②自発的に学べる環境づくり
スマートフォンやタブレット端末を使えばどこにいても学習できるのがマイクロラーニングの強み。しかしこれは自発的に学ぶ意欲や環境がなければ、期待する効果が得られないという意味でもあります。
「学習者が自発的に学べるのはどの配信ツールか」「どのプラットフォームを使用すれば学習意欲を高められるのか」などを見極めて、自発的な学びにつなげることが重要です。
③ほかの研修と併用する
前述のとおり、マイクロラーニングに不向きな分野もあります。たとえばマイクロラーニングにはディスカッションして意見交換する機能はありません。そこでマイクロラーニングに集合研修やオンライン研修をくわえて学習効果を高めます。
事前にマイクロラーニングを使って学習してもらい、そのうえで集合研修を行えば具体的な知識の取得やイメージの定着に結び付くでしょう。
④学習プランを社員の育成履歴に反映させる
マイクロラーニングやeラーニングでは学習者の受講状況や履歴などをデータとして確認できます。内容が細分化されているマイクロラーニングの場合学習プランのデータを分析すると学習者が興味を持つ分野やコンテンツなどを把握できるのです。
集計データを個人の育成プランに活用すれば、より納得度の高い育成、人事配置が実現できるでしょう。
6.マイクロラーニングコンテンツの作り方
マイクロラーニングのコンテンツは自作可能です。以下3つのポイントをおさえると、会社も学習者も利用しやすいコンテンツを作成できます。
- eラーニングから置きかえる
- 容易な内容にする
- サービスの活用
①eラーニングから置きかえる
マイクロラーニングのコンテンツを作成する際、特に多いのが既存のeラーニングから置きかえる方法です。たとえばそれまで1時間あった動画をマイクロラーニングで項目ごとに細分化すれば、短時間での学習やクイズ形式での配信が可能になります。
②容易な内容にする
短時間で学習するマイクロラーニングに、複雑で難しい内容は不向きです。シンプルな内容で分かりやすいコンテンツにまとめる必要があります。
またコンテンツ数が少ないと学習範囲がまかないきれないため、コンテンツを増やしてさまざまな情報に触れてもらうのも重要です。
③サービスの活用
マイクロラーニングコンテンツの作成には、各種サービスの活用も効果的です。たとえコンテンツ作成に長時間割いても、学習者が視聴しにくいシステムを利用していたのでは期待する効果を十分に得られません。
作成や配信が容易であり、かつ学習者の利用がかんたんなサービスを活用して効果を高めましょう。
7.マイクロラーニングのプラットフォームとは?
マイクロラーニングの導入にはプラットフォームの利用がオススメです。
「LMS(Learning Management System:学習管理システム)」を活用すれば学習成績やコンテンツ制作、進捗管理などを一元管理できるうえ、会社と学習者、双方によりよいコンテンツが提供されます。
プラットフォーム選びのポイント
マイクロラーニングのプラットフォームを選ぶ際は、次の内容をチェックしましょう。
- 学習者にとって使いやすい、学びやすいシステムか
- 学習コンテンツの管理が容易にできるか
- 利用者人数は適しているか
- 明瞭な料金プランになっているか
- プラットフォームとしての実績はあるか
サービスによっては無料プランやトライアルを設けているものもあります。自社に適したシステムを比較検討してみましょう。