ミッションステートメントは、企業や従業員が共有するべき価値観、行動指針などを文章化したもので、日本の企業が昔から掲げていた「社是」「社訓」「経営理念」に似ています。
ミッションステートメントと経営理念との違い、またその作り方を紹介します。
目次
1.ミッションステートメントとは?
ミッションステートメントとは企業の行動指針のことで、経営の理念実現に向けた判断基準となるものです。企業活動においてミッションステートメントは欠かせない存在といえるでしょう。
ビジネスシーンは常に変化しているため、顧客のニーズや時代の流れを読み取って行動する必要があります。また、株主の意向や業績、シーンに基づいての企業活動が必ず成功するとは限りません。
こうした不確定要素ばかりでも意思決定を行う必要はあり、そこで役に立つのがミッションステートメントです。ミッションステートメントで具体的な指標を明確にすれば、どのような状況でも意思決定が可能でしょう。
ミッションとは? ビジネスでの意味や使い方をわかりやすく解説
ミッションは、組織が成長していく方向性を定めるために必要な指針となるもの。組織で働くメンバーが団結するだけでなく、外部の関係者や社会から信頼を得る役割も果たします。
パブリックなメッセージとしてミッシ...
社内のモチベーション維持・精神的支柱
またミッションステートメントを掲げることで従業員の意思を一つにすることが可能です。
従業員のなかには、「働く意味」を見いだせずに退職するケースもあるでしょう。しかしミッションステートメントを掲げるとそれが社員のモチベーションを保つ精神的支柱となり、離職率が低下します。優秀な人材を手放さずに済むでしょう。
外部へ社会貢献活動や信念をアピール
企業活動では、取り扱う商品やサービス以外に、どのような想いや信念を持っているかも重要視されます。特に現代は企業による社会貢献活動も重要視されており、それを明確にする必要があるのです。
ミッションステートメントは想いや信念、社会貢献活動を外部にアピールする力になります。企業の存在意義を端的に表現できるのです。
ともすると企業の存在意義は曖昧になりがちですが、ミッションステートメントとしてオープンにすることで、その意味を再確認できるでしょう。
株主への目標提示
株式会社にとって、年度の経済活動結果を報告し、利益を還元する必要がある株主の存在は大きいです。そこでは数字だけでなく事業計画や目標も必要になりますが、株主の理解を得なければなりません。
ミッションステートメントを掲げると、株主に対して目標提示できます。
ミッションステートメントは、
- 企業活動
- 社員のモチベーション維持
- 外部への企業のアピール
- 株主への目標提示
とあらゆる面に説得力を持たせることが可能です。
2.ミッションステートメントと経営理念の違い
どのような企業も経営理念を持っており、ミッションステートメントと経営理念に対して同じようなイメージを持っている人も多いでしょう。ミッションステートメントと経営理念にはどういった違いがあるのでしょうか。
経営理念との差
経営理念とは企業の指針や存在意義を表現したもので、抽象的・観念的な内容が多いです。そのため、具体的な内容を伝えられないことも少なくありません。
対称的にミッションステートメントは、経営理念をより具体的な行動指針に落とし込んだものです。具体的なため、より効果的に判断基準として機能するでしょう。
ミッションステートメントと従業員、顧客
企業は製品やサービスを提供する際、特徴や果たしている社会的な使命を明確にする必要があります。社会に対する貢献度を明確にすることで、従業員はより高いモチベーションで仕事に集中できるのです。
また、顧客やマーケットに対して仕事を行う際、どのような顧客に対して製品やサービスを提供するのか考える必要もあります。顧客に対して価値を提供することで企業の使命がわかるからです。
さらに顧客だけでなく対象のマーケットを明確にすると、企業の社会的使命が再認識できるでしょう。
ミッションステートメントと競争優位性
またどのような業種でも同業他社との競争が生まれますが、そこでは自社の競争優位性が必要になるのです。企業活動で競争優位性を知れば、事業継続が可能になります。
競争優位性は企業の自信へとつながり、顧客や株主から高い信用が得られるだけでなく、社員のモチベーション向上にも関係するのです。ミッションステートメントにおいて掲げるべき要素の一つでしょう。
ミッションステートメントと社会的責任、環境への配慮
ミッションステートメントには企業の社会的責任や環境に対する配慮も必要です。近年、エコロジーに対する意識が高まり、環境問題への配慮や取り組みについても考える必要があります。
高度経済成長期の日本では、利益を追求するあまり、公害や環境破壊などの大きな問題を生みました。このような過ちを繰り返さないよう、ミッションステートメントによって環境への配慮を明確にするとよいでしょう。企業に対するパブリックイメージにもつながります。
3.ミッションステートメントとビジョンステートメントの違い
ミッションステートメントを考える際、ビジョンステートメントと混同するケースは多いです。どちらも同じようなイメージがありますが、どう違うのでしょうか。
ミッションステートメントは現在、ビジョンステートメントは未来
ミッションステートメントは企業や社員が共有する価値観や社会的な使命を具体化したものです。ミッションステートメントを共有すれば、企業活動で判断に迷うことも減るでしょう。
対してビジョンステートメントは企業の目標や将来の行く末を文章化したもので、企業活動での戦略立案に大きい影響を与えます。
具体的にいうとミッションステートメントは企業の現在について表現しているのに対しビジョンステートメントは企業の未来について表現しているのです。そのため、目指している方向が異なるといえるでしょう。
ビジョンステートメントとの「ビジョン」とは
ビジョンステートメントは将来について語る内容となっていますが、そのビジョンにはどういった意味があるのでしょう。ビジョンは近未来に関する像を意味しており、会社を起こす際に最初に思い描くものと似ています。それを長期的な目標としたものをビジョンと呼ぶのです。
しかし、目標は曖昧なものになりがちで、そのままでは社員全体への共有も難しいため極力シンプルな言葉に変換して、誰もが同じ熱量で共有できるようにします。このシンプルな言葉をビジョンステートメントと呼ぶのです。
ビジョンステートメントは自社のためだけに掲げる目標ではありません。業界全体や社会全体を巻き込んだ目標も、ビジョンステートメントといえるでしょう。
ビジョンステートメントを掲げると、企業の行動指針が明確になり、変化するマーケットや環境に対しても柔軟な対応が可能となり、さらに共有することでそれが拠り所になり、スムーズな意思決定もできるのです。
ビジョンステートメントを十分に機能させるには、社員が共有できるシンプルな言葉である必要があります。
4.ミッションステートメントを作ることによる効果
ミッションステートメントで会社の深い部分をアピール
就職活動では、志望する企業の情報について調べ、そこで事業内容や資本金などを知るでしょう。しかし、会社の考え方や実際の様相といった深い部分はわかりにくいものです。
そこでおすすめしたいのが、ミッションステートメントの確認。ミッションステートメントは企業の行動指針となっているので、少し深い部分にある企業の様相がわかるのです。
ミッションステートメントは企業を外部へアピールする役割があります。優れたミッションステートメントを掲げれば、外部からの共感も得やすくなり、人と仕事を集めることが見込めるのです。
ただしミッションステートメントの影響力は高いため、意味を十分に考えないまま掲げることは避けましょう。
ミッションステートメントを作ると社内の統率を図りやすくなる
ミッションステートメントは社員にも影響を与えます。社員はミッションステートメントによって、目標や指針が明確になるため、業務の効率化やより活発なアイデアの提供ができるでしょう。業務内容も今より深く理解できます。
5.ミッションステートメントの作り方
企業理念やサービス、社会的責任などを踏まえて作成する
- 社員のモチベーション向上
- 社外へのイメージアップ
- 人材確保
などさまざまなメリットを持つミッションステートメントですが、どのようにして作るとよいのでしょうか。
作成の専門チームを立ち上げる
最初に行うのはミッションステートメント作成の専門チームを立ち上げることです。
ポイントはあらゆるポジションの社員を参加させること。こういった専門チームはどうしても役員レベルに限られますが、それでは社員とミッションステートメントの共有ができません。
社員が意思を共有することにミッションステートメントの意味があるため、さまざまな社員を参加させましょう。株主を含めてもよいです。
社員、顧客、株主、求職者すべてに向けた内容を
次に、ミッションステートメントにどういった内容を盛り込むか考えましょう。その際チームメンバー全員の意思を汲み取ることが重要です。
その際社員だけに向けられた内容になりがちですが、ミッションステートメントは、
- 社員
- 顧客
- 株主
- 求職者
とさまざまな人に向けられた内容でなくてはなりません。
ミッションステートメントは自社のパブリックイメージに直結し、企業活動にも大きい影響を与えます。また求職者もチェックしているので、社会貢献やエコロジーに対する意識などにも時間をかける必要があります。
アイデアを文章にまとめる
最後に作成チームの出したアイデアを文章にまとめます。内容を確実に共有するため、シンプルな言葉でできているかチェックしましょう。いくら有効的な内容でも、伝わらなければ意味がないからです。
文章にまとめる際重要なことは、ミッションステートメントは社会に発信するものという意識。そのため、受け取る目線から言葉を選びましょう。
- 企業のストロングポイント
- 社会貢献
- 環境への配慮
など共感を得やすい言葉を選んでください。
6.ミッションステートメントを掲げた企業活動
ミッションステートメントは企業の目標や指針となるものです。ミッションステートメントという形にすることで指針が明確になり、判断基準のひとつとして機能します。
どのような業種でもマーケットや環境は絶えず変化しており、迅速で柔軟な対応が求められる今、判断の遅れは大きなダメージになりかねません。しかし、ミッションステートメントを掲げることでリスクを軽減できます。
またミッションステートメントという形での共有は、社員の意識改革、使命感や生産性の向上、離職率の低下、優秀な人材確保にもつながるのです。
ミッションステートメントを作ることで多くのメリットが得られますので作成チームを立ち上げてみましょう。