行動計画とは、目標達成のために実施すべき(行動)とそのプロセスを管理するための計画。この記事では目標達成のための行動計画について紹介します。
目次
1.目標達成に欠かせない行動計画とは?
行動計画とは、目標達成のための戦略や方針とともに、具体的にどのようなアクション(行動)を実施するかを策定し、管理する計画のこと。企業では、経営目標を達成するために何をすべきかを、従業員個人単位まで落とし込んで行動計画を立てるのです。
たとえば「新規顧客を10%増やす」という目標を立てた場合、個人の行動計画に挙げられるのは「個人の架電や訪問の○回数を増やす」「セミナーや説明会などを今月○回実施する」などとなります。
行動計画の必要性
行動計画を立てると、従業員の行動や結果が可視化されて管理しやすくなります。それぞれの従業員に行動をまかせっきりにしてしまうと、目標から外れた行動が実行される恐れもあり、時間やコストも無駄になりかねません。
行動計画を立てておくと、目標達成に沿わない行動なら実行前に修正できますし、今だれがどのように行動しているかもスムーズに把握できます。また結果の効果測定や評価の方法もあらかじめ決めておけるでしょう。
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2.組織における目標と行動計画
行動計画には、個人の目標達成のために立てる行動計画と、組織における目標達成のために立てる行動計画があるのです。組織の経営目標達成のために立てる行動計画は「経営計画」ともいいます。
経営計画
企業の経営戦略を実現するために立てる行動計画のこと。企業が将来達成すべき目標や、毎年立てる経営目標達成のために具体的な指標、経営方針に沿って実施する行動を決定します。経営計画の種類は3つあり、期間によって使いわけられます。
- 長期経営計画:今後の事業発展のために設ける企業の成長、業績向上を目指すための長期的な経営計画
- 中期経営計画:多くが3年から5年間の中期的な期間で想定する経営計画
- 短期経営計画:予算を含む、毎年策定される1年間で達成すべき経営計画
個人目標達成のための行動計画
企業や組織の目標を達成するため、それぞれの部署や部門などへ目標が落とし込まれ、さらに個々の従業員単位の目標へと落とし込まれます。この個人目標を達成するためには、個人の行動計画が必要です。
このとき部や課、あるいはチームで、全員に同じ行動計画を設定する場合があります。その場合、「属人的な行動計画ではなく全員が達成できる内容である」「難易度を下げすぎない」点に注意しましょう。
3.目標達成のために行動計画を立てるメリット
目標達成のためには、行動計画が欠かせません。しかし目標達成に効果的というメリット以外にもメリットがあるのです。
- 従業員のモチベーションが向上する
- 現状の分析がしやすい
- 企業が成長する
①従業員のモチベーションが向上する
目標達成のために行動計画を立てると、目標達成までの行動量や実行方法、実行のタイミングなどが可視化でき、従業員のモチベーションが向上します。
行動計画の実施結果を件数や時間数、人数や金額などの数値で確認できれば達成感にもつながるでしょう。大きな目標達成の前に中間地点となるKPI(重要業績評価指標)を設けると、モチベーションが維持しやすくなります。
②現状の分析がしやすい
行動計画は、現状達成できていない目標を達成するために設定します。そのためまずは現状と目標との差分を分析しなくてはなりません。どのような行動がどれくらい不足しているのかを調べて、現状に無駄な行動があれば改善するのです。
このとき行動を行う従業員の知識やスキル、情報の共有方法や業務フローなどの再確認も必要でしょう。
③企業が成長する
経営計画はもちろん、個人の行動計画も企業全体の成長へとつながります。個人の行動計画をさかのぼっていくと、企業や組織の目標につながるからです。
経営計画は、企業の経営戦略や経営方針、経営課題などにもとづいて策定されるもの。よって経営計画が滞りなく実行されれば、企業価値や業績の向上などへつながるのです。
4.目標達成に向けた行動計画の立て方
目標達成のために行動計画を立てる際、いくつかの注意点があります。ここでは行動計画の立て方について見ていきましょう。
- 期限を設定する
- 現状を分析する
- 行動の担当者を決める
- 各行動計画を連動させてみる
①期限を設定する
行動計画には必ず期限を定めましょう。期限を定めていない行動計画は優先順位が下がってしまい、実施されない恐れもあるからです。
行動計画には明確な期限を設け、行動計画には具体的な数値を設定してだれが見ても実施結果がわかるようにしておきましょう。そうすれば期間内に目標を達成できたか、確認しやすくなります。
②現状を分析する
行動計画を立てる際、現状と目標との差分を分析する必要があります。このとき自社の特徴や強みと弱みなどの内部環境と、競合や市場などの外部環境を分析しましょう。
「計画した行動が自社の人材や設備などに適しているか」「同業他社が同様の行動を実施していないか」など、多角的な分析が必要です。自社の強みや長所を伸ばして、競合他社と差別化できる行動計画がベストといえるでしょう。
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自社の強みと弱みを分析する方法。分析する項目は、競合他社や社会情勢、顧客ニーズなどの外部環境と自社の人材や資産、ブランド力といった内部環境です。SWOTは4つの英単語の頭文字で、それぞれで分析する内容を意味します。
- 内部環境:「アピールポイントや自社の長所のStrength(強み)」「改善点や自社の短所のWeakness(弱み)」
- 外部環境:「外部環境から自社の業績を伸ばせる好機のOpportunity(機会)」「競合他社など外部環境から自社の反映を阻害する要因のThreat(脅威)」
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③行動の担当者を決める
行動計画の責任者や担当者を決めると、目標達成への行動計画が円滑に運ぶでしょう。行動計画は組織やチーム全体で行う場合が多いため、担当者を決めておかないと「だれかがやると思った」と他人任せになり、失敗してしまう危険性が高まります。
行動の担当者を決めておけば責任感が生まれ、リーダーシップを発揮してチームを牽引していくでしょう。また周りも担当者を中心に協力するようになります。
④各行動計画を連動させてみる
行動計画に沿って個別に行動していくのではなく複数の各行動計画を連動させて行動していきましょう。行動計画によっては、特定の従業員の行動が完了しなければ次の行動に移れない場合もあります。
行動計画を策定する際は、個々の行動だけでなく関連性の有無にも注意しなくてはなりません。スムーズに連動しない行動があるときは、行動の見直しや組み換えなどを行ってみましょう。
5.目標達成するための行動計画作成のポイント
目標達成するには、要点を抑えた行動計画の作成が必要です。行動計画を作成する際のポイントを確認しておきましょう。
- 内容は具体的に
- 個人の目標と一致させる
- 高めだが実現可能なレベルの目標を設定する
- 行動を記録する
- 管理しやすいツールを用意する
①内容は具体的に
行動計画では漠然とした指標を使わず、具体的で明確な行動指標を設定します。ポイントは数値化して可視化できる指標を使う点。
たとえば「研修を実施する」や「客単価を上げる」といった行動ではなく、「新人5人に○時間の研修を○日までに○回実施する」や「今月中に○名から○円ずつ追加注文を取る」など、いつまでにだれが何をどれくらい達成すべきかがわかる内容にするのです。
SMARTの法則を活用
具体的な行動計画の策定には、SMARTの法則が有効です。SMARTもまた、英単語の頭文字をとったもので、それぞれの語に意味があります。
- Specific(具体的に):どれくらいの期間でどれくらいの人員で何を達成していくのか
- Measurable(測定可能):達成できたか確認ができる、進捗を確認できる数値化された指標
- Achievable(達成可能な目標):夢物語ではなく、現実的に達成が可能な目標であり挑戦的な目標を掲げる
- Result Oriented(最終目標関連性):まとまりがあり、結果が最終目標となるKGIにつながっているか
- Time setting(期限):いつまでも続けるのではなく、目標達成から逆算してどれくらいの期間で達成するか期限を設ける
②個人の目標と一致させる
組織の行動計画と個人の目標を一致させるのも有効といえます。組織目標達成のための行動計画は、一方的になってしまいがちです。従業員は「やらされている」という感覚を受ける場合もあります。
個人目標と連動した行動計画なら実行すると組織だけでなく自分にもメリットが発生するため、従業員のモチベーションが上がりやすくなるのです。
③高めだが実現可能なレベルの目標を設定する
目標は、実現可能かつ少し高い水準の目標設定をしましょう。目標は高く設定したくなりますが、達成が不可能な行動計画を立ててしまった場合、従業員のモチベーションを下げてしまいかねません。
「少し高めの目標ではあるものの、創意工夫すれば達成できる」というレベルが最適です。現状から120%の状態を目指した目標を設定してみましょう。
④行動を記録する
実行される行動は記録しておきましょう。行動計画はチームで取り組む場合が多いため、個々の従業員がどこで何を行う予定か、あらかじめまとめています。さらに行動の結果も記録していけば、進捗や達成度が可視化できるのです。
進捗や達成度が見えると、従業員のモチベーションは向上しやすくなります。高い成果を生み出した従業員がいれば、同じ行動を予定している従業員の間で情報やノウハウが共有されるでしょう。
⑤管理しやすいツールを用意する
行動計画を作成する際に管理ツールを使うと、行動計画が管理しやすくなるのです。たとえば以下のようなツールが役立つでしょう。
- 目標管理ツール:行動計画のベースとなる目標を管理するためのツール。目標設定や面談記録、評価やフィードバックなどをまとめて管理できる
- タレントマネジメントシステム:従業員の基本情報やスキル、経験などを一元管理できるツール。評価管理機能が使用できれば、行動計画に対する評価を管理しやすくなる
- アクションプランシート:目標と進捗、振り返りなどをひとつのシートにまとめたもの。無料テンプレートを使う方法と、エクセルなどで自作する方法がある
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今回は...
6.目標達成するための行動計画に必要な要素
行動計画の策定と実施には、3つの要素が必要です。それぞれについて見ていきましょう。
- チームマネジメント
- リーダーシップ
- 人事評価
①チームマネジメント
メンバー一人ひとりが最大限のパフォーマンスを発揮できるチームにしていくこと。行動計画を実行する従業員は、上司からの指示を仰ぐだけでなく、自ら考えて行動できる人材でなければなりません。
行動計画の責任者や担当者は、それぞれの従業員が主体性をもって行動していくよう、働きかけや調整を行う必要があります。
②リーダーシップ
部下やチームを先導していく能力のこと。行動計画の責任者や担当者はチームをけん引していくために、リーダーシップが求められます。目標達成のために行う指示や指導、行動の順位付けなどもリーダーシップのひとつです。
さらにメンバーの悩みや課題の解決やモチベーションの向上など、チームワークの維持や強化などもリーダーシップに含まれる役割といえます。
③人事評価
目標は人事評価のなかでも重要な評価項目です。組織から正当な評価や期待をかけられた従業員は仕事に意欲的になり、さらに高い水準の目標や行動計画へ挑戦していくでしょう。
その結果、さらなる成長を遂げて組織に貢献する人材となりえます。このように行動計画と人事評価を組み合わせると、人材の価値をより高めていけるのです。
7.目標に向けた行動計画を達成できない原因
行動計画を立てたにもかかわらず目標を達成できない場合、達成できない原因を解明する必要があります。ここでは行動計画が失敗する3つの原因について見ていきましょう。
- 適切な行動計画になっていない
- 結果を実感できない
- 従業員の能力が低い
①適切な行動計画になっていない
「実現不可能」「難易度が高すぎる」「具体的な目標がない」行動計画は、目標を達成できないでしょう。達成できそうにない行動計画は、従業員のモチベーションを下げます。
また何を実行すればよいかわからず、結局だれも実行しない可能性も高まります。このような行動計画になっていないか、再度確認しましょう。
②結果を実感できない
従業員が行動計画の結果を実感できなければ、目標達成は難しくなります。従業員の行動によって何かが改善されていると実感できれば、モチベーションにつながるでしょう。
たとえば進捗を毎日共有する方法があります。また目標達成時に従業員が特別な評価を得られると、達成したときの実感も高まるでしょう。目標を達成したら全員にインセンティブを出すのも効果的です。
③従業員の能力が低い
どのような優れた行動計画を作成しても、行動する従業員の能力が低ければ目標の達成は難しいでしょう。単純にパフォーマンスが低く、生産性が悪いのかもしれません。あるいは従業員の目標に対する知識やスキル、意識が不足している可能性もあります。
いずれにしても改善のためには研修や教育が必要です。現場を担うリーダー的な従業員を設置するのも有効でしょう。
8.目標や行動計画の策定に役立つ手法
目標や行動計画を作成する際、目標管理や思考や行動のフレームワークといった手法が役立ちます。行動計画を立てる際に役立つ手法について、見ていきましょう。
- MBO
- KGI・KPI・KDI
- OKR
- 5W1H・5w2H・6W2H・7W3H・8W3H
- PDCA
- PDCL
①MBO(Management By Objectives)
個人やチームの目標を設定し、その目標の達成度で人事評価を決める評価制度のことで、目標管理制度とも呼ばれます。
個人目標と組織目標をリンクさせ、個人目標の達成が組織全体の目標達成に貢献するように管理します。そのため個人の目標は従業員自らが提案し、上司と話し合って決定するのです。
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②KGI・KPI・KDI
目標達成の判断基準となる指標のこと。段階を付けて目標指標を設けると、最終目標を達成するためのプロセスが明確になります。
- KGI(Key Goal Indicator):重要目標達成指標。目標地点の最終目標
- KPI(Key Performance Indicator):業績評価指標。KGIに辿り着くための中間目標
- KDI(Key Do Indicator):主要診断指標。行動をおこすための初期段階の行動目標
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③OKR(Objectives and Key Results)
組織目標と個人目標を紐づけて統一させる目標設定手法のこと。
MBOと混同されやすいですが、OKRは組織の目標とチームの目標、個人の目標がすべて連動しており、個人目標もチーム間で共有されます。一方MBOは、給与を決める評価にも用いられるため基本、上司と従業員の間でしか共有されません。
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④5W1H・5w2H・6W2H・7W3H・8W3H
目標達成するための行動計画は、具体的な内容にする必要があります。物事を具体的に掘り下げるには、5W1H・5w2H・6W2H・7W3H・8W3Hなどのフレームワークが有効です。まず5W1Hには、以下の要素が含まれます。
- いつ(When)
- どこで(Where)
- だれが(Who)
- 何を(What)
- 何故(Why)
- どのように(How)
そして8W3Hには、上記にくわえて以下の要素が増えています。
- だれと(With whom)
- だれに(Whom)
- いつまでに(When by)
- いくらで(How much)
- どれくらい(How many)
5W1Hとは?【意味・読み方を簡単に】ビジネスでの使い方
5W1Hとは、情報伝達の重要なポイントのことです。この要素を意識していれば、情報を分かりやすく整理しながら、正しく伝えることができます。5W1Hについて見ていきましょう。
1.5W1Hとは?
5W1...
⑤PDCA
計画を立てて行動し、行動結果を分析して改善していく一連のサイクルを表したフレームワークのこと。4つの英単語の頭文字を取っています。
- Plan(計画を立てる)
- Do(行動に移す)
- Check(行動結果を分析する)
- Action(分析結果から改善する)
PDCAとは?【意味を簡単に】サイクルの回し方、OODAとの違い
PDCAは、多くの企業で採用されているセルフマネジメントメソッドです。
改めてPDCAがどのようなメソッドなのかを考えるとともに、メリットや問題点、PDCAが失敗する要因や効果的に回していくポイントな...
⑥PDCL
PDCAを変化させ、自ら考え行動することにスポットを当てた行動指標のこと。PDSLの要素は以下のとおりです。
- Plan(計画を立てる)
- Do(行動に移す)
- Check(行動結果を分析する)
- Learning(分析結果から気づきや学びを得る)
何をどのようにすればいいかを考えるスキルも高まるので、能動的な人材を育成できます。