問題解決とは、対象となる物事をあるべき姿に変えるために、その原因を特定し解消すること。ここではプロセス、ポイント、フレームワークなどについて解説します。
目次
1.問題解決とは?
問題解決とは、あるべき状態と現状に差がある状態(問題)を解決するため、問題の背後にある真の問題を特定し、解決策を講じること。問題解決において重要なのは、単に表面的な解決を目指すのではなく、問題の本質を理解することです。
そのため問題解決のプロセスでは、まず問題を明確に特定し、さまざまな視点から解決策を探求したうえで、実行に移します。また問題解決では一時的な対症療法ではなく、根本的解決を目指すため、一貫性のある継続的な取り組みが必要です。
2.問題解決の前に知っておきたい「問題」と「課題」の違い
「問題」と「課題」はしばしば混同されるものの、それぞれに明確な違いがあります。それぞれの意味を解説しましょう。
問題
問題とは、目標や理想と現実の間にあるギャップであり、目標達成のために解決しなければならない事柄です。
問題は「発生型問題」と「設定型問題」のふたつに分類できます。
- 発生型問題:すでに発生しており、目標や理想とのギャップが明確に認識されている問題
- 設定型問題:目標や理想を達成する過程において、将来的に直面する可能性がある問題
課題
課題とは、問題の解決に向けて「何に取り組むか」を設定したもの。問題を解決するために具体的な目標やタスクに焦点を当てたもので、アクションプランや取り組むべき内容を明確にする役割を果たします。
そのため課題は実現が可能な内容でなければなりません。現実的かつ具体的な目標を設定し、取り組むべき課題が達成可能な範囲内にあることが重要です。
3.問題解決のプロセス
問題解決は、問題の特定から始まります。ここでは問題解決における5つのプロセスについて解説しましょう。
問題が明確になったら、問題を解決したときにどのような状態になるべきかを決めます。問題解決の方向性が定まり、取り組むべき課題や行動を決定しやすくなるからです。
また客観的なデータや情報を集め、根本的な原因を特定するための推論と仮説の構築を行います。客観的な視点から推論を進めて原因の可能性を洗い出し、解決策を導く手がかりを探るためです。
具体的なアクションプランを立てると、問題解決の過程が明確化し、実行に移しやすくなります。また最適な解決策を選ぶためには、その解決策を実行した場合のリスクやメリット、デメリットも考慮しましょう。
また問題や障害が発生した場合には、迅速に対応するための情報となるのです。
フィードバックをとおして新たな問題点が発見されたら、改善策を講じなくてはなりません。
4.問題解決のポイント
やみくもに問題解決へ取り組むだけでは、解決が難しいでしょう。ここでは問題解決のポイントについて説明します。
- 「What」が重要
- 「コインの裏返し」に注意
- 正確な解決目標を設定
①「What」が重要
問題解決では「Why(なぜ)」を深く考えることが重要だと思われがちです。しかし実際には「What(何を)」を考えることがより重要といえます。
問題が何であるのかを正確に理解すると、問題の本質や全体像が見えてくるでしょう。まずは大きな「What(何を)」を見つけ、その問題をさらに細かく分解していきます。
取り組むべき課題が明確になり、具体的なアクションプランも考えられるようになるのです。
②「コインの裏返し」に注意
ビジネス用語である「コインの裏返し」とは、単純に問題の言葉をひっくり返しただけの解決策を指します。たとえば「来店客数が減った」という現象に対して「来店客数を増やそう」と考えるといったものです。
しかしこのアプローチでは「問題の原因や解決策を見極める」という重要なプロセスが行われません。問題解決においては、コインの裏返しではなく、目標を達成までのプロセス全体を検討することが重要です。
③正確な解決目標を設定
問題解決においては現状を調査し、その情報をもとに解決目標を具体的に定める必要があります。正確な解決目標が設定されると、効果的な解決策を立案でき、問題解決に向けた取り組みを計画的に実行できるようになるからです。
5.問題解決のフレームワーク
問題解決に役立つフレームワークを活用すると、分析や意思決定、戦略立案をスムーズに進められます。ここでは5つのフレームワークを解説しましょう。
- As-Is/To-Be分析
- 6W2H分析
- ロジックツリー分析
- MECE(ミーシー)
- PDCAサイクル
①As-Is/To-Be分析
理想と現実のギャップを特定し、そのギャップを埋めるための解決手段も検討するフレームワークのこと。「As-Is」は現在の状態を指し、「To-Be」は理想的な状態を表します。この手法を用いると、問題解決の方法を効率的に明確化できるのです。
このフレームワークでは、以下の手順で分析を行います。
- To-Beの設定
- As-Isの設定
- 課題の抽出
- 課題に優先順位をつける
- 課題を具体的な行動に落とし込む
②6W2H分析
8つの疑問にもとづいて思考を深めるためのフレームワークです。思考の整理や情報の整理に役立つだけでなく、ヒアリングツールとしても使用できます。
具体的な要素は以下のとおりです。
- When(いつ): 問題が発生した時点や時間的な要素を考慮する
- Where(どこで):問題が発生した場所や場所に関連する要素を考慮する
- Who(だれが): 問題に関与している人や関係者を特定し、彼らの視点や役割を理解する
- Whom(だれに): 問題が影響をおよぼす可能性のある人や関係者を特定する
- What(なにを): 問題の本質や具体的な要素、課題を明確化する
- Why(なぜ): 問題の原因や背後にある要因を探求す。
- How(どのように): 解決策や対策を実行する手段や方法を考える
- How much(いくら): 解決策を実行するために必要なリソースやコストを評価する
上記の項目をすべて埋めると、問題の原因や理想との乖離を明らかにできます。
③ロジックツリー分析
ひとつの問題を分解し、第2階層や第3階層と順次展開していきながら、深く掘り下げて考えるフレームワークのこと。
ロジックツリーを作成する際は、漏れや重複のない状態で階層を展開していきましょう。問題の原因を漏らすことなく特定できれば、最適な解決策の立案に役立ちます。ツリー型で考えるため、優先順位を協議しながら解決策が立案しやすい点もメリットです。
④MECE(ミーシー)
物事を整理するとき、漏れや重複を防ぐフレームワークのこと。「Mutually(相互に)」「Exclusive(排他的な)」「Collectively(集合に)」「Exhaustive(包括的な)」の頭文字をとった造語で、日本語では「漏れなく、重複なく」と訳されます。
問題を整理する際に漏れや重複がなければ、全体像を正確かつ素早く把握できるでしょう。
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⑤PDCAサイクル
継続的な改善行動の流れを定めたフレームワークです。「Plan(計画を立てる)」「Do(実行する)」「Check(検証する)」「Action(対策を実施する)」という4つの行動を1サイクルとしており、問題解決にはこれらの行動を繰り返し行う必要があります。
問題が解決したあとも継続的にPDCAを繰り返すと、新たな問題を早期に発見するのも可能です。
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6.問題解決能力を高める方法
問題解決能力は、トレーニングを重ねると高めていけます。ここでは4つの取り組みを紹介します。
- 「なぜ」のリピート
- 先を見て行動する習慣化
- 関連スキルの習得
- 問題や原因の可視化
①「なぜ」のリピート
問題解決能力を向上させるためには、以下のように「なぜ」のリピートを重視します。このアプローチは、問題解決を表面的なものにとどまらせず、深いレベルでの理解と洞察を得るために有効です。
具体的には、以下のように「なぜ」を5回繰り返して問題の原因を追究します。
- 最初の「なぜ」:問題の発生原因を特定する
- 2番目の「なぜ」:ひとつ目の原因の背後にある深層原因を見つける
- 3番目の「なぜ」: ふたつ目の原因の背後にある更なる原因を追求する
- 4番目の「なぜ」:3つ目の原因の本質的な要因を明らかにする
- 5番目の「なぜ」:4つ目の原因に至るまでの過程や条件を詳しく分析する
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かつては工場などの生産現場で広く採用されていたなぜなぜ分析。現在は、営業や事務などの職場で様々なヒューマンエラーを削減したり、お客さま相談室でお客さまからの要望やクレームを分析したりすることに役立てて...
②先を見て行動する習慣化
問題解決においては、現在の課題だけでなく将来の可能性も考慮することが重要です。将来起こりうるリスクを予測し、それに対処するための行動を計画的に行う必要があります。
どのような取り組みでも将来起こりうるリスクをつねに予測し、それに備えた行動を取りましょう。ただしリスクを気にしすぎると、何もできなくなってしまう可能性もあるため、必要な対策を講じつつも柔軟性を持ちながら行動することが重要です。
③関連スキルの習得
関連するスキルを習得すると、問題解決や意思決定の能力を向上できます。たとえば以下のようなスキルが挙げられるでしょう。
- 分析的思考力:問題の根本的な原因を特定できる
- 発想力:多くの解決策を思いつける。革新的な意思決定ができる
- 批判的思考:問題を建設的に理解し分析できる
④問題や原因の可視化
問題の本質や原因を紙に書き出して可視化すると、思考を整理できます。また可視化すると問題に対する理解が深まるため、より効果的な思考が行えるでしょう。可視化した分析結果は周囲に共有しやすくなるため、スピーディーな問題解決にもつながります。
7.問題解決を学べる本
問題解決能力を向上させるには関連書籍を読むことも効果的です。問題解決能力の向上に役立つ書籍を紹介します。
- 問題解決プロフェッショナル
- 入門 考える技術・書く技術
- 問題解決:あらゆる課題を突破する ビジネスパーソン必須の仕事
①『問題解決プロフェッショナル』
ゼロベース思考や仮説思考、MECEやロジックツリーなど、具体的な問題解決手法が多数紹介されています。問題解決の方法や手順について、初歩的な内容から実践的な内容までを幅広く学びたい方にオススメの書籍です。
参考 新版 問題解決プロフェッショナル―思考と技術Amazon②『入門 考える技術・書く技術』
日本語に関連する問題を解決するために書かれた実践的なガイドブックです。主語の欠如や複雑な接続詞の問題など、日本語特有の課題に焦点を当てています。
また本書ではさまざまな疑問点に対して適切なフレームワークやアプローチを提供しており、読者はそれを実践しながら論理的思考の訓練を行えるのです。これらのフレームワークやアプローチは、ビジネス分野における問題の解決にも応用できます。
参考 入門 考える技術・書く技術――日本人のロジカルシンキング実践法Amazon③『問題解決:あらゆる課題を突破する ビジネスパーソン必須の仕事』
ビジネスシーンにおいて、思考と実行の技術を向上させるための本です。そのため本書では問題解決に取り組む際の思考プロセスと、問題解決のための7つのステップがまとめられ、スキルを身につける実践的なアプローチや方法が提案されています。
これから問題解決に着手するビジネスパーソンにオススメです。
参考 問題解決――あらゆる課題を突破する ビジネスパーソン必須の仕事術Amazon