MOOCs(MOOC)とは、オンラインで誰でも受講できる無料講座のことです。ここではMOOCsの仕組みやビジネスモデル、MOOCsを導入するおもな大学などについて解説します。
目次
1.MOOCsとは?
MOOCsとは、インターネット環境を通じて世界中の講座に参加できる学習環境、あるいはその講座のこと。MOOC(ムーク)は以下4単語の頭文字を取ったものです。複数形でMOOCsと呼ばれることもあります。
- Massive:大規模
- Open:公開
- Online:オンライン
- Course:コース
もともと2008年頃のアメリカからはじまった仕組みで現在、大学レベルの高度な知識を幅広く学べる取り組みとして、世界中の大学や企業が活用しています。
2.MOOCsの効果
MOOCsの効果は3つです。
- 無料で利用可能
- どこでも受講可能
- 対面のような人材育成を再現
①無料で利用可能
MOOCsは原則、ほとんどの講座を無料で受講できます。パソコンとインターネット環境さえ用意できれば、年齢や性別、学歴を問わず学べるのです。なかには受講中に日本語字幕を表示させる海外講座もあります。
学費や金銭的な都合で学びの機会を諦める必要がありません。教育の可能性を大きく広げる仕組みとして注目を集めています。
②どこでも受講可能
受講環境が整っていれば、全国どこからでも講義を受けられます。従来の学習スタイルでは教育機関の所在地に移動しなければならなかったため、どうしても空間的な制約が生じていました。
しかしMOOCsでは時間や場所を選ばないため「通学する時間がない」「近くに通える学校がない」という地域格差の問題解決にもつながると期待されています。
③対面のような人材育成を再現
大規模公開オンライン講座そのものは以前からその必要が叫ばれており、情報通信技術の進歩にともなって近年、爆発的な広がりを見せています。
「学習効果は対面講義におよばないのでは」という指摘もありましたが、リアルタイムでの講義配信、掲示板でのディスカッションなどさまざまな機能を活用して、対面と遜色ない人材育成を実現しています。
3.MOOCsの仕組みとビジネスモデル
生涯教育の醸成や、専門性が高く進歩の速い分野のキャッチアップが期待されているMOOCsは、どのような仕組みで行われているのでしょう。ここではMOOCsの仕組みとビジネスモデルについて説明します。
MOOCsの仕組み
MOOCsの多くは、大学をはじめとする各種教育機関が映像配信用のWebサイトを利用して講義の動画を公開します。1講義の時間は10分程度、一般的に週に5回から10回のペースで配信されるのです。
各動画の最後に理解度を確認するための小テストを行います。1カ月コースの場合はこれを4回繰り返し、最後に総合課題のレポートを提出するのです。
MOOCsのビジネスモデル
利用者は無料で受講できる点が大きなメリットでしょう。しかし提供する側は収益を生み出せないと撤退を余儀なくされます。MOOCsの多くは大学やベンチャーキャピタルなどからの出資を受けて設立されているのです。
また無料講座とは別に有料講座を提供したり、修了証明書の手数料やオンラインコミュニティの利用料などで収益を上げたりしています。
4.MOOCsのメリット
MOOCsのメリットは下記の3つです。
- 効率良く人材育成が可能
- 講義内容がハイレベル
- キャリアアップがストレスフリー
①効率良く人材育成が可能
MOOCsには費用や時間、場所の確保にかかるコストが発生しないため、最新情報や知識を効率的に、かつスピーディに得られます。AIやIoTなどのデジタル技術は日々目まぐるしいスピードで進化しているもの。
従来の講義システムでは講師や場所を確保したり、参加者の都合を合わせたりする必要があり、激変するスピードについていけない部分もありました。しかしMOOCsではこの問題を解決して変化にすばやく対応できる人材を育成できるのです。
②講義内容がハイレベル
MOOCsが持つ魅力のひとつに、世界的な著名大学や総務省などが提供するハイレベルな講義を受講できる点にあります。
またITの専門知識や資格取得のノウハウ、語学力向上を目指すコースなど、ビジネスでも活用できる専門性の高い講義が公開されているのです。各提供サービスによって強みが異なるため、選定の際は「何を学びたいのか」を明確にしておくとよいでしょう。
③キャリアアップがストレスフリー
MOOCsのなかには修了証が企業から評価されてキャリアアップにつながったというものもあります。非英語圏の受講者が英語でMOOCsを受講し、その修了証を採用面接時にアピールしたところ、グローバル企業に転職したという事例です。
また学習会に参加して情報交換したり、意見交換したりしているうちに苦手意識が無理なく克服できたというケースもあります。
5.MOOCsのデメリット
MOOCsには効率のよい人材育成の実現やハイレベルな講義が受けられるというメリットがある一方、いくつかのデメリットも存在します。
- 見極め方で効果が変わる
- 英語の講座が多い
- 消極的な参加者が多い
①見極め方で効果が変わる
MOOCsは万能ではありません。対面でのワークショップやロールプレイング、フィールドワークなど、オンライン環境だけで得られない学びは多くあります。
また講義内容のスキルセットと見極めも不可欠です。どのような人材を求めているのか、どのような人材を育成したいのかを明確にしたうえで講義を組み立てないと、期待する効果を得られません。
②英語の講座が多い
MOOCsの多くは英語を使った講座です。一定レベル以上の語学力がないと、講義内容を正しく理解できません。
とくにハーバードやオックスフォードなど海外の有名大学が配信する講座を理解するには、高度な英語力が必要です。しかしオンラインの利点を生かし「聞き取れなかった部分は動画を止めて調べる」「過去の動画を見直して理解を深める」などの対策も可能です。
③消極的な参加者が多い
モチベーションに関するデメリットもあります。大学や専門学校などの教育機関と違って授業料を支払っていないため「お金を払った以上途中で抜け出せない」という制約がありません。これがモチベーションの低下につながりやすいのです。
しかし今後の技術進歩によってVRを取り入れた緊張感や、他者からの刺激を感じるモチベーションアップなども期待されています。
6.MOOCsを導入する主な大学
国内外でさまざまな大学が実際にMOOCsを導入しています。ここでは各大学の取り組みについて説明します。
ハーバード
アメリカ最古の大学のひとつ、ハーバード大学はMIT(マサチューセッツ工科大学)との共同出資により「edX」というMOOCプラットフォームを立ち上げました。同システムでは物理や数学、ライフサイエンスや金融など幅広い分野の知識を深められます。
申込みが非常にかんたんなことも、学びのきっかけを増やした要因のひとつです。
京都大学
京都大学は2013年に日本ではじめてMOOCのプラットフォーム「edX」に加盟した大学です。
「KyotoUx」という名称の講義では、スーパーグローバル創生支援の「京都大学ジャパンゲートウェイ」や、教育コンテンツ活用推進委員会と連携して約800の講義を実施。講義内容はすべて英語で、修了条件を満たした受講生に修了証も発行しています。
東洋大学
東洋大学ではMOOCsを使って反転型の教育を行っています。学生は授業を受ける前に配信された動画で予習し、小テストを受けるのです。その後予習での理解に対するフォローアップを受け、ディスカッションを行います。
さらに2021年の秋学期からはGoogle MeetとSlackを活用したオンライン授業を追加。MOOCsにリアルタイムのコミュニケーションをくわえ、授業の質を高めています。
東京大学
東京大学では全19コースの講義を提供しています(2022年4月時点)。使用言語は英語が中心ですが、日本語で学べるMOOCも配信しています。
「インタラクティブ・ティーチング」は学生や大学教員だけでなく、企業の教育担当者や初中等教育の教員など「教えること」に携わるすべての人に向けたコンテンツです。「インタラクティブ」な学びを促す教育のあり方について学べます。
7.日本のJMOOCsとは?
2013年、MOOCの日本版として誕生したのが、JMOOC(Japan Massive Open Online Courses:日本オープンオンライン教育推進協議)。日本語で講義が行われるため、日本人が参加しやすいシステムになっています。
日本の利用者数は少ない
設立時点では13の大学から賛同を集めて準備が進められたJMOOCsですが、日本でのMOOCはなじみが薄く、9割近くの教育機関がMOOCを利用していないとわかっています。
CSR活動評価の上位300位に実施した調査でも、回答を得られた74社のうちMOOCを認知しているのはわずか4社。まだまだ日本のMOOCに対する認知度は低い状況です。
8.おすすめのMOOCsサービス10選
MOOCsのプラットフォームは世界中に拡大しています。そのなかでもおすすめのMOOCsサービスについて説明しましょう。
- Coursera
- edX
- Udacity
- gacco
- JMOOC
- Schoo
- Codecademy
- Future Learn
- Google Primer
- MOOEC
①Coursera(コーセラ)
スタンフォード大学やプリンストン大学、東京大学など世界最高基準の大学が講義を提供しているプラットフォームです。講義のほとんどは英語で行われますが、字幕を表示して日本語でも学べます。
②edX(エデックス)
ハーバード大学やマサチューセッツ工科大学、カルフォルニア大学バークレー校や京都大学なども参加。「Estimated 6 weeks(3-5 hours per week)」のように具体的な講座期間が書かれているため、学習のスケジュールをあらかじめ立てやすいです。
③Udacity(ユダシティ)
コンピュータサイエンスの分野に特化したMOOCsのプラットフォームです。上級者向けのコースでは世界最前線のIT企業で働く社員が講師を務め、より実践的で専門性の高い授業を展開しています。
④gacco
日本オープンオンライン教育推進協議会(JMOOC)の公認を受けて開設された、日本最大級のオンライン動画学習サービスです。パソコンやスマートフォン、タブレットなどから日本語で行われているオンライン講座を受講できます。
⑤JMOOC
学びを深めたいすべての人に無料で講座を共有しています(一部オプションを除く)。10代から80代まで幅広い年齢層が受講しており、修了証の取得まで無料で受講可能です。
⑥Schoo
ビジネスパーソンに向けた国内発のMOOCsです。本プラットフォームでは階層別、職種別にさまざまな研修カリキュラムを用意。ビジネススキルやITスキル、働き方や自己啓発など幅広い領域を網羅しています。
⑦Codecademy
プログラミング学習に特化したMOOCsプラットフォームです。HTMLやJavaScript、CSSなどの主言語が学べます。日本語にも一部対応しており、ブラウザだけでプログラミングをはじめられるのもポイントです。
⑧Future Learn
ソーシャルラーニング、つまり学習者同士の学び合いを重視しています。ディスカッションやクイズ、テストなどさまざまなプログラムを通して担当者や受講者とのコミュニケーションを楽しめるサービスです。
⑨Google Primer
Googleが提供しているアプリケーションです。日本語での対応は行っていませんが、オフラインでもコンテンツを視聴できます。ビジネスやデジタルマーケティングの分野について、スキマ時間に学習したい人におすすめのサービスです。
⑩MOOEC
英語学習に特化しているオーストラリア発のプラットフォームです。サービスはすべて英語ですが、中学基礎からやり直したい初級クラスから、ビジネスや留学に生かしたい上級まで幅広い需要にこたえています。