モラールサーベイとは? メリット、実施方法、活用事例など

モラールサーベイとは? メリット・効果、実施方法、活用事例

モラールサーベイとは、従業員の意識調査のことです。ここでは、モラールサーベイについてさまざまなポイントから解説します。

1.モラールサーベイとは?

モラールサーベイとは従業員の「意識」や「モチベーション」について把握・分析するための調査のことです。従業員満足度(意識)調査などとも呼ばれます。

「モラール(Moral)」には「士気」「やる気」「意気込み」といった意味があります。

モラールサーベイを実施することで、

  • 従業員の集まりの士気を調査
  • 調査結果を心理学、統計学などの科学的手法を用いての分析
  • 職場が抱える問題点や現状の把握

が可能となります。

従業員が10人以上ならモラールサーベイを実施

従業員が10人以上ならモラールサーベイといった仕組みの導入を検討するとよいでしょう。なぜなら、事業規模が大きくなればなるほど、社内コミュニケーションが十分に機能しなくなるからです。

従業員の士気を迅速かつ適正に把握し経営に活かしていくためには、モラールサーベイといった調査の仕組みを導入することが現実的です。

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2.モラールサーベイのメリット・効果

モラールサーベイのメリットを簡単に解説します。

人事の判断材料になる

モラールサーベイの1つ目のメリットは、人事の判断材料になることです。

モラールサーベイの結果を分析すれば、

  • 人事的課題の洗い出し
  • 問題の発生原因や対処法

などが明確になります。

そして、

  • 社内の適材適所
  • 離職率の改善
  • 効果的な人材の採用

といったさまざまな人事の判断材料に活用できます。

組織の課題を可視化できる

モラールサーベイの2つ目のメリットは、組織の課題を可視化できることです。モラールサーベイでは、さまざまな視点から調査が行われます。また、その結果から、組織が抱える問題点が定量的に示されます。

目に見えにくかった組織の人間関係などの課題も、モラールサーベイを導入することで簡単に可視化することができます。

他社と比べることができる

モラールサーベイの3つ目のメリットは、他社と比べることができることです。モラールサーベイは、さまざまな機関で実施されています。それらの調査結果と比較すれば、自社の状況を客観的に把握することも可能です。

また、目標の進捗度なども適切に把握できるなど、モラルサーベイは応用範囲が広いということもメリットのひとつです。

従業員に経営参加意識を育む

モラールサーベイの4つ目のメリットは、従業員に経営参加意識を育むことができることです。従業員の立場からすれば、モラールサーベイは自分の業務や会社そのものに対する考えを会社が聞いてくれる絶好の機会になります。

会社の経営に自分の意見が採用、反映されると思うことで、従業員の経営参加意識も育てることができます。

チーム全体の生産性が向上する

モラールサーベイの5つ目のメリットは、チーム全体の生産性が向上することです。通常、従業員は職場で大なり小なり問題を抱えています。

モラールサーベイを実施すれば、従業員の抱える問題や困難を解消するきっかけを作ることができます。

問題が解消すれば、

  • 個人の生産性
  • チームの生産性

の向上が期待できます。

離職率が低下する

モラールサーベイの6つ目のメリットは、離職率が低下することです。従業員の離職は、会社にとって大きな損害です。離職率をいかに低く抑えるかは、企業のリスク管理のひとつとなっています。

モラールサーベイを実施すれば、従業員の本音をヒアリングすることができます。離職する本当の理由を探り解決すれば、離職率は低下します。

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3.モラールサーベイの実施方式

モラールサーベイには、2つの実施方式があります。

ここでは、

  • 厚生労働省方式
  • NRK方式

について解説します。

厚生労働省方式

厚生労働省方式とは、社員の不平・不満を解消するための中小規模の事業者向けの手法です。

一般社団法人日本労務研究会が1957年に考案したもので、「厚生労働省方式 社員意識調査(NRCS)」とも呼ばれています。

厚生労働省方式は、

  • 仕事
  • 給料
  • 上司

という3分野に関して従業員にアンケートを実施し、「会社の現状」を25,000社以上の企業診断によって得たデータベースをもとにした標準値と比較、分析します。

NRK方式

NRK方式とは、従業員300人以上の大企業を対象としたモラールサーベイの実施手法です。厚生労働省方式と同様に一般社団法人日本労務研究会が開発しました。マークシートを使って従業員に簡単な質問に回答してもらいます。

回答結果は、

  • 労働条件
  • 人間関係
  • 管理
  • 行動
  • 自我

のポイントから分析します。

分析にあたっては約6,100社にもおよぶ診断実績のデータベースを活用することで、比較診断ができるようになっています。

NRK方式の質問項目例

NRK方式の質問項目には以下のようなものがあります。

  • 仕事の負担
  • 職場の設備
  • 給与
  • 福利厚生
  • 同僚との関係
  • 上司との関係
  • 幹部との関係
  • 上司の行う管理
  • 幹部の行う管理
  • 意思の疎通
  • 上司の行動
  • 個人の行動
  • 育成と心身への配慮
  • 地位の安定
  • 地位についての満足
  • 昇進向上の機会
  • 会社との一体感

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4.モラールサーベイ実施の流れ

モラールサーベイを実施する際に抑えておきたい流れがあります。ここでは、5ステップに分けて実施の流れを解説します。

実施体制を整える

モラールサーベイを実施する際の最初のステップは、実施体制を整えることです。

実施体制は、

  • コストを抑えるために自社で実施する
  • 質の高い分析や評価を求めて外部へ委託する

このどちらかを選択します。

外部委託先としては、

  • 一般社団法人日本労務研究会
  • 社労士事務所
  • コンサルティング会社

などがあります。

事前に従業員に伝えておく

モラールサーベイを実施する際の二番目のステップは、事前に従業員に伝えておくことです。

モラールサーベイを適正に実施するためには従業員に、

  • 実施する意義を理解してもらう
  • 質問に本音で答えてもらう

ことが重要になります。

モラールサーベイを実施する前に、従業員に対し、モラールサーベイの実施意義・従業員側のメリットへの理解を得ておきます。

調査を行う

モラールサーベイを実施する際の三番目のステップは、調査を行うことです。モラールサーベイの実施方法を決定し、従業員への説明が終わったら、モラールサーベイを実施します。その際、従業員の回答に対する匿名性の保持に注意を払います。

回答に対するアクセス権限者を決め、担当者だけが閲覧可能な状態にするなど、厳格な管理体制を構築します。

調査結果を分析する

モラールサーベイを実施する際の四番目のステップは、調査結果を分析することです。

分析は、

  • モラールが高い項目と低い項目を整理する
  • 職種、役職、勤続年数などの属性ごとにモラールを分析する
  • 自由記述の欄を設けた場合、記載された内容を確認する
  • 調査に関する標準値と比較する

といった切り口から行います。

調査結果を従業員にフィードバックする

モラールサーベイを実施する際の五番目のステップは、調査結果を従業員にフィードバックすることです。モラールサーベイを実施して分析まで終了したら、速やかに結果を従業員にフィードバックします。

フィードバックする内容としては、分析結果をそのまま伝えるのではなく、分析結果をもとにして導き出した方針を伝えます。

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5.モラールサーベイを実施する際の注意点

モラールサーベイを実施する際の注意点があります。ここでは、5つの注意点をあげてそれぞれのポイントを簡単に解説します。

匿名性を守る

モラールサーベイを実施する際の1つ目の注意点は、匿名性を守ることです。従業員の本音を引き出すためには、匿名性は不可欠です。

誰がどのような回答をしたのかがわからないように、

  • 匿名で調査を行う
  • アンケート回収時や保管時の管理を徹底する
    など、従業員が安心して本音を申告することができる環境を整えます。

何を目的にするか明確にし共有する

モラールサーベイを実施する際の2つ目の注意点は、何を目的にするか明確にして共有することです。従業員自身がモラールサーベイの重要性を理解していなければ、調査は失敗に終わります。

従業員に対して、

  • モラールサーベイの目的
  • 従業員にもメリットがあること
    をしっかりと説明して理解してもらうことが必要です。

ビジネス的な口調を避ける

モラールサーベイを実施する際の3つ目の注意点は、ビジネス的な口調を避けることです。ビジネス的な口調で質問項目を作成すると、従業員が身構えてしまい、本音を回答しづらくなります。

モラールサーベイの目的は、

  • 従業員の本音を聞き出す
  • 問題解決に役立てる
    ことです。
    そのため、ビジネス的な口調を避け、親しみやすい口調で調査を行います。

不満を受け止める覚悟を持つ

モラールサーベイを実施する際の4つ目の注意点は、不満を受け止める覚悟を持つことです。モラールサーベイでは、従業員の本音がリアルに把握できます。

回答の中には、上司が目を背けたくなるような不満が書かれているかもしれません。しかし、それら不満や批判を受け止め、改善していく覚悟がモラールサーベイには求められます。

社員の声すべてにリアクションする

モラールサーベイを実施する際の5つ目の注意点は、社員の声すべてにリアクションすることです。モラールサーベイによって従業員の本音がわかったら、個々に対して丁寧に対応する必要があります。

  • 本音を回答したのに無視された
  • 言っても何も変わらない

といった不満が起こらないようにするため、社員の声すべてにリアクションします。

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6.モラールサーベイの活用事例

モラールサーベイの活用事例として、3つの企業の事例をご紹介します。自社におけるモラールサーベイの導入の参考にしてください。

株式会社富士ゼロックス

モラールサーベイの1つ目の活用事例は、株式会社富士ゼロックスです。モラールサーベイは、1978年から実施されており、

  • 経営方針策定
  • 組織の課題解決

に役立てられています。

調査分析結果は従業員に対してもフィードバックされ、

  • 経営層と現場との対話
  • 職場内の議論

が活発になることで様々な問題の自発的解決も進んでいます。

株式会社日立ソリューションズ

モラールサーベイの2つ目の活用事例は、株式会社日立ソリューションズです。

  • 頻度は、半年に一度
  • 対象は、課長以下の社員
  • 形式は、従業員満足度アンケート

といった形で実施しています。

従業員には、

  • 結果
  • 問題点
  • 改善策

などをフィードバックすることで浸透し、全社的な取り組みが実現しています。

イオンフィナンシャルサービス株式会社

モラールサーベイの3つ目の活用事例は、イオンフィナンシャルサービス株式会社です。働く環境の向上を目的として、モラールサーベイを毎年実施しています。

  • 奇数年度は、イオングループ共通のサーベイにより自社の位置付け、強み弱みの確認
  • 偶数年度は、独自のサーベイにより課題項目に関する原因の深掘り

を行っています。