マイナンバー管理システムでは、マイナンバー管理で行う「取得」「利用・提供」「保管・破棄」にかかる一連の業務をシステム上で行えます。法令遵守が求められる管理行為であるからこそ、厳重な体制を整えることが必要です。
今回はマイナンバー管理システムについて、機能・できることや導入のメリット・デメリット、システムの選び方や導入の注意点などを詳しくご紹介します。
目次
1.マイナンバー管理システムとは?
マイナンバー管理システムとは、従業員のマイナンバーの収集・保管・利用・破棄までをクラウド上で一括管理できるシステムです。
マイナンバーは重大な個人情報であり、企業は厳重な体制のもと保管しなければなりません。システムを利用することで紛失リスクの低下や管理コストの軽減、法令遵守のもとでの管理を可能とします。
マイナンバー管理とは?
マイナンバー管理とは、マイナンバー法にもとづき、従業員のマイナンバーを適切に管理・利用すること。
マイナンバーは、その利用範囲が明確に定められており、安全管理措置のもと厳重な管理が求められています。というのも、マイナンバーは特定個人情報であり、法律によって厳しく規制されている情報であるからです。
2016年から運用開始したマイナンバー制度に伴い、企業では従業員の社会保険や税金に関する手続きでマイナンバーを利用することがあります。これらの手続きは企業が必ず行わなければならず、そのために従業員のマイナンバーを控えておくことが必要です。
万が一マイナンバーが漏洩してしまった際は、法律違反として罰則が科せられます。企業の社会的信用の低下にもつながるため、法令遵守のもと徹底して管理しなければなりません。
マイナンバーの管理方法とは? やるべきこと・注意点を解説
企業と従業員間の手続きには、マイナンバーを使用するものがあります。特定個人情報であるマイナンバーは、厳重な体制のもと企業で管理しなければならないものです。
今回はマイナンバーの管理方法について、4つの...
2.マイナンバー管理システムの機能・できること
マイナンバー管理システムによって、搭載されている機能やできることはさまざまです。ここでは代表的な基本機能・できることをマイナンバー管理で行う「取得」「利用・提供」「保管・破棄」の3つから詳しくみていきます。
マイナンバーの取得
マイナンバーの取得に関しては、主に以下のような機能で効率的かつ安全な取得を可能とします。
- スマホ撮影による取得
- 利用目的の通知
- ワンタイムパスワードなどによる収集
- 一括収集
- 収集状況の確認
スマホ撮影による取得
スマホでマイナンバーカードを撮影し、アップロードしてもらうことで写真登録することが可能です。そのため、従業員からマイナンバーカードを回収し、コピーする手間が省けます。
また、システム上で従業員にマイナンバーを入力してもらう方法もあります。やり取りや取得作業が簡略化され、迅速な取得が可能となり、管理担当者の取得負担が軽減されるでしょう。
利用目的の通知
マイナンバーを収集する際は対象者に利用目的の通知が必要であり、以下いずれかの方法で通知する必要があります。
- 社内LANにおける通知
- 自社のホームページ等への掲載による公表
- 書面の提示による明示
マイナンバー管理システムによる通知は社内LANにおける通知となるため、適切な方法での通知が可能です。収集時に利用通知もできるため、通知漏れも防げます。
ワンタイムパスワードなどによる収集
ワンタイムパスワードは、一度しか使用できないパスワードで、パスワードが漏洩しても使用されるリスクを大幅に低減でき、セキュリティを強化するために用いられます。
マイナンバー管理システムなら、ID・パスワード方式やワンタイムURL式など収集方式を選ぶこともできます。従業員の扶養家族や取引先、株主など、各方面からマイナンバーを収集することも多いでしょう。
たとえば、一度きりの取引先に対してはワンタイムURL方式を利用するなど、相手に応じて収集方式が選択できます。重要な個人情報だからこそ、パスワードなどが設定できることで相手も安心してマイナンバーを送れるようになります。
一括収集
マイナンバーの収集対象となるのは、従業員だけではありません。たとえば、扶養家族のいる従業員が入社した場合、社会保険の手続きには扶養家族分のマイナンバーも必要です。システムなら一括収集機能で収集の手間を削減でき、収集漏れも防げます。
収集状況の確認
管理画面ではマイナンバーの収集状況が確認できます。未提出の人や依頼状況、取得状況を一元管理・見える化できるため、収集漏れ防止に有効です。
マイナンバーの利用・提供
マイナンバーの利用・提供関しては、主に以下のような機能で効率的な利用・提供を可能とします。
- 参照履歴の自動記録
- 利用履歴の自動保存
- 書類へのマイナンバーの記載
- 利用者権限の設定
- CSV出力・ほかシステムとの連携
参照履歴の自動記録
届出書の作成時に利用目的や参照履歴が自動記録されます。参照履歴を管理する手間が省け、記録の抜け漏れも防げるでしょう。
利用履歴の自動保存
システム上で「いつ」「誰が」「どの端末で」「何をしたか」といった利用履歴が自動保存され、マイナンバーが何に使われたのか、どう修正されたのかなどを検索・確認できます。
漏洩や不正利用などのトラブルがあった際に履歴をさかのぼれ、悪質な行為の制御にも有効です。
書類へのマイナンバー記載
マイナンバーの記載が必要な書類にマイナンバーが自動で記載されます。従業員情報とマイナンバーを紐づけて管理できるため、書類の対象者のマイナンバーの記入ミスも防げます。
利用権限の設定
システムの利用者ごとに権限を設定できます。取り扱い許可のある担当者のみアクセス可能となり、不正利用の防止に有効です。
さらに、アクセスには利用者IDやパスワード、ワンタイムパスワードの認証などが必要であるため、外部からの不正アクセスやなりすましも防げます。
CSV出力/他システムとの連携
マイナンバーをCSVファイルに出力することも可能です。ほかシステムとも連携でき、マイナンバーが必要な作業にスムーズに利用できます。
たとえば、マイナンバー管理システムで出力したCSVファイルを活用して、スムーズに源泉徴収表を作成することも可能です。
マイナンバーの保管・破棄
以下のような機能により、適切かつ安全なマイナンバーの保管・破棄が可能となります。
- 安全な管理体制の構築
- アラート機能
安全な管理体制の構築
マイナンバーは厳重な体制のもと、適切な保管が必要です。マイナンバー管理システムなら、クラウド上のサーバーで安全にマイナンバーを保管できます。さらに、従業員情報とマイナンバーを紐づけて管理できるため、登録間違いの防止にも有効です。
アラート機能
マイナンバーは従業員の退職などで破棄が必要になった時は、データが残らないよう適切に破棄しなければなりません。保管期限の過ぎたデータや破棄すべきマイナンバー情報を通知するアラート機能により、適切な破棄を可能とします。
3.マイナンバー管理システムのメリット
マイナンバー管理システムの利用は、以下のようにさまざまなメリットがあります。
取得から破棄まで一括管理できる
マイナンバーの収集から破棄までシステム上で一括対応でき、マイナンバー管理の効率化と安全性が向上します。
アナログでの管理ですと、収集時に一人ひとりと直接やり取りしなければならなかったり、必要な時に情報を探すのに時間がかかったりするだけでなく、最悪のケースでは情報を紛失してしまうなど重大なトラブルが起こる可能性もあります。
情報漏洩や不正利用のリスクが抑えられる
システムには暗号化や閲覧・利用制限がかけられるなど、セキュリティ体制も万全です。アナログでの管理ではデータの持ち出しも容易になってしまい、一部が紛失していても気づかない可能性もあるでしょう。
マイナンバー管理システムは大手金融機関でも使用されているような厳重なセキュリティ体制を構築しているものがほとんどであるため、安全に保管できます。
法改正にも迅速に対応できる
マイナンバー自体がまだ導入されて月日が浅く、マイナンバー管理においても完全に制度が構築されているわけではありません。活用方法も今後さらに拡大することが見込まれており、法律が改正される可能性もあるでしょう。
法改正に伴い、管理方法も見直しや新たな対応が必要となった場合でも、システムならアップデートによって法改正にも即時に対応でき、つねに法に則った適切な管理を可能とします。
事務業務が効率化できる
源泉徴収票など、マイナンバーの記入が必要な書類や届は多くあります。
給与管理システムや労務管理システムなどのほかシステムと連携できるマイナンバー管理システムであれば、書類や帳票に情報が自動反映でき、事務業務の効率化や記入ミスなどのヒューマンエラーの防止につながります。
4.マイナンバー管理システムのデメリット
一方で、マイナンバー管理システムには以下のようなデメリットもあります。
コストがかかる
システムの導入には、初期費用とランニングコストが発生します。ランニングコストは一般的に従業員数が多くなるほど高くなる傾向にあるため、うまく活用できない、ニーズにマッチしないシステムを導入してしまうと無駄な出費になってしまうでしょう。
導入・利用にコストはかかるものの、うまく活用できれば人件費の削減や作業効率のアップにつながり、結果的には高いコストパフォーマンスを発揮してくれます。
導入に失敗しないためにも、マイナンバー管理システムの導入目的や必要な機能を明確にし、慎重に導入することがポイントです。
少なからずセキュリティ面のリスクがある
システムのセキュリティ体制は厳重なため基本的には安全ですが、不正アクセスやウイルスなどによる情報漏洩の危険性は0ではありません。万が一マイナンバーが漏えいしてしまうと罰則を受けてしまうだけでなく、企業の社会的信用が低下するリスクもあります。
そのため、導入するシステムのセキュリティ対策はしっかりとチェックすることが大切です。
運用に慣れるまでに時間がかかる恐れがある
導入したては操作や使い方に慣れず、スムーズに運用できない可能性にも考慮する必要があります。また、高性能であるものの、システムが使いにくいことでなかなか運用に慣れないといったリスクもあるでしょう。
こうしたケースは、実際に運用する人が導入前にどういったシステムかを確認できないことも原因となり得るため、マイナンバー管理システムを導入する際は、勝手に導入しない、システムの使いやすさに考慮することが大切です。
また、導入後は運用担当者を明確にしたうえで、担当者を中心にマニュアルを整備するなどして社内で活用しやすい体制を整えましょう。
5.マイナンバー管理システムの種類と特徴
マイナンバー管理システムは、主に2種類のタイプがあります。それぞれの特徴を詳しくみていきましょう。
マイナンバー管理特化型のシステム
マイナンバーの管理機能に特化したシステムは、マイナンバーは他の人事労務情報とは別でしっかり管理したいという場合におすすめです。
マイナンバーの取得から破棄まで豊富な機能がそろっており、システムによっては必要な機能をカスタマイズして、段階的に導入できます。自社の状況に合わせて拡張できれば、従業員の運用負担の手間も削減しやすいでしょう。
また、導入するシステムにはマイナンバーの管理機能しかないため、すでに利用している給与管理システムなどとの連携性を確認しておくと安心です。現在利用している給与管理システムなどと同じシリーズであれば連携性に問題はなく、API連携していない場合でもCSV連携が可能な場合もあります。
マイナンバー管理機能が組み込まれているシステム
労務管理システムなどにマイナンバー管理機能が組み込まれているシステムです。システムによっては労務管理全般の機能を備えており、必要な機能だけをカスタマイズできるものもあります。
マイナンバー管理を含め、バックオフィス全体の業務効率化を図りたい場合にはマイナンバー管理機能が組み込まれているタイプのシステムがおすすめです。
なお、マイナンバーは重要な個人情報であるため、担当者以外は閲覧できない状態になっていることが多いでしょう。労務管理など他機能と一体型のシステムの場合、マイナンバー管理の担当者や権限範囲を明確にしておく必要があります。
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6.マイナンバー管理システムの選び方・比較ポイント
マイナンバー管理システムにはさまざまな種類があるものの、そのなかから自社に合ったシステムを導入することがポイントです。マイナンバー管理システムを選定・比較する際は、以下ポイントをチェックしてみましょう。
- システムの種類・機能
- 導入・ランニングコスト
- 対応規模
- 既存システムとの連携性
- セキュリティ性
- サポート体制
- 管理画面の見やすさ・使いやすさ
①システムの種類・機能
マイナンバー管理システムの種類は、特化型と他機能との一体型の主に2種類があります。他の労務管理はすでにシステムを導入しており、マイナンバー管理だけを行いたい場合には特化型がおすすめです。一方、バックオフィス全体の効率化を図りたい場合には、マイナンバー管理機能が組み込まれた労務管理システムなどが適しています。
マイナンバー管理に関する機能もシステムによって多少の違いがあるため、事前に導入の目的を明確にし、課題やニーズに対応した機能があるかを確認しましょう。
②導入・ランニングコスト
システムは初期費用と月額料金がかかり、月額料金は一般的に機能数や利用ユーザー数、管理するマイナンバー数によって異なります。
コストをかけて多機能なシステムを導入したが使わない機能がほとんどだったなど、コストパフォーマンスが悪くなってしまうケースもあります。
思いもよらない予算オーバーを避けるためにも、事前にある程度の予算を決め、予算に見合ったシステムを導入することがおすすめです。そのためにも自社のニーズや課題を明確にし、かつコストに見合ったシステムを選定しましょう。
③対応規模
コスト面に関連し、従業員数に応じて導入するシステムを選ぶこともポイントです。システムによっては登録できるマイナンバー数に上限が設けられている場合もあり、なかでも中小企業向けのシステムは登録数に上限が設けられているケースが多くみられます。
従業員の家族や取引先などのマイナンバーを登録することもあるため、従業員数以上の登録数になることを想定し、システムの対応規模もチェックしましょう。
④既存システムとの連携性
マイナンバー管理に特化したシステムを導入する場合、既存の労務管理システムなどと連携できるかもチェックすることがポイントです。
労務ではさまざまな書類や手続きでマイナンバーが必要となるため、マイナンバー管理システムと連携できれば、労務業務の効率がアップします。
⑤セキュリティ性
基本的にシステムには強固なセキュリティが施されていますが、システム上でデータを扱う以上、情報漏洩やデータ改ざんなどのリスクは0ではありません。データの暗号化や2段階認証、操作履歴の保存、ウイルス対策などのセキュリティ機能が十分に備わっているかを確認しましょう。
⑥サポート体制
初めてのシステム導入では、運用・管理上でわからないことも多いでしょう。マイナンバーは重要度の高い個人情報であるため、適切なシステム運用と管理が必要です。
ベンダーからサポートは受けられるのか、どういった方法でサポートが受けられるのかもチェックしましょう。システムによっては導入後のアフターサポートが充実していたりと、サポート体制はさまざまです。
⑦管理画面の見やすさ・使いやすさ
管理画面の見やすさや操作性も重要なポイントです。機能が多いあまり管理画面が見にくく操作性が悪い、どの機能がどこにあるか直感的にわからないなど、見にくい・使いにくいシステムではかえって業務効率を悪化させてしまいます。
画面設計がシンプルで見やすいか、直感的に操作できるかなど、見やすさや使いやすさにも着目することがポイントです。実際にマイナンバー管理を行う担当者の意見も取り入れ、運用しやすいシステムを導入しましょう。
7.マイナンバー管理システム導入時の注意点
マイナンバー管理システムの導入時は、以下のポイントに注意しましょう。
6つの安全管理措置を満たした上で導入する
マイナンバーは漏洩や毀損などを防ぐために十分な安全対策を講じたうえで管理することが求められており、以下6つの安全管理措置を講じる必要があります。
- 基本方針の策定:企業がマイナンバーを取り扱う基本方針を作成し、従業員に徹底周知する
- 取扱規程等の策定:マイナンバーの取得から破棄までの適切な取扱方法や担当者・責任者の明確化
- 組織的安全管理措置:担当者や責任者の役割の明確化、取り扱う特定個人情報の範囲やトラブル発生時の報告連絡体制などの整備
- 人的安全管理措置:担当者の適切な監督と教育
- 物理的安全管理措置:マイナンバーを取り扱う端末やシステムでのデータの保管方法や破棄方法の明確化
- 技術的安全管理措置:マイナンバーを扱うシステムでのアクセス制御などセキュリティ対策
ただマイナンバー管理を導入するだけでは、安全管理措置に考慮した管理ができているとはいえません。まずは基本方針や取扱規程等の策定からスタートし、しっかりと安全管理措置を確立しましょう。
厳重な管理体制を整える
マイナンバーは特定個人情報に値する重要度の高い個人情報であり、マイナンバー管理は法律によって定められている行為です。万が一情報漏洩した場合には、マイナンバー管理の担当者だけでなく、管理者や企業にも罰則が科される可能性があります。
過失による漏洩は罰則の対象とならないものの、不正利用などによって故意に漏洩した場合は3年以下の懲役または150万円以下の罰金、その両方が科せられます。
また、担当者が正当な理由なくマイナンバーを外部に提供した場合には、4年以下の懲役または200万以下の罰金、その両方が科せられるケースもあります。
マイナンバー管理を担当者に任せっぱなしにするのではなく、企業側も一体となって厳重な管理体制を整えたもとでシステムを導入することが必要です。