内々定とは?【内定との違いを簡単に】取り消しのケース

内々定とは採用予定通知のことです。ここでは内定との違いや内々定を取り消す場合の注意点、承諾書や通知書などについて解説します。

1.内々定とは?

内々定(採用内内定)とは、企業担当者が求職者に対して正式な採用内定日よりも早くに採用が決まった旨を伝えること。「10月に内定を出します」という非公式の通知、企業からの口約束とイメージするとわかりやすいでしょう。

内々定はあくまでも事実上の行為で、求職者の確保に過ぎません。そのためこの段階で法的な労働契約は成立していないのです。

内々定に際して書面を交わすケースもあります。しかし一般的には、口頭あるいはメールなどで伝達されるのです。

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2.内々定と内定の違いは?

企業が応募者に採用の意思を示しているという意味では内定も内々定も同じです。内定と内々定の違いは、互いに合意した労働契約が成立しているかどうか。原則、内々定は労働契約が成立していない関係であるため、そこに法的拘束力はありません。

内定に比べると企業、求職者とも比較的自由に内々定を取り消せます。事実、過去には内々定通知書をもらった学生が内々定を取り消され、裁判にのぞむも労働契約の成立が認められなかったという事例もあるのです。

内定とは

労働契約書を交わす正式な労働契約のこと。企業は応募者に「採用通知」を発行し、応募者が企業に「入社承諾書」を提出して相互の意思を確認します。そのうえで労働契約が成立することを内定、正しくは「始期付解約権留保付労働契約」と呼ぶのです。

内定を承諾し、労働契約が成立してはじめて企業は学生に対する法的拘束力を持ちます。

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3.内々定を企業が取り消す理由

内々定を出したからといって、必ずしも採用になるわけではありません。正当な理由があれば、企業は一度提示した内々定を取り消せるのです。ここでは企業が内々定を取り消す5つの理由についてそれぞれ説明します。

  1. 卒業できない
  2. 重要な経歴の詐称
  3. 素行不良や違法行為
  4. 健康上の理由
  5. 企業の経営上やむを得ない場合

①卒業できない

内々定を出した学生に多いのが、学校の単位が足りず卒業できないというケース。

企業は入社日確実に入社できることを条件に内々定を通知します。しかし単位不足や卒論未完成などによって卒業できず、結果として内々定が取り消されるという事例が後を絶ちません。

②重要な経歴の詐称

応募者に業務上必要な経歴の詐称があった場合、企業は内々定を取り消せます。取り消しができるとはいえ、採用業務には多大なコストと時間がかかるもの。企業担当者はあらかじめ応募書類をよくチェックして、内々定を未然に防ぐよう努めましょう。

③素行不良や違法行為

応募者の犯罪行為や迷惑行為、素行不良や違法行為も当然内々定取り消しの理由として認められます。近年、不道徳な行為がSNS上で発覚する事例も増加。協調性に乏しい、企業の評判を下げかねないと判断されれば、内々定は当然取り消されます。

④健康上の理由

「採用予定者が入社に影響が出るほどの重い病気にかかってしまった」「業務に就けないほどの大けがを負ってしまった」場合も内々定が取り消されます。健康状態は入社後の成果にもかかわるため、決して無関係ではありません。

⑤企業の経営上やむを得ない場合

自然災害の発生や企業の業績不振など、経営上やむを得ない事情で内々定を取り消す場合もあります。最近では新型コロナウイルスの感染拡大によって経営業績が悪化し、既存社員確保のために内々定を取り消したケースもありました。

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4.内々定を取り消すとどうなる?

前述のとおり内々定の時点では労働契約が成立していないため、原則、法律や契約の制限を受けず内々定を取り消せます。

だからといってかんたんに内々定の提示、また内々定の取り消しができるかといえば決してそうではありません。場合によってはその内々定取り消しによって法的責任が生じるのです。

ここでは内々定取り消しの流れや文書交付、損害賠償義務について説明します。

内々定取り消しの流れ

内々定の取り消しは以下の流れで進めるのが一般的です。

  1. あらかじめ内々定取り消しの事由を定めておく:提示義務はない。しかし事前の明示によって内々定取り消し事由の発生を抑制できる
  2. 内々定通知書の交付、内々定承諾書の取得:正式な採用内定通知書と誤解されないよう注意
  3. 内々定取り消し事由が発覚
  4. 内々定取り消し通知書の交付:取り消しの事由を十分に説明、謝罪する。トラブル回避のため示談書を取り交わすことも
  5. 和解、示談により解決、内々定取り消しが決定

内々定取り消し文書の交付

内々定取り消し通知書を交付する場合は、以下の点に注意する必要があります。

  • できるだけ早く通知する:応募者は内々定を受けて他社の採用活動を控えている可能性がある。内定式直前の内々定取り消しは損害賠償責任が生じることも
  • 内々定取り消しの事由を説明し、誠意をもって謝罪する:十分な説明がない、また謝罪に誠意が感じられないなどの場合、トラブルに発展する可能性がある
  • 必要に応じて示談書を取り交わす:解決金を支払って取り消しの他言を防ぐことも

内々定取り消し通知書の内容

自社事情でやむを得ず内々定を取り消し、示談にする場合は以下を記載した「内々定取り消し通知書」を作成します。

  • 内々定を出した日付
  • 内々定取り消しの経緯とお詫び
  • 示談の申し出、示談書記入のお願い
  • 本書に関する自社の問い合わせ先

損害賠償義務を負う場合

内々定の通知および内々定取り消しは慎重に行いましょう。内々定取り消しがあまりにも恣意的な行為であった場合、企業に損害賠償義務が課せられる場合もあります。たしかに内々定の取り消し自体に法律や契約の制限はありません。

しかし取り消しの理由を十分に説明しなかったり、終始不誠実な対応をしていたりすると労働契約締結過程の信義則に違反した不法行為とみなされ、損害賠償を命じられる可能性があるのです。

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5.内々定通知書を発行する必要はある?

内々定はあくまでも事実上の行為で、労働契約を成立させるものではないため内々定通知書を発行する義務はありません。しかし内々定通知書を交付すれば、会社として正式に採用する意向があると応募者に伝えられます。

また応募者に「内々定の通知を書面でほしい」「賃金や労働時間などの労働条件を早めに教えてほしい」というニーズがあるのも事実です。内々定通知書を発行しなくても、勤務条件については早い時期に明示しておいたほうがよいでしょう。

内々定通知書発行の注意点

内々定通知書を発行する際は、正式な内定時に交付する「内定通知書」と誤解されないよう注意します。また他社での就職活動を阻んだり、他社の内定を辞退するよう要求したりするのはできません。

内々定通知書に「この後正式な内定が予定されている」や「内定者には改めて正式な採用内定通知書を交付し、そこで具体的な労働条件を通知する」などを記載しておくと、内定通知書と誤解されにくくなります。

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6.内々定承諾書に法的拘束力はあるのか?

内々定はあくまでも正式な内定を出せない時期に人材を確保する目的で、企業が勝手に出しているものにすぎません。そのため内々定および内々定承諾書に法的拘束力はないのです。

内々定承諾書を受け取ったあとに応募者からの辞退があっても、企業はそれを拒否できません。

企業側の注意点

内々定で労働契約は成立しないものの、状況によって労働契約の成立とみなされるケースもあります。

たとえば代表者名義で内々定通知書を交付し、他社の内定を辞退させたり他社への就職活動を阻害する行為があったりした場合、たとえ内々定でも会社に労働契約締結の確定的意思表示があると認められるのです。

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7.内々定を取り消す際の注意点

企業がやむを得ず内々定を取り消す場合、以下の3点に注意する必要があります。

  1. 安易に内々定の取り消しをしない
  2. リスクについて検討する
  3. 専門家に事前に相談する

①安易に内々定の取り消しをしない

まずは安易に内々定取り消しをしないようにしましょう。内々定の取り消しには「客観的に合理的と認められ、社会通念上相当として是認できる理由」が必要です。

ケースによるものの、安易な内々定取り消しは合理的と認められないばかりか、損害賠償責任が生じる可能性もあります。

労働条件の相違や労働意欲に対する疑問などを、すぐに内々定取り消しの理由とするのは危険です。労働者保護の観点から調整や歩み寄りを重ね、前向きに採用を検討しましょう。

②リスクについて検討する

内々定の取り消しにはさまざまなリスクがあることも、あらかじめ認識しておきましょう。たとえば会社の見込みが甘く、結果として業績悪化を理由とした内定直前の内々定取り消しになってしまった場合、損害賠償義務を負うリスクがあります。

また内々定の取り消しによって感情的になった応募者がSNSで情報を拡散し、風評被害を受ける可能性も高いです。この場合、拡散された内容に事実があれば名誉棄損に問えません。

③専門家に事前に相談する

労働者保護の観点から、内々定取り消しには厳しい法的規制があります。万が一判断を誤った場合、事後的に未払賃金請求の訴訟を起こされたり、慰謝料の支払いを課せられたりとさまざまなリスクを負ってしまいます。

リスクを回避して早期に適切な対応をとるためにも、あらかじめ弁護士といった専門家に相談しておくとよいでしょう。