ネガティブフィードバックとは?【意味・伝え方をわかりやすく】

ネガティブフィードバックとは、修正するべき点を指摘して改善を促すフィードバックのこと。ここではネガティブフィードバックのメリットや実施する際の注意点などについて解説します。

1.ネガティブフィードバックとは?

ネガティブフィードバックとは、相手の行動の問題点を指摘し、改善を促すフィードバック手法のこと。

もともとネガティブフィードバックには「相手の意欲や能力を引き下げるフィードバック」という意味があります。しかし現在のビジネスシーンでは、「相手にとって耳の痛いフィードバック」つまり「ダメ出し」の意味で使われるのが一般的です。

問題点を厳しく指摘するネガティブフィードバックは、マイナスなコミュニケーションだと考えられがちでしょう。しかし部下の行動に的確な評価をくだすことは、有効なサポートになりえるのです。

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ネガティブフィードバックの例

具体的なネガティブフィードバックの例をふたつ紹介します。

  1. 昨日提出された資料には数字が不明瞭な部分があった。引用元を明確にして具体的な数字をわかりやすく示して欲しい
  2. 今日のプレゼンは質問に明確に答えられていなかった。次回は想定される質問にはわかりやすい答えを準備しておくといった改善をして欲しい

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2.ネガティブフィードバックとポジティブフィードバックの違い

ポジティブフィードバックとは、相手の行動のなかでよかった点を見つけて評価するフィードバック手法のこと。かんたんに言えば「褒めて伸ばす」手法です。

たとえ目標が達成できなかったとしても褒めるべき点を見つけ、肯定的な言葉を選んでフィードバックします。

アドバイスのスタンス

ネガティブフィードバックとポジティブフィードバックは、アドバイスのスタンスが異なります。

  • ポジティブフィードバック:相手の行動のよい点に焦点を当て、肯定的な言葉を選んでアドバイスし、さらなる成長を促す
  • ネガティブフィードバック:相手の行動の問題点に焦点を当て、事実を指摘して改善を促していく手法

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3.ネガティブフィードバックの目的

ネガティブフィードバックの目的は、マイナス面を指摘して気づきや成長を促すこと。日本人は相手の欠点をはっきり言わない気質があるので、効果的に伝えるのは難しいかもしれません。

しかしネガティブフィードバックを活用すると、部下の目標達成や成長を促進できます。ここでは企業がネガティブフィードバックを活用する目的について説明しましょう。

  1. 部下の目標達成
  2. 部下の成長促進
  3. 改善している状態を生み出し提供

①部下の目標達成

ネガティブフィードバックで課題や改善点を伝えて、部下やチーム、組織の目標を達成することが目的のひとつです。

ネガティブフィードバックで部下に目標と現実のギャップや、不足している要素を明確に伝えると、部下は現状を正しく認識できるようになります。目標達成への道筋が明確になり、スキルアップやアクションの見直しなどへ取り組みやすくなるのです。

各部下がそれぞれの目標を達成すれば、チームや組織全体の目標達成につながります。

②部下の成長促進

部下の成長を促すのも、ネガティブフィードバックの目的のひとつ。自分では気づかない課題や問題点を明確に伝えると、部下自身が現状を自覚して主体的に努力するきっかけになるからです。

ポジティブフィードバックだけを行った場合、部下が「自分はこのままでよい」と満足してしまい、成長が滞る可能性もあります。ネガティブフィードバックをとおして適度な課題や試練を与えると、部下が成長するきっかけをつくれるのです。

③改善している状態を生み出し提供

ネガティブフィードバックには「組織の各メンバーがつねに改善を意識している状態」にする目的もあります。ネガティブフィードバックを定期的に行うと、課題や改善点を意識しながらPDCAを回せるからです。

ネガティブフィードバックを活用しながらPDCAを回し続けると、「常によりよい状態を目指す」という意識や行動が組織に定着しやすくなります。

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4.ネガティブフィードバックを実施するメリット

ネガティブフィードバックを実施すると、従業員だけではなく企業にもメリットが生じます。ここではネガティブフィードバックの実施で企業が得られるメリットをふたつご紹介しましょう。

  1. 従業員エンゲージメントの向上
  2. 企業全体の目標達成

①従業員エンゲージメントの向上

積極的にネガティブフィードバックを行うと、成長の機会を得られた従業員のエンゲージメントが向上する場合もあります。

従業員エンゲージメントとは、従業員が自発的に「この企業に貢献したい」と考える度合いのこと。ネガティブフィードバックを積極的に活用すると、従業員が「的確な課題を示してくれるよい企業」だと感じ、自社への信頼や愛着などが高まる可能性もあるのです。

②企業全体の目標達成

ネガティブフィードバックを活用すると、自社の目標達成を促す効果が期待できます。ネガティブフィードバックの目的は、従業員の目標達成や成長の促進だからです。

適切にネガティブフィードバックを行うと、各従業員における業務の効率や質が改善され、生産性の向上につながります。その結果企業全体の目標を達成しやすくなるのです。

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5.ネガティブフィードバックの上手な伝え方

ネガティブフィードバックは、評価を受ける相手にとっては耳の痛い内容です。伝え方によっては、相手が反発したり、相手のやる気を低下させたりする可能性もあります。失敗を避けるために、ネガティブフィードバック上手に伝える方法を知っておきましょう。

  1. 具体的な指摘
  2. 構築された信頼関係
  3. 早急なフィードバック
  4. サンドイッチ型

①具体的な指摘

ネガティブフィードバックは、事実をできるだけ具体的に指摘しましょう。

「全体的によくない」などの抽象的なフィードバックでは問題点が明確に伝わらず、部下の意欲を低下させる可能性があります。「どこが悪いのか」「どのように改善すればよいのか」を、相手が納得できるようデータを交えながらわかりやすく伝えましょう。

②構築された信頼関係

ネガティブフィードバックを行うには、信頼関係を構築しておく必要があります。部下にとって厳しい指摘を行わなければならないからです。

信頼関係のない上司から厳しい指摘を受けると、部下は「自分を否定された」「頭ごなしに叱られた」と感じてしまい、フィードバックを素直に受け入れなかったり、やる気を失ったりする恐れもあります。

③早急なフィードバック

ネガティブフィードバックは、スピード感をもって行うことが大切です。「鉄は熱いうちに打て」という言葉のとおり、行動した直後や結果が出た直後に指摘されると、記憶が鮮明なうちに問題点を自己分析できるからです。

また行動直後にフィードバックすれば、その分早期に改善できます。すぐにほかの業務へ活かせるようになるため、成長のスピードも早まるでしょう。

フィードバックの型を使うフィードバックの手法には代表的な3つの型があります。型を活用すると部下のモチベーション低下を抑制でき、ネガティブフィードバックの効果を高められるのです。3つの型についてそれぞれの概要やメリット、効果的な使い方を説明します。

サンドイッチ型

サンドイッチ型のフィードバックは、ポジティブな評価の間にネガティブな指摘をはさんで相手に伝える方法です。そのためネガティブな印象を和らげる効果があります。

メリットは、下記のとおりです。

  • 厳しい指摘を伝えやすい
  • ネガティブな指摘を受けた際のモチベーションの低下を軽減できる

辛辣(しんらつ)な内容のフィードバックを行う場合や、厳しい指摘をされることに慣れていない新入社員や若手社員へのフィードバックに適しています。最後にもう一度改善してほしい点を伝えると効果的です。

SBI型

相手の行動を「状況(Situation)」「振る舞い(Behavior)」「影響(Impact)」の順に説明して、感想を伝える方法のこと。メリットと効果的な使い方は次のようになっています。

メリットは、下記のとおりです。

  • 問題点とそれに伴う影響が明確で、フィードバックの内容が理解しやすい

修正して欲しい行動をフィードバックするときに適しています。部下の性格によっては、「批判された」「否定された」と受け取る場合があるので、サンドイッチ型との併用や励ましの文脈で伝えると効果的です。

ペンドルトン型

1対1での起承転結を意識した対話で行う方法のこと。具体的には以下の内容を対話します。

  • 起:話す内容の共有
  • 承:良かった点や改善点
  • 転:今後の行動計画
  • 結:今後のフィードバックと内容のまとめ

メリットは、下記のとおりです。

  • 自分自身の言葉で語る場面を設けるため、深い内省や主体的な行動計画を引き出せる

プロジェクトで、部下の考えや今度の行動計画を共有しておく際に便利です。

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6.ネガティブフィードバックの注意点

ネガティブフィードバックでは部下の問題点を言及するため、伝え方に細やかな配慮が必要です。ここでは部下にネガティブフィードバックを伝える際の注意点を5つご紹介します。

  1. 主観的な評価
  2. 不適切な内容や言い方
  3. 大勢の前での指摘
  4. 人間関係の悪化
  5. 遅すぎるタイミング

①主観的な評価

ネガティブフィードバックを伝える際に、主観的な評価を含めるのは控えてください。フィードバックとは本来、客観的な事実を評価するものだからです。どうしても主観を伝えたい場合は「私個人の意見ですが」といった一言を添えましょう。

②不適切な内容や言い方

不適切な内容や言い方でネガティブフィードバックを伝えてはいけません。たとえば「相手の人格を否定する」「声を荒げる」などです。

部下のモチベーションを大きく低下させるだけでなく、上司の評価を下げてしまうからです。場合によっては、パワハラだととらえられてしまうかもしれません。

ネガティブフィードバックを伝える際は、「部下の成長と目標達成」という目的を忘れず、一緒に改善策を考える姿勢が重要です。

③大勢の前での指摘

大勢の前で、個人に対してのネガティブフィードバックを行うのは厳禁です。先輩や同僚の前で部下の行動のマイナス面や問題点を伝えてしまうと、部下に恥をかかせるからです。部下へ大きな精神的な苦痛を与えてしまい、離職などにつながる恐れもあります。

個別面談の機会を設けたり、周りに人がいない場面で行ったりするなどの配慮が必要です。

④人間関係の悪化

ネガティブフィードバックを行うと、部下の性格によっては信頼関係や人間関係が悪化する場合もあります。上司とのコミュニケーションを避けるようになり、業務に支障が出てしまうかもしれません。

相手の性格を見極めて、それぞれに合った型を活用したり伝え方を工夫したりしましょう。

⑤遅すぎるタイミング

ネガティブフィードバックを行うタイミングが遅れてしまうと、効果が下がる可能性もあります。部下が「なぜ今さらいうのか」と感じてしまい、フィードバックの内容を素直に受け止められなくなるからです。

ネガティブフィードバックにもっとも適したタイミングは行動直後。できるだけ早くフィードバックできるよう心掛けましょう。

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7.ネガティブフィードバック以外のフィードバック

ネガティブフィードバックやポジティブフィードバックのほかにも、効果的なフィードバックの手法があります。

プロセスフィードバック

行動に焦点をあてたフィードバックの手法です。プロセスフィードバックでは、結果ではなくプロセスを評価の対象にします。行動や業務の進め方を振り返らせて、成長を促す効果があるのです。

ピアフィードバック

同じ階層の従業員同士がお互いの問題点や改善点を話し合う手法です。同僚からの客観的な意見を得るほか、お互いの理解を深めて信頼関係を育てる効果もあります。業務の円滑な進行を目的とするときに有効な方法です。