ニューロロジカルレベルとは、人間の意識レベルを体系化した理論のことです。ここではニューロロジカルレベルを学ぶ方法や統一ワーク、ニューロロジカルレベルを用いたNLPなどについて解説します。
目次
1.ニューロロジカルレベルとは?
ニューロロジカルレベルとは、人間の学習や変化には階層があるという考え方のこと。人間の意識をレベル分けして、コミュニケーションや心理療法におけるアプローチ、ビジネスの分野では個人の自己啓発や人材マネジメントなどに活用します。
「NLP(神経言語プログラミング)」という心理療法のもとになっている理論のひとつです。
提唱者はロバート・ディルツ氏
ニューロロジカルレベルを提唱したのは、アメリカでビジネスコンサルタントをしているロバート・ディルツ氏です。
「NLP(神経言語プログラミング)」の共同開発者でもあり、ビジネスコンサルティングや心理学、コーチングなどの分野における世界的な権威としてその名を知られています。
氏の過去のクライアントには「Apple Computer(アップルコンピュータ)」や「Microsoft(マイクロソフト)」、「IBM」など世界的な大企業が存在しているのです。
2.ニューロロジカルレベルモデルが用いられるNLPとは?
ニューロロジカルレベルは「脳の取扱説明書」とも呼ばれる「NLP(神経言語プログラム)」のもとになっている理論です。
ここでいう「神経」とは、味覚や触覚などの「五感」のこと。五感(神経)と言語がどのような脳のプログラムを構築しているのかを学ぶ研究です。
とりわけビジネスシーンでは「どのようなコミュニケーションによって相手に変化が生まれるのか」をパターン化したツールを指して「NLP」といいます。
Neuro Linguistic Programmingの意味
「NLP」はNeuro Linguistic Programmingの略語です。それぞれの単語には以下の意味が込められています。
- Neuro:神経。とりわけ五感(視覚や聴覚、味覚や嗅覚、触覚)のこと
- Linguistic:言語。思考や行動を体系化するためのツール
- Programming:過去に経験したことをイメージしただけで、かつての感覚が再現される働き
NLPの効果
NLPには具体的にどのような効果があるのでしょう。ここでは「コミュニケーション」「自己コントロール」2つの視点から、NLPの効果について説明します。
他者とのコミュニケーションが円滑になる
NLPの効果としてもっとも大きいのが、コミュニケーションスキルの向上です。NLPによって表情や話し方など自分の考えを伝える手段が改善されるため、どのような相手とも円滑なコミュニケーションを図れます。
NLPでは信頼関係を築く方法や他者の本音を引き出す方法などについて学ぶため、初対面の相手とも短時間で信頼関係を築いたり、多くの人の心を動かせるようになったりするのです。
自分をコントロールできるようになる
私たちが能力を発揮しようとしたとき「いつもどおりやればうまくいく」「もっと落ち着いてやれば成功したのに」と感じるときがあるでしょう。
NLPでは自身の感情や思考をコントロールするためトレーニングします。これによって自ら心の状態をコントロールして、結果の出やすい状態を手に入れられるのです。
NLPを活用できるシーン
NLPはさまざまなシーンで活用できます。ここでは「ビジネス」「子育て」「スポーツ」におけるNLPの活用について説明します。
ビジネス
ビジネスにおいて、NLPは次のように活用できます。
- 社内での影響力を高める:「傾聴」のテクニックによって人の話を意識的に聞き、コミュニケーション能力を高める
- 販売、セールスで成果をあげる:顧客の特性に合わせたアプローチを学び、コミュニケーションの幅を広げる
- 広告やマーケティングの効果を高める:言葉の成り立ちを学術的に学び、顧客層に合わせた広告文を作成できる
子育て
NLPは相手に変化を与えて結果に導くスキルですが、相手を意のままに操る技術ではありません。
子どもが親の言うことを聞かないとき、聞き分けがないからと叱るのではなく「自分のコミュニケーション方法に問題があるのでは」と内省するのが、子育てにおけるNLPです。
スポーツ
「試合中に起きることをイメージして対策を立てる」「大事な場面をイメージしたりメンタルリハーサルしたりしてパフォーマンスや集中力を上げる」といった活動です。
テニスプレイヤーのアンドレ・アガシ選手が、NLPのトレーナーによるコーチングを受けて世界ランク1位にまで上り詰めた話は有名でしょう。
3.6階層に分けて分析されるニューロロジカルレベル
ニューロロジカルレベルでは、人間の意識レベルを6階層(レベル)にわけて分析します。
- 環境
- 行動
- 能力
- 信念や価値観
- 自己認識
- スピリチュアル
①環境
最下層にあたる意識レベルです。
英語でいう「When」や「Where」を指し、場所や状況、人や物など、自分以外の外的な要因を意味します。「どこでやるのか」「誰とやるのか」「いつまでにやるのか」などを意識するレベルです。
②行動
英語の「what」にあたり、「環境」レベルの上にあります。「自分は何をやるのか」「どう説明して周囲を動かすのか」などを確認する段階です。
基本、自身でコントロールできる要素ですが、次の「能力」がなければコントロールしきれないものもあります。
③能力
前述した「行動」を起こすためのスキルのこと。英語の「How」を意識するレベルです。「どうやって」「何を使って」を考えるこの段階は、同じ「行動」をしても他人との違いが現れます。
④信念、価値観
英語の「Why」に該当するレベルのこと。「なぜそれをするのか」「どうしてこれをしてはいけないのか」は、無意識のうちに当人のモチベーションや行動に影響する要素です。当人が大切にしているものや信念、価値観などが表れます。
⑤自己認識
「私は何者なのか」というアイデンティティを指し、英語の「Who」にあたるレベルのこと。「自分はどんな人になりたいのか」「自分の目的や役割は何か」といったように、自己という存在の本質を追求するレベルです。
⑥スピリチュアル
これまでの5段階とは異なる視点から自身の在り方を意識するレベルのこと。「For what(何のため)」「Forwhom(誰のため)」を確認するレベルで、自分の在り方を家族や会社、国や宇宙などさまざまな組織の一部として考えます。
4.ニューロロジカルレベルの統一ワークとは?
レベルを一つひとつ追求して、自分の軸やミッションを明確化するワークのこと。ニューロロジカルレベルの6階層は相互に影響し合うため、あるレベルに変化があると、ほかのレベルにも変化が生じます。
それぞれのレベルに沿った質問をすることで多くの要素が具体的に浮かび上がり、解決策が見つけやすくなるというワークです。
アウトカムを設定する
ニューロロジカルレベルの統一ワークでは、はじめに「アウトカム」つまり目標や目的を設定します。その際、以下の2点を意識することが重要です。
- ビリーフ(思い込み)を改める:「これは無理」「あれはできない」という思い込みがアウトカムから目をそらす要因となる。この思い込みを変えて自身の中にある制限を解除する
- セルフイメージを高める:セルフイメージが低いとアウトカムを抑制してしまう。セルフイメージを高めて望ましい状態=アウトカムを作り出す
質問を投げかける
アウトカムを設定したら、6つの階層ごとに質問を投げかけます。
- 環境:アウトカムに対して現在はどのような環境にいるか、見えるものや聞こえるものは何か
- 行動:アウトカムに対して具体的にどのような行動をしているか、どのような行動をする必要があると考えているか
- 能力:アウトカムに対してどのような能力を持っているか、どのような能力が必要と考えているか
- 信念や価値観:アウトカムに対してどのような信念、価値観を持っているか
- 自己認識:アウトカムに対する役割や使命は何か
- スピリチュアル:組織から見た自身の在り方は何か
5.ニューロロジカルレベルやNLPを学ぶ方法
ニューロロジカルレベルやNLPについて学ぶ方法は、セミナーや研修への参加ならびに書籍やスクールの活用です。
セミナーや研修
日本国内でも注目を集めるようになってきたニューロロジカルレベルやNLP。現在では国内主要都市を中心に、全国各所でセミナーや研修が開催されるようになりました。
NLPそのものの研修もありますが、部下とのコミュニケーション改善や潜在能力の最大化を目的として、ニューロロジカルレベルを活用するセミナーも増えています。
書籍
ニューロロジカルレベルの提唱者であり、NLPの共同開発者でもあるロバート・ディルツ氏の著書からも、ニューロロジカルレベルやNLPを学べます。「NLPコーチング」ではNLPのテクニックやスキルについて、具体的な事例をもとに解説。
またアリストテレスやシャーロック・ホームズなど「天才」と呼ばれた人たちの能力をNLPで解明した「天才達のNLP戦略」では、NLPの基本ともいえる「モデリング」のプロセスを詳細に解明しています。
スクール
スクールの講座を受講したり、認定資格取得を通じたりしてニューロロジカルレベルやNLPを学ぶ方法もあります。
日本NLP協会では「全米NLP協会」「日本NLP協会」の公式資格が取得できるスクールを開催。さらに特定の認定コースを修了するとカナダのSuccess Strategies社認定の「LABプロファイル®プラクティショナー」認定資格が取得できます。
会場での受講はもちろん、自宅からオンラインライブで受講するのも可能です。
6.ニューロロジカル以外にNLPで活用されるモデル
NLPではニューロロジカル以外にもさまざまなモデリングを活用しています。ここではNLPで活用される6つの代表的なモデルについて説明します。
T.O.T.Eモデル
Test(テスト)とOperate(操作)、Test(テスト)とExit(退出)の頭文字を取った、行動の基本構造モデルです。「トライアンドエラー」という言葉があるように、私たちは目標の達成に向けてさまざまな行動を試みます。
ゴールの設定や達成に向けた具体的な行動、進捗の確認やゴールの達成と、一連の行動プロセスを具体的に説明したモデルのことです。
ミルトンモデル
抽象的な表現を体系化したモデルのこと。催眠療法の第一人者ミルトン・エリクソン氏が活用していた言語、非言語パターンをモデル化したもので、相手意識の抵抗をなくし、無意識のうちに影響を与えるスキルを指しています。
目的は言葉をあえて曖昧に使い、聞き手の内的な体験に当てはめて解釈させること。これにより表層意識の抵抗を受けず、潜在意識に働きかけられます。
ハーマンモデル
「脳」の個性を明らかにする科学的ツールのこと。脳の機能を4象限にわけて、個人の能力開発や組織の活性化につなげます。
「脳優勢度調査」とも呼ばれ、調査結果は自己および相互の認識によるコミュニケーションの円滑化、創造的なチームの開発などに活用できるのです。大脳生理学にもとづいたモデルであるため、客観的かつわかりやすくなっています。
GROWモデル
部下の自発的に考える力や行動する力を養う目的で用いられるモデルのこと。以下4つの概念をベースにして、行動を具体化します。
- G(Goal):実現したい目標を明確にする
- R(RealityあるいはResource):目標に対する現在の状況を客観的に把握する
- O(Options):目標達成のための選択肢を洗い出す
- W(Will):やるべきことを自ら選択、決断する
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VAKモデル
五感で感じるものを「V(Visual、視覚)」「A(Auditory、聴覚)」「K(Kinestic(身体感覚)」の3つに分類したモデルのこと。
どの感覚を強く感じるかは人によって異なります。そのためVAKモデルを自分に活用すれば学習効率の向上が、相手に活用すればコミュニケーションの円滑化が期待できるモデルです。
S.C.O.R.E.モデル
「S.C.O.R.E.モデル」は以下5つの頭文字を取ったもので、それぞれの視点から情報を整理して解決方法を見つけ出します。
- S(Symptom):「今の自分の状況はどうか」「周囲の状況はどうなっているか」など現状について考える
- C(Cause):何が理由でそうなったのか、現状の問題とその原因について考える
- O(Outcome):理想や目指す姿などの目標、ゴールを考える
- R(Resource):人材やキャリア、スキルなど目標達成に活用できる資源を整理する
- E(Effect):目標の達成によって起こる影響を考える