OKRとは、目標を設定して管理する方法のひとつで、GoogleやFacebookなどが取り入れている点から注目を集めています。それにより日本の企業も導入し始めているのですが、うまく運用できないケースが多々あるのです。
OKRとは? 【Googleが使う目標管理ツール】KPI・MBOとの違い
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OKRが失敗する6つの原因について、
- いつの間にかMBO化してしまう
- OKRに運用工数をかけるモチベーションがなくなる
- OKRを人事評価に直接連動させてしまう
- モチベーションが上がるObjective設定ができない
- 長期的な施策に対する管理ができない
- Reviewの工数が多く業務の妨げになってしまう
などから詳しく説明します。
目次
①いつの間にかMBO化してしまう
MBOは、設定した目標に対して具体的な数字を入れ、社員の達成度を評価するもの。企業や組織によっても運用の仕方は異なります。
ある企業でMBOのように目標をタスクに分解して網羅的に管理し、100%達成を目指して運用したところ、社員からMBOとの違いが分からないという指摘を受けたのです。
失敗しないための解決方法
OKRとMBOは似たツールですので、何を目的としているのか両者の違いを理解した上で運用しましょう。手堅い目標を堅実に達成するためのタスク管理が目的なら、MBOを運用するほうがベターです。
OKRを運用する際は、達成確率60~70%の非常に高い目標を設定し、目標達成のための大胆な方策が行われているか毎週進捗を追うなど、重要な点だけにフォーカスして運用しましょう。
そもそもOKRは、会社や部門と個人の目線を合わせ、各自、各主体が目標に向かって自己管理するためのツールです。この点を再確認しましょう。
②OKRに運用工数をかけるモチベーションがなくなる
OKRを導入したものの、人事評価と連動したり反映させたりといったことがなかったため、OKRに運用工数をかけるモチベーションがなくなってしまった、という失敗例があります。
人事評価と連動させなかったことで、OKRと評価制度を同時に行う必要が生じ、運用が困難を極めたのです。1on1などでも厳密な評価目標ではないせいで、フィードバックの優先順位が下がってしまいます。
失敗しないための解決方法
OKRには、「チャレンジするカルチャーづくりのツール」という特徴があります。
トップの目標があり、それを達成するためにチームや部門の目標があって、チームの目標を達成するために個人の目標を立てるのです。
すなわち、すべての社員が同じ目標に向かって計画を立てチャレンジすることが重要で、それに関する達成度の採点は必須ではありません。
人事評価をやりやすくすることが目的ならば、OKRにこだわらず、MBOなど現状の評価制度を見直しましょう。人事評価をなくす(ノーレイティング)ことでうまく運用できた例もあります。
③OKRを人事評価に直接連動させてしまう
設定した目標に対する達成率を人事評価と連動させたことで、社員たちは評価が下がるのを恐れ、保守的な目標設定が横行してしまいました。
OKRのメリットである大胆な計画や目標、挑戦の「ムーンショット」を促進できず、結局のところMBOとの違いも分からなくなってしまったのです。この失敗例から、「OKRと人事評価は全く別で運用することが望ましい」と分かります。
失敗しないための解決方法
目標の設定は業務の効率に重要な要素ですが、OKRと人事評価との直接連動は完全にやめましょう。失敗しないポイントは、「評価への反映は部分的に」といった運用に変更することです。
たとえば、社員の業績評価の項目に、「OKRを通してどれだけチャレンジしたか」という指標を入れます。この場合、OKRの達成率が低くても、それ以上に良い評価を付けることが可能です。
OKRの達成と人事評価や昇給、昇格は関わらないため、社員たちは大きな目標を立て、思い切って挑戦できるでしょう。ただし、評価基準が曖昧にならないような工夫が必要です。
④モチベーションが上がるObjective設定ができない
OKRは、目標を100%達成することが目的ではありません。チーム全員で達成したときの高揚感を共有することが重要なのです。
しかし、達成するモチベーションが高まらない状態になってしまったという失敗ケースがあります。
適度な難易度のObjectiveを設定しようとして、経営上の数値目標やMBOなどの数値目標プロジェクトベースのKPIなどをもとにKR(Key Result)を設定し、そこから逆算したObjectiveを設定した結果、そうなってしまいました。
失敗しないための解決方法
OKRは、あくまでもチームや組織のモチベーションを向上させるために運用するツールで、目標達成を計測するツールではありません。
そのためObjectiveは、トップだけではなくて、メンバーまで含めた当事者たちが、心からワクワクできる内容を設定する必要があるのです。
現在追っているKPIや実現可能性から一度離れ、通常では実現できない、想像するとワクワクするような「ムーンショット目標」にするための対話をチーム間で繰り返しましょう。またこれにより、目標のレベル感がすり合わせられます。
⑤長期的な施策に対する管理ができない
3カ月単位でOKRの管理をしたところ、研究開発や新プロジェクトなど達成するまで数カ月、数年とかかるような長期目標の管理・評価ができず、その結果、研究部門のOKR設定ができなかったという例があります。
運用サイクルが長くなると、設定した目標と実際の業務からかい離してしまう場合もあるのです。
失敗しないための解決方法
OKRの目的は、全部門、全社員が同じ目標に向かって計画を立て、自らチャレンジして仕事をやり遂げる仕組みをつくること。そのためOKRでは、1カ月など短い期間に達成できる高い目標を設定します。
その間、メンバーの進捗をチェックし、目標への意識がズレていればすぐに修正します。これによりメンバー全員の意識が間違った方向へ大きく進むことも防げるのです。また、短いスパンでの運用により、調整や変更も柔軟にできるでしょう。
ただし、長期的な運用が適している部門や職種に関しては、長期的な運用方法をカスタマイズして設定するほうが良い場合もあります。
⑥Reviewの工数が多く業務の妨げになってしまう
OKRは高い頻度でのReviewを推奨しています。しかし、4半期ごとのReviewのオペレーション業務に工数がかかりすぎて業務が回らなくなってしまうこともあるのです。
たとえば4半期に2~3回ずつマネージャーが各メンバーと対話したことで、マネージャーの通常業務に支障が生じたという失敗例があります。管理についても、1,000人規模など大企業の場合、現実的かつ効率的な方法の考案が必要となるでしょう。
失敗しないための解決方法
OKRは1カ月から4半期で見直しを行うなど高い頻度でのReviewを推奨しています。しかしOKRの見直しには、失敗例のように数多くの工数そしてマネージャーに大きな負担がかかるのです。
その解決には、OKR設定、Peer Review、Performance Review、Calibration、Feedbackのレビューサイクルをワンストップで行えるシステムの導入がよいでしょう。必要に応じて自社でシステムを作成すれば、工数の減少が可能になり運用もスムーズになります。