オンプレミスとは、ソフトウェアやサーバーなどの情報システムを自社で保有して運用する方法のこと。ここではオンプレミスのメリットとデメリット、オンプレミスと比較されるクラウドなどについて解説します。
目次
1.オンプレミスとは?
オンプレミスとは、サーバーやネットワーク機器などのハードウェア、業務用アプリケーションなどのソフトウェアを使用者の管理する施設内に設置して運用すること。
かつて企業が情報システムを運用するには、施設内にサーバーや回線などの必要環境を整えてシステムを構築していくのが当たり前でした。
2000年代後半になり「クラウドコンピューティング」が浸透してくると、これらのシステムもクラウド上で運用するケースが増えるように。
このような運用の変化にあわせて「自社運用型」と「クラウド型」を区別するため「オンプレミス」という言葉が使われるようになったのです。
2.オンプレミスのメリットとデメリット
「オンプレ」や「自社運用」とも呼ばれるオンプレミスには、いくつかのメリットとデメリットが存在します。
オンプレミスが持つ3つのメリット
オンプレミスのメリットは、大きく分けて次の3つです。いずれもオンプレミスの対義語「クラウド」にはない特徴となります。
- カスタマイズしやすい
- 社内システムと連携しやすい
- セキュリティを自己管理できる
①カスタマイズしやすい
オンプレミスでは自社専用のシステムを1から設計します。自社が必要としている情報システムを独自に創設、開発するため、企業の状況にあわせて柔軟に設計、修正できるのです。
高度の処理能力が求められるシステムや、システムが停止すると致命的な問題が生じる点から高可用性を求める場合、クラウドでの構築が難しいため、オンプレミスの選択が多くなります。
②社内システムと連携しやすい
企業の場合、既存のシステムが導入されているところに新たなサービスが追加導入されるケースもよくあります。たとえば勤怠管理には専用アプリケーションのAを利用しているが、今後新たに給与計算ソフトのBを導入したい、といったケースです。
これらを連携させれば業務効率が上がり、人的ミスも防げるでしょう。クラウドには連携が苦手なものもある一方、オンプレミスの多くは柔軟にシステム連携できます。
③セキュリティを自己管理できる
自社ネットワーク内で運用するオンプレミスは、外部ネットワークの通信状況や他社の影響を受けません。
情報共有、交換セキュリティシステムの万全性は、企業運営におけるどの局面でも重要になるため、あらゆる企業でセキュリティ対策が必要です。「外部に情報が漏えいしない」「外部からのハッキングを受けにくい」点は、オンプレミスの大きな強みでしょう。
オンプレミスが持つ3つのデメリット
オンプレミスにはカスタマイズ性やセキュリティ面でのメリットがある一方、いくつかのデメリットも存在します。
- 初期コストの負担が大きい
- 修理するのに時間を要する
- システム構築までに時間を要する
①初期コストの負担が大きい
自社で構築するオンプレミスにはネットワークやサーバーの構築、システムの開発やカスタマイズなどさまざまなプロセスが発生するため、企業によっては必機器類の調達に数百万単位の初期費用が発生します。
ただし一度導入してしまえば追加コストをかけず運用できるものもあります。クラウドのように月額や年額のシステム利用料金を支払う必要はありません。
②修理するのに時間を要する
オンプレミスでは企業のスタイルに合わせたシステムを構築します。よってメンテナンスや修理が必要になったとき、自社でメンテナンス・修理しなければならないため、時間がかかるのです。
もちろんサーバーの定期的なメンテナンスやアップデート、急な障害が発生した際の復旧対応も基本は自社で行わなければなりません。運用時間やメンテナンススケジュールの調整、資金などにゆとりを持たせておく必要があります。
③システム構築までに時間を要する
サーバーの構築や確認、アプリケーションのインストールや各種検証など、オンプレミスは運用までにさまざまなプロセスが必要となるため、システム構築に時間を要します。大掛かりなカスタマイズが必要な場合、準備に数カ月費やすのも少なくありません。
今日依頼して明日から運用開始、とはいかないのがオンプレミスのデメリットです。オンプレミスのメリットでもある既存システムとの連携も、運用が開始すればスムーズになりますが、システム接続の円滑性を図るのに時間がかかる場合もあります。
3.クラウドとは?
ユーザーがインフラやソフトウェアを持たなくても、インターネットを介して必要なときに必要なだけ使えるIT環境、あるいは形態のこと。クラウドとは、クラウドコンピューティングの略称で、名前の由来には諸説あるのです。
クラウドは文字どおり「雲」を指し、各インフラやサーバーは利用者が全容を意識せず互いに通信し、コンピューティング環境を利用できる点からその名が付けられたともいわれています。
クラウドとは?【意味や種類をわかりやすく解説】メリット
クラウドとは、インターネットを通じてさまざまなサービスを利用する形態のことです。ここではクラウドが生まれた背景やその種類、メリットや活用例などについて、解説します。
1.クラウド(コンピューティング...
オンプレミスとクラウドとの違い
オンプレミスとクラウドの違いは大きく分けて次の6つです。いずれも互いのデメリットを補う特徴を持っています。
- カスタマイズ性
- コスト
- セキュリティ
- 導入にかかる時間
- 障害対応
- 社内システムとの連携
①カスタマイズ性
カスタマイズ性が高いのは、クラウドよりオンプレミス。オンプレミスは自社でシステム構築から設定まで行っているのに対して、クラウドでは提供されているサービスによってカスタマイズできる範囲が限られているためです。
「セキュリティを強化したい」「独自のシステムを導入したい」といった理由から社内環境やルールにあわせて自由に情報システムを構築する際は、クラウドよりもオンプレミスが適しているといえます。
②コスト
コストを抑えたい場合は、オンプレミスよりもクラウドが適しています。クラウドは自社で情報システムを保有せずに運用できるため、サーバー機器やソフトウェアを購入する必要がありません。初期コストを抑えてすぐに運用を開始できます。
ただし基本、クラウドはサーバーの使用量や利用者数によって月額料金が変動するのです。システムの使用量が増えたりリソースが増えたりする可能性がある場合は、オンプレミスへの切り替えも検討するとよいでしょう。
③セキュリティ
セキュリティの高さはオンプレミスをおすすめします。
自社ネットワーク内で運用するオンプレミスは、外部ネットワークの通信状況や他社の影響を受けません。また用途に合わせて、インターネットに接続する回線と社内イントラネットで閉じた回線を別々に用意し、セキュリティを高めるのも可能です。
しかしクラウドの場合も、どのようなセキュリティ対策を講じているか記載した「セキュリティシート」を公開しているケースが多く、セキュリティ技術も年々進歩しています。そのため一概に「クラウドはセキュリティが不安」とはいえません。
④導入にかかる時間
導入にかかる時間はオンプレミスよりもクラウドのほうが圧倒的に早いです。オンプレミスでは機器の選定から調達、構築やテストなど一連の作業を自社で行う必要があるのに対し、クラウドでは登録、設定をするだけですぐ利用を開始できるからです。
オンプレミスの場合、導入を決めてから本運用を開始するまで数カ月かかる場合もあります。しかしラウドはベンダーと契約すればすぐに利用を開始できるのです。すぐに導入したい場合はクラウドがおすすめでしょう。
⑤障害対応
障害対応は重視するポイントによって異なります。クラウドはサービス提供者が障害対応を行うため使用者の負担が少ないのです。
ただし自社で対応できない分、障害の原因を特定するのは難しくなります。復旧までにかかる時間が長く、連携が取りにくい場合もあるでしょう。
その点自社で管理しているオンプレミスは障害の原因が特定しやすく、復旧までにかかる時間がわかりやすいです。ただし自社で解決できない場合、復旧に時間がかかり、業務に影響をおよぼす可能性もあります。
⑥社内システムとの連携
社内システムとの連携を重視するなら、既存システムと同じネットワーク内に新規システムを構築するオンプレミスが有利です。
クラウドによっては外部サービスとの連携は可能であるものの、自社システムとの連携は難しい場合もあります。その点オンプレミスではシステム構築から自社で行うため、連携の自由度が高くなるのです。
しかしこれも近年、変わりつつあります。各社がAPIを提供しているため、ほかシステムとの連携を容易にしているクラウドサービスも増えているのです。
4.オンプレミスとクラウドを選ぶ基準
それぞれ異なる特徴を持ったオンプレミスとクラウド。これらを選ぶ際はどのような基準で選択すればよいのでしょうか。
オンプレミスを選択したほうがいい場合
オンプレミスに適しているのは、とくにセキュリティや自社の独自性を重視するシステム。たとえば既存システムに独自性が強く、今後もその独自性を維持した運用、保守を考えている場合、クラウドでは独自性を保持しきれない可能性があります。
また重要なセキュリティデータを取り扱う場合、オンプレミスの特徴を活用できるでしょう。ただし近年、セキュリティを強化したクラウドサービスも増えています。場合によって一部機能のみクラウド化といった、慎重な検討が必要です。
クラウドを選択したほうがいい場合
クラウドが推奨されるのは、初期コストを抑えたい、かつ手軽に運用したいケースです。
クラウドは自社で機器やサーバーを設置運用する必要がないため、導入コストを少なく抑えられます。また「拡張性の高さ」「スペックの増減をWeb上でかんたんに行える」などもクラウドの強みです。
たとえば「新規事業の立ち上げに初期費用を抑えて運用を開始したい」「システムの構築、運用に必要なリソースが自社内に不足している」などでは、クラウドサービスが適しています。
クラウドからオンプレミスへの回帰とは
日本国内よりも早くクラウドサービスが一般化した海外では、あえてクラウドからオンプレミスに戻る動きが見られます。理由は、以下の課題を解決するためです。
- システムパフォーマンスの安定性確保
- セキュリティの強化
- 総コストを把握した予算管理
クラウドサービスはWeb回線を使用する以上、どうしても通信環境によってパフォーマンスに波が生じます。またクラウドでは導入コストを抑えられる一方、従来課金制やサブスクリプションなど料金体系が複雑なものも多く、予算管理が難しくなるのです。
これらを解決するべく、オンプレミスに回帰する動きが見られるようになりました。
ハイブリッドクラウドとは?
「パブリッククラウド(複数の企業が共有するクラウドサーバー)」と「プライベートクラウド(自社専用のクラウドサーバー)」、そして自社で保有する「オンプレミス」などを組み合わせて使うクラウドのこと。オンプレミスとクラウドのメリットを掛け合わせた第三の形態として注目を集めています。
たとえばプライベートクラウドはセキュリティやカスタマイズに優れていますが、プライベートクラウド単体ですべてをまかなおうとすると膨大な費用が発生します。
そこでパブリッククラウドを組み合わせ、費用負担を軽減するのです。このようにハイブリッドクラウドではそれぞれの特徴を補完しあえます。
5.オンプレミスやサーバーに関するお勧めの本
オンプレミスやサーバーの設置、運用に悩んだ際は、エンジニアや実際にネットワーク教育に携わってきた著者による書籍を参考にするとよいでしょう。
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また各サーバーのソフトウェアを例として挙げているため、サービスイメージが付きやすいのも特徴です。サーバーに関する知識をもう一度学び直したいという人にも適しています。