オンライン研修とは、オンライン上で行われる研修のことです。ここではeラーニングとの違いやメリット、オンライン研修の注意点や役立つツールについて解説します。
目次
1.オンライン研修とは?
オンライン研修とは、インターネット回線を通じて開催される研修の総称です。参加者が同じ場所に集まる必要がないため、遠隔拠点でも受講できます。
eラーニングとの違い
eラーニングとは、インターネット回線を利用した学習のこと。違いは下記のとおりです。
- オンライン研修:アウトプットを中心とした知識の定着が目的
- eラーニング:情報共有と知識習得が目的
2.オンライン研修の種類
一言でオンライン研修といってもさまざまな種類があります。オンライン研修の種類とその特徴について説明しましょう。
録画型
受講者があらかじめ録画された講義を視聴するタイプのこと。「好きな時間に繰り返し何度でも見られる」「反復視聴により内容をより深く理解できる」というメリットがあります。
ただしほかの参加者とコミュニケーションが取れないため、不明点をその場で解決したり他の参加者と交流をはかったりするのは難しいです。
ライブ型
講義を生中継するタイプのこと。その場でチャットツールを使った質問やディスカッションも可能で、疑問点をすぐに解決できたり、有意義な議論の創出につながったりします。
地方拠点や海外にいてもリアルタイムで研修に参加できるものの、「通信環境によって映像の乱れや音飛びが起きやすい」「講師のスケジュールに合わせる必要がある」といったデメリットもあるのです。
3.オンライン研修のメリット
オンライン研修のメリットは、下記の4つです。
- 場所を問わず参加できる
- ムダなコストや時間を削減できる
- 録画型は参加自由で何度も視聴できる
- チャットで質問できる
①場所を問わず参加できる
オンライン研修はインターネット環境とパソコン、スマートフォンなどの通信機器があればどこでも参加できるため、従来のように会社や会議室に出向く必要がありません。たとえ自宅やカフェ、地球の反対側にいても参加が可能です。
②ムダなコストや時間を削減できる
これまでの集合型社内研修では、会場や機器を使用するための費用、会場までの移動費などが発生します。遠方から講師を招く場合、宿泊費や食事代も発生するでしょう。オンライン研修ではこれらにかかるコストを削減可能です。
どこからでも研修に参加できるため、遠隔地にある拠点と本部とのあいだに生まれがちな教育格差もなくせます。
③録画型は参加自由で何度も視聴できる
本社や研修施設で研修を行う場合、開始時間に合わせて移動しなければなりませんでした。そのため、「時間がもったいない」「開始時間に別の予定が入っているため参加できない」という問題があったのです。
しかし録画型のオンライン研修であれば、リアルタイムに参加できなくても、あとから視聴して研修内容を学べます。また従来の研修では、何度も同じ質問をするのは難しかったです。しかし録画型であれば自身が理解するまで繰り返し視聴できます。
④チャットで質問できる
チャットツールを使えば、研修中も質問したりフィードバックを受けたりできます。大勢のなかで挙手して発言することに比べると心理的ハードルも下がるため、より活発なコミュニケーションが期待できるでしょう。
講師への質問をチャットで行い、そのフィードバックをライブで行う、ワーク発表時に一言を書き込んでもらうなどさまざまな使い方ができるのもメリットです。
4.オンライン研修のデメリット
オンライン研修にはメリットがある一方、いくつかのデメリットも存在します。
- 実務研修には不向き
- モチベーションの低下
- グループワークやディスカッションのハードルが高い
- ネット環境で安定性が変わる
①実務研修には不向き
オンライン研修は座学が中心となるため、身体的なスキルを習得する場合や実際に物を見たり触れたりすることでしか伝えられない研修には不向きです。
オンラインで講師のデモンストレーションや映像を見せられるものの、それで受講者のスキルが身につくわけではありません。
言語化できない情報を伝える、また具体的なアドバイスを受けながら繰り返し練習する場合、従来の集合型研修が適しています。
②モチベーションの低下
参加者が一堂に会するため、一体感の醸成やモチベーションアップにつながります。オンライン研修では基本、周囲からの視線を気にせずにすむため、集中力やモチベーションの低下が懸念されるのです。
また研修内容によっては長時間にわたって一人で学習を進める場合もあるでしょう。しかし最後までモチベーションを維持するのは難しく、結果的に修了率が低くなる可能性も高いです。
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③グループワークやディスカッションのハードルが高い
研修の種類によってはグループワークやディスカッションを取り入れたいタイプもあるでしょう。しかしオンライン研修ではそれぞれの参加者が別の場所から参加しているため、気軽に交流するのは難しいもの。
集合研修では休憩時間に参加者同士がちょっとした会話をする機会があります。オンライン研修では参加者同士が個別に話をするのは困難なのです。
④ネット環境で安定性が変わる
オンライン研修ではインターネット回線を活用します。もし「Wi-Fiがつながらない」「画面が映らない」といったトラブルが発生すれば、研修が中断したり進行が遅れたりしてしまうでしょう。
オンライン研修を企画する際は、あらかじめ参加者に十分なネット環境があるかどうか、確認しておくとよいでしょう。
5.オンライン研修のコツ
研修に対して「そもそもこの研修は必要なのか」と疑問を抱く人も少なくありません。それはオンライン研修でも同じです。ここではオンライン研修を有意義な時間にするコツについて説明します。
- アイスブレイクを取り入れる
- ゲームでモチベーションアップ
- グループワークを実施
- 適度な休憩を挟む
①アイスブレイクを取り入れる
オンライン研修の効果は全体の進行に大きく左右されるもの。慌ただしい時間をぬって参加しているメンバーに効果の高い研修を提供するには「アイスブレイク」の活用が効果的です。
アイスブレイクとは、場の緊張をやわらげて参加者の一体感やコミュニケーションを取りやすい雰囲気を作る手法のこと。かんたんなゲームや運動などを取り入れて場の空気をリセットしたり、議論の活性化を促したりします。
②ゲームでモチベーションアップ
オンライン研修にゲームを取り入れるとコミュニケーションが活性化し、参加者のモチベーションを高められます。
チームで戦うようなゲームを取り入れれば、メンバーの能力理解や適材適所の配置、チームビルディングスキルや問題解決能力などを向上できるでしょう。
一見、研修に関係ないと思われるゲームでも参加者の考え方やスキルを知るきっかけとなります。そこから人材育成やアサインメントにつながることもあるでしょう。
③グループワークを実施
研修ではさまざまなグループワークを実施します。各種ITツールを活用すれば、オンライン研修でもグループワークを実施可能です。
ブレインストーミングでは付箋や模造紙の代わりに、Googleドキュメントなど共有して書き込めるツールを、ロールプレイングでは座席のかわりに、Zoomのブレイクアウト機能や部屋を振り分けられるWeb会議ツールを利用します。
④適度な休憩を挟む
長時間のオンライン研修で集中力を継続するのは困難です。パソコンやタブレットなどを長時間眺めていれば当然目や耳、片や腰などに負担もかかるもの。
集中力の持続には適度な休憩が必要です。一般的に、人間の集中力が継続する時間は50分といわれています。オンライン環境ならではの疲労を考慮して、30分から45分に一度のペースで5分程度の休憩を挟むとよいでしょう。
6.Zoomを使った無料オンライン研修のやり方
近年、オンライン研修に「Zoom」を利用する人が増えています。なぜならZoomなら「アカウントなしでも利用可能」「データ通信料が少ない」「研修に便利な機能を搭載している」からです。
Zoomでオンライン研修をする準備
Zoomを使ってオンライン研修をする際、以下の環境を整えましょう。
- 通信環境:データの利用上限や通信制限がかかっていると研修の途中で離脱してしまう可能性も。参加者にはあらかじめ最適な通信環境の目安を伝えるとともに、万が一に備えてホスト側の連絡先を伝えておく
- 通話環境:画質や音質は参加者の集中力に影響する。Bluetooth接続は電波干渉による遅延、不安定になりやすいため優先接続の機器を用意しておくと安心
Zoomでオンライン研修をする方法
Zoomの利用はかんたんです。招待を受け取った人はパソコンだけでなくスマートフォンやタブレットからも研修に参加できます。Zoomを使ったオンライン研修の流れについて説明しましょう。
- Webサイトにアクセス
- Zoomミーティングを選ぶ
- 設定
- 開始
①ホームページにアクセス
はじめにホスト(主催者)がZoomのWebサイトにアクセス右上「サインイン」のリンクから移動して、登録したメールアドレスとパスワードを入力し、サインインのボタンを押します。
アプリの場合も同じです。登録メールアドレスとパスワードを入力してログインします。
②Zoomミーティングを選ぶ
ログイン後、画面左の「マイミーティング」を選択して次の各種設定に進みます。なおZoomには一般的に利用される「ミーティング」と、より大人数へのアプローチが可能な「ウェビナー」があるのです。
ウェビナーを利用するには有料プランに加入する必要があります。しかし「ミーティング」は無料で利用可能です。
③設定
Zoomミーティングを開催する方法は2つです。
- 新規ミーティングを作成して招待URLを発行する方法
- ミーティングのスケジュール設定から招待URLを発行する方法
新規ミーティングを作成した場合、ミーティング終了後に同じURLを使いまわせません。定期的に行われる研修やあらかじめ日程が決まっている場合、スケジュール設定から招待URLを発行する方法がおすすめです。
④開始
必要に応じてパスワードの設定やミーティングオプションなどを設定すれば準備完了。「開始」ボタンあるいは設定したURLをクリックするとミーティングがはじまるのです。
しかしパスコードの未設定による部外者の乱入トラブルも多数報告されています。ルーム作成時はパスコードを設定し、参加者のみが知り得る方法で共有しておくとよいでしょう。
7.オンライン研修の注意点
あらかじめしっかりと準備しておけばオンライン研修でも高い効果を生み出せますが、準備が不十分だと思わぬところでストレスを感じてしまいます。オンライン研修の注意点について説明しましょう。
- システムはかんたん操作を重視
- オンライン研修の服装
- サポート役を配置
- 参加は顔出し優先
- ミュート機能の確認
①システムはかんたん操作を重視
受講者の世代やITスキルによっては、システムに接続することすら難しい場合も。
日常的にパソコンやスマートフォンを利用している受講者ならかんたんに参加できますが、自宅にパソコンがない、普段スマートフォンを使わない受講者はシステム接続に戸惑う可能性が高いです。
オンライン研修を開催する際はより広く認知されているシステムや操作がかんたんなシステムを選ぶとよいでしょう。
②オンライン研修の服装
テレワークの導入にともない、新入社員研修をオンラインで行う企業も増えてきました。オンライン研修は社外から参加できるとはいえ、オフィシャルな場であることに変わりはありません。あまりにもくつろいだスタイルで参加するのは不適切です。
必ずしもスーツを着用する必要はありませんがオンライン研修であっても社会人としてふさわしい服装で参加しましょう。
③サポート役を配置
万が一に備えてオンライン研修システムの操作に慣れた人や、機材トラブルに対応できる人を配置しておくと安心でしょう。トラブル発生時にすぐ対応できるサポート役を配置するだけで、講師も受講者も安心してオンライン研修にのぞめるからです。
またあらかじめ受講者向けに各種ITツールの使い方をレクチャーする、気軽に相談できる窓口を用意するなどして、研修に集中できる体制を整えておきましょう。
④参加は顔出し優先
オンライン研修は音声とチャットのみでも参加できます。しかしより効果の高い研修にするためには「顔出し受講」を原則として、参加者全員の緊張感を高める方法が効果的です。
相手の顔が見えないと臨場感が生まれにくく、受講者側の緊張感も薄れます。部屋の様子を移したくないという受講者には、バーチャル背景を設定する方法を伝えておきましょう。
⑤ミュート機能の確認
ミーティングシステムの多くは「ミュート機能」を搭載しています。これは自分の声が相手に聞こえなくなる機能のこと。オンライン研修の受講者は基本ミュート機能をオンにしておくとよいでしょう。
ただし自分が発言する際はミュートを外す必要があります。「話を聞くときはミュート、発言するときはミュート解除」のルールに慣れておくと安心です。
8.オンライン研修で役立つツール
同じオンライン研修のなかにもさまざまな形式があります。各シーンに応じてツールを使いわけるとよいでしょう。
Web会議システム
インターネット回線を介して相手とビデオ通話ができるシステムです。このシステムには以下3つのタイプがあります。
- オンラインイベントに適しているタイプ:多人数でのやり取りや受講者からの質疑応答、録画機能などに特化しているシステム
- 特定の業務に特化しているタイプ:セキュリティに力を入れたサービスや顧客管理システムとの連携ができるシステム
- 会議や研修、打ち合わせに適しているタイプ:画面共有やチャット機能などを備え、会話形式の会議に適しているシステム
動画配信システム
動画の発信に特化したシステムです。会議に参加していないメンバーに研修内容を把握してもらう、また繰り返し再生によって受講者に知識を定着させるために活用します。システムを活用すれば会員の管理やライブ配信、動画販売などを行うのも可能です。
オンライン研修サービス
テレワークの普及にともない、グループディスカッション機能やチャット機能、録画機能などを搭載した「オンライン研修サービス」への注目が集まっています。
オンライン研修では会社に行かなくても参加できるため、これまでスケジュールの都合で参加できなかった受講者も参加できます。結果として研修の受講率が高まり、より効率的なスキルアップがはかれるでしょう。