オンラインサロンとは、インターネット上で開催される会員制の集まりのこと。新しいコミュニティ形態として注目されているオンラインサロンについて解説します。
目次
1.オンラインサロンとは?
オンラインサロンとは、インターネットサービスを利用して開催される会員制の集まりのこと。サロンはフランス語で「応接間や談話室」という意味を持ち、フランスの上流階級で行われる交流会もサロンと呼ばれます。
オンラインサロンの内容は、参加した人しか閲覧できない動画や講座、あるいは非公開のイベントやプロジェクトなどさまざま。会費が無料のオンラインサロンもありますが、多くのサロンは有料となっており、主催者は集まった会費でサロンを運営します。
2.オンラインサロンが注目される理由
オンラインサロンが注目された理由のひとつは「クローズド」なコミュニティである点。参加者が主催者や内容に興味を持っている人たちだけで構成されているため、自分と考えや価値観、好みなどの近い人たちが集まります。
一方SNSのコミュニティは、基本的にだれでも閲覧できる「オープン」なコミュニティです。オープンなコミュニティでは自分と考えや価値観が相反する人も存在し、ときには批判や否定などを受けるリスクもあります。
そのためこうしたリスクを避けられるクローズドなコミュニティが注目されるようになったのです。
3.オンラインサロンとブログ・メルマガの違い
オンラインサロンとブログ・メルマガの違いは、「双方がリアルタイムでコミュニケーションが取れるかどうか」。ブログやメールマガジンは基本、発信者から閲覧者へ一方的に発信され、両者がその場でやり取りをするのはほとんどありません。
一方オンラインサロンでは、主催者と参加者、あるいは参加者同士が、通話やチャットなどによってその場で会話できます。つまり一般的なセミナーや交流会のような、双方向かつリアルタイムなコミュニケーションが取れるのです。
4.オンラインサロンを運営するメリット
オンラインサロンは共通の価値観を持つ多数の人と交流できるため近年、マーケティングとして集客や人脈づくり、ブランディングなどに活用されています。参加者が増えるほど会費が集まり、安定した利益も期待できるでしょう。
- 定期収入の確保
- アイデアや情報の共有
- 商品の宣伝やブランディング
①定期収入の確保
オンラインサロンの会員者が増えるほど、主催者は高い収入を得られます。会費は月額定額制が一般的で、ひとりあたり数百円から数千円が相場です。ひとりあたり月額1,000円とした場合、1,000人の参加者が集まれば毎月100万円の収入が得られます。
一方運営にかかる費用は、サロンを運営するプラットフォームサービスの手数料や通信費、スタッフへの報酬などです。手数料は売上の2割から3割程度である場合が多いでしょう。
大規模な会場や施設を毎回借りる場合のコストと比較すると、ネット上で開催できるオンラインサロンは運営コストを大きく抑えられるのです。
②アイデアや情報の共有
主催者が提供するコンテンツに興味を持つ人が参加するので、関連情報や意見、アイデアやノウハウなどを集めやすくなります。これは新しいビジネスチャンスにもつながるでしょう。
「参加者の何気ない会話から新事業のヒントを得た」や「主催者の思いつきを参加者とともに練っていき、新プロジェクトを立ち上げた」といったケースも少なくありません。
③商品の宣伝やブランディング
オンラインサロンは、商品やサービスのプロモーションにも活用できます。たとえば自社商品のファンが集まるオンラインサロンで新商品を宣伝する方法です。参加者は顕在顧客であるため、高い成約率が期待できます。
また自社のビジョンや理念、今後の取り組みなどをオンラインサロンで共有すると、共感した人は自社のファンになるでしょう。オンラインサロンは企業のブランディングとしても効果的です。
5.オンラインサロンのデメリット
オンラインサロンは、集客できないと収益につながりません。また閉鎖的かつ双方向なコミュニケーションであるため、会員間のトラブルも懸念されます。デメリットやリスクを踏まえたうえで、取り組むべきかを検討しましょう。
- 継続的なコンテンツの提供
- 人が集まらない
- トラブル
①継続的なコンテンツの提供
会員数を維持または増加させるには、会員にとって魅力のあるコンテンツの継続的な提供が必要です。会員を飽きさせないためには、工夫をこらしたイベントや企画などを定期的に実施する必要があるでしょう。
また会員の期待やニーズを常に把握していなければ、「月額の会費を払ってまで参加したい」と思わせるコンテンツを作れません。質のよいコンテンツを提供するには、それなりの時間と手間がかかるのです。
②人が集まらない
オンラインサロンでもっとも大きな課題は集客です。オンラインサロンの場はプラットフォームサービスで比較的かんたんに用意できるものの、告知や集客は主催者が行わなければなりません。
また告知したとしても、思うように参加者が集まるとは限らないでしょう。SNSやメルマガなどで広く告知し、限定特典やサロン特典などを付与すると集客効果が高まります。
③トラブル
クローズドなコミュニティであるオンラインサロンは、主催者と会員、あるいは会員同士のトラブルが生じやすくなります。たとえばパワハラやセクハラ、金銭トラブルや契約トラブルなどです。
サロン内でこのようなトラブルが生じたとしても、サロンの外部つまり世間には知られるまでに時間がかかります。そのためトラブルが深刻化しやすいのです。
6.オンラインサロンの代表例
オンラインサロンのジャンルはスポーツやファッションなど多岐にわたります。主催者は有名人や大手企業だけでなく、一般人なども少なくありません。ここではオンラインサロンのなかでも、知名度が高いビジネス関連のオンラインサロンを3つ紹介します。
- HIU(堀江貴文イノベーション大学校)
- 西野亮廣エンタメ研究所
- 人生逃げ切りサロン
①HIU(堀江貴文イノベーション大学校)
株式会社ライブドアの元代表取締役である起業家「ホリエモン」こと堀江貴文氏のオンラインサロン。しかし堀江氏が起業ノウハウを伝えるようなオンラインサロンではありません。
会員が「やってみたい」「おもしろい」と思ったテーマを、プロジェクトやイベントで実現するためのサロンなのです。ときには堀江氏からプロジェクトを提案される場合も。起業するためのきっかけ作りに活用する会員も多いです。
②西野亮廣エンタメ研究所
お笑いコンビ「キングコング」の西野亮廣(にしのあきひろ)氏のオンラインサロン。西野氏はオンラインサロンでエンタメ論のほかビジネス論を語る場合も多く、自身が持つビジョンや構想を会員へ共有し、プロジェクトやイベントを立ち上げています。
サロンの会員はプロジェクトやイベントの一員として完了まで参加する、あるいはボランティアで一時的に参加可能です。
③人生逃げ切りサロン
メディアやゲームなどで知られる株式会社サイバーエージェントの元社員で、現在はフリーランスのITエンジニアであるやまもとりゅうけん氏のオンラインサロン。やまもと氏が自身のスキルアップのためにオンラインサロンを開設しました。
このサロンの特徴は、スキルの高い会員がそれぞれ得意なテーマでオンライン講座を行うこと。講座のテーマはITスキルやアフィリエイト、ネット物販などビジネスに直結する内容が多いです。
7.オンラインサロンを活用した企業事例
企業がオンラインサロンを活用する目的の多くは、自社事業の活性化やブランディング強化、ユーザーとのコミュニケーションなど、継続的に得られるメリットです。ここではキリンホールディングスの事例を紹介します。
KIRIN「キリンビールサロン」
飲料メーカーのキリンホールディングスは、ビールの魅力を追及する「KIRIN BEERSALON」を開催。コンセプトは、ビール好きな人たちの思いを共有する場を提供してその輪を広げることと、ビールの新しい楽しみ方を探ることです。
コンテンツは全5回に分かれており、ビールをテーマにした対談や世界の珍しいビールの試飲、ビールづくり体験などが含まれます。発見された新しい楽しみ方が定着していけば、新事業や新市場の開拓などにもつながると期待されているのです。
8.オンラインサロンの始め方
実際にオンラインサロンを始めるには、どのように進めていけばよいのでしょうか。開設までの流れを説明します。
- 目的・テーマの決定
- プラットフォームの決定
- コンテンツの設計
- 運営開始・集客
①目的・テーマの決定
オンラインサロンのテーマとコンセプトを決めましょう。コンセプトとは「意図」や「基本的な考え方」のこと。具体的には以下の項目です。
- 主催者の目的と会員の目的
- 目的(ゴール)までのステップ
- テーマ(分野やジャンル
- ターゲット層
これらの項目が決まると、オンラインサロンの種類も絞られてきます。コンセプトが「会員主体」であれば、「コミュニティ型」や「プロジェクト型」、「主催者主体」であれば「ファンクラブ型」や「講座型」がよいでしょう。
オンラインサロンの種類によって、適したコンテンツやイベントも変わってきます。
②プラットフォームの決定
オンラインサロンを開設するプラットフォームを、どのように用意するか決めます。プラットフォームの作り方は「提供されているプラットフォームサービスを利用する」「SNSのチャットシステムを活用してプラットフォームを自作する」の2つです。
自作する場合、デザインや配信方法などがカスタマイズしやすいといえます。しかし別途で決済システムを作成しなければなりません。スピーディーに開設したい場合、企業が提供するプラットフォームを利用するほうがよいでしょう。
プラットフォームとは? プラットフォームビジネス、企業例
プラットフォームとは、システムやサービスの提供に必要な「土台となる環境」のことです。プラットフォームの種類や事例、メリットを解説します。
1.プラットフォームとは?
プラットフォームとは、システムや...
③コンテンツの設計
オンラインサロンで提供するコンテンツの内容を決めます。コンセプトによるものの、以下のようなコンテンツが挙げられます。
- 会員のみに配信するコラム記事や動画
- 勉強会やワークショップ
- セミナーや講座
- 交流会など会員同士がコミュニケーションを取れるイベント
- 掲示板やQ&A
「参加して楽しむコンテンツ」だけでなく、「見るだけで楽しめるコンテンツ」も用意しましょう。会員の心理的なハードルが下がり、退会防止につながります。
④運営開始・集客
オンラインサロンの多くは開設前から告知しています。運営開始後は本格的に集客します。各種SNSやYouTube、ブログやセミナーなどを活用して宣伝しましょう。
SNSで必須なのは「Instagram」「Twitter」「Facebook」の3つ。オンラインサロンの開設前から、これらのSNSにてある程度フォロワーを得ておくとよいでしょう。
9.オンラインサロンのプラットフォーム
オンラインサロンのプラットフォームは、大手企業だけでも数十社が提供しています。それぞれで審査基準や手数料、サポートなどが異なるため、十分に比較してから決めましょう。ここでは大手企業のプラットフォームを3つ紹介します。
- DMMオンラインサロン
- CAMPFIRE(キャンプファイヤー)コミュニティ
- Salon.jp
①DMMオンラインサロン
オンラインコンテンツ配信サービスやECサイトを運営する「合同会社DMM.com」のプラットフォームです。2021年8月時点でサロン数は1,000以上、有料会員数は10万人以上。堀江貴文氏をはじめとして多数の有名人がオンラインサロンを開設しています。
運営やコミュニケーションに特化した専用コミュニティツールが用意されているのも特徴です。専用コミュニティツールには、以下のような機能が搭載されています。
- 会員の入退会管理を自動化
- 投稿やコメントの権限付与
- ライブ配信アプリやラジオ配信アプリとの連携
②CAMPFIRE(キャンプファイヤー)コミュニティ
クラウドファンディングサービス「CAMPFIRE」を運営する「CAMPFIRE」のプラットフォームです。
CAMPFIREコミュニティでプロジェクトを立ち上げてメンバーを集め、そのままCAMPFIREのクラウドファンディングでプロジェクト資金を集める、といった使い方ができます。
また運営側のデジタルデータを販売するのも可能。会員だけでなく非会員へも販売できるので、こちらも資金調達手段として活用できます。
③Salon.jp
タレントの西野亮廣氏が取締役CCOを務める「CHIMNEYTOWN」のプラットフォームです。会員数は2021年5月時点で約6万人。もちろん西野亮廣氏のオンラインサロンも開設されているのです。
このプラットフォームは西野氏が自作したもので、メンバー検索機能やカード決済機能が搭載されています。会員が支払う利用料金は月額980円または月額2,000円です。
10.オンラインサロンを成功させるポイント
オンラインサロンを開設しても、必ず成功するわけではありません。集客するためには良質なコンテンツを提供し続けて、会員と信頼関係を築く必要があります。
- コンテンツを継続的に提供する
- 会員と交流し信頼関係を築く
- 収益を目的としない
①コンテンツを継続的に提供する
会員にとって魅力的なコンテンツを提供し続ける必要があります。多くの人がひきつけられるコンテンツを提供し続けなければ、既存会員は「つまらない」と感じて退会してしまうでしょう。
またコミュニティに興味を持つ人も少なくなり、新規会員の確保も困難になります。多くの人が関心を持ちやすいテーマを選び、ほかのコミュニティと差別化したコンテンツを提供しましょう。
②会員と交流し信頼関係を築く
会員の維持と向上を達成するためには主催者が積極的に会員とコミュニケーションを取って信頼関係を築く必要があります。
会員にとって価値のあるコンテンツを提供しつづけるのはもちろん、ほかにも「主催者が会員の話に耳を傾ける」や「問い合わせやトラブルなどへ迅速に対応する」などの行動が信頼を高めるでしょう。
③収益を目的としない
たとえば収益を生み出そうとして主催者がコミュニティで商品や情報などを販売するとします。それにより月額料金以外に収益源を作れるでしょう。
しかし会員は「結局ものを売りたいだけなのでは」と不信感を持ってしまいます。収益化も目的のひとつではあるもののあくまでも本来の目的は「自社のファンを集めて新しいビジネスを創造すること」ととらえておきましょう。