オープンブックマネジメント(OBM)とは? メリット・デメリット

オープンブックマネジメントとは、財務情報や経営指標を全従業員に公開する全員参加型の経営手法のこと。

市場競争の激化や経済の変化がスピーディーかつ著しい現代では、これまでの経営スタイルでは対応できなくなってきたことも多いでしょう。オープンブックマネジメントは、そうした変化に対応し、企業が持続的に成長するための手法として注目を集めています。

オープンブックマネジメントについて、メリット・デメリットや導入のポイント、注意点などを詳しく解説しましょう。

1.オープンブックマネジメント(OBM)とは?

オープンブックマネジメント(Open Book Management)とは、財務諸表や業績管理指標を意味する「ブック」を全従業員に公開し、データの読み方を教育して全員参加型の経営を行うマネジメント手法のこと。

オープンブックマネジメントの概念を世に広めたのは、マネジメント・ライターとして活躍するジョン・ケース氏で、略して「OBM」といい、20世紀末に提唱された経営手法です。

日本では2001年に著書『オープンブック・マネジメント~経営数字の共有がプロフェッショナルを育てる』がダイヤモンド社より刊行され、経営手法のひとつとして注目を集めました。

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2.オープンブックマネジメントが注目される理由

オープンブックマネジメントが注目される理由は、主に次の2つです。

  1. トップダウンでは成果が出にくくなってきたため
  2. トップダウンではトップへの不信感や業績不振を招く可能性がある

①トップダウンでは成果が出にくくなってきたため

業績の高い企業は、全員が経営者意識を持っているといった共通点が挙げられます。従業員全体が生産性や利益を意識した経営者目線での経営を実現する手法こそ、オープンブックマネジメントなのです。

しかし、中小企業には財務指標の公開が義務づけられておらず、従業員が会社の財務状況を理解できずにいます。これまでのトップダウンのままでは、コスト意識は上層部だけにとどまってしまうでしょう。

「全員が財務指標への意識を持つと業績アップにつながる」との報告があることからも、オープンブックマネジメントが注目されるようになったのです。

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②トップダウンではトップへの不信感や業績不振を招く可能性がある

トップダウンの場合、従業員からすると業績が不透明です。よって実態を知らないまま「業績が上がらないのは経営者のせい」と決めつけて主体的に動くことにブレーキがかかってしまいます。

また、そうした状況は「一生懸命やっているのだから、自分たちの給料はもっと上がってもいいのではないか」と従業員が上層部に対して不信感を募らせてしまう要因ともなりえるのです。

そこで経営の実態を従業員に共有するオープンブックマネジメントを取り入れたところ、従業員に業績に対する責任感が芽生え、自ら動くと証明されたため注目を集めました。

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3.オープンブックマネジメントのメリット

オープンブックマネジメントを取り入れるメリットは、主に次の3つです。それぞれについて解説しましょう。

  1. 企業と社員の信頼関係が強化される
  2. 社員の財務リテラシーが向上する
  3. 積極性や生産性がアップする

①企業と社員の信頼関係が強化される

自社の財務状況や経営指標など、トップダウンで共有される情報は一般社員からは見えにくいもの。

しかし、そうした情報を公開してこそ社員が経営状況を自分ごとととらえられ、社員一人ひとりが経営に必要な存在であると意識できます。そこで初めて、企業と社員の信頼関係が強化されるのです。

ただし、単に情報を公開するだけでは社員が内容を十分に理解できません。財務データを読み取る知識やスキル、権限共有の体制を整えるなどして、段階的に公開するとよいでしょう。

②社員の財務リテラシーが向上する

利益の上げ方や給与の出どころを理解できるようになるため、社員の財務リテラシーが向上します。

利益について理解できれば、いかに利益を上げるためにコストを削減すればいいか、どのような手法を用いればよいか、について注力できるからです。

また「利益=給与」と認識しているように、売上・利益・給与の区別がついていない人も少なくありません。意外と基本知識が備わっていない場合も多いため、財務状況を公開すると財務リテラシー向上に役立つのです。

③積極性や生産性がアップする

自社の財務状況や経営状況が認識できれば、企業全体で課題解決や経営目標達成に向けて注力できます。

自らが経営にかかわっているという意識づけによって「自分がどのように動けば利益が向上するか」「何を改善すれば課題が解決できるか」と、考えて行動できるため積極性や生産性もアップします。

こうした行動が企業文化として浸透すれば、人材育成や次世代リーダーの育成・発掘にも有効でしょう。

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4.オープンブックマネジメントのデメリット

オープンブックマネジメントを取り入れると、下記のようなデメリットが考えられます。しかし、前提として経営に大きくダメージを与えるほどのデメリットは報告されておらず、安心してオープンブックマネジメントを導入してよいと判断できます。

  1. 情報漏えい
  2. 業績悪化による士気の低下
  3. 社員からの要望が増える可能性

そもそも上場企業は一般に財務情報が公開されているためデメリットになるようなことはなく、その点は中小企業についても同様です。

また、悪化している業績を公開するため「頑張っているのに売上や利益が伸びない……」と社員の士気が低下する可能性も考えられます。しかし悪化を隠さずオープンにしたほうが不信感を減らす要因になるのです。

反対に、経営状況が好調だとその分「給与を上げてほしい」「もっと待遇をよくしてほしい」など多くの要望が寄せられ、収集がつかなくなるかもしれません。

「利益をどこに還元するか」といった方針を正直に話し、透明性を確保したうえで社員からの理解を得られれば、そうした要望が受け入れられない点についても納得してもらえるでしょう。

社員の要望に対しては、利益があがったうえで余力があれば応えていけばよいのです。

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5.オープンブックマネジメント導入のポイント

ここでは、オープンブックマネジメントを導入する際のポイントから、成功させる条件について詳しく解説します。

  1. 徹底した情報公開
  2. ビジネスリテラシーの向上
  3. エンパワーメント
  4. 公平な成功報酬体系

①徹底した情報公開

財務情報や経営指標などを公開すると決めたら、つねに公開する体制をとりましょう。一時的にしか公開されなかったり、隠したりしてしまうと「やましいことがあるのでは」と不信感につながってしまう恐れもあります。

オープンブックマネジメントの考え方を自著で世に広めたジョン・ケース氏も、オープンブックマネジメント導入と成功のポイントは、徹底した情報公開と明言しています。オープンブックマネジメントを導入するのなら、情報は徹底的かつつねに公開したほうがよいでしょう。

②ビジネスリテラシーの向上

社員は、財務情報だけで内容を理解するのは難しいもの。できる限り、財務情報すべてに関する理解を深めるといった全般的なビジネスリテラシーの向上を視野に入れましょう。

たとえば、社員一人ひとりが日々の業務で何が重要なのか、理解できるような形で、財務関連の知識を高めていける研修を行うのもひとつです。

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③エンパワーメント

社員一人ひとりが自社の業績へのコミットメントを高めるためには、現場への権限委譲を進めること、いわゆる「エンパワーメント」が重要です。

ただ上層部から共有された情報と自分たちの権限で閲覧する情報とでは、情報に対する意識が異なるもの。自分の権限で閲覧し、理解した情報こそコミットメントを高めるものです。情報の透明性を確保するためにも、エンパワーメントを意識してください。

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④公平な成功報酬体系

報酬の決め方を公開し、売上から何割が自分の報酬になるのかといった仕組みづくりを整えましょう。報酬の計算方式もすべて公開すれば、社員が自分の売上からどれほどの利益が出ているか、うち報酬に反映されるのはどれくらいかを把握できます。

その結果公平性が保たれるだけでなく、経営知識として役立つほか、社員自身のモチベーションやマネジメント力の向上にもつながるでしょう。

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6.オープンブックマネジメント導入の注意点

あわせて、オープンブックマネジメント導入の注意点についても解説します。

  1. 社員の段階に合わせて情報を開示する
  2. 利益は公平に分配する
  3. 財務データに紐づける

①社員の段階に合わせて情報を開示する

突然の情報公開は、社員の知識不足ゆえに誤解から不信感を招いてしまう恐れもあります。そのため、財務データを読み取る知識やスキル習得のための研修、その理解度を確認する体制を整え、状況に応じて段階的に開示しましょう。

②利益は公平に分配する

財務情報を開示して経営の透明性を確保する場合、利益の公平な分配も求められます。社員それぞれの貢献度に応じた成果報酬の仕組みを整備するほか、チーム全体の成果に応じたボーナスを支給するといった仕組みづくりも重要です。

③財務データに紐づける

経営戦略や指標を共有する際、財務データに紐づけることで社員が自分の役割や責任に対する実感がわきやすくなります。

「どこの部署でどれくらいの売上があり、利益がどれくらいか」といったように細分化した数字を開示し、社員一人ひとりにどれほどの動きが必要なのかを示すことが重要です。

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7.オープンブックマネジメントの理解に役立つ本

ここでは、オープンブックマネジメントをより理解するために役立つ本をご紹介します。

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オープンブックマネジメントを世に紹介したジョン・ケース氏著、佐藤 修氏が翻訳を担当した『オープンブック・マネジメント―経営数字の共有がプロフェッショナルを育てる』です。

オープンブックマネジメントの理論と実践を記した解説書で、情報の公開方法や財務情報を理解するための研修内容、報酬体系のあり方などを企業の実例とともに紹介しています。

オープンブックマネジメントについて体系的に理解を深め、導入のために具体的に動いてみたい方にオススメの1冊です。

参考 オープンブック・マネジメント―経営数字の共有がプロフェッショナルを育てるAmazon