オペレーションマネジメントとは、経営資源を有効活用・最大化し、目標達成を効率化するマネジメント手法です。限られたリソースの中で成果を最大化し、効率的に目標達成するために役立ちます。
今回はオペレーションマネジメントの目的や必要性、具体的な機能・役割ややり方などについてわかりやすく解説します。
目次
1.オペレーションマネジメントとは?
オペレーションマネジメントとは、戦略にもとづいて経営資源を有効活用し、業務プロセスを管理して、成果の最大化や目標達成の効率化を目指すマネジメント方法です。
オペレーションは「目標達成に向けた業務の運営・推進手順」を意味します。マネジメントは「管理」の意味を持つことから、目標達成に向けた業務の運営・推進手順を管理することがオペレーションマネジメントです。
オペレーションの対象は、経営戦略から日常業務と多岐にわたります。業務や分野など、オペレーションの対象によってその目的やマネジメント方法が異なります。
オペレーションとは
そもそもオペレーションとは「操作」「作業」の意味を持つ言葉です。ビジネスでは「業務の目標を達成するために物事を運営・推進していく手順を定めること、またはそれに従って実施する一連の作業や実務」のこと。
一般的には繰り返し発生し、ある程度決まった流れのある業務がオペレーションの対象です。
2.オペレーションマネジメントの目的
オペレーションマネジメントの大きな目的は、成果を最大化し、効率的に目標達成を目指すこと。業務や分野によって目的はさまざまあり、主な目的には以下が挙げられます。
- 経営資源の有効活用
- 業務トラブル・リスクの回避
- 組織・チームの連携強化
- 従業員のモチベーション向上
①経営資源の有効活用
オペレーションマネジメントは、経営資源を有効活用することが目的の一つです。限られた経営資源を有効活用することは、効率的な目標達成や成果創出に欠かせません。
オペレーションマネジメントによって、ヒト・モノ・カネといった経営資源を適切に管理できれば、必要な場所に必要な分のリソースを分配できるようになります。
たとえば、個々がスキルを最大限発揮できる適材適所な業務へと配置できれば、それぞれが成果を創出しやすくなるため、効率的にチームの目標が達成できます。
限られた経営資源を有効活用することは無駄なコストの削減にもつながり、組織の成果も最大化されます。
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②業務トラブル・リスクの回避
オペレーションマネジメントの一環として、業務のマニュアル化を進めていきます。業務のマニュアル化によって一定の品質が保てることは、トラブル・リスクの回避に有効です。万が一トラブルが発生しても原因を特定しやすく、再発防止のための改善が検討しやすくなります。
また、マニュアルがあれば担当者によって業務プロセスが異なることはなく、誰が業務を担当しても品質が均一化されます。さらに、業務の属人化の防止や教育の効率化・標準化にもつながります。
③組織・チームの連携強化
組織が成長し、規模が大きくなるほど部門や役割が細分化され、部門同士の連携が難しくなります。組織規模が大きくなっても、オペレーションマネジメントによって意思決定プロセスを改善することで、部門間の連携強化が可能です。
部門間の連携が強化できると組織全体の信頼関係や協力体制が構築されて横断的なコミュニケーションが可能となるため、組織・チーム全体の生産性向上につながります。
④従業員のモチベーション向上
オペレーションマネジメントでは、効率的な業務推進のために職場環境の改善も行います。整った職場環境や業務効率化が実現した職場では、従業員が働きやすさを感じられ、仕事へのモチベーションが向上します。
モチベーションは生産性にも関わる重要な要素です。モチベーションが向上することで、仕事への主体性や生産性が高まり、成果にもつながりやすくなります。
3.オペレーションマネジメントが必要な理由
ここでは、オペレーションマネジメントが必要な理由をみていきましょう。
持続的な成長を実現するため
限られたリソースのなかで企業が成長していくには、経営資源の有効活用が欠かせません。オペレーションマネジメントによって経営資源を適切に管理・有効活用し、効率的に成果につなげていける状態を維持することは企業の持続的な成長につながります。
オペレーションは企業活動の基盤でもあるため、適切にマネジメントすることが求められます。
継続的に業務効率を改善していくため
上記に関連し、限られたリソースで品質を低下させず、ニーズに対応したより優れた製品・サービスを生み出し続けることは企業の存続・成長に不可欠です。しかし、とくにヒトのリソースを増やすことは難しいため、業務を効率化する必要があります。
適切なオペレーションマネジメントが実行されれば、無駄を省いた効率的な業務フローが実現します。また、一度構築した業務フローもPDCAを回して継続的な改善箇所を発見していくため、つねに効率的なフローを実行できます。
AIやITシステムなどの導入によって、オペレーションマネジメントを大幅に効率化するのも可能です。
競合優位性を確保するため
オペレーションマネジメントでは、工夫しようがないと思われる細かい作業や日常的な業務もマネジメントの対象です。あらゆる業務のオペレーションを見直して無駄を省くことで、組織全体の業務フローが最適化されます。
業務フローが最適化されることで製品やサービスの品質が高まれば、顧客満足度の向上にも期待できます。
オペレーションマネジメントによって実現される品質の良さや柔軟な対応力といったオペレーションそのものが企業の競合優位性となることで、企業の競争力が高まり、利益の向上にもつながります。
4.オペレーションマネジメントの7つの機能と役割
オペレーションマネジメントには、以下7つの機能があります。
- 業務計画
- 財務
- 製品デザイン
- 品質管理
- 需要予測
- 戦略
- サプライチェーンマネジメント
ここでは、各機能とその役割を詳しく解説していきます。オペレーションマネジメントの担当者は、以下7つの機能を理解したうえでマネジメントに取り組むことが大切です。
①業務計画
オペレーションマネジメントの基礎・根幹となる機能である業務計画とは、経営資源を把握・モニタリングし、状況に応じてリソースを最適に分配すること。下記のような役割から現状を把握し、業務の効率性を維持する効果を発揮します。
- 在庫・リソース管理
- 日程や工程の管理、計画立案
- 生産状況やサービス運営状況の観察と把握
- 人員の配置状況やコンディション、パフォーマンスの把握
業務計画では経営資源の動きを常に観察し、状況に応じて臨機応変に対応する視点が重要です。
②財務
財務はコストを図りつつ、売上の最大化を実現するための重要な機能です。企業会計における財務とは異なり、製造・開発プロセスにおける損益を管理する役割を持ちます。
- 目標に合わせた予算編成
- 予算の配分とリソースの管理
- 売上向上や利益拡大につなげるための投資
売上向上や利益につなげるための戦略的なプロセスであり、オペレーションマネジメント担当者の力量が問われる専門的な機能です。
③製品デザイン
市場トレンドや消費者のニーズなどの情報を収集し、製品デザイナーに伝える機能です。デザイナーにこうした情報を伝えることで、より顧客や市場のニーズにマッチした製品が作れるようになります。
- 市場調査の結果をまとめ、デザイナーに伝える
- 製品デザインのディレクション
- デザイン考案過程のサポート
オペレーションチームがいないと、デザイナーは制作するデザインの大枠が判断できません。近年はとくにニーズの変化・多様化が激しいため、つねにニーズにマッチした製品を市場に出して売上につなげるためにも、製品デザインの機能が欠かせません。
④品質管理
生産の段階に入ってから重要となるのが、品質管理です。品質管理では、市場調査や競合分析から自社の品質基準を明確化し、品質基準に沿った品質チェックや管理、リスク分析を行います。
- 品質基準の明確化・策定
- 品質チェックテストの実施
- 品質リスクの管理と分析
- 製品の不具合の記録
市場に出ている製品の品質が一定でないと消費者の信頼を損ねる恐れがあり、品質基準を満たしていない製品が多いと製品ロスも増えてコストの無駄が発生してしまいます。どんな時でも安定した品質を維持できることは、企業の持続的な成長に欠かせない要素です。
⑤需要予測
過去のデータなどから、製品・サービスの今後の需要や見通しを予測する機能です。需要予測に基づき、生産量や営業、必要なコストの計画や見積を立てていきます。
- 市場調査
- 製品・サービスの需要変化の予測立て
- コストの試算・見積り
- 製品に関する営業計画やマーケティング計画
コストの無駄をなくすためには、具体的な数値を用いた計画や見積りが必要です。需要予測するにあたって、正しい予測を立てるためにもデータに基づいた客観的な根拠が重要となります。
⑥戦略
目標達成までの戦略を策定し、管理する機能です。業務計画・財務・需要予測などから得た幅広い情報をもとに戦略を策定し、実行していく中で戦略の有効性を確認していきます。
- 目標達成に向けた戦略の策定
- 生産体制や環境の改善
- 顧客満足度の把握と向上のための施策立案
- 生産コストのコントロール
戦略では、オペレーションマネジメントそれぞれの機能や役割を活かして、効率的に目標達成できるような生産体制を構築します。戦略は具体的な行動を起こすための指標となるものであるため、組織の目指す目標と矛盾がないかを確認することがポイントです。
⑦サプライチェーンマネジメント
サプライチェーンとは、製品・サービスの生産から出荷、消費者の手に渡るまでの一連の流れ・接点のことです。
そしてサプライチェーンマネジメントとは、生産プロセスを管理するうえで不可欠な機能で、サプライチェーンが一巡した結果をもとに、消費者のニーズなどもふまえて改善を図りながらサプライチェーンを最適化していく役割を持ちます。
一般的なサプライチェーンの流れは、以下のとおりです。
- 原材料
- 仕入れ
- 生産
- 物流
- 販売
- 消費
サプライチェーンは消費まで至ったら、原材料の工程に戻ります。サプライチェーンマネジメントでは、一連の流れで見つかった改善点をより良くしていく機能を発揮します。
サプライチェーンの担当部門があった場合でも、社内の生産に関してはオペレーションマネジメントの担当者が対応します。
5.オペレーションマネジメントの手順・やり方
オペレーションマネジメントは、PDCAに沿って進めていきます。ここでは、オペレーションマネジメントのやり方を手順に沿って解説します。
プランニング
まずは、オペレーションマネジメントの計画を立てます。方向性を明確にし、期待する成果を発揮するために重要なプロセスです。この段階でマネジメントチームのメンバーも決めておくと良いでしょう。メンバーには、現場を熟知している人材が不可欠です。
プランニングでは、主に以下のようなポイントを決めていきます。
- 品質
- 予算
- 作業工数
- スケジュール
「誰が」「いつまでに」「何を」「どのように」がわかるよう、できるだけ具体的に内容を決めましょう。
実行
オペレーションマネジメントにおいて最も重要な計画に基づいてオペレーションマネジメントを実行していくステップです。計画通りに進行しない場合や問題が発生した場合は、すぐに対処します。デジタルツールの導入・活用により、業務効率の改善に期待できます。
評価
実行した結果を評価するステップです。目標の達成度や未達の場合の原因を客観的に分析することが重要です。主観的な評価を避けるためにも、実行時に日々数値などでデータを記録しましょう。各オペレーションで収集したデータを分析することで、課題や注意点も発見でき、改善に役立ちます。
改善
評価をもとに、最初にプランニングした計画を改善するステップです。必要に応じて、業務フローや作業手順を変更する場合もあります。その場合、現場の従業員への影響や負担が大きいため、変更を加える際は事前に十分な説明を行うことが大切です。なぜなら、理解を得られていない状態で改善しても、現場から反発されたり、改善策が効果的に浸透しなかったりする恐れがあるからです。
改善策の実行後も、評価と再改善を継続しましょう。現場の従業員の意見も取り入れつつ、期待する成果が出るまでPDCAを回していきます。
6.オペレーションマネジメント担当に必要なスキル
オペレーションマネジメントの担当者には、以下のようなスキルが求められます。
- 臨機応変な対応力
- 財務・経理スキル
- データの解釈スキル
- 問題解決スキル
- クリティカルシンキング
オペレーションマネジメントの効果を最大化するためにも、適性のある人材を担当者に選任することも重要です。
①臨機応変な対応力
オペレーションは、市場動向や目標によって変わることがあります。オペレーションマネジメントの担当者はそうした変化にいち早く気づき、オペレーションについても臨機応変に対応していかなければなりません。
オペレーションの変化によって生じる恐れのある混乱を最小限に抑えるためにも、臨機応変な対応力を持ってチームを牽引していくスキルが必要です。
②財務・経理スキル
予算編成やコスト削減に取り組むこともオペレーションマネジメント担当者の役割です。製造・開発プロセスの損益に関する予算編成や投資は、企業の財務にも大きく影響します。
コスト構造の理解や今後の流れを予測した上での予算編成など、質の高い財務計画を立てる上では財務・経理の専門的なスキル・知識が不可欠です。
③データの解釈スキル
製品デザインでは、市場調査の結果をわかりやすくまとめ、デザイナーがデザインに落とし込めるようにサポートする役割を持ちます。抽出したデータを理解しやすい内容に変換するには、データ解釈スキルが必要です。
また、今後の需要予測を立てたりするうえでも、過去のデータを正しく解釈し、予測に落とし込むことが求められます。
④問題解決スキル
業務を進行するうえでは、さまざまな問題や予期せぬトラブルも発生するでしょう。そうした事態にも迅速に対応し、問題やトラブルを解決してより有効なオペレーションを構築するのが担当者の役割です。
問題解決スキルがあればその原因を抽出・分析し、本質を見極めて最適な解決策を発見・実行できます。効率的に問題が解決できれば、素早く問題を解決して次のステップへと進むことができるでしょう。
⑤クリティカルシンキング
クリティカルシンキングとは、物事を批判的に考える思考法です。あらゆる物事に対して疑問をもつことで固定観念を打ち破り、正しい結論へと導けるようになります。
オペレーションマネジメントにおいてクリティカルシンキングを発揮できれば、当たり前のように行なっていた業務プロセスを批判的にとらえられ、よりよいプロセスの提案につなげられます。
7.オペレーションマネジメントに取り組む際のポイント
オペレーションマネジメントに取り組む際に意識したい、重要なポイントをご紹介します。
全体の方向性を明確にする
規模が大きく、部門が細分化されている組織ほど重要なポイントです。部門ごとに自由にオペレーションマネジメントを行なってしまうと、組織全体の本質的な目的を見失ってしまう可能性があります。
組織全体で統一した方向性を示すと、部門ごとのオペレーションマネジメントでも最終的な目的が意識できるようになります。
また、自社の風土に合わないオペレーションマネジメントを取り入れてしまうと運用に支障をきたしてしまうこともあるため、そうした点からも方向性の明確化が重要です。
PDCAに沿って取り組む
常に高い業務効率を維持し、効率的に目標を達成していくには、オペレーションマネジメントを実行していく中で改善点を見つけて対処し続けていくプロセスが必要です。そこで役立つのが、「計画・実行・評価・改善」のフレームワーク「PDCA」です。
オペレーションマネジメントの方法は業種や業務内容によって異なるものの、共通してPDCAを用いて実践することがポイントです。PDCAを回しながらオペレーションマネジメントを実践していくことで、最終目標の達成も効率化されます。
PDCAとは?【意味を簡単に】サイクルの回し方、OODAとの違い
PDCAは、多くの企業で採用されているセルフマネジメントメソッドです。
改めてPDCAがどのようなメソッドなのかを考えるとともに、メリットや問題点、PDCAが失敗する要因や効果的に回していくポイントな...
適材適所な業務采配を行う
実際に業務を進行するのは従業員であるため、従業員の特性を理解した適材適所な業務采配を行うことが重要です。適材適所な業務采配ができれば、最小限の人員でも成果の最大化が図れます。
かつ、従業員も自分の能力を最大限発揮できるため、モチベーションが向上し、結果、生産性が高まってオペレーションマネジメントの効果も最大化されます。
ミスやトラブルにも備える
業務が人の手で行われている以上、完全にミスやトラブルを防ぐことは難しいもの。緻密な計画を立てすぎてしまうと、ミスやトラブルが発生したときのスケジュールへの影響も大きいでしょう。
計画を策定するうえではミスやトラブルが発生することも想定し、余裕を持った計画を立てることがポイントです。
ツールを活用する
オペレーションマネジメントでは従業員やタスク、生産状況など、管理対象が多岐にわたります。部門間での連携を強化するにはスムーズな情報共有やコミュニケーションが不可欠ですが、アナログ管理では限界があります。
そこで、タスク管理ツールやチャットツール、生産管理システムなどのITツールを活用することがポイントです。
ツールを活用するとオペレーションマネジメント担当者の業務を効率化できれば、本来時間を充てるべきオペレーションの見直しや計画の策定、改善出しといった業務に集中でき、オペレーションマネジメントの質が高まります。