オズボーンのチェックリストとは、効率よくアイデアを出すための制約をまとめたものです。一体どんなものか、概要やメリットなどから解説します。
目次
1.オズボーンのチェックリストとは?
オズボーンのチェックリストとは、異なる9つの視点から物事を考える思考方法のことです。一人でたくさんのアイデアを考えなければならないときに役立ちます。
仕事をするうえで企画や改善などのアイデアを出す場面はよくあるでしょう。その際、効率的にアイデアを出せるようになります。
オズボーンのチェックリストを作り出したのは、アレックス・F・オズボーン。アメリカの大手広告代理店であるBBDOという企業(現在は米オムニコム社のグループ企業)の副社長を務めていた人物で、人材育成に力を入れていました。
その中で生まれたのがアイデアを生み出す手法としてよく知られている「ブレインストーミング」や「オズボーンのチェックリスト」です。
2.オズボーンのチェックリストはアイデアを出す方法のひとつ
オズボーンのチェックリストとは、アイデアを出すために決められた9つの方向性からアイデアを強制的に抽出する手法です。
アイデアが出ない時に無理矢理ひねりだす方法ともいえます。しかしこの方法によって発想の視点が変わるため、思いも寄らないアイデアが生まれる場合もあるのです。
アイデアを生み出す思考法としてブレインストーミングがあります。オズボーンのチェックリストとブレインストーミングにはどのような違いがあるのでしょうか。
ブレインストーミングとは?
ブレインストーミングとは、思想や考え方や性格などの異なる集団が互いを批判せず、自由に議論を交わしてアイデアを出し合う方法のことで、1950年代に考えられました。一人でも実行できますが基本、10人以下の集団で用いられます。
ブレインストーミングでは多角的視点から出たアイデアを組み合わせて、問題解決を図るのです。しかしそのなかで判断・結論は出しません。その後に別の会議を開き、そこで結論を出すのが一般的です。
ブレインストーミングとは? ブレストの効果・やり方を簡単に
ブレインストーミングとは、複数人で行う会議手法です。ここでは、ブレインストーミングをさまざまな角度から解説します。
1.ブレインストーミングとは?
ブレインストーミング(brainstorming)...
オズボーンのチェックリストとブレインストーミングとの違い
オズボーンのチェックリストとブレインストーミングは役割が違います。
- オズボーンのチェックリスト:決められた9個の項目に沿ってアイデアを考えるため、現実的なアイデアを瞬時にたくさん抽出したい場合に向いている
- ブレインストーミング:意見者が自由に議論するため、突拍子もなく非現実的だったとしても、柔軟なアイデアをたくさん出したい場合に向いている
3.オズボーンのチェックリストのメリット
オズボーンのチェックリストを使ってアイデアを考えると、どのようなメリットが得られるのでしょうか。
アイデア考案が効率化する
最も分かりやすいメリットは、「圧倒的にアイデアが出てきやすい」という点。9つの項目にはあらかじめ変化のパターンが定められているので、1人で最低9つのアイデアを考えられます。
人数が増えればさらに多くのアイデアが生まれるでしょう。またゼロベースでアイデアを考えるよりも時間を大幅に短縮でき、アイデアの考察を効率化できます。
4.オズボーンのチェックリストで使う9項目
オズボーンのチェックリストには、9つのアイデアを出すための項目があると説明しました。9つの項目について、例とともに解説します。
- 転用の例
- 応用の例
- 変更の例
- 拡大の例
- 縮小の例
- 代用の例
- 置換の例
- 逆転の例
- 結合の例
①「転用」の例
「転用」とは、今の用途とは別の使い道を考える、という考え方。例として有名なものには、エジソンの蓄音機があります。蓄音機は発明当初、遺言の録音や言語学習を用途として発売されており、なかなかヒットしませんでした。
しかしエジソンは用途を変えて音楽を録音する機械に転用すると思いつき、蓄音機は大きくヒットしたのです。
②「応用」の例
「応用」とは、既存の商品にほかの製品やサービスのシステムの特徴を使ったり真似をしてみたりする、という考え方です。例として有名なものには、スターバックスコーヒーのオペレーションシステムがあります。
スターバックスコーヒーは自社とはまったく違う分野であるTOYOTAの「トヨタ生産方式」を応用し、既存のオペレーションに改善しました。その結果、業務効率化に成功したのです。
③「変更」の例
「変更」とは、既存の商品の色や形状などの見た目や様式を変化させる、という考え方。他者の真似をするわけではありません。例として有名なものには、昔大きなブームになった「匂い付き消しゴム」が挙げられるでしょう。
さまざまな香りがついた消しゴムを販売するというアイデアを生み出し、爆発的なヒットとなりました。
④「拡大」の例
「拡大」とは、あらゆる方面を拡大したり大きくしたりする、という考え方。大きさや高さ、重さなどのほかに権利の適用範囲、顧客やターゲット、担当業務や責任までさまざまなものが含まれます。
例として有名なものには、大手コンビニチェーンの「セブンイレブン」があります。セブンイレブンはもともと営業時間が午前7時から午後11時までの営業形態でしたが、24時間に拡大した結果、さらに成長できたのです。
⑤「縮小」の例
「縮小」とは、既存の商品や形態を小さくしたり狭くしたり短くしたりする、という考え方。例として有名なものには、お年寄りのためにつくられたスマートフォン「らくらくホン」が挙げられます。
本来あるスマートフォンの機能を縮小して、高齢の方にも使いやすくしたのです。それにより成功を収めました。
⑥「代用」の例
「代用」とは、既存のものを「別のもの」に変えてみる、という考え方。商品に使っている部品や素材、製法、または顧客へのアプローチの方法などを別のもので代用できないか、考えます。
例として有名なものには、ビールの代用品である発泡酒や、肉の代わりに大豆ミートを使った食品などが挙げられます。
⑦「置換」の例
「置換」とは、パーツや人の配置、そのほかあらゆるものを入れ替える、という考え方。例として有名なものには、2013年に生まれた「いきなりステーキ」が挙げられます。
いきなりステーキは従来のステーキ屋のレイアウトにとらわれず、立ち食い飲食店のレイアウトに置換しました。これがSNSなどで話題を集め、大きな成功につながったのです。
⑧「逆転」の例
「逆転」とは、「上下左右を反対にできないか」「作業の工程を逆にできないか」「役割を逆にできないか」など、さまざまなものを逆にする、という考え方。例として有名なものには、現在は付箋として活躍している「ポストイット」が挙げられます。
ポストイットはもともと、強力なテープをつくっているときに生まれた副産物でした。「貼っても剥がれる」という本来のテープからは使えそうにない特徴を逆転の発想で考えた結果、ポストイットは大ヒットを生み出したのです。
⑨「結合」の例
「結合」とは、「既存の2つを合わせて1つにできないか」「サービスをセットにできないか」など、2つあるものを1つにする、という考え方。例として有名なものには、昨今では当たり前になっている「カメラ付き携帯」が挙げられます。
携帯電話にカメラという別のものを結合して新たな製品を生み出した結果、成功した事例です。
5.オズボーンのチェックリストを使いやすく改良したSCAMPER法とは?
オズボーンのチェックリストを改良した「SCAMPER法」をご存じでしょうか。SCAMPER法は創造性開発の研究家であるボブ・エバール氏によって開発されました。
オズボーンのチェックリストは9つの項目についてアイデアを考えるものでしたが、SCAMPER法では7つの項目についてアイデアを考えていきます。
SCAMPER法の7項目
SCAMPER法はオズボーンのチェックリストの項目から英単語の頭文字を取って7つにまとめたものです。
- Substitute(代える・代用する)
- Combine(組み合わせる)
- Adapt(適応させる)
- Modify(変更する)
- Put to other uses(ほかの使いみち)
- Eliminate(取り除く)
- Rearrange(並べ替える)
①Substitute(代える・代用する)
オズボーンのチェックリストでいう「代用」に当たります。ものの代用だけでなく、人や設備や方法などありとあらゆるものでの代用を考えるのです。
②Combine(組み合わせる)
「Combine(組み合わせる)」は、オズボーンのチェックリストでいう「結合」に当たります。既存の商品同士やサービスを組み合わせて、新しい製品やサービスを生み出す手法です。
たとえば「鉛筆と消しゴムを合わせる」「コップと時計を組み合わせる」など、価値を組み合わせて新しいアイテムを生み出します。
③Adapt(適応させる)
「Adapt(適応させる)」は、オズボーンのチェックリストでいう「転用」と「応用」です。「今の使い方のほかに何か使い道がないのか」「過去の製品に似たような製品はなかったのか」など、ものだけでなく置かれている状況などにも当てはめます。
過去に同じような状況はなかったかどうかを確認し、似たものからヒントを得てアイデアを出す手法です。
④Modify(変更する)
「Modify(変更する)」は、オズボーンのチェックリストの「変更」「拡大」「縮小」に当たります。いずれも状態や形状、方法などの変更となるのです。
「変更する」は既存の商品の色や形だけでなく、「動作」「匂い」「意味」「人やその状況」など、ありとあらゆる事柄に変更を加えて、新しいアイデアを生み出すこととなります。
⑤Put to other uses(ほかの使いみち)
「Put to other uses(ほかの使いみち)」は、オズボーンのチェックリストでいう「転用」「代用」「置換」に当たります。
「そのままの状態でほかの使い道はないのか」「一部だけを変更し、新たなものにできないか」「売場だけをどこかに移せないか」など、今のままの使い方とは別の角度で考えてアイデアを出す手法です。
⑥Eliminate(取り除く)
「Eliminate(取り除く)」は、オズボーンのチェックリストでいう「変更」や「縮小」に当たります。
これは現状ある部品やサービスにて、「取り除いても大丈夫なものはないのか」「最低限どの機能があれば商品やサービスとして機能するのか」と省略できる場合と、できない場合を考えてアイデアを生み出す手法です。
⑦Rearrange(並べ替える)
「Rearrange(並べ替える)」は、オズボーンのチェックリストでいう「置換」や「逆転」に当たります。発想の逆転を行って新しいアイデアを生み出す手法です。
「従来のサービスの順序や手順を変更してみる」「その製品を作る工程を変更してみる」「人員の配置や立場を入れ変えて考える」などが該当するでしょう。
SCAMPER法の実践
SCAMPER法を実践するには、いくつかの注意点があります。まず7つの項目それぞれについてアイデアが記入できるようなリストを用意しましょう。
そのリストを埋めていくとSCAMPER法を実践できます。ただしアイデアを出すときに時間が十分確保できるとは限りません。時間をかけないようにするのもポイントのひとつです。
SCAMPER法を実践する際の注意点
SCAMPER法を実践する際の注意点は、各項目についてあまり時間をかけないことです。1つの項目は5秒ほどで考え、思いつかないならば次へ移りましょう。
1つの項目に時間をかけてしまうと思考が止まってしまい、外のアイデアが思いつかなくなる場合もあるからです。時間の目安は、すべての項目を集中して見られる10分から長くても30分くらいほど。まずは質よりも量を重視しましょう。
6.オズボーンのチェックリストのやり方
オズボーンのチェックリストのやり方はシンプルです。ただしやる前にテーマを決めておく必要があります。オズボーンのチェックリストの活用方法について、下記2つを説明しましょう。
- テーマを明確に設定する
- アイデアを広げる
①テーマを明確に設定する
まずアイデアを出したいものについてのテーマを、明確にしましょう。テーマを設定しないと何についてのアイデアを出せばよいのか分かりません。
商品やサービスあるいは企画など、検討するキーワードやテーマを設定してから、オズボーンのチェックリスト9項目を用意します。
②アイデアを広げる
オズボーンのチェックリストでは、とにかくアイデアを出すことが重要です。どんな突飛なものでもいいので、とにかく各項目に対してアイデアを出していきましょう。
そのときは意味のないアイデアに思えても、そこからさらに発展させると使えるようになるアイデアも。ポイントは「自分の思考を制限しない」です。
7.オズボーンのチェックリストの作り方
オズボーンのチェックリストはどうつくっていけばよいのでしょう。ここでは3つの方法について解説します。
- アプリを使う
- Webサービスを使う
- PCでつくる
①アプリを使う
スマホアプリにはすでにリストが用意されているため、出てくる指示に従えばリストがすぐに完成します。
いろいろなアイデアを出すためのアプリがあり、多くはリストのテーマを決めるところから始まるのです。スマホだけで作成できるため、移動時間などでアイデア出しを進められるでしょう。
②Webサービスを使う
こちらも基本的にはスマホアプリのものと使い方は同じです。テーマを入力すると自動的にリストが作成され、そのままリストに打ち込んでいけるものが多いです。
スマホアプリと違うのは完成したリストをそのままプリントアウトできる点。印刷すればほかの社員とも共有できるでしょう。
③PCでつくる
自作も簡単に行えます。マインドマップ作成ツールやExcel、WordやPowerPointなどを使うとよいでしょう。インターネット上には無料のテンプレートも数多く存在します。それらをダウンロードすれば1からつくらずに済むうえ、自由にカスタマイズできるのです。