長時間労働やブラック企業という言葉が社会に定着してきている一方で、過重労働対策に取り組む企業も増えてきています。今回は人事面での知識として覚えておきたい、過重労働対策についての厚生労働省や大手企業の取り組みをご紹介いたします。
過重労働とは
過重労働とは、不規則な勤務や頻繁な出張、労使協定で定めた時間外労働を大幅に超える状態をいいます。長期間にわたる疲労の蓄積やストレスには脳疾患や心臓疾患、精神疾患を招きます。
また、過重労働が原因の疾患による病死や自殺は過労死と呼ばれます。
過重労働の認定基準は、発症前1ヵ月間に100時間または2~6ヵ月で80時間を超える場合と発症前1ヵ月間ないし6ヵ月にわたり45時間を超える時間外労働が多い場合、過重労働とみなされます。
ただし、疾病と過重労働の関連性は、労働時間だけでなく職場でのポジションや業務内容等も吟味されたうえで判断されます。
過重労働撲滅特別対策班(かとく)とは
2016年4月1日に行われた厚生労働省の長時間労働対策の会合で厚生労働省に「過重労働撲滅特別対策班(本省かとく)」が新設されたことが発表されました。
「過重労働撲滅特別対策班(本省かとく)」は厚生労働省の労働基準局監督課に設けられ、企業本社への監督指導や労働局が実施する広域捜査活動を迅速、そして的確に行えるように各労働局に対して必要な指導を行います。
東京と大阪の労働局には「過重労働撲滅特別対策班(かとく)」を新設し、すべての全労働局に長時間労働に関する監督指導を専門とする「過重労働特別監督管理官」を各1名配置して監督指導・捜査体制の強化を全国展開します。
「過重労働撲滅特別対策班(かとく)」の役割は様々ありますが1番の目的は、過労死認定基準を超えるような事業場(月残業80時間超の事業場)を重点的に対応し、過重労働を減らしていくことです。
大手企業で成果を上げている残業時間削減対策
ここでは、伊藤忠商事株式会社やカルビー株式会社SCSK株式会社等で実践されている残業対策をご紹介いたします。
- 2時間ごとに使用できるデスクがコンピュータにより変更される。
- 残業を前年より20%削減して有給20日を達成した社員に、本来残業代として支給予定だったお金をインセンティブとして支給。
- 朝5時から8時の時間帯に勤務すると深夜と同じ額の割増賃金と朝食を支給。
- 立ち会議を推奨して会議室をガラス張りにする。
- 社長や会長から「早く帰れ」と号令をかけてもらい、決められた時間以降に残業をしている社員には、見回り役の社員からの声かけを徹底して行う。
残業削減が成功した企業では社長や会長が「本気で残業を0にする」という姿勢を見せ、残業代目当ての社員の給与を様々な方法で補填しています。
定時で帰らなければいけないことが分かれば、社員は効率的に仕事を進められるよう考えて取り組みます。
急に残業を0にすることは難しいので、最初は20時以降残業禁止とし、少しずつ定時退社を促していきましょう。