パーキンソンの法則とは?【わかりやすく解説】対策、残業

パーキンソンの法則とは、組織や個人に見られる「資源の使い方」をまとめた法則です。残業との関係や具体例、対策などについて解説します。

1.パーキンソンの法則とは?

パーキンソンの法則とは、「人は利用可能な資源をあるだけ使ってしまう」という人間の性質を表現した法則のこと。イギリスの歴史学者および政治学者のシリル・ノースコート・パーキンソン氏が、著書「パーキンソンの法則:進歩の追求」で提唱しました。

この法則は、労働時間や予算など、ビジネスにおける個人や組織の効率性を理解するうえで重要な法則です。

第一の法則

「仕事の量は完成期限までに与えられた時間をすべて満たすように膨張する」という法則で、仕事の量と時間の関係を示しています。

たとえば本来は1時間で終わる仕事であっても3時間の猶予を与えられると、完了までに3時間をまるまる費やしてしまうケースです。与えられた時間に余裕を持たせても、効率性は必ずしも向上しません。

この法則は、行政組織において仕事の量や難易度に関係なく、公務員の人数が一定の割合で増加し続ける現象から発見されました。

第二の法則

「支出額は収入額に達するまで膨張する」法則で、支出と収入の関係を示しています。

たとえばプロジェクトの予算において、ゆとりを持たせるために本来の予算よりも多く設定したとき、結局上限まで使い切ってしまうケースです。組織や個人が収入を増やすと支出も同様に増加し、節約や貯蓄が難しくなる傾向を示しています。

この法則は、行政組織において毎年予算がすべて使われ、その結果として税金の負担が増えるという財政状況から発見されました。

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2.パーキンソンの法則と残業の関係

パーキンソンの法則の第一の法則は、残業が発生するプロセスと心理を表しています。

あらかじめ設定された時間のすべてを使用して、締め切りのぎりぎりまで作業を行う傾向にある社員は、「締め切りに間に合わないようなら残業する」という意識が働くことがあるのです。

「自分が許容できる範囲」まで労働時間が拡大され、残業が発生しやすい状況を作ってしまいます。さらに「残業すれば間に合うだろう」と、あらかじめ残業ありきでスケジュールを組むようになり、残業が減らないという悪循環ができてしまうのです。

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3.パーキンソンの法則の具体例

パーキンソンの法則は、ビジネスシーンでもしばしば見られます。第一の法則と第二の法則おける具体例を解説しましょう。

第一の法則の具体例

第一の法則は、時間いっぱいまで仕事をやり続けてしまい、効率が下がるものでした。会議と資料作成に関する具体例を解説しましょう。

長時間の会議

会議の時間を事前に設定した場合、課題の数にかかわらず、終了時間いっぱいまで会議が続けられます。人間の頭に「会議の時間」というタイマーがセットされ、与えられた時間のすべてを費やしてしまうのです。

ある企業では、定例会議を14時から16時まで2時間かけて行っていました。そこで会議の開始時間を退勤時間の1時間半、つまり16時30分に設定してみたところ、会議は1時間半で終わるようになったのです。

締め切り直前まで作業

資料の作成で提出日までに余裕があると「後でやればよい」という思考が生じます。結果、ギリギリまで着手を先延ばしにしてしまう場合もあるのです。

また早期に完成したとしても、時間的な余裕があると「より品質を高めよう」と考えて、締め切りまで追加や修正を重ね、結局与えられた時間をすべて消費してしまいます。

第二の法則の具体例

第二の法則は、収入の上限まで支出が増えてしまうものでした。企業の売上と個人の経費に関する事例を解説しましょう。

売上とともに支出も増加

売上とともに支出も増加し、全体の利益がほとんど変わらなくなってしまう場合もあります。より売上を高めるために広告費や接待費が増加する、あるいは生産性を高めるための社内環境の改善に着手して支出が増える場合もあるからです。

結果的に利益は増大せず、場合によっては減少してしまうケースも見られます。

渡し方による経費の変化

出張へ行く社員へ経費を渡す際、出張前に経費を与えると、社員はその金額を基準にして経費を使い切り、ほとんど余らないことがあります。ある企業で経費を前わたしから後で清算する方式へ変更したところ、経費の金額が減ったそうです。

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4.パーキンソンの法則を克服するための対策

パーキンソンの法則は企業が克服すべき多くの課題と関連しています。ここではパーキンソンの法則を克服するための対策について説明しましょう。

第一の法則の対策

第一の法則を克服するためには、企業側と社員側の双方にタイムマネジメントに関する対策を取り入れる必要があります。

戦略的な作業計画

目標に対して、詳細かつ実現可能な作業計画を立てることが重要です。

作業計画では、目標を数値で定義し、期限、すべての作業と要する時間、リソースなどを洗い出したうえで、実行プランを決定。この計画に沿って作業を進めると、作業が後回しになるのを防げます。

業務の締め切りを自ら設定

業務の締め切りを社員が自ら設定する方法も有効です。このとき漠然と提出日を締め切りにするのではなく、実際の作業量をもとに締め切りを設定しましょう。

まずは作業に必要なリソースを計算し、各作業の内容を明確化。次にリソースを投入したうえで作業に必要な時間を算出し、自分の締め切りを設定します。これにより全体の進捗管理も容易となり、作業の効率化が可能となるのです。

タイムボクシングの活用

作業時間を区切る「タイムボクシング(各タスクに優先度と制限時間を設け、時間をブロックのように区切るマネジメント手法)」も活用しましょう。

たとえば「午前9時から10時まではメールチェックの時間」「午前10時から12時までをレポート作成の時間」のようにします。これにより時間を有効に使えるようになり、与えられた仕事を先延ばしにすることも減るでしょう。

ポモドーロテクニックの使用

「ポモドーロテクニック(作業へ25分間集中し、5分間休憩する、というセットを繰り返すマネジメント手法)」で作業時間を区切るのも効果的です。

ポモドーロテクニックを活用するとひとつの作業を30分で完了できるようになり、期限まで先延ばしにしてしまう状況を避けられます。

評価の仕組みの改善

評価の仕組みを改善すると、時間効率に対する意識を高められます。

たとえば残業が増えるとそれだけ給与が増える仕組みであるため、残業が多い社員は「終わらなければ残業してもよい」という心理が働くことも少なくありません。このような場合は、時間効率を評価する仕組みを取り入れましょう。

一例として、残業時間を削減するための目標を設定し、それを達成した部門に対しては報奨を与える評価制度が挙げられます。

正確な勤怠管理の実施

第一の法則による残業を抑制するには、正確な勤怠管理も効果的です。

たとえば勤怠管理システムを活用して残業時間の合計を可視化し、残業の上限に近づいたときにはアラート機能で通知するなどの方法が挙げられるでしょう。

社員は自分がどれだけ残業しているかが一目でわかるようになり、時間に対する意識が高まるのです。先に挙げた評価制度の改善と合わせて取り入れると、残業の抑制効果をより高められます。

第二の法則の対策

第二の法則を克服するためには、予算と実際の支出状況を把握し、得られた結果の費用対効果を分析する必要があります。

予実管理の徹底

予実管理を行い、実際の支出状況を知ることが重要です。

まずはすべての費用項目を洗い出し、来期の計画を早期に立てて一年間の予算を設定します。費用の洗い出しでは、固定の費用だけでなく、突発的な費用や売上とともに増加する費用なども想定し、あらかじめ一定の金額を設定しておくことがポイントです。

次に予算に対する支出の実績を明らかにしましょう。実績は金額だけでなく使途まで把握し、予算と実績に乖離が見られる場合は原因を分析します。

投資効果の測定の習慣化

人材や設備などへ投資したら、合わせて効果を測定するサイクルを習慣化しましょう。投資額が予算内に収まっていても、それ以上の効果が得られなければ無駄になってしまうからです。そのため定量的な基準を用いて効果を測定し、その支出が適切であったかを判断する必要があります。

費用対効果の確認

投資に限らず、企業活動で発生している費用がどれほどの利益を生んでいるのか、の評価も重要です。とくに人件費はすべての部門で発生するため、費用対効果の把握、分析、改善というサイクルは必須でしょう。

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5.パーキンソンの法則の効果

パーキンソンの法則の理解とその克服策を採用すると、企業側は次のような効果を得られます。

  • 効率的な時間管理が可能となり、過度な残業が減少する
  • 時間の余裕が生まれ、新たな価値創出に向けた行動が取れる
  • 無駄な支出を抑え、企業として真に価値あるものに投資できるようになる

また社員においても、自分の時間やお金を効果的に使おうと考えるようになるでしょう。そのため不要な残業や休日出勤を減らしてワークライフバランスを整えたり、自身へ投資してキャリアアップしたりする社員が増える可能性があります。

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6.パーキンソンの法則以外の時間管理の法則

パーキンソンの法則以外にも、マネジメントに関する法則がいくつか存在します。ここでは3つの法則を解説しましょう。

マニャーナの法則

「明日やる」を原則とし、新しく発生した仕事を効率的に進める法則です。この法則は「新しく任された仕事は明日やる」「クローズ・リストを活用する」というふたつの原則にもとづいています。

人間の脳は「理性的な脳」と「衝動的な脳」にわけられるとされており、急な仕事が入ると衝動的な脳が優先的に取り組む傾向があります。

しかし衝動的な脳は、仕事そのものの優先度を判断するのが苦手です。そこでマニャーナの法則では、今日発生した仕事は明日に回し、今日のタスクを完遂することに集中するべきだとしています。

ふたつめの原則に挙げられているクローズ・リストとは、一度書き出したタスクには新たなタスクをくわえないというタスク管理手法です。今日の優先順位を崩さず遂行するために使われます。

エメットの法則

ふたつの法則から成りひとつめは「仕事を先延ばしにすると、結果的により多くの時間とエネルギーが必要になる」という法則です。たとえば資料作成を後回しにすると、構成を思い出したり、作業工程を再検討したりといった手間が増えてしまい、結果的に非効率的となることがあります。

ふたつめは「完璧を目指すと、仕事を先送りする癖がつく」という法則です。こなすのではなく、またこの法則では適切な準備の重要性も強調しているのです。綿密な作業計画を立てるとそれだけで時間がかかるため、「まずは終わらせる」という意識で一刻も早く着手することが大切だとしています。

パレートの法則

「全体の20%が80%の結果を生み出す」という法則で、貢献度の割合を示しています。

たとえばマーケティングでは、「顧客全体の20%にあたる優良顧客が売上の80%を占めている」という認識が広く知られており、その20%の顧客に焦点を絞った施策を講じることも少なくありません。

またこの法則は仕事の成果についても適用され、「労働時間の20%が成果の80%を達成している」ともいわれています。そのためパレートの法則は、より効率や生産性を高められる戦略やリソース分配を考える際に利用されるのです。