ピープルマネジメントとは、従業員一人ひとりと向き合うことで、個人の成長・成果にコミットメントするマネジメント方法です。個人の成長や成果は、結果的に企業の利益につながるもの。
近年のビジネス環境の変化においては、ピープルマネジメントが適したマネジメント手法になりつつあります。今回はピープルマネジメントについて、従来のマネジメントとの違いや注目される理由、効果などについて詳しく解説します。
目次
1.ピープルマネジメントとは?
ピープルマネジメントとは、従業員一人ひとりに向き合い、各メンバーの成功にコミットするマネジメント方法です。業務の成果だけでなく、仕事におけるパフォーマンスやエンゲージメント、モチベーションやキャリアなど、一人ひとりの成長や成功にコミットメントします。
従業員一人ひとりの成長・成功は、結果的に組織の成長・成功につながるもの。ピープルマネジメントは人(ピープル)を強化し、組織の成果を最大化していく手法といえます。
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2.ピープルマネジメントと従来のマネジメントの違い
ピープルマネジメントと従来のマネジメントは「組織の成果を最大化する」という目的は同じであるものの、手法が異なります。
時代の変化に伴い、マネジメントにおける価値観も多様化。時代の変化に合わせて組織が円滑に機能するには、新たなマネジメント方法を模索するのも必要です。
そこで新たなマネジメント手法として注目を集めているのが、ピープルマネジメント。従来のマネジメントとは、以下の観点で違いがあります。
マネジメント手法
従来のマネジメント手法の1つに「タレントマネジメント」があります。タレントマネジメントでは従業員一人ひとりの能力を最大限活かすため、人事データを一元管理・分析できる仕組みを整えてマネジメントを進めます。
一方ピープルマネジメントでは、データではなく部下本人と向き合うことを重視。人事データではなく、動機や価値観、意欲やキャリアなど、データでは管理できないソフト面に着目します。
データ管理にとどまらず、一人ひとりのパフォーマンスと直接向き合い、コミットメントしていくのがピープルマネジメントです。
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マネージャーの役割
従来のマネジメントにおけるマネージャーは部下の管理・監督者であり、トップダウンのマネジメントを実行する「ボス」といった存在です。リーダーシップを発揮して、メンバーを牽引する役割を持ち、部下が成果をあげられない場合は責任を負います。
対して、ピープルマネジメントでは、メンバー一人ひとりに寄り添い、支える役割が求められます。
メンバーと伴走し、そのなかで一人ひとりが持つ可能性を引き出すことに重点が置かれ、エンゲージメントやモチベーションが高い状態を維持できるようマネジメントすることで、個人の成功・成長にコミットして成果の最大化を目指します。
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3.ピープルマネジメントが注目される理由
なぜ、現代では従来のマネジメント手法ではなく、ピープルマネジメントの必要性が高まっているのでしょうか。ピープルマネジメントが注目される、主な3つの理由をみていきます。
VUCA時代に対応するため
VUCAとは
- Volatility:変動性
- Uncertainty:不確実性
- Complexity:複雑性
- Ambiguity:曖昧性
の頭文字を取った造語で、未来の予測が難しい状態を指す言葉です。
VUCA時代において企業がパフォーマンスを発揮して経営し続けていくには、こうしたビジネス環境・サイクルに適応していく必要があります。
これまではトップダウンの意思決定のもと、従業員が同じ考えで行動して業績を上げてきましたが、これからの時代はそれが通用しなくなってくるのです。
イノベーションを起こすためには企業に価値をもたらす「人」単体に着目し、個人のパフォーマンスを向上・発揮するためにも、個人と向き合うピープルマネジメントがマッチしています。
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働き方・価値観が多様化しているため
終身雇用制度や年功序列の実質崩壊、多様な働き方の導入や多様な価値観を持つ人材が増えているなど、働き方や価値観も多様化しつつあります。
こうした状況では従来のような画一的な管理は難しく、多様な背景・価値観をもつ人材と共存・共栄できる環境を構築することが必要です。
個々のよさやパフォーマンスに着目し、それらを適切に引き出せるのがピープルマネジメントであり、多様な価値観を持つ人材の個々のよさを引き出すことで組織の成果につなげていけます。
現代は多様な働き方を認め、多様な価値観を尊重してこそ、従業員がパフォーマンスを発揮できる時代。こうした環境に対応できるマネジメント手法として、ピープルマネジメントが注目されています。
雇用が流動化しているため
キャリア形成の一環として転職が一般化し、終身雇用制度が実質崩壊したなかではひとつの職場へのこだわりも希薄化。それゆえ、人々はよりよい環境や自分の能力が認められ発揮できる場所へと流れていきやすくなりました。
人手不足が深刻化するなか、企業がパフォーマンスを低下させずに成長を続けるには、いかに優秀な人材を自社に定着させるかが重要です。一方、優秀な人材ほど見切りをつけるのが早く、需要も高いため流動的になりやすい傾向にあります。
人材を定着させるには、エンゲージメントを高めることが重要です。ピープルマネジメントではエンゲージメントが高い状態の維持を目指すため、人材の流動性という課題に適応できるマネジメント手法といえます。
4.ピープルマネジメントの効果
ピープルマネジメントでは、以下のような効果に期待できます。
エンゲージメントが向上する
エンゲージメントとは、企業に対する愛着度のこと。エンゲージメントが高い状態では意欲的に仕事に取り組め、愛着が高まることで定着率の向上に期待できます。
というのも、ピープルマネジメントは従業員一人ひとりに寄り添うため、マネージャーとの距離が近く、会社と個人のつながりを実感しやすくなるからです。
2018年に発表されたアメリカの調査会社Gallup社のレポートからは、エンゲージメントが高いと生産性や売上、利益も高まるとわかっています。
調査対象の企業でエンゲージメントの下位25%と上位25%を比較したとき、後者のほうが顧客指標は10%、生産性は17%高く、売上は20%、利益は21%高い結果となりました。
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自律性が高まる
ピープルマネジメントでは、従来のような指示・命令を中心とする管理型のマネジメントは行われず、マネージャーはメンバーに寄り添い、強みを引き出すためサポートします。
メンバーはマネージャーのサポートのもと自分に向き合い、自分で考えて行動する必要があるため、自律性が養われやすくなるのです。
指示待ちのスタンスではいられなくなるため、おのずと自律的に仕事に取り組むようになり、業務スピードやパフォーマンスの向上が期待できます。
5.ピープルマネジメント実施のポイント
ピープルマネジメントの効果を高めるために押さえておくべき、4つのポイントをご紹介します。
コミュニケーション機会を増やす
メンバー一人ひとりとしっかり向き合うためには、コミュニケーションが欠かせません。なぜなら、一人ひとりのよさを見つけ、それを引き出すには相手を理解することが重要だからです。
コミュニケーション機会を増やすには、1on1ミーティングの導入が効果的でしょう。定期的な1on1の実施により上司と部下の信頼関係が構築され、従業員の主体性を引き出すと同時に本音も聞き出せるようになるでしょう。
信頼関係があってこそ、ピープルマネジメントの効果も高まります。
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マネジメントの質を高める
メンバーと向き合う機会を増やしたからと、ピープルマネジメントとはいえません。マネジメントの質も高めてこそ、効果的なピープルマネジメントが実施できます。
向き合うなかで見えてきたメンバーの良さをどう引き出し、どう活用していくかはマネジメントスキルにかかっています。
しかし、画一的な手法でないがゆえ、明確な正解がなく難しいもの。そのためマネジメント研修を実施してマネジメントの質を高めつつ、マネージャーも試行錯誤しながらその人のあった手法を見つけていく努力が求められます。
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評価の透明性を高める
一人ひとりにコミットしたマネジメントでは、個人と密に向き合うからこそ感情に左右されやすく、公平性の面で課題があります。公平性を保つためには、360度評価を導入するなどして透明性を高めることが大切です。
360度評価とは、上司や同僚、部下などさまざまな立場の人の意見を取り入れて多角的に評価する評価方法のこと。一人の視点にとらわれないことで、公平性のある客観的な評価が可能となります。
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ツールを活用する
一人ひとりと向き合うマネジメントは、それだけマネジメントにかかる工数や負担も大きいもの。マネジメント経験の少ないマネージャーや複数のメンバーを抱えるマネージャーにとって、そうしたマネジメント手法は負担が大きいでしょう。
効率的かつ効果的にピープルマネジメントを実施するためにも従来のマネジメントのようにアナリティクスツールやマネジメントツールを活用するのもポイント。
タレントマネジメントシステムは、従業員の能力やエンゲージメントなどもデータとして一元管理でき、ピープルマネジメントに活用できます。
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6.ピープルマネジメントの注意点
ピープルマネジメントは、成果や実績を重視する人からすると受け入れにくく、モチベーションを低下させてしまう恐れがあるマネジメント手法です。
いきなり導入するのではなく、ピープルマネジメントへの理解を得てから計画的に導入するとよいでしょう。成果や実績を重視する優秀な人材のモチベーションを低下させないためには、社内のマネジメント手法を多様化するのもひとつの方法です。
また、定着に時間がかかる可能性がある点も注意点のひとつ。ピープルマネジメントは新しい手法であり、明確な正解のない手法であることからも試行錯誤になるでしょう。短期間での成果は求めず、様子を見ながら進めていくことが大切です。