企業が従業員に対して支払う報酬は、賃金に限ったものではありません。社宅や社員旅行、社内環境の整備など、企業は社員に対しさまざまな支出を行います。これは、社員の働きやすさを高めて意欲を向上させるためです。こうした賃金外の報酬のひとつに、株式を利用したものがあります。
ファントムストックとは?
ファントムストックとは「企業が従業員に対して行う、自社の株式を利用した報酬制度のうちのひとつ」です。
ファントムとは、幻、架空といった意味の英語で、ファントムストックは、実際の株式や、株式の購入権利を与えるのではなく、実際には存在していない架空の株式を従業員に付与する制度を指す言葉です。
ファントムストックを付与された従業員は、実際の株価の売買や所持時と同じように、一定期間が経過した後で、その時点での株価と付与時の株価の差額を得たり、配当金を得たりすることができます。
書面上で企業が従業員に対して自社株を与えたことにして、それによって得られる利益を還元するというのがファントムストックなのです。
ファントムストックのメリットとデメリット
ファントムストックは、実際の株式や株式の購入権を付与するわけではないため、市場の変動が起こらないというメリットがあります。あくまでも社内で行われる株式をベースにした従業員への報酬であるため、実際の株式市場への影響が出ないのです。
また、従業員はファントムストック付与時と一定期間経過後の株価の差額を受け取ることになりますから、企業の株価が上がらなければ、受け取る利益も少なくなってしまいます。そのため、業績アップのための意欲を高める効果も期待できます。
反面、日本国内ではファントムストックはあまり一般的ではなく、経理上の処理の仕方がはっきりしていない(日本の場合、多くは引き当て賞与で処理される)といった問題点もあり、似た制度である業績賞与を利用する企業の方が多くなっています。
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ファントムストックの導入方法と注意点
ファントムストックを導入する場合は、まず、ファントムストックがどのような制度なのかを従業員にわかりやすく説明する必要があります。株式に基づいた利益が受け取れるが、実際に株式を付与されるわけではないということや、差益が出なければメリットがないということを知らせた上で導入するようにしましょう。
ファントムストックを利用している企業の多くは上場企業であるため、株価は明確に変動していきます。しかし、非上場企業がファントムストックを利用しようという場合は、評価額をどのように決定するのかをはっきりさせておく必要があります。
また、ファントムストックは架空の株式であるため、企業側はキャッシュを支出することになります。株価が高騰した場合に備えて、一定の上限額を定め、換金の上限を設けるといった対策を事前にとっておきましょう。
SARやストックオプションについて
ストックオプションとは、企業の役員や従業員が、一定の金額で自社の株式を購入する権利を得るという制度です。株価がこの金額以上に上昇したタイミングでストックオプションの権利を行使することで、差額を利益として受け取れます。
一方、SARは、「ストック・アプリシエーション・ライト」と呼ばれるもので、役員や従業員に対して、一定期間で起こった株価の上昇分に対する利益を現金で支給する権利を与えるというものです。
そのほか、株式を利用した従業員への報酬制度には、自社株を購入した際の奨励金制度などが挙げられます。株式の奨励金制度は、多くの企業で取り入れられており、ファントムストックやSARよりも一般的でわかりやすい制度となっています。
ストックオプションとは? 仕組み、メリット・デメリット
ストックオプションとは自社株を決まった額で購入できる権利を従業員に与える報酬制度のことです。
ここでは新株予約権との違いや購入するメリット、ストックオプションの種類や税制優遇措置などについて説明します...