今、プレイングマネージャーというポジションに注目が集まっています。プレイングマネージャーとは何でしょうか?
- 単なるマネージャーとは違うプレイングマネージャーが担っている役割
- 求められる能力
- 通常のマネージャーとの違い
- プレイングマネージャーを配置することのメリットやデメリット
- プレイングマネージャーのスキルアップ方法
などについて説明します。
目次
1.プレイングマネージャーとは?
プレイングマネージャーとは、一人のプレイヤーとしての業務と管理職としてのマネジメント業務、両方の業務を担う立場です。
さらに、
- 組織メンバーの一人として売り上げアップへ貢献
- 管理職として、部下を指導・育成
- 組織の指揮・監督
といった役割も担当しています。
組織内での役割
プレイングマネージャーは、個人目標とチーム目標、双方をともに達成することが求められます。このようなプレイングマネージャーは組織内で、
- 一人の構成員として自己研鑽に励み、自分に課せられている目標を達成する
- メンバー相互の支援関係を構築しながら、組織として高い業績、高い成果を挙げる
- 組織の目標を明確にし、メンバーの意識を目標達成に集中させることで、組織の生産性や生産高を上げる
- 組織を構成するメンバーを教育し、企業が求める人材像に近づけるよう成長させることで組織全体を底上げし、強化・拡大させる
などを実践しているのです。
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2.プレイングマネージャーに求められる能力とは?
プレイングマネージャーに求められる能力は、
- プレイヤーとしての能力
- マネジメント業務を担う管理職としての能力
2つはそれぞれ別次元のものに感じますが、共通する要素があります。
- コミュニケーション能力
- 成長意欲
- バランス感覚
では、それぞれの要素の特徴について説明しましょう。
①コミュニケーション能力
部下のスキルや価値観が理解できれば、部下のスキルを最大限に発揮できるでしょう。プレイヤーとしても、組織のメンバーとコミュニケーションをしっかり取ることができれば、相互支援の輪をつくり出せます。
どちらの立場から考えても、コミュニケーション能力は重要でしょう。そのため、部下とのコミュニケーションを図るスキルが求められるのです。
②成長意欲
プレイングマネージャーになった人の多くは、個人のプレイヤーとしても高い成績を収めています。それは、もともと意欲的に仕事に取り組める人である場合が多いことを示していると同じこと。
そこに、組織のマネジメントという新たな業務が加わった際は、管理職としてさらなる成長意欲を燃やして学びを実行する必要に迫られるのです。成長に貪欲な姿勢は不可欠でしょう。
③バランス感覚
プレイングマネージャーは、個人と組織、2つを同時に追い求める立場にあります。
- 部下とのコミュニケーションを重要視するあまり個人の仕事時間が削られた
- 個人の目標達成に集中するあまり組織のフォローがおろそかになってしまった
などは避けたいもの。両方をバランスよく進めることは、プレイングマネージャーに必要な能力です。
3.プレイングマネージャーと通常のマネージャーとの違い
マネージャーは、一般的に部下を取りまとめる管理職という立場にあります。一方、プレイングマネージャーは、部下やメンバーを管理しながら、
- 優秀なメンバーを引き立てる
- 次世代を担うプレイングマネージャーを育成する
という役割を担っているのです。
プレイングマネージャーには、マネージャーのように単なる組織メンバーを管理・監督するだけでなく、自らもプレイヤーとして活躍しながら自分に続く存在となる優秀な人材を発掘して育成することが求められます。
プレイヤーとしての能力とマネージャーとしての能力の違い
プレイングマネージャーには、プレイヤーとして毎日の積み重ねを力にする能力が必要です。一方マネージャーは、
- 企業戦略を踏まえたビジネスモデルの構築
- 企業の本質的課題の解決
- 将来的展望から考察した組織改変
などのマネジメント能力が求められます。プレイヤーは現場で起こるさまざまな案件に対応するのに対して、マネージャーは実務経験とは違った専門的なマネジメント力が求められるのです。
4.プレイングマネージャーが求められる理由・背景
プレイングマネージャーがこれほどまでに求められる背景は何でしょうか?3つの理由について説明します。
- 企業内の人件費削減、管理職の減少
- 組織の意思決定がよりスピーディーに
- 実力主義の潮流
①企業内の人件費削減、管理職の減少
1つ目は、バブル崩壊による1991年3月~1993年10月までの景気後退。バブル崩壊によって経営が一気に厳しさを増した企業は、経営判断にコストカット、効率化を求めるようになりました。
その結果、
- 最少の人員で業務に取り組むため人件費を削減
- 実際の売り上げに直結しない管理職ポストの削減
が当たり前になり、実務とマネジメントの両方を兼務するプレイングマネージャーの存在が必要になったのです。
②組織の意思決定がよりスピーディーに
2つ目は、社会の急速なグローバル化。これにより企業は、スピード感を持った意思決定を余儀なくされるようになりました。
- 現場の生の声を柔軟にマネジメントに生かせる
- 経営層の意思決定を現場に素早くフィードバックできる
などは、企業の将来を大きく左右します。そこで、現場と経営をつなぐ中間管理職として、
- プレイヤーとして現場にも精通している
- 経営側の意向も理解し、目標達成に向けてスピード感のある判断を下せる
という力を備えた中間管理職がクローズアップされたのです。
③実力主義の潮流
プレイングマネージャーになる人物は、下記のどちらもこなせる能力の高い人材といえます。
- 現場を担う個人
- 組織の管理職
このように企業に対して貢献度が高い人材が組織のマネジメントを行うと、
- 指揮命令系統が機能しやすくなる
- 周囲からの納得や協力が得られやすくなる
というメリットが得られます。実力のある人材がスキルを存分に発揮して企業の中で活躍していく、という実力主義の潮流も、プレイングマネージャー誕生の背景にあるといえるでしょう。
5.プレイングマネージャーの具体的な仕事内容
プレイングマネージャーの具体的な仕事内容は4つに分類できます。
- 個人目標の達成
- チーム目標の達成
- チームメンバーのマネジメント
- チームの育成および自己成長
①個人目標の達成
マネージャーと名が付くことからも分かるとおり、マネジメントも仕事の一つ。しかし、組織を構成する一人として個人目標の達成も求められるのです。
たとえば、
- 売り上げを伸ばす
- 新規顧客を獲得
- 販売経路を開拓
マネジメントも含めると、バランス感覚を持って業務に取り組む姿勢が必要となります。
②チーム目標の達成
組織目標の達成も重要です。マネージャーには、組織メンバーを統率しつつ、組織としての大きな目標を達成することが要求されます。
自分自身の目標は達成できたけれど、組織目標は未達で終わってしまった、そんな場合、プレイングマネージャーとしてはまだまだ半人前。個人と組織、両方の目標達成こそが、プレイングマネージャーの証しです。
③チームメンバーのマネジメント
メンバーのマネジメントとは、
- メンバーが抱えている業務の管理・監督
- 組織の目標達成に向けての組織戦略の立案・推進・進捗管理
組織目標は、メンバー同士の歯車が噛み合うことで達成できます。
- 各人の地道な努力を成果につなげる
- 成果をまとめ上げ、高い成果を創造
これらは、プレイングマネージャーにとって大きな役割となっています。
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④チームの育成および自己成長
プレイングマネージャーは、自分自身の成長だけでなくチームの育成も担うのです。
- 自分自身のキャリアアップ、スキルアップ
- 現場に即した現場教育や人材育成
両方をプレイングマネージャーとして実現することは、たやすいことではありません。しかし、自己の成長だけでなくチームの力を底上げすることは、事業拡大には欠かせない要件です。
それを成し遂げる力がある人材こそが、プレイングマネージャーに適した人材といえます。
6.プレイングマネージャーの重要性
プレイングマネージャーとなった人の最初の悩みは、現場と経営層、両者の隔たりをうまく埋めることができないというもの。両者の乖離が大きければ大きいほど、プレイングマネージャーは板ばさみに苦しみます。
しかし、真のプレイングマネージャーは現場と経営層の考えに振り回されることなく、
- 現場と経営層の考えが乖離するに至った背景
- 本来の経営目的とは何か
- 現場に対して、経営層の立場や考えはどのようなものなのか
- 経営層に対して、現場の状況や考えはどのようなものなのか
を自らの言葉を使って理解しやすいように説明し、両者の乖離を統合していくのです。これは、プレイングマネージャーの存在の重要性を表しています。
7.プレイングマネージャー設置におけるメリット
プレイングマネージャーの設置によって得られるメリットは3つです。
- 生産性の高い組織となる
- 現場力が高まる
- 組織へのロイヤリティが高まる
メリット①生産性の高い組織となる
優秀なプレイングマネージャーであればあるほど、実務能力と管理能力、両方に優れています。
自分が能力を開花させて成果を上げることはもちろん、周囲の人の士気も鼓舞できるため、組織全体が高い生産性を実現するのです。それぞれの生産性が高まれば、企業の価値向上にもつながるでしょう。
メリット②現場力が高まる
一般的な管理職やマネージャーは、部下やメンバーを管理するといった組織マネジメントしか行いません。一方プレイングマネージャーは、一般的な管理職が見落としがちな現場の実態も把握できるのです。
プレイングマネージャーが現場でも活躍している、このことは、
- 現場のパワーが向上する
- 組織の業績が上がる
というメリットを生み出します。
メリット③組織へのロイヤリティが高まる
自分もメンバーの一人として現場に関わるプレイングマネージャーは現場への理解度が高いため、メンバーの立場に寄り添い、現場の考えを尊重する傾向にあります。
また、メンバーからも厚い信頼を得ることができるため、組織へのロイヤリティが高まるのです。ロイヤリティは目には見えません。しかし、組織が一丸となって目標に向かう際に欠かせない重要な要素です。
8.プレイングマネージャー設置におけるデメリットと問題点
プレイングマネージャーの設置には、デメリットも存在します。
- 評価基準が曖昧になる
- 仕事量が多くなり、プレイヤーとしての業務を抱え込む傾向にある
- マネジメント能力の不足をプレイヤーとしての個人能力で補いがち
デメリット①評価基準が曖昧になる
1つ目は、個人や組織マネジメント部分に関する評価基準が曖昧になってしまうということ。
- 個人の成果は目標を達成したが、組織目標は未達で終わった
- 組織の目標は達成したが、個人目標は未達で終わった
といった場合はどうでしょう。プレイングマネージャーの評価は、個人に重きを置くか、組織に重きを置くかによって内容が大きく変わってしまいます。つまり、どのように評価基準を設けるのかが曖昧になってしまうのです。
デメリット②仕事量が多くなり、プレイヤーとしての業務を抱え込む傾向にある
2つ目は、業務の抱え込み。これは、業務の難易度が高い場合に起こりやすいでしょう。
プレイングマネージャーである、これは有能の証しです。そのため、組織の成果を上げるために部下に仕事を任せるのではなく「自分で仕事を引き受ければ効率がいい」と考えてしまうケースがあります。
多くの業務を抱え込むことによって、想像以上にプレイングマネージャーの負担が多くなってしまうことはデメリットといえるでしょう。
デメリット③マネジメント能力の不足をプレイヤーとしての個人能力で補いがち
3つ目は、マネジメントとしての能力不足を、プレイヤーとしての能力で補完しがちになる点。
優秀なプレイヤーがプレイングマネージャーに抜擢されるわけですが、必ずしもマネジメント能力も高いかというとそうではありません。マネジメントが機能せず人材育成が進まなければ、
- プレイングマネージャーのマネジメントスキルの停滞
- 成熟した組織づくりの遅延
などが起きやすくなるのです。もしそれをプレイングマネージャーが自身のプレイヤーとしての能力で補おうとしたら、組織にマイナスの影響を与えてしまうでしょう。
9.プレイングマネージャーとしてスキルアップする方法
プレイングマネージャーとしてスキルアップするための方法4つを紹介します。
- コミュニケーションスキルを磨く
- 上司と部下、両者へのホウレンソウを意識
- マネジメントに関する知識を増やし、実務経験を積み上げる
- 効率的な業務遂行を意識
①コミュニケーションスキルを磨く
1つ目は、コミュニケーションスキルを磨くこと。ここでいうコミュニケーション能力とは、対部下とのものです。
部下との有益なコミュニケーションには、
- 日常より部下と積極的に会話をする
- 部下の抱える業務の進捗を把握する
- 今後の方向性について意見交換する
などがあります。コミュニケーションによって部下と業務に対する認識を一致させることが、自身のスキルアップにつながるのです。
②上司と部下、両者へのホウレンソウを意識
2つ目は、上司と部下の双方に対して、ホウレンソウを意識すること。ホウレンソウとは、
- 報告
- 連絡
- 相談
のこと。連絡の遅れは対応の遅れにつながりますし、対応の遅れは大きなトラブルなどに発展します。
上司と部下それぞれにできるだけ正確な情報を流して情報交換を密にすることで、組織が一丸となって目標に進めるような地盤ができていくのです。
③マネジメントに関する知識を増やし、実務経験を積み上げる
3つ目は、マネジメントに関する知識や実務経験を積み上げていくこと。
一人のプレイヤーとして業務をこなしてきた人物が、ある日を境にマネジメントも兼務するのがプレイングマネージャー。そのためマネージャーとしてのキャリアや知識のない初心者といったケースも少なくありません。
そこで実務経験を増やしたり業務時間外でも勉強したりするなど、知識と実務を積み上げていくのです。この努力は、プレイングマネージャーの成長につながるでしょう。
④効率的な業務遂行を意識
4つ目は、効率的に業務を遂行する意識を持つこと。
個人の目標に加えてマネジメント業務が追加されるわけですから、プレイングマネージャーが抱える業務量はどうしても増大してしまいます。
個人の業務だけでなく、組織全体から見て業務の優先順位を意識することで、膨大な業務をこなしながら成果を上げることが可能となるでしょう。