プロボノとは、自身が持っている専門的な知識やスキルを無償で提供する活動のことです。プロボノの意味やメリット・デメリット、活動事例や参加の仕方について解説します。
目次
1.プロボノとは?
プロボノとは、仕事を通じて習得した専門的な知識やスキルを無償で提供する社会貢献活動のこと。
もともと、法律関連の仕事をする人が無償で行う公益活動を指していました。自分のスキルを生かして社会貢献できるため、現在は法律関連職だけでなく、ITやデザイン、広告やコンサルタント、金融などさまざまな業種の人が積極的にプロボノに参加しています。
意味
プロボノの語源はラテン語の「pro bono publico」で、「公益のために」と訳されます。proは「~のために」、bonoは「利益」、publicoは「公の」という意味の語です。
2.プロボノとボランティアの違い
プロボノとボランティアはいずれも無償で行う社会奉仕活動ですが、それぞれの内容は異なります。プロボノとボランティアの違いを見ていきましょう。
スキル
プロボノとボランティアにおける違いは、専門性があるかどうか。
一般的なボランティア活動は、専門的な知識やスキルがなくてもこなせることがほとんど。一方プロボノはそれぞれの業種における専門的なスキルや知識、経験などが必要です。この点でみると、誰もがプロボノに参加できるとはいえないでしょう。
本業との関連性
プロボノは、いわば本業の延長で行われる活動です。本業で培った専門的な知識やスキルを生かした公益活動になるため、本業とかかわりなく参加できるボランティアとは異なります。
またプロボノには専門性が求められるため、ホワイトカラー業種が中心になりやすいです。
パラレルキャリアとの違い
パラレルキャリアとは、本業と並行してほかの仕事や公益活動を行うこと。たとえば本業の仕事が終わったあとや、休日を利用してほかの社会活動に参加します。
プロボノとパラレルキャリアの違いは目的です。社会貢献でパラレルキャリアを始める人もいるものの、「スキルアップや収入アップを目指す」「長年の夢を実現する」などの目的も多く見られます。
またプロボノは基本的に無報酬ですが、パラレルキャリアは報酬を得られることもあるのです。
パラレルキャリアとは?【意味をわかりやすく】副業との違い
パラレルキャリアとは、本業以外の仕事を持って、本業とそれ以外のキャリアを両立させるという生き方のことです。
1.パラレルキャリアとは?
パラレルキャリアとは、P・F・ドラッカーが提唱したもので、「本...
3.プロボノ活動のメリット
プロボノは報酬を得ることを目的としない公益活動です。自社の社員がプロボノを行う、あるいは自社でプロボノを活用すると得られるメリットを説明します。
- ビジネス機会の創造
- スキルアップ
- 採用コストの削減
- イメージアップ
①ビジネス機会の創造
社員がプロボノを始める、あるいはプロボノを招くと、本業以外での社会資本(人間関係や人的ネットワーク、コミュニティなど)が増えて新しいビジネスチャンス獲得の可能性が高まります。
社員のプロボノ活動をとおして新しい社会資本を獲得できれば新ビジネスの創造や、異なる業種の知見の獲得などさまざまなメリットが得られるでしょう。これらのメリットが事業の拡大や収益アップを実現することもあるのです。
②スキルアップ
プロボノを始めた結果、新しいスキルが獲得できることも。プロボノで接する同業他社や他業種の人のなかに、自分にはないスキルを持った人がいるからです。
そのような人たちから新しいスキルや知見、異なるアプローチの仕方などを吸収できれば、自身のスキルアップにつながり、本業の効率や生産性も向上するでしょう。プロボノは無償でスキルアップできる絶好の機会といえます。
スキルアップとは? スキルを高める方法、スキルアップを図る効果
社員のスキルアップはできていますか?
カオナビならスキルを可視化し、戦略的な育成プランが立案できます!
⇒ 【公式】https://www.kaonavi.jp にアクセスしてPDFを無料ダウンロード...
③採用コストの削減
プロボノを活用する側は、採用コストを大幅に削減できます。プロボノを活用せずに専門的な知識やスキルを持った人材を採用する、あるいはアウトソーシングするとなると、それだけ人件費がかかってしまうもの。
しかしプロボノ活動は基本的に無報酬です。交通費や謝礼などを支払っても採用コストを大きく下回るでしょう。
④イメージアップ
プロボノに積極的な企業は、自社のイメージが向上します。その企業が具体的にどのような技術や能力で社会貢献を果たしているのかが、自社イメージに大きな影響を与えるからです。
支援活動のインパクトが強ければそれだけ消費者や株主、また就活中の人に与えるイメージも向上します。これらは利益の増加や優秀な人材の確保に結びつくでしょう。
4.プロボノ活動のデメリット
プロボノ活動では社外の人と接するため、いくつかのデメリットも存在するのです。ここでは3つのデメリットを解説します。
- 情報漏えい
- 本業の遅滞
- 人材の流出
①情報漏えい
プロボノでは同業他社や他業種の人と一緒に活動します。自社へプロボノを招くとなると、自社だけが保有しているノウハウや技術が漏れる可能性も高まるのです。
プロボノ活動は「他人と仕事を行うことと同等」と考え、双方の情報をどのように取り扱うかを決めておかねばなりません。
②本業の遅滞
プロボノ活動を始めた社員が本業の遅滞を招く恐れもあります。一般的なボランティアは1日や数時間といった単発の仕事が多く、基本的には納期を設けません。
しかしプロボノの場合、あらかじめ成果物の納期限が決まっていることも多く、時間的な拘束が発生するのです。プロボノで引き受ける社員は、本業に支障を出さない程度に活動時間を調整させる必要があります。
③人材の流出
プロボノの実施によって人材が流出する恐れもあります。社員がプロボノをとおして出会った人々や他社の考え方に影響を受けて、「今働いている企業よりも、他社のほうが向いているのではないか?」と思い離職してしまうこともあるからです。
プロボノ活動に専念したいという理由で離職を申し出られた場合は、フレックスタイム制度や業務委託に切り替えるとよいでしょう。
5.プロボノの活動例
プロボノに取り組んでいる団体はさまざまです。一般企業や地方自治体、NPO法人などにおける活動例を紹介します。
マーケティング支援
パナソニックではプロボノのひとつとして、特定のスキルを持った社員が、NPOやNGOとチームを組んで活動する「NPO/NGOサポート プロボノプログラム」を実施しています。
活動内容は、マーケティング調査やWebサイトの制作、計画や営業に関する資料の作成など多岐にわたるのです。
ITシステム構築支援
NECでは社会における問題を解決したいと望む団体や社会実業家を公募し、NEC側が支援する「NECプロボノイニシアティブ」を行っています。
目的は、プロボノをとおして応募者とともに協働し、社会価値創造を目指すこと。支援内容には、マーケティング調査やビジネスプランニング、ITシステム構築支援などが挙げられます。
デジタル活用支援
東京都では、課題を抱える各地域の町会や自治会をプロボノで支援する「地域の課題解決プロボノプロジェクト」が実施されています。「1DAYデジタル活用ワークショップ」「地域の課題解決入門講座」「課題解決事例勉強会」などの活動が行われているのです。
Webサイトや資料などの作成支援
認定NPO法人のサービスグラントは、プロボノワーカーと支援対象団体のマッチングを開始しました。
プロボノワーカーがサービスグラントのWebサイトへスキルといった情報を登録すると、プロボノワーカーのスキルに合わせて支援を望む団体とマッチングを行うのです。活動内容にはWebサイトの制作やマーケティング、資料の作成などが挙げられます。
6.プロボノの募集はどこで行われているのか?
プロボノに参加するには、プロボノを探している団体を見つけなければなりません。ここではプロボノの参加方法について説明します。
- マッチングサイト
- Webサイト
- 社内
①マッチングサイト
プロボノのマッチングサイトに自身の情報(職種やスキル、参加希望日時など)を登録し、マッチングが成功すれば参加案内のメールが届きます。参加を承諾すればそのプロボノプロジェクトに参加できるのです。
これにより参加希望者は、自分で一つひとつのプロボノ募集をチェックする手間が省けます。
②Webサイト
支援を必要としている団体のなかには、マッチングサイトを利用せずに独自にプロボノを募集しているケースも。そうした団体の募集をWebで探して、応募するという流れです。この方法では、自分に適したプロジェクトを自分で探せます。
③社内
社内の有志が集まって、NPOといった支援を必要とする団体をサポートする形です。
社内のプロボノなので、社会貢献と自社利益のほか、自社で必要となるスキルや知識、ノウハウの習得といったメリットも得られるでしょう。プロボノ活動で得たことを本業へ生かした人にも向いています。
7.プロボノと弁護士の関係
プロボノ活動は、もともと弁護士による無償のボランティア活動から始まったもの。現在でも国内外問わずプロボノ活動は弁護士業界に広く浸透しています。日本でも、国を相手にした公害訴訟などで弁護士が無報酬で裁判を行うケースが見られました。
ここではアメリカとイギリス、そして日本の弁護士によるプロボノ活動について解説します。
アメリカ
アメリカはプロボノ発祥の地でもあるため、100年も前から弁護士によるプロボノ活動が行われてきました。
全米法曹協会や各州の弁護士会では、低所得者および社会的弱者に対する弁護士の無償サービスを奨励しています。たとえば全米法曹協会の規則では「年間最低50時間の法的サービスの無償提供」と定めているのです。
イギリス
イギリスの法律専門学校では、学生によるプロボノ活動が積極的に行われています。具体的には、ソリシター(事務をメインとする事務弁護士)の事務所の仕事へ学生が参加し、協働で市民に対する法的サービスを提供するというもの。
活動は学校のカリキュラム外ではあるものの、社会貢献や経験を積む目的で8割以上の法学生が参加しているのです。
日本
第一東京弁護士会は2000年にプロボノ活動を「公益活動」と位置づけ、会員に参加義務を課しています。現在は、第二東京弁護士会や大阪弁護士会なども、同様にプロボノ活動を義務化しているのです。
プロボノ活動に参加しなかった会員は、公益活動負担金6万円を支払わなければなりません。罰金の支払いを怠った場合、その会員の指名が公表されるケースもあります。