ピグマリオン効果とは?【具体例でわかりやすく】ゴーレム効果

部下を褒めて育てるピグマリオン効果は、

  • 上司と部下のコミュニケーションの円滑化
  • 新しいイノベーションの創造
  • 高いモチベーションを維持できる部下の育成

を目的に、さまざまな企業で活用されています。ピグマリオン効果とはどのようなものなのでしょうか?

  • ピグマリオン効果の定義や由来
  • 実験内容
  • ピグマリオン効果を用いた具体例や活用方法
  • 「ゴーレム効果、ハロー効果、ホーソン効果」との違い

などの観点から説明しましょう。

1.ピグマリオン効果とは?

ピグマリオン効果とは他者からの期待を受けることで学習や作業などの成果を出すことができる効果のこと

アメリカの心理学者ローゼンタールが、教師からの期待があるかないかによって生徒の学習成績が左右されるという実験結果を報告したことが始まりでした。

ピグマリオン効果は、

  • 教師期待効果
  • ローゼンタール効果

とも呼ばれています。また逆に、周囲から期待されていない人物の成績や成果が平均値を下回る現象もあり、

  • 負のピグマリオン効果
  • ゴーレム効果

と呼ばれているのです。しかしこのピグマリオン効果には、

  • 実証されておらず再現性がない
  • 教師や指導的立場にある人物の心構えの概念と考えるべきだ

といった意見もあります。

ピグマリオン効果の名前の由来

ピグマリオン効果の名前の由来は、ギリシャ神話にさかのぼります。ピグマリオンとは、ギリシャ神話に出てくる彫刻家の名前。この彫刻家は自らが彫った彫像に恋をし、神もその彫像に命を吹き込むという神話が名前の由来になったのです。

ピグマリオン効果は、他者からの期待を学習や仕事の成果につなげる効果です。「褒めて育てる」といった言葉に似ていますね。

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2.ピグマリオン効果の心理学実験と具体的な例

実験内容

ネズミを使った実験におけるピグマリオン効果

ピグマリオン効果は、ローゼンタールとフォードが1963年に行った心理学の実験から誕生しました。ローゼンタールとフォードはネズミを使った迷路実験を行う際、

  • 「これはよく訓練されている賢い系統のネズミ」
  • 「これは訓練がなされていないのろまなネズミ」

と説明して、学生たちのグループにネズミを渡したのです。その結果、下記のようなことが起こりました。

  • 訓練されたネズミを渡された学生のグループは、ネズミを丁寧に扱った
  • のろまなネズミを渡された学生のグループは、ネズミをぞんざいに扱った

ここからローゼンタールは、両者のネズミへの期待値の違いが実験結果にも反映されたと結論付けたのです。そして、学生とネズミの間で起こった現象は、教師と学生間でも同様に成り立つのではないかと考えました。

教育現場での実験におけるピグマリオン効果

教育現場でもピグマリオン効果が認められた実例があります。1964年、サンフランシスコの小学校で、ハーバード式突発性学習能力予測テストと名付けた一般的な知能テストが行われました。

テストの際、学級担任に「これから数カ月の間、成績が向上する生徒を割り出すための知能テスト」と説明をし、テスト後に、検査結果とは関係なく無作為に抽出した生徒の名簿を見せ、「この生徒たちが成績が向上する生徒である」と伝達したのです。

すると、学級担任に「成績が向上する生徒」と見せた生徒の成績は向上していきました。

報告論文では、

  • 学級担任が期待のこもった目で一部の生徒を見た
  • 一部の生徒も自分が期待されていることを意識した

両方が成績向上の要因になったと主張しています。

人材育成の場面における具体例

例①部下のマネジメント

人材育成の場面における具体例として、部下のマネジメントを例にします。まず、上司が部下に対して期待をかけることをきっかけとしましょう。それを受けて部下は、

  • 上司の期待に応えようとする
  • 自分自身で考え、行動を起こすようになる
  • 部下の行動によって、上司への報告、連絡、相談の機会が増える
  • 上司はさらに部下を気にかけるようになる

という好循環を生み出し、結果、部下の営業成績も向上します。

例②新人教育

人材育成の場面における具体例として、新人教育を例にしてみましょう。新入社員向けのOJTにおいて、先輩社員が後輩社員の成長に期待をかけることをきっかけとします。それを受け、

  • 後輩社員は先輩社員の期待に応えようと、作業スピードを向上
  • 先輩社員と後輩社員のコミュニケーションの機会も増える
  • 先輩社員の教育能力も向上
  • 先輩社員と後輩社員の両方の業績や能力が向上

という成果が双方に発生します。

ピグマリオン効果とは、誰かの期待に応えようとする姿勢が成果につながるという考え方のことを指すのです。

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3.ピグマリオン効果とその他の心理的行動の違い

ピグマリオン効果とその他の代表的な心理的行動との違いについて説明します。

  1. ゴーレム効果とピグマリオン効果の違い
  2. ハロー効果とピグマリオン効果の違い
  3. ホーソン効果とピグマリオン効果の違い

①ゴーレム効果とピグマリオン効果の違い

ゴーレム効果とは、ピグマリオン効果が説く「期待」と「結果」の因果関係と同様に、その逆も成り立つという考え方のこと。

たとえば、

  • ある人物に悪い印象を持ちながら接すると、現実にその人にとって悪い人になってしまう
  • 先生がある生徒を良くない生徒だと思いながら接すると、その生徒の成績が下がることがある

といった効果のこと。

  • 悪い印象が良い印象を打ち消してしまう
  • 成績が上がる見込みがないという低い期待度が生徒にも伝わり、実際に成績低下を生み出してしまう

などが原因と考えられます。

ゴーレム効果のゴーレムとは、ユダヤの伝説の中にある意思のない泥人形のこと。ある呪文を唱えるとその泥人形は動き出しますが、額の護符の文字を1文字取り去ると、土に戻ってしまうという伝説に由来しているのです。

ピグマリオン効果がプラスの連鎖を生み出すのとは反対に、ゴーレム効果は負の連鎖を象徴しています。

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ハロー効果とピグマリオン効果の違い

ハロー効果とは、対象人物を評価する際に、際立った特徴に引きずられるように他の特徴についても評価がゆがめられてしまう現象のこと。

ハロー効果のハローとは、西洋の絵画にある聖人の頭上にある光の輪を指しています。ハローエラーと呼ばれるほかに、社会心理学用語の一つとして認知バイアスとも呼ばれています。

ハロー効果には、

  • ポジティブ・ハロー効果
  • ネガティブ・ハロー効果

があり、生じる原因として、

  • 物事を一方の側面から判断することで、即断即決が可能
  • 原始時代では、生存に有利に働く考え方
  • 遺伝的に人類に受け継がれている

などが挙げられます。しかし、人事評価では、評価内容や実像との乖離を表現する際に用いることが多い用語で、評価者が留意すべき事項の一つとなっているのです。ピグマリオン効果の期待と期待に応えようと成果を上げる構造とは、用途が異なります。

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ホーソン効果とピグマリオン効果の違い

ホーソン効果とピグマリオン効果、両者は、類似性の高い概念です。ホーソン効果とは、注目してくれた人の期待に応えたいと思う心理的行動と、それによってもたらされる好結果のこと。

アメリカのウェスタン・エレクトリック社ホーソン工場で行われた実験、いわゆるホーソン実験で物理的労働条件や経済的条件より、「注目を集めている」という意識が生産性を向上させると実証されました。

ホーソン実験による「人は関心を持ってくれる人や期待してくれる人の心に応えようとする傾向がある」という人間の動機付けの結果は、マズローの欲求階層説にもつながっていきます。

  • ホーソン効果:「注目や関心」によって生産性が上がる
  • ピグマリオン効果:「期待」によって成果が上がる

これらが類似性が高いと認識されている部分です。

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4.ビジネスでピグマリオン効果を生かす具体的方法

ビジネスでピグマリオン効果を生かす具体的方法は、5つあります。

  1. 裁量を与える
  2. 期待を必ず言葉で伝える
  3. 能力に応じて達成可能な課題を与える
  4. 褒めることでモチベーションを維持する
  5. 過剰な期待をかけない

①裁量を与える

1つ目は、裁量を与えること。

しかし「期待しています」と声を掛けつつも、実際の現場で上司があれこれと指示を出していては、本当に部下を信じて任せているとはいえず、部下の目には「口先だけの期待」と映ってしまいかねません。

過保護にならず、裁量を与えるところでは細かい指示を出さないどっしりとした構えが必要です。

②期待を必ず言葉で伝える

2つ目は、期待を必ず言葉で伝えること。「期待していますよ」と言葉で伝えることなく、部下に期待を伝えるのは難しいでしょう。

部下が不安そうな様子を見せた際は、

  • 部下が成長してきた部分を説明して安心感を与える
  • 「君ならできる」と励ます

といった言葉でのサポートを行います。

③能力に応じて達成可能な課題を与える

3つ目は、能力に応じて達成可能な課題を与えること。能力を大幅に超える課題を与えたことで、課題が達成できなければ部下は自信を失くします。

部下の能力を見極めながら、小さなハードルを何回も飛び越えさせて、そのうちに大きな成果を生み出せるように積み重ねていくことがポイントになるのです。

④褒めることでモチベーションを維持する

4つ目は、褒めることでモチベーションを維持すること。褒められて嫌な感情を持つ人はあまりいません。

上司から「目標を達成しろ」「頑張れ」と叱咤激励されるよりも、「君ならできる」と期待をかけられるほうがモチベーションは高まり、成果を挙げやすくなります。

⑤過剰な期待をかけない

5つ目は、過剰な期待をかけないこと。部下によっては、期待が裏目に出てしまうことも。過剰な期待によって、「自分にはその期待に応えられない」というマイナスな感情を引き起こしてしまうからです。

  • 部下の性質
  • 私生活の状況
  • 能力

なども加味して、期待値を設定してください。

ピグマリオン効果を得るための注意点に気を配りながら、ピグマリオン効果を活用していきましょう。

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5.ピグマリオン効果の注意点、気を付けること

最後に、ピグマリオン効果の注意点です。それは、褒めすぎに注意すること。

部下を褒めすぎると、

  • 現状に甘んじてしまう
  • 手を抜いてしまう

といった逆効果につながってしまう場合があります。褒められすぎて、成長を自ら止めてしまうのです。

もちろん、期待をかけられることでその期待をしっかりと受け止め、自己鍛錬していく部下もいます。しかし中には、褒められたことで満足してしまう部下もいることを念頭に置いておきましょう。

部下の性格やタイプによって期待のかけ方に工夫しながら、ピグマリオン効果を有効に活用してください

部下の特性に合った期待値の量や質、期待のかけ方を見極めて、ピグマリオン効果を最大限に享受してください。