割増賃金の負担について、原則は「後で契約した会社」が支払いの義務を負うことになっています。どちらの企業が労働者との契約締結を先に行ったのかを確認する必要があります。
貴社が先に労働契約を締結しているのであれば副業側の会社が、副業側との契約が先であれば貴社が割増賃金を払うことになります。
本業、副業に関わらず労働時間は通算される
労働基準法第38条では、
労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する
と定めています。つまり、本業、副業に関わらず労働時間は通算されるという考えです。例えば、本業で8時間働き、副業先で3時間アルバイトをした場合、1日の法定労働時間8時間を超えた3時間分については、割増賃金が発生することになります。
この割増賃金の支払いについて、後から労働契約を結んだ企業に義務が生じるのは、労働契約を結ぶ際に他の会社でも勤務していることを確認した上で雇い入れるべきという理由からです。一般的には、副業先と後から契約を結ぶことの方が多いと思われるので、その場合は割増賃金は副業先が負担することになります。
ただし、本業の所定労働時間を8時間未満(7時間など)と定めている場合は、所定労働時間を超えて本業に従事した分の割増賃金は、本業の企業が支払う義務があります。
割増賃金の計算
割増賃金の計算について、副業としてコンビニで3時間のアルバイトをした場合を例に考えてみましょう。
アルバイト募集時の時給は1,000円ですが、本業で1日8時間労働した後の労働であれば、法定労働時間を超えているので、時給は1,000円×1.25倍=1,250円となります。
また、本業開始前に同じく3時間アルバイトをした場合も、本業の所定労働時間が8時間であることを把握していることを前提に、同じく副業先であるコンビニが割増賃金を払うのが原則です。
割増賃金に関しては慎重な対応が求められる
政府が推進する「働き方改革」の一環として、副業を認める企業も増えていますが、割増賃金についての認識は徹底されているとは言えません。実際の労働時間については、本人の自己申告にしか頼れないのが現状で、異なる複数の企業が一人の労働時間を正しく把握することが難しいのも事実です。
とはいえ、本業があることを把握した上で雇用契約を結んでいるのであれば、割増賃金の支払い義務があることに変わりはありません。場合によっては罰則が科せられることもあるので、慎重な対応が求められます。