希望退職制度は、雇用主と従業員の双方の合意による制度なので、実施にあたり法的な制約はありません。しかしながら、運用にあたっては以下について慎重に検討する必要があります。
- 実施目的の明確化
- 優遇条件
- 応募条件
これらを検討し実施を決定する場合には、従業員や労働組合から理解を得られるよう丁寧に説明する必要があります。さらに、たとえ希望退職制度に応募しても、会社の承諾なしでは退職できないことも、事前に説明することが重要です。
希望退職制度を実施場合の応募条件や優遇条件
希望退職制度を実施する場合、その目的は大きく2つに分けられます。
一つは、経営状況の悪化による人員削減です。企業を守るための重要な措置ですが、従業員の理解を得るために合理性に叶う算定であることが重要です。もう一つは、世代間の人員バランスの調整です。少子高齢化が進む現代では、企業内も高齢化が進み割高な賃金が経営を圧迫する傾向があります。
目的が明確になったら、応募条件や優遇条件を検討します。具体的には以下のような条件を決める必要があります。
応募条件
- 受付期間(通常2週間~1ヶ月間程度)
- 年齢
- 部署や職種
- 勤務年数
- 人数
優遇条件
- 割増退職金の支給額
- 特別休暇制度
- 再就職支援制度
また、期間中に予定人数に達しない場合、2次募集や3次募集を行うかについても検討し、その際の優遇条件についても併せて決定する必要があります。
会社に必要な従業員を退職させない
希望退職制度を実施する際に、もっとも注意したいのは会社に必要な従業員を退職させないことです。退職条件が優遇されているため、辞めて欲しくない従業員が応募してくる可能性もあり、その場合は会社にとって大きな損失となっていまいます。
こうした事態を避けるために、応募条件には会社の承諾が必要な旨を盛り込む必要があります。さらに、辞めてほしくない従業員には事前にその旨を伝え、いわば「逆肩たたき」をするなどの根回しも有効です。
また、技術者については同業他社への再就職を限定したり、退職後の機密保持について厳しく定めたりすることで、安易な応募の抑制につながります。
従業員とのトラブルにならないよう注意
希望退職制度を実施する際は、従業員とのトラブルにならないために、制度設計の段階で目的や条件をしっかり検討しましょう。
同業他社の事例を参考にしたり、顧問弁護士や社労士など専門家にアドバイスを受けるなど、スムーズに運用できるような対策が重要です。