QC / 品質管理とは? QCストーリー、目標設定、目標例

QCストーリーとは問題解決のステップのこと。ここでは、QCストーリーの目標設定方法や5S活動の詳細、QCステップや目標設定の事例について紹介します。

1.QC(品質管理)とは?

今や製造業だけでなく、ITやサービス業でも注目されているQCとは何なのでしょうか。QCとは、品質管理のこと。ここからは、QCとはどのようなものか、誤用が多い単語は何かなどについて解説します。

QCとは品質管理のこと

QCとは「Quality Control」の略で、日本語訳は品質管理です。製造業においては、製品やサービスの品質を規定の水準に保つことを意味します。

品質管理とは、「製品に異物が混入していないか」「規定の品質をクリアしているか」などの基準を明確にし、検査する方法のこと。ポイントとして、統計的な管理と改善活動が挙げられます。

QC管理は主に「QCサークル」が行う

QCサークルとは、職場で働く人々によって自主的に進められる製品・サービス・仕事における質の管理・改善活動のこと。この活動をQCサークル活動と呼びます。

ISOが普及する前の1960~1980年代に盛んに行われた手法で、職場内のスタッフの自己啓発活動としての側面も併せ持っていました。

QCはさまざまな業界で導入されている

QCサークル活動は、病院やサービス業などでも行われています。たとえばコーヒーのチェーン店であるスターバックスでは、従業員が自発的に職場にQCサークルをつくっています。

従業員それぞれの意識が高いため、「店を良くしたい」という思いをみなが持っているのです。そして自らの意志で店のあらゆる品質向上に取り組んでいます。

【誤用注意】QCとQAの違い

QAとは「Quality Assurance」の略で、品質を保証すること。「商品が仕様どおりになっているか」「正常に作動するか」「クライアントの注文どおりになっているか」などさまざまな角度から検証します。

問題があれば報告をして、正しく修正されていれば「終了」です。反対に不十分である場合は、再報告して品質を向上させます。

【誤用注意】QCとQCDの違い

QCDとはQuality(品質)・Cost(コスト)・Delivery(納期)の3つを管理することで、3つの頭文字を取ってQCDと呼ばれます。

低コストで品質のいい商品を作っても、納期が遅いと製造業ではビジネスとして立ち行きません。そのためこの3要素のバランスを取ることが非常に重要といえます。

QCとは、各工程の問題や課題、不備などを改善・向上することで、いわばプロセスの管理です。現在、さまざまな業界で用いられています

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2.QCストーリーとは?

QCストーリーは、問題解決だけでなく課題達成に用いられる場合もあります。問題解決・課題達成は、ストーリー仕立てとなっており、手順があるのです。ここでは、問題解決のQCストーリーについて説明します。

QCストーリーとは問題を解決するための手順

QCストーリーとは、品質管理において問題を解決するための手順で、8つに分かれています。この手順を踏むと、誰もが品質改善の活動を進められるのです。では、8つの手順を見ていきましょう。

  1. テーマを決める
  2. 現状を把握し、問題を明確にする
  3. QC目標を設定する
  4. 問題の要因を特定する
  5. 対策方法を決めて実行する
  6. 効果や成果を確認する
  7. 運営・管理を標準化する
  8. 今後の課題を設定する

①テーマを決める

まずテーマを決めるため、問題意識を持って些細な気付きを書き出します。気付きを抽出する視点の例は下記のとおりです。このなかから今解決したいテーマを取り上げ、なぜそのテーマに取り組むのか理由を明確にします。

  • 重要かつ緊急な品質に関わる問題
  • 日常業務に関わる問題
  • 品質低下を招く納期やレスポンスに関わる問題
  • すでに発生してしまった問題
  • いずれ発生すると予測される問題

②現状を把握し、問題を明確にする

基準・目標などと現状の差を明確にします。数値の水準がある場合は、「売上・納期・利益などの現在の目標値」「規格、品質基準・原価基準」などを明確化するのです。

数値の基準がないときは、「戦略・施策などの組織の方針」「他社との比較」「達成すべき仕事など自身の役割」「顧客のニーズ」「ヒト・モノ・カネ・知識・情報など資産の必要性」といった観点から設定します。

③QC目標を設定する

「何」を「いつまで」に「どこまで」改善するかを数値で明確化します。目標は、下記のように設定します。

  • なにを:→かかげる目標を明確にする
  • どこまで:→具体的な数字で表す
  • いつまでに:→期間や期限を設定する

たとえば「電車内での忘れ物を減らす」場合、「忘れ物件数を6か月後までに40%削減」など具体的に数値化するのです。このような数値目標を立てるためにも、しっかり現状を把握しましょう。

④問題の要因を特定する

要因を洗い出し、影響が大きな要因を選んで仮説を立てます。要因については、上司や経験豊富な現場担当者の意見を参考にするとよいでしょう。

事実やデータにもとづき、影響の大きさを評価することも重要です。意見や評価の結果から影響が大きいとする要因を選ぶ、つまり仮説を立てたら、次のフェーズに移行します。

⑤対策方法を決めて実行する

実行可能で成果に直接つながる分かりやすい対策方法を挙げ、その中から採用する対策方法を選定します。対策方法を決めたら確実に実行しましょう。

注意したいのは、これまでとは違う部分を明確にする点。対策によって誰の業務がどう変わるのかなどを明らかにすると、社員の不安要素もなくなります。

⑥効果や成果を確認する

QC目標で定めた数値と比較してどれほど効果が出ているかを確認します。二次障害や副作用、有形効果と無形効果が見られたらそれらも合わせて確認しましょう。

QCサークルのような活動の場合、士気が上がるなど数値化できない効果が生じる場合もあります。計画を修正した場合は、実際にかかったコストと効果を再検証しましょう。

⑦運営・管理を標準化する

標準化と管理の定着のフェーズは、成果を確固としたものにするために重要な過程です。ここでは、3つの手順を踏みます。

  • 効果の確認:どの程度目標値を達成したのか
  • 管理体制の構築:これまでの成果が元に戻らないようにモニタリング体制を構築
  • 手順の標準化:誰でも理解できるように作業マニュアルの作成

このように対策をいつでも守れるよう、ルール化しておきましょう。

⑧今後の課題を設定する

最後に今後の課題を設定します。課題設定のためにも、下記のような事柄について社員全員で議論するとよいでしょう。それを今後の活動に活用すると、改善のPDCAサイクルがうまく回るようになります。

  • 各ステップでうまくできたか
  • 問題が解決できたのか
  • 解決できなかったこととやり残したことはあるか
  • QCサークルの運営方法はどうだったか

QCストーリーにおいて大切なのは、テーマを慎重に選定し、標準化したものは確実に落とし込んでいくことです

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3.QCストーリーにおける目標設定のポイント5つ

QCストーリーにて目標を決める際、5つのポイントがあります。それぞれのポイントの詳細について見ていきましょう。

  1. 具体性:具体的な目標かどうか
  2. 計量性:効果の測定範囲
  3. 達成可能性:達成可能かどうか
  4. 関連性:どのようなことにつながるか
  5. 期限:期限が明確になっているか

①具体性:具体的な目標かどうか

目標を設定する際はできる限り、数値化・定量化できるものにすると到達度が測りやすくなります。たとえば営業部門では、売上や受注件数が挙げられるでしょう。

一方で間接部門は業務の特性上、成果を数値で表現しにくいため、目標が設定しにくくなったり成果を評価に反映しにくくなったりします。

②計量性:効果の測定範囲

数値で採れるデータは多岐にわたるため、誰がどのようにどこまでのデータを採るのかを決める必要があります。データとして効果が出る例は、下記のとおりです。

  • 売上高
  • 残業時間数
  • 生産数量
  • 顧客数
  • リピート率
  • 不良在庫数
  • 在庫回転率
  • 離職率
  • 社員満足度
  • 改善提案件数

③達成可能性:達成可能かどうか

ビジネスでは高い目標を設定しがちです。しかしあまりにも非現実的な目標では失敗する可能性も高いでしょう。また目標が達成できないと、当初のモチベーションが低下し、行動力が落ちたり、業績効率が悪化したりするケースもあります。

そのため高い目標でありながらも実現可能な目標の設定が、重要になるのです。

④関連性:どのようなことにつながるか

目標が事業の本質から外れていないか、目標を達成するとどうなるのかを明確にすると、QC活動のモチベーションを維持できます。

たとえば「売上を1,000万円アップさせる」といった数値目標がある場合、「1件200万円の売上がある新規顧客を5件獲得する」といった関連性のある目標を設定するとよいでしょう。

⑤期限:期限が明確になっているか

目標達成の期限を決めなければ、具体的な対策・行動は決定できません。

売上目標を1,000万円と設定しても、期限が1か月であれば既存顧客内から売り渡し先を急いで探す必要があるでしょう。また期限を設定しない場合、目標達成のための具体的な行動を起こさない社員も現われる可能性も高いです。

しかし期限が半年であれば、新規顧客開拓の企画から始められます。明確かつ行動に余裕を持てる期限を意識しましょう。

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4.QC目標設定につながる5S活動について

5S活動が順調な場合、その活動はQC活動に発展しやすいです。しかし5S活動を行うには、定義の正しい理解が重要となります。ここでは、5S活動の詳細について見ていきましょう。5S活動とは、下記のとおりです。

  1. 整理
  2. 整頓
  3. 清掃
  4. 清潔
  5. しつけ

①整理

整理とは、仕事のなかで必要なモノを明確にすること。必要性がはっきりすれば、的確で、無駄のない仕事ができます。また整理を通じて、仕事の必要性や価値を見極める練習ができるのです。

資料などのビジネス情報を常に最新のものにすれば、間違いや混乱を防止できるでしょう。文具などの備品の管理情報を共通化すれば、利用や保管の効率化につながります。

②整頓

整頓のポイントは、下記の3つです。

  • 必要なものが必要な時にすぐに取り出せる状態
  • 誰でも容易に取り出せる状態
  • 容易に元の場所に戻せる状態

これらをすべて満たせば、「仕事で使用するものがつねに同じ場所にあり、決められた保管方法で収納してある」状態になります。また使用するものの安全性や効率性を考えた場所・方法などで保管しておくようにしましょう。

③清掃

清掃では、誰がやっても同じクオリティのきれいな状態を維持することが大切です。「きれい」の感じ方や捉え方は人によって異なるため、基準を設定しておきましょう。そして、継続するために清掃ルールを決め、習慣としていくのです。

清掃には、「点検や品質不良をなくす」「会社の評価を高める」などの役割があります。

④清潔

清潔とは、整理・整頓・清掃の3S活動が徹底できている状態のこと。

たとえば不要なものが発生した場合、整理が徹底されていないことになります。また職場が乱れていたり職場が汚かったりした場合、清潔という条件が満たされていないことになるのです。清潔は、こうした3S活動の進化型といえます。

⑤しつけ

しつけとは、決めたこと・決められたことを、いつも守って習慣化すること。

ルールを守らない人の心中に「これくらいなら大丈夫」という根拠のない安心感がある場合も少なくありません。しかし根拠を伴っている場合、標準が変わることには問題がないでしょう。

整理・整頓・清掃の3S活動をしっかりと行うと、残りの清潔・しつけの2S活動ができるようになります

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5.【企業別】QCステップや目標設定の事例を紹介

最後に、QCステップや目標設定の事例について企業別に解説します。企業ごとに業種が異なるため、基本的なQCストーリーを押さえつつ、企業文化に合う独自の方法を導入しているのです。では、5社の事例を見ていきましょう。

トヨタ

日本の大手自動車メーカーである「トヨタ自動車」では、QCストーリーの8ステップが含まれるTBP(トヨタビジネスプラクティス)という問題解決方法を採用しています。

TBPの狙いは、人材育成や組織能力向上、意思決定のスピードアップ。全社員に浸透させるため、新入社員教育から階層別教育まですべてにおいて取り入れています。

ユニティサークル

社会福祉法人ゆたか会の障がい者支援施設清湖園にある「ユニティサークル」では、日によって業務にムラが出る状況を改善するため、QCステップを導入しました。

テーマを選定する際は、問題点をサークル員で持ち寄り、推進委員などの助言を受けマトリクス図を作成。対策後は、処置時間の短縮効果が見られました。

ニチイ

医療・介護・保育サービスを全国で提供する総合生活支援企業「ニチイ学館」では、患者さんの会計待ち時間を短くするため、業務量調査を実施しました。

そして担当部署を持ちまわる方式に変更し、受け持つ6つの仕事を1時間ごとのローテーションにしたのです。結果、スタッフの集中力の持続に変化が現われました。

TMJ

ベネッセコーポレーションより独立した総合BPOサービス会社「TMJ」は、活動の主眼を「Quality(業務の品質)」「Cost(収益・付加価値)」「Delivery(納期・回答率)」「CS(顧客満足度)」の4点に置きました。

提供する価値を向上させるという顧客に喜ばれるテーマを選び、活動を通して「職場の活性化」「人づくり」を促進しているのです。

和食寿司店

ある和食寿司店では、新人のパート・アルバイトを1週間という短期間で戦力とするため、職場内のQCサークルが指導システムを作成しました。

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