最近、QOL(生活の質)という言葉をよく耳にするようになりました。さてこのQOLとはどんな意味を持つ言葉なのでしょうか。
目次
1.QOLとは?
QOLとは、”Quality of Life”の略で、「人生の質」や「生活の質」のこと。企業でも従業員の労働環境や健康維持といった点にて、注目されています。医療や介護の現場でもQOL研究や取り組みが進められています。
2.QOLが重要視される背景
医療の現場では、病気の治療のみならず、患者が満足のいく日常生活を送れるかどうかが、重要な目標になってきました。
また介護といった医療施策や地域の行政サービスの場面でも、健康関連のQOLは代表的な指標となっています。個人の健康上のQOLを考慮すれば、医療の質を改善するきっかけにもなるのです。
働き方改革との関係性
では企業における従業員のQOLはどうでしょうか。従業員が業務以外のプライベートな時間を充実させると、「残業をしない」「有給の消化率が高い」といった働き方になります。つまり従業員のQOLの向上を図ると幸福度が高まり、人材確保にもつながるのです。
3.QOLの評価方法
QOLは精神的なもののため、評価しにくいという問題がありました。しかしQOLの測定結果を数値で表すという方法が考え出され。患者のQOLが明らかになったのです。
SF-36
SF-36とは、「身体機能」「体の痛み」「全体的健康感」「活力があるか」「社会生活機能」「日常役割機能(精神や身体について)」「心の健康」など健康概念を測定するものです。QOLの評価方法で、36項目からなるアンケート方式となっています。
SF-36を利用すると「異なる病気の患者の間で QOL を比較する」「患者の健康状態を健康な人と比較する」などができるため、よりよい看護や介護に生かせるのです。
SF-36の評価方法
SF-36では、質問項目の下位にて、一部選択肢に注目して点数を加減します。それにより詳細が理解しやすくなるのです。
たとえば心の健康に関する選択肢は、「神経質」「落ち込み」「穏やかな気分」「ゆううつな気分」「楽しい気分」となっています。最後に得点化され、0~ 100点の範囲で得点が高いほど良い健康度を表すのです。
質問項目に複数の回答がある場合、より詳細が分かり、精度が上がるよう調整されます。
WHO QOL-26について
WHO(世界保健機関)から、一般向けQOL質問票「WHO-QOL-26」が出版されました。「身体領域」「心理領域」「社会領域」「環境領域」4つからなり、それぞれ0~100点を付けます。またよく分析し、妥当かどうかの考察も必要です。
4.QOLを向上させる方法
企業にとって、従業員の健康維持は必要不可欠。従業員が心身ともに健康で、幸福に働き続ければ収益につながるからです。そのためにも企業は、従業員の健康やQOL向上のためにさまざまな取り組みを進めましょう。
それでは、QOLを向上させる6つの方法について見ていきます。
- 趣味やボランティアなどに取り組み、生きがいを持つ
- 良質で十分な時間の睡眠を取る
- 規則正しい食生活を送る
- 適度に運動する
- 瞑想の習慣
- 笑う習慣
①趣味やボランティアなどに取り組み、生きがいを持つ
たとえば「アマチュアオーケストラや合唱団に参加する」「ボランティア団体に所属して地域を清掃する」など。これにより会社以外の世界ができるため、張り合いにして生き生きと暮らせるでしょう。
②良質で十分な時間の睡眠を取る
睡眠不足は、「疲労感」「情緒不安定」「適切な判断が難しい」といった状態を招きます。また熟睡できないと生活習慣病のリスクが高まり、すでにかかっている場合は症状を悪化させる可能性があるのです。
良質で十分な睡眠の確保は、QOLを高めるためにも極めて重要といえます。
③規則正しい食生活を送る
「食べる」ことは精神面に大きく影響します。「おいしいものを食べている」と満足感や幸福感が得られますし、会食なら同席の人とその気持ちを共有できるでしょう。
またその食事を用意してくれた家族や飲食店、食料品店へ感謝の気持ちを持てば、自分が大切にされていると感じられます。
④適度に運動する
激しい運動でなくても、かんたんなストレッチやウォーキングなど軽度な運動を行うと、血行が良くなり体も温まって気分が明るくなるもの。全身のコリがほぐれ、筋肉や節々の痛みが和らぐ場合もあるでしょう。
また体を動かすと、生活習慣病が予防できるとされています。
⑤瞑想の習慣
瞑想の歴史は古いです。心と体の鍛錬で身体のリラックス感が深まるため、精神バランス改善のために長く利用されてきました。
海外の多くの研究では瞑想により、「高血圧」「過敏性腸症候群」「潰瘍性大腸炎」の症状を和らげる可能性があるそうです。不安感や抑うつ感の症状を緩和し、不眠症患者にも効果があるという説もあります。
⑥笑う習慣
人は「楽しい、面白い、明るい」などの気持ちの際に笑うもの。その際全身の筋肉や呼吸器が活発に動くため、体にも良い効果があるのです。
よく笑う人はストレスを解消しやすく、長生きする傾向があるとされています。「笑う門には福来る」ということわざもあるとおり、笑う習慣はQOLのプラスになるでしょう。
5.QOLが低下してしまう例
毎日を快適に、生き生きと楽しく暮らしていければよいものの、残念ながら現代社会にはQOLの低下を招く要因があります。どんな場合に起きるのかあらかじめ知って、対策に結び付けましょう。
メンタルヘルス
メンタルヘルスの問題で1カ月以上休業したり、または退職したりする人が増えています。悩みやストレスなど精神的な負担は、QOLを低下してしまう大きな要因となるのです。
従業員が健康で生き生きと働き続けると、業績向上につながります。企業は従業員のメンタルヘルスケアに積極的に取り組むとよいでしょう。
職場でのストレス
仕事や職業生活に関することで強い不安や悩み、ストレスを感じる人が増えています。たとえば、「仕事の質や量」「仕事の失敗や責任の発生」「セクハラやパワハラを含む対人関係」「昇進や昇格、配置転換といった役割の変化」など。
自分で解決したり、誰かに相談したりできればいいものの、一人で悩み続けてしまうと心身に悪影響を及ぼします。
家庭でのストレス
従業員がなぜか元気なくミスが多い、欠勤が続くなどといった場合、本人の家庭環境でのストレスが原因になっている場合があります。
誰でも家庭や親戚・職場・友人関係・地域・趣味のコミュニティなど、さまざまな背景を持つもの。軽微なストレスであれば克服できますが、同時に多くのストレスが降りかかると大きな負担になります。
収入の減少
経済的な不安もQOLを低下させる要因です。多額の借金やローンを抱えていたり、収入減に見舞われたりすると大きなストレスになります。自分の浪費が原因の場合もあれば、予期せぬアクシデントによる出費や収入減が起きる場合もあるでしょう。
支出を見直す、専門家に借入れを相談するといった、前向きな解決が必要です。
運動不足
運動不足だと筋肉が衰え、生活習慣病になりやすくなります。適度に運動すれば、「気分が明るくなる」「心身がリラックスする」「睡眠のリズムが整う」などが期待できるでしょう。
しかし急に激しい運動をすると、疲れてしまったり体を傷めたりする可能性も高いです。楽しみながら適度に、毎日継続して行いましょう。
6.企業でQOLを実践する方法
企業は、従業員が健康で生き生きと働き続けられるよう、QOLの向上を目指していく必要があります。実際に下記のような取り組みがなされているのです。
- 従業員の健康チェック
- 年次有給休暇の取得
- テレワークの導入
- 残業時間の削減
①従業員の健康チェック
健康サービスに関する事業を行っている企業にとって、従業員が生き生きと働いているイメージは対外的にも必要なもの。健康チェックを行えば、個人に応じた保健指導や効果的な予防策、健康づくりの提案を進められるでしょう。
②年次有給休暇の取得を促す
自分の時間を持ってリフレッシュしたり、学んだりすると幸せに働いていけるため、有給休暇取得率100%を掲げる企業もあります。休暇取得が風土として定着した働きやすい環境を用意すれば、優秀な人材も確保できるでしょう。
③テレワークの導入
テレワークを導入すると、個人の生活スタイルに合わせて働きやすくなり、QOLの向上が期待できます。
メリットは、「育児や介護と仕事の両立」「通勤による疲れを軽減」「地域コミュニティへの参加機会が増加」「住む場所の選択の幅が広がる」など。生産性・効率性の向上も期待できます。
④残業時間の削減
残業時間を減らすと、魅力的な職場というイメージを与えられるため、人材確保や定着に良い影響をもたらすのです。「新システムや機材、設備の導入で全体の作業時間を短縮する」「ジョブローテーションの導入」「勤務シフトの見直し」などがよいでしょう。