R&Dとは? 意味や種類、企業が投資するメリットをわかりやすく

R&Dとは企業の研究開発業務のこと。また研究開発業務を扱う部署や組織のことをR&Dと呼ぶこともあります。

1.R&Dとは?

R&Dとは、自社の事業領域に関する研究や新技術の開発、自社の競争力を高めるために必要な技術調査や技術開発といった活動を行うことで、「Research and Development」の略称です。

企業が継続的に発展するには、成長分野の見極めやその分野に参入する技術、優位性の確保やさまざまな変化に都度適応していくことが必要となり、それらの技術的な課題に取り組むのがR&Dなのです。

近年、大学や公的研究機関と連携する取り組みも広まっています。

R&Dは直接的に現在の利益に結び付くものではありません。しかし、新製品の開発や新技術の確立によって企業の将来的な収益を担う重要な業務です

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2.R&Dの目的

R&Dの目的は研究や開発に資源を投資して新たなビジネスチャンスを生み出す機会を得ること。

新製品を開発したり新技術を確立したりすれば、他社と差別化を図ることができます。また、新しく生み出された技術や製品に対して特許を取得し、他社が使用できないよう防衛したり使用を許諾したりすれば、特許使用料を得ることができるでしょう。

新たな研究や開発が形になればその市場で優位に立つことができるということから、メーカーに限定されず流通業やサービス業において、R&Dに対する関心が高まっています。

R&Dを常に先行させ、時代のニーズに合った商品・サービスを開発すると、将来の売り上げに結び付きます

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3.R&Dの種類

R&Dの機能は下記3項目に大別されます。

  1. 基礎研究
  2. 応用研究
  3. 開発研究

①基礎研究

基礎研究(Basic research)の目的は、技術を知的資産として積み重ねること。研究開発では将来の事業収益向上が期待される分野のみが対象とされがちです。そのため、現時点で実用化や事業化が見通せないものの優先順位が下げられることも珍しくありません。

しかしこれには事業基盤を覆すような新技術が登場した際、後手に回るというリスクがあります。そういったリスクを軽減するため、いつ開発できるか分からない技術でも資産として純粋科学的に追求する「基礎研究」の重要性が叫ばれているのです。

②応用研究

応用研究(Applied research)は基礎研究によって発見された知識を利用して具体的な商品開発を進めるもの。特定の目標を定めて実用化の可能性を確かめたり、すでに実用化されている方法に関して新たな応用方法を探索したりすることが目的です。

どんなに画期的な新素材や新発見を見つけても、それが利益に結び付かなければ役立ちません。主に基礎研究で生み出された素材や理論を追求して事業推進に結び付けます。

③開発研究

開発研究(Experimental development)では、基礎研究、応用研究で生まれた技術を複数組み合わせて新たな開発を進めていきます。新しい材料や装置、システムや工程などを導入して既存のものを改良することが狙いです。

いつ開発できるか分からない技術を資産として積み重ねる基礎研究、基礎研究の成果を実用可能な技術に転換する応用研究、それらを最終的な商品として開発することを念頭に置いた開発研究と、それぞれの研究に相互関係があります。

同じR&Dでも基礎、応用、開発と3段階に分かれます。従来の研究所主導のイノベーションではなく、顧客価値創造の視点に立ったマネジメントが求められているのです

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4.R&Dのメリット

R&Dを先行させることにはどのようなメリットがあるのでしょうか。

技術資産が増える

さまざまな研究を進めることで、企業には技術資産が増えていきます

近年、企業価値に占める技術資産の比率が増大しているのです。製造業やIT分野では、企業の利益を増大させる源泉が工場や施設、設備に代表される「有形固定資産」から研究開発活動を通じて蓄積されたノウハウや特許などの「技術資産」に移行しつつあります。

技術資産のマネジメントは、企業価値の増大を図る上で重要です。自社の技術資産ステータスを客観的に把握することで将来的に応用の可能性を見出すことができます。

製品の改良や開発が早まる

R&D業界は研究職に分類されます。専攻分野に関する高い知識や技術を持ったスタッフが集まって研究を進めるため、製品の改良や開発を早めることができるのです。

一般企業におけるR&Dでは研究開発が企業の将来の収益につながることが求められます。独自性が高く付加価値の高いもの、特許を取得しているもの、いち早く製品化できたものなどは、事業収益の向上に結び付くでしょう。

研究開発現場では常に財務的な経営成果につながる目標と、先を見据えて研究開発を強める目標の2軸思考を意識することが重要です。

拠点によっては低コストに

ここ数年、多国籍企業のR&D国際化が急速な展開を見せています。欧米拠点には高度なイノベーション推進のメリットが、新興国では低コストR&Dの実現のメリットが挙げられているのです。

アジアをはじめとする新興国へのR&D展開は、日本企業にとってまだ日が浅いものですが、約3割の企業が自社の代表的な海外R&D拠点のひとつにアジアを選んでいます。

また海外研究開発拠点の設置理由に海外で研究開発を行うほうがコスト的に有利だと回答した企業は、平成15年時の調査で約26%にのぼりました。

人材の確保

研究者や専門分野の知識を持つ人材の確保も重要です。

近年、民間企業や教育機関、公的機関などが協力して行う「産学連携」が活性化しています。成長著しい各市場にて、自社の研究所だけですべてのアイデアがひねり出せるとは限らないと考える企業が増えてきたのです。

これらの機関と手を組むと、企業にとって知識の吸収や協力関係の構築、競争力の確保が可能になります。外部の高度なR&D設備を利用することで他社との差別化や地位向上を図ることも可能となるでしょう。

R&Dをうまくマネジメントすると、技術開発の戦略的資源である技術人材が活性化します

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5.R&Dの問題点、課題

ここではR&Dの問題点や課題点を見ていきます。R&Dの課題は大きく分けて2つです。

コストがかかる

研究のすべてが実現し商品・サービス化されるとは限りません。また研究そのものに人件費や設備費などさまざまな維持費が発生します。顧客に価格のメリットを感じさせるためのコストマネジメントがR&Dの課題となるのです。

拠点の吸収能力の構築を軽視したり、外部とのコラボレーションを抑制したりしてコスト削減を進めると、マイナスに作用することもあるため注意が必要です。

知的財産のリスク

R&Dを社外に依頼したり遠方に拠点を設けたりすると、情報の流出など知的財産に関するリスクの発生が高まります。

2009年に発表された独立行政法人経済産業研究所による調査では、アジアの展開には低コストR&Dの実現といったメリットがある一方、知的財産権に関するリスクや従業員の転出といった問題点が指摘されているのです。

企業には、R&Dに対するアプローチを適時見直すことが求められます。

R&Dの問題点や課題は特定の業界や企業に生まれるものではありません。自社で発生した際、どう対応していくか、あらかじめ想定しておくとよいでしょう

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6.R&Dの事例

ここでは実際にR&Dを推進した2社の方針や考え方を紹介します。

キリン

「食」と「医」2つの事業領域を有するキリングループは6つの研究所を備えています。

  • 中長期の視点で変化を洞察し独自技術の創出や獲得を目指す「基盤技術研究所」
  • 酒類事業に資する基幹技術の開発評価を行う「酒類技術研究所」
  • ワインやスピリッツおよびリキュールを中心とした酒類事業の開発評価を行う「ワイン技術研究所」
  • 健康領域でイノベーションを創出する「健康技術研究所」
  • 清涼飲料事業の開発評価を行う「飲料技術研究所」
  • 包装容器関連技術の開発評価を行う「パッケージング技術研究所」

キリンのR&D本部では「食から医にわたる領域で価値を創造すること」を目指しています。

JR東日本

鉄道システムにおける新たな価値やサービス創造のため研究開発を推進してきたJR東日本。

時代を先取りした技術革新の実現に向けて「安全・安心」「サービス&マーケティング」「オペレーション&メンテナンス」「エネルギー・環境」の4つの分野から研究開発を進めています。

目指すものはあらゆる事業活動で得られたデータから新しい価値を生み出すこと。世界最先端の技術を取り入れるためさらなるオープンイノベーションを推進し、革新的なサービスを提供し続ける「イノベーション・エコシステム」の構築を目指しているのです。

取り巻く環境が目まぐるしく変化する中でも、R&Dは企業の存続と将来に不可欠です。企業の将来的な方向性や収益を担う重要な業務だといえるでしょう

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7.R&Dの歴史

R&Dの重要性が叫ばれるようになったのは、1970~1980年代の高度経済成長期だといわれています。

その頃、企業成長戦略とR&D投資傾斜配分を背景に研究所の新設が相次ぎました。しかし当時は基礎研究から製品開発までのすべてを自社で行っていたため、市場や顧客ニーズとかけ離れた研究に陥ることも珍しくなかったのです。

そして自前主義がはびこり、事業部門と開発部門、また本社との方向性の違いにより、中央研究所は孤立してしまいました。

近年では研究所として分離させることをやめ、研究開発本部内の一部門としてR&Dを配置するのが一般的です