レコグニションとは、「認識」あるいは「承認」と訳される言葉で、レコグニションが人事制度で用いられる際には、「従業員の活躍を賞賛する仕組み」と解釈されるのです。
- レコグニションという言葉の意味やメリット
- レコグニションの仕組みを構築する方法
- レコグニション制度の導入事例や具体的サービス
などについて詳しく解説します。
目次
1.レコグニションとは?
レコグニションの言葉の意味は、「認識」「承認」です。レコグニションが人事用語で用いられる際の意味は、従業員が取り組んでいる仕事に価値があることを認め、その活躍を賞賛・承認する仕組みとなります。
レコグニションは従業員の労働に対して賃金や賞与といった金銭的な報酬で評価するだけでなく、表彰制度といった非金銭報酬を利用して当該従業員を賞賛あるいは承認といった栄誉をもって報いるのです。
通常の給与制度になかった視点が盛り込まれているレコグニションは、多くの企業で採用されており、代表例に、
- 永年勤続表彰
- 業績表彰
などの従業員表彰制度があります。
ソーシャルレコグニションとは?
従業員の働きを非金銭的な報酬で賞賛・承認するレコグニションと、「社会的な」「社交的な」と訳されるソーシャルが合わさった言葉に、ソーシャルレコグニションがあります。
ソーシャルレコグニションとは組織において、組織の構成員同士が相互に承認し合う仕組みのこと。お互いを認め合うことで、ポジティブな職場の雰囲気や個人のモチベーションアップが期待できると注目されているのです。
2.レコグニションとリワードの違いは?
レコグニションと類似した言葉に、リワードがあります。リワードとは、金銭を伴うインセンティブ、たとえば賃金や賞与などの報酬を意味します。
レコグニションが非金銭的報酬によって従業員の取り組みについて賞賛・承認するのに対しリワードは従業員に対して金銭をもって評価・承認するのです。
どちらも違った角度から従業員のモチベーションを高める効果が期待できます。両者をバランス良く人事制度に取り入れるとよいでしょう。
3.レコグニションのメリット
レコグニションには、3つのメリットがあります。
- 従業員エンゲージメントを高める
- 優秀な人材を流出させない
- 会社の雰囲気がポジティブになる
メリット①:従業員エンゲージメントを高める
1つ目は、従業員エンゲージメントを高めること。
一般的に従業員エンゲージメントの向上には、昇給や昇格が有効と考えられています。しかし、金銭的報酬は、一時的な幸福感を生み出しても、未来に続く愛社精神を高めるまでには至りません。
レコグニションはその点安定して永続的にモチベーションを高めることができる仕組みとして評価されているのです。
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メリット②:優秀な人材を流出させない
2つ目は、優秀な人材流出を食い止められること。
レコグニションは、従業員エンゲージメントを向上させます。「自分の働きがみんなから評価されている」という幸福感は、愛社精神や帰属意識を想像以上に高める効果があるのです。結果、優秀な人材が社外へ流出することを阻止できます。
メリット③:会社の雰囲気がポジティブになる
3つ目は、会社の雰囲気がポジティブになること。
仲間や会社が自身が取り組んだことへの価値を認めてくれる、そんな環境は会社をポジティブな雰囲気に変えます。それは、企業カルチャーにも大きく影響を及ぼすでしょう。
レコグニションを実践すれば会社は前向き、積極的、肯定的な雰囲気で満ち溢れていくのです。
4.ソーシャルレコグニションの仕組み・環境を構築するには?
社内でソーシャルレコグニションの仕組みや環境を構築するにはどうしたらよいのでしょうか。ポイントを3つ解説します。
- 表彰制度や奨励制度の対象範囲を明確にする
- レコグニションを与える規準や方法を決める
- 効果を確認し、改善する
①表彰制度や奨励制度の対象範囲を明確にする
レコグニション構築に当たり、まず考えるのは表彰制度や奨励制度の対象範囲です。
レコグニションの対象に、正社員以外のパートやアルバイト、契約社員や派遣社員といった非正規社員を含めるかどうか検討します。非正規社員も対象範囲に含められれば、レコグニションを全社的に展開できるでしょう。
対象社員に「自分も組織の一員として、会社から認められている」といった充足感や安心感を与えられます。
②レコグニションを与える規準や方法を決める
レコグニションの構築に当たってはレコグニションを与える規準や方法の決定が必要です。一般的に組織内でレコグニションを行う場合、
- レコグニションを与える人物
- レコグニションを与えられる人物
- レコグニションを与える規準
- レコグニションを与える場所または方法
- レコグニションを与えるタイミング
5要素の仕様を決定します。効果的にレコグニションを構築・導入するためにも、これら5要素を明確に定めましょう。
③効果を確認し、改善する
仕組みを構築して導入するだけでは、レコグニションは有効に作用しません。レコグニション導入後に、効果を確認して改善点をあぶり出す作業が欠かせないのです。
「従業員同士の賞賛制度を導入したが、実際の職場では機能していない」といったケースも多く見られます。
構築したレコグニション環境は必ず従業員の視点で評価し、運営上の問題点や課題を修正しながら、それぞれの現場や企業に即した使い勝手の良いレコグニションを再構築しましょう。
5.レコグニション制度の導入事例
実際にレコグニション制度を採用している企業2社の事例を取り上げ、レコグニションの具体的な活用方法を解説しましょう。
- メルカリ
- オリエンタルランド
①メルカリ
メルカリでは、レコグニション制度として「メルチップ賞」を設けています。
事業規模が大きくなると顔と名前が一致しなくなるだけでなく、コミュニケーションの弊害も生じ、そこからさまざまな問題へと派生します。
そこでメルカリでは「メルチップ」と感謝の言葉を併せて相手に贈るという、物理的距離の壁を越えて組織の一体感をつくり出す仕組みを導入しました。今まで見えなかった従業員の仕事ぶりが可視化されるという副次的効果も発揮しています。
メルチップは1ポイント=1円で運用し、最も多くメルチップを得た従業員にメルチップ賞を授与するのです。メルチップなしで感謝の気持ちだけを贈ることも可能ですので、気楽なコミュニケーションツールとしても活用できます。
②オリエンタルランド
東京ディズニーリゾートでお馴染みのオリエンタルランドも、キャストと呼ばれる従業員向けにレコグニション制度を複数設けています。
その中、オリエンタルランドのブランディングに最も貢献しているのが、「ファイブスター・プログラム」と呼ばれる制度。
来場者へのおもてなしに対する判断・行動基準「The Four Keys~4つの鍵~」に従っている従業員に対し、上司からファイブスターカードが手渡されるのです。
カードを5枚集めた従業員は、特別なパーティー「ファイブスターパーティー」に参加できます。従業員が来場者の満足度を向上させるだけでなく、従業員を評価する上司も来場者目線で評価を行うため、顧客満足度をより高める好循環を生み出すのです。
東京ディズニーリゾートのリピーター率は9割以上というデータを支えるのはレコグニション制度、といっても過言ではないでしょう。
6.ソーシャルレコグニションに関する主なサービス【賞賛システム】
ソーシャルレコグニションを提供している賞賛システム2つをご紹介します。自社にマッチするソーシャルレコグニションサービス導入の際の参考にしてみてください。
- Unipos
- Achievers
①Unipos
Uniposは従業員同士が「ピアボーナス」と名付けられた成果給を贈り合う賞賛システム。従来の基本給や業績給といった給与体系にプラスして、同僚などからの「感謝の気持ち」を少額のボーナスに代えて支給するのです。
これはスマホやチャットから簡単に投稿でき、投稿はタイムラインで共有できます。投稿はハッシュタグで行動指針に紐付けることができるため、行動指針の体現化としても活用可能です。
良い投稿には拍手で賛同できるなど、従業員が組織で賞賛される行動を自然に取るよう導かれる仕組みがそろっています。
ピアボーナス制度とは?【目的・メリットをわかりやすく】
ピアボーナスは、従業員同士が賞賛や承認とともに少額の報酬を互いに送り合う仕組みです。今までの給与制度にはなかった新しい仕組みとして、多くの企業で制度として採用されています。
ピアボーナスの効果や導入...
②Achievers
Achieversはネットワーク上に存在している端末で、1対1の対等な関係で通信を行うP2P (Peer to Peer)を利用した賞賛システム。
P2Pを使って、相手に感謝の気持ちや報酬を与えることができます。やり取りは1対1で完結するため、職場にいる他メンバーの反応を気にする必要はありません。
Achieversは、集団心理に左右されず、自分の中にある素直な感謝の気持ちを直接相手に伝えることができる賞賛システムです。