リモートハラスメントとは、リモートワークやオンライン環境で発生するハラスメントのことです。事例、原因、リスク、対策などについて解説します。
目次
1.リモートハラスメント(リモハラ)とは?
リモートハラスメントとは、電子メール、チャット、ビデオ会議、SNSなどのオンラインプラットフォームを通じて行われる嫌がらせ行為のこと。パワハラやセクハラと同様に人権侵害の一形態であり、「テレワークハラスメント」、内容によっては「オンラインセクハラ」「パワハラ」などと呼ばれることもあります。
リモートワーク環境では、直接対面でのコミュニケーションが減少し、コミュニケーションの手段が限られがちです。距離感の欠如やコミュニケーションの不足から、ハラスメント行為が加速してしまうケースも多く見られます。
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2.リモートハラスメントの事例
リモートハラスメントでは、オフィス内でのハラスメントと同じような不適切な発言や行動のほかに、ネットワーク環境下ならではの不適切な行為が起こりえます。どのような行為がリモートハラスメントに該当するかを解説しましょう。
監視行為
リモートワーク環境において、従業員の作業状況を過度に監視するのはハラスメントになりえます。たとえば「チャットやメールで業務の進捗状況を頻繁に問い合わせる」「WEBカメラの常時使用を強制する」などの行為です。
オフィス勤務のように従業員の姿を確認できないため、企業は適切に業務が遂行されているかを確認するのは当然でしょう。しかしあまりに確認の頻度が多いと、監視行為だと見なされるかもしれません。
従業員の業務状況を確認する場合は、従業員のプライバシーを尊重したうえで行う必要があります。
プライベートへの過度な干渉
リモートワーク環境では、従業員のプライベートな空間と仕事の境界線が曖昧になりがちです。そのため従業員のプライベートな領域に踏み込む発言は、リモートハラスメントになりえます。
多く見られるのは、ビデオ会議中に従業員の自宅や家庭環境について過度に質問するケース。たとえば「部屋の中をもっと見せて」「恋人と一緒に住んでいるのか」など仕事と関係ない言動が該当します。
リモートワーク環境では、とくに従業員のプライバシーを尊重したコミュニケーションが必要です。
オンライン飲み会への強要
オンライン飲み会は、従業員同士のコミュニケーション促進やチームビルディングのために効果的な手段。しかし飲み会への参加を強要すると、従業員によってはストレスや不快感を引き起こすことがあります。
たとえば「飲み会を過度に開催する」「個人の性格や状況に合わないイベントへの強制参加させる」などの行為は、リモートハラスメントと見なされる可能性があります。オンライン飲み会を開催する場合は適切な頻度と時間で設定し、参加を希望する人を募るなど、従業員の負担を軽減する配慮が大切です。
業務外事項の過度な要求
業務外事項における過度な要求も、リモートハラスメントに該当する場合があります。
たとえば「1対1でのオンラインミーティングを強要する」「非業務時間や休暇中にチャットやメールでの連絡を要求する」「チャットなどで頻繁に業務と関係のない会話をする」といった行為です。
リモートワーク環境でもオフィス勤務と同様の意識を持ち、第三者に聞かれても問題ない言動を心がけましょう。
3.リモートハラスメントが起こる原因
リモートワークハラスメントが発生する原因は、仕事と私生活の混同、作業環境の整備不足などが挙げられます。ここでは4つの原因について説明しましょう。
仕事とプライベートが線引きが難しい
リモートワーク環境では一般的に、従業員の自宅や個人的な空間で業務を行います。しかしこのような環境下では、仕事とプライベートの境界線が曖昧になりがちです。
そのため無意識、あるいは意図的に管理者や同僚が従業員のプライベートな空間へ入り込む可能性があります。とくに1対1で話していると相手との距離感を見誤ってしまい、過度なコミュニケーションの要求や、度を超えた不適切な質問をすることも少なくありません。
リモート環境でも、従業員との関係性や距離感はオフィス勤務と同じだという意識を持つことが大切です。
管理に不安を感じる
リモートワークの実施に慣れていない企業では、不安からの過度な管理を行ってしまい、リモートハラスメントが起きてしまうケースも見られます。
リモート環境下では、従業員の業務状況やパフォーマンスを適切に把握および評価するのが困難。そのため従業員に対して、必要以上に確認や干渉をしてしまいがちです。従業員に対して過度な監視を行ったり圧力をかけたりすると、リモートハラスメントになりえます。
リモート環境に適したコミュニケーション方法やマネジメント方法を取り入れることが重要です。
リモートワーク環境の整備不足
適切なリモートワーク環境を整備していない場合に、リモートハラスメントが生じる可能性があります。たとえばリモートワーク環境におけるコミュニケーションルール、フィードバック方法、教育制度、評価制度などです。
これらの整備不足が過度な監視や干渉、不適切な発言につながるケースも見られます。業務の遅滞や従業員のストレス増大につながる可能性があるため、リモートワークに関する規程の策定と既存制度の見直しが必要です。
環境の変化によるストレス
リモートワークという制限された環境によるストレスから、リモートハラスメントを引き起こすケースもあります。
管理職やリーダーは、業務が円滑に進むように部下やメンバーを指導し、部署やチームを統率しなければなりません。しかしリモートワークという制限された環境ではストレスやマネジメントへの不安が高じて、八つ当たりや干渉のような言動をしてしまうことがあります。
管理職やリーダーのメンタルヘルスが悪化すると、本人もしくは部下やメンバーが休職や離職するかもしれません。前述したルールや制度の整備を行うほか、相談できる窓口を設置するのも有効です。
4.リモートハラスメントを放置するリスク
リモートハラスメントを放置すると、「被害者側」「加害者側」「企業側」にそれぞれリスクが生じます。なおこれらのリスクはリモートハラスメントに限ったことではありません。そのため全社的にハラスメント全般に対する意識改革を行うべきです。
被害者側
- 不眠、不安感、うつなどのメンタルヘルス問題
- 労働意欲や生産性の低下
- 上記影響による評価や給与の低下
加害者側
- 部下や同僚からの信頼や尊敬が低下
- 被害者からの訴訟
- 懲戒処分
企業側
- 組織の生産性や業績の低下
- 法的責任の発生
- 企業イメージの低下
5.リモートハラスメント対策
リモートハラスメントの防止のためには、経営層も含めた全従業員の意識改革と、企業の徹底した対策の実施が重要です。企業側と従業員側それぞれが実施できる対策について説明します。
企業側
リモートワーク環境下でのハラスメントは、被害者だけでなく加害者と企業全体に深刻なリスクをもたらす可能性があります。そのため企業は積極的な対策を講じておくことが重要です。
ルール・マナーを明文化する
企業はリモートハラスメントを防止するために、ルールとマナーを明文化することが重要です。
周知すべき内容として、リモートワーク環境でのハラスメントの定義、禁止事項、コミュニケーションの方法とルールなどが挙げられます。ただしハラスメントの定義だけでは、どのような行動がハラスメントに該当するかが不明瞭であるため、併せて具体例を記載したガイドラインを策定しましょう。
リモートハラスメントが起きにくい環境や風土を作ることが大切です。
ハラスメントに対する社内教育を強化する
リモートハラスメントに対する従業員の意識を高めるには、社内教育の定期的な実施と強化が効果的です。
社内教育プログラムを通じて、リモートハラスメントの定義、発生する理由、影響などについて理解が深まると、ハラスメント行為の抑制や発覚につながります。
社内教育では具体的な事例やシナリオを共有するのも効果的です。どのような言動がハラスメント行為にあたるかを判断しやすくなり、自社のリモート環境におけるルールやマナーの策定にも役立ちます。
相談窓口を設置する
リモートハラスメントに関する相談窓口を設置するのも手です。従業員がハラスメント行為に遭遇した場合や、ハラスメントに関する不安や懸念を抱えている場合に、相談窓口があると安心して相談できます。
相談窓口はメールや電話などで従業員が匿名で相談できるような形式を取り入れ、設置後は社内へ周知しましょう。また社内の相談窓口に対する不安を感じる従業員も少なくありません。そのため社内ではなく信頼性の高い専門家などの外部窓口を利用する方法もあります。
従業員側
リモートハラスメントを防ぐために、従業員側でできることもあります。従業員が実践できるふたつのリモハラ対策について説明しましょう。
報連相を怠らない
適切なタイミングと内容で報連相を実施すると、上司やリーダーの誤解や不安から起こるリモートハラスメントを防げます。部下やチームメンバーが業務の進捗、問題点、成果などを報告すれば、上司やリーダーは状況を正しく把握できるからです。
企業が定めたリモート環境化における報連相のルールに則して、積極的に報連相を行いましょう。
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30年以上前に誕生し、企業に属する社員が場面や用途に合わせて相手に伝える方法として広まっています。
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リモハラにつながる要素に気を配る
従業員側は、自身のプライベートな要素をできるだけ公開しないのも大切です。たとえば「オフィス出勤と同様に服装や身だしなみに一定の注意を払う」「必要以上にプライベートな空間を公開しない」「必要な場合を除いてカメラをオフにする」「プライベートな時間においては、オンラインでのコミュニケーションを控える」などです。
これらの取り組みによって、プライベートの詮索、過度な指摘、業務に関係ない会話などを減らせます。
6.リモートハラスメントが起こってしまった際の企業の対応
リモートハラスメントが発生した場合は、企業は迅速に対応する必要があります。
- 事実確認を行うために、被害者と加害者の双方へヒアリングする
- 客観的な視点で調査と証拠の収集を行う
- リモートハラスメントが事実であった場合、調査結果と被害者の意向にもとづいて適切な対応を決定する
加害者への対応として挙げられるのは、ハラスメントを行った従業員への警告、教育、処罰、解雇など。上記のほかに被害者への心理的な支援やフォロー、再発防止策の策定と実施も欠かせません。