リスキリングとは、DXや技術革新、ビジネスモデルの変化に対応するため、業務上で必要とされる新しいスキルを身につけること。リスキリングを実施する手法のひとつが、「資格の取得」です。ここではリスキリングで注目される資格を解説します。
目次
1.リスキリングで注目される資格とは?
リスキリングで注目される資格ジャンルは、ITや語学、会計や法務などさまざまあります。リスキリング(re-skilling)とは、社員に再度スキルを身に付けて人事戦略に生かすことです。
政府のDX推進により、多くの企業ではデジタル人材の育成が急務。そのためIT技術を利活用するスキルの習得が注目されているのです。
また自社がグローバル展開していくには、語学スキルも欠かせません。会計や法務のスキルは、バックオフィスで管理業務にたずさわる人材に必要です。
リスキリングとは?【ポイントを簡単に】事例、DX人材育成
昨今の日本では人材不足、DX推進といった文脈からリスキリングと呼ばれる人材育成の手法が注目されています。本記事ではそんなリスキリングに関するメリットや推進のポイント、企業の導入事例などを解説します。
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2.資格取得はリスキリングにどう役立つのか?
リスキリングに資格取得を活用すると、自社が求めるスキルと保有スキルを可視化でき、社員は習得した能力を証明できるようになります。
具体的な資格名を前面に出せば、企業が求めるスキルとレベル感が明確になりますし、リスキリングで社員が取得したスキルも把握しやすくなるでしょう。
また資格取得で「何を学べばよいか」が明確になり、資格取得の道筋に沿った学習プログラムの準備が容易です。よって社員もスキル習得へのモチベーションが高まるでしょう。
資格を取得した社員は、そのスキルを必要とする部署で活躍できるため、キャリアアップや評価アップにつながります。
3.リスキリングに活用できる資格例
リスキリングで資格取得を活用するなら、IT系の資格や分析に関する資格など、幅広い業務に役立つ資格を選ぶとよいでしょう。ここでは10個の資格を説明します。
- ITパスポート
- MOS(Microsoft Office Specialist)
- ビジネス統計スペシャリスト
- 統計検定
- VBA(Visual Basic for Applications)エキスパート
- Python(パイソン)エンジニア認定試験
- 情報セキュリティマネジメント試験
- ウェブ解析士
- AWS(Amazon Web Services)認定資格
- アドビ認定プロフェッショナル
①ITパスポート
ITの基本的な知識を身につけていると証明する国家資格のこと。出題範囲はAIやビッグデータ、IoTといった先端技術、ネットワークを含むコンピューティングの基礎や経営管理、マネジメントや関連法律などさまざまあります。
ITを利活用する際に必要な知識を体系的に身につけられるため、IT業界でなくとも新入社員や就活学生の多くが取得しておきたい資格といえるでしょう。
IT系国家資格のうち入門的なレベルと位置づけられ、合格率の高さ(令和4年10月度合格率は55.5%)も特徴。非IT人材がリスキリングで最初に取得するIT資格に向いています。
参考 ITパスポート試験IPA②MOS(Microsoft Office Specialist)
マイクロソフト社のビジネスアプリを扱う能力を測るテストのこと。試験はWordやExcel、PowerPointやAccessなどアプリごとにわかれ、さらにWordとExcelには、Specialist(一般)レベルとExpert(上級)レベルが存在します。なお試験は実技のみです。
このようなアプリはとくにバックオフィスで多く使われるため、多くの社員がこの資格を取得するほど業務効率の向上が期待できます。
参考 マイクロソフト オフィス スペシャリスト(MOS)オデッセイ コミュニケーションズ③ビジネス統計スペシャリスト
Excelでデータを分析し、マーケティングや生産性の向上などに活用する統計学の試験のこと。データ分析の実践に重点を置いており、Excelを使用した「データ分析技能」と「分析結果を活用する能力」を評価するのです。
試験は下位レベルの「エクセル分析ベーシック」と、上位レベルの「エクセル分析スペシャリスト」にわかれています。また現場の一般社員や管理職、経営層など必要とするレベルに応じて受験しやすいのも特徴です。
日々目にするデータやグラフから傾向や相関を見出し、分析結果を課題解決に生かせるようになります。マーケティング部門やバックオフィス、経営層などにオススメです。
参考 ビジネス統計スペシャリストオデッセイ コミュニケーションズ④統計検定
統計データを客観的に分析し、結果を課題解決に活用するスキルを測る試験のこと。主に3種類で、統計検定(1級から4級)と統計調査士、専門統計調査士にわかれるのです。
統計検定は4級がもっとも基礎レベルで、中学や高校の数学で習った「統計の初歩の初歩」やグラフの種類と見方など、統計の基礎から学べます。統計調査士は統計の基礎と公的統計に、専門統計調査士は統計のための調査にフォーカスした試験です。
やはり統計データを見る機会が多い経営層やマーケティング、バックオフィスやデータサイエンティストなどのリスキリングに適しています。
参考 統計検定一般財団法人 統計質保証推進協会⑤VBA(Visual Basic for Applications)エキスパート
VBAとは、ExcelやAccessでマクロ(複数の操作をまとめて呼び出す機能)の作成や編集に用いられる、プログラミング言語のこと。
VBAエキスパートでは、このVBAスキルを測ります。試験のレベルはベーシックとスタンダードの2種類で、スタンダードが上位レベルです。
VBAを習得すると、転記や複雑な集計などの自動化を実現でき、業務効率が向上します。VBAはプログラミング言語としての難易度がそれほど高くないため、プログラミング未経験者をデジタル人材へ育成するときにも役立つのです。
参考 VBAエキスパートオデッセイ コミュニケーションズ⑥Python(パイソン)エンジニア認定試験
Pythonという汎用プログラム言語を扱うスキルを測る資格のこと。Pythonの活用でWebサイトの作成やWeb情報収集ツールの作成、業務アプリケーションの開発やIoT分野やデータ解析や分析などが行えます。
資格区分は、「Python 3 エンジニア認定基礎試験」「Python 3 エンジニア認定データ分析試験」「Python 3エンジニア認定実践試験」の3種類。エンジニア認定データ分析試験では、統計や解析の知識も習得できます。
さまざまなWeb開発に対応できるうえ初心者でも学びやすいため、社内でPythonエンジニアを育成したい企業にオススメです。
参考 Pythonエンジニア認定試験オデッセイ コミュニケーションズ⑦情報セキュリティマネジメント試験
情報セキュリティマネジメントに関して、「技術対策」だけでなく、情報管理体制の構築やマニュアルの整備、業務フローの策定など「人的対策」面を含めた情報セキュリティ全般の知識を問う国家試験のこと。
サイバー攻撃や内部不正はどんどん巧妙になり、情報セキュリティをいかに高めるかは大きな経営課題です。そのため情報セキュリティ管理を担う専門人材が強く求められています。
情報システム部門はもとより、個人情報や機密情報を取り扱う事務職や法務、財務や営業などの担当者にもオススメです。
参考 情報セキュリティマネジメント試験IPA⑧ウェブ解析士
Webサイトのアクセスデータを分析し、マーケティングに活用する能力を測る試験のこと。Webマーケティング業務の遂行や効率化、アクセス解析データ活用法、Web解析課題発見と改善手段などの知識を身につけられます。
たとえば「売上を何%上げたいのか」というゴールを設定して、そのための「必要アクセス数」「CTR(Click Through Rate:クリック率)」「必要コスト」などを計画立案できるようになるのです。
マーケティング部門やWebサイト制作部門へ配置する人材のリスキリングに向いています。
参考 ウェブ解析士協会一般社団法人ウェブ解析士協会⑨AWS(Amazon Web Services)認定資格
Amazonが提供しているクラウドコンピューティングサービスを扱う知識を測る資格のこと。試験によって難易度が異なり、なかには一定以上の実務経験を推奨している試験もあります。
近年、インターネット上にあるサービスや業務システムの多くは、AWSのクラウドサービスを使って開発や運用がなされています。それにともなって運用や保守を行う人材の需要も増加。
AWSで開発や運用を行うエンジニアはもとより、AWSに格納されるアプリケーションの企画や提案を行う担当者にも有用な資格です。
参考 AWS 認定Amazon⑩アドビ認定プロフェッショナル
アドビ社のPhotoshopやIllustrator、Premiere Proなどを扱うスキルと、デザインに関する知識を測る資格のこと。試験は知識問題と実技問題の両方が出題されます。
なおPhotoshopとIllustratorは画像編集やイラストの作成に、PremiereProは動画編集に使われるアプリです。
Webサイト制作や製品やパッケージの企画、広告動画制作などこれらのアプリを扱うスキルの習得や、対外資料の制作などに生かせるデザインの基礎知識を習得できます。
参考 日本リスキリングコンソーシアム日本リスキリングコンソーシアム②Grow With Google
Googleがこれまで行ってきた検索技術などで培ったノウハウを生かし、さらに多様な領域の人々へ無料または有料のデジタルスキルトレー二ングを提供するプロジェクト。
地域のコミュニティや自治体など、200以上の団体(Grow with Google パートナー)と連携し、すでに全国で1,000万人以上が受講しています。
テーマはオンラインマーケティングやWeb解析、AIや働き方改革、インターネットセキュリティなど。ビジネスパーソンや教育関係者、スタートアップ企業やデベロッパー企業などにオススメです。
参考 Grow With GoogleGoogle③マナビDX
DXの推進に不可欠なデジタルスキルを学べるポータルサイトのこと。AIやデータサイエンス、クラウドやネットワーク、セキュリティやコンプライアンス、マーケティングなどを学べます。なお各分野のプロ企業が、無料または有料で講座を提供しているのです。
講座は「デジタル入門/基礎講座」と「デジタル実践講座」にわかれているため、社員のレベルに応じた社内研修の教材として活用しやすいでしょう。ただし講座によって、無償提供期間や社内研修での利用可否が設定されている点に、注意が必要です。
参考 マナビDXIPA④東京リカレントナビ
東京都が運営する社会人の学び直しを目的とし、無料または有料で講座を提供しているポータルサイトのこと。テーマは先端IT技術やビジネススキル、語学や工学、医療福祉や自然科学などです。
大学の名誉教授など高名な講師が多く、台湾デジタル担当政務委員のオードリー・タン氏もそのひとり。専門性の高い講師から質の高い学習を受けられます。ただしオンラインのみならずオンサイトで行われる場合もあり、そのときは会場へ足を運ばなければなりません。
参考 東京リカレントナビ東京都⑤Udemy
世界で5,700万人以上(2022年11月現在)が学ぶオンライン学習プラットフォーム。IT技術やビジネススキル、デザインや財務会計、マーケティングなど幅広いテーマの講座を無料または有料で提供しています。
モバイル端末向けのUdemyアプリを使えば、外出先などでも学習を進められるのです。外国人の講師も多く、グローバルな視点や思考、国外ならではの活用方法なども学べます。
ただし無料講座の数は限られているため、十分なスキルを習得するには有料講座の購入も検討しましょう。
参考 UdemyUdemy