リターンシップとは?【意味を簡単に】背景、施策、事例

リターンシップとは、家庭の事情で退職した人が再度仕事に復帰することです。ここでは、リターンシップについて解説します。

1.リターンシップとは?

リターンシップとは、「10年以上の社会人経験がある」「子育てや介護などさまざまな理由でキャリアを途中で止めた」という2つの要件を満たした人が復帰して働くこと。ゴールドマンサックスが商標登録した言葉です。

さまざまな事情で退職した人が、再復帰する場合に利用されています。

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2.リターンシップの意味

リターンシップの意味について、語源やリターンシップに似た語句・間違えやすい語句、リターンシップの関連語句から説明します。

リターンシップの語源

リターンシップとは、リターンとシップをあわせた言葉です。それぞれの意味について解説しましょう。

リターン

リターンシップのリターンは、英語で「return」と表記し、複数の意味を持ちます。

  • 戻ること、戻すこと、復帰すること、帰ること、
  • 折り返すこと
  • ボールなどを打ち返すこと
  • 利益、もうけ、利益率

家庭の事情などで一旦退職した後、仕事に復帰するため、リターンシップで用いられているリターンは「復帰すること」といった意味で使われています。

シップ

リターンシップのシップとは、英語で「-ship」と記載する接尾語です。シップには、下記のような意味があります。

  • 性質、状態
  • 資格、役職、地位
  • 能力、技能
  • 関係
  • 集団
  • 性質、状態を具体化したもの
  • 資格をもった人、~の地位

リターンの語尾につき、仕事に復帰した状態といった意味で用いられます。

リターンシップに似た語句や間違えやすい語句

リターンシップに似た語句や間違えやすい語句があります。ここでは2つをあげて解説します。

  1. ジョブリターン
  2. インターンシップ

①ジョブリターン

家庭の事情など個人的な事情により退職した社員が退職前の企業に再雇用される制度のこと。「ワークライフバランスを重視した働き方改革の影響」「少子高齢化による労働人口の減少」などが背景にあります。

ジョブリターンは、性別や年齢、家庭環境などの違いをとわず、労働者のニーズにあった働き方を実現するひとつの手段として注目されているのです。

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②インターンシップ

社会に出る前に行う職場体験のこと。「実際に働いている人から話を聞く」「実際に仕事を体験する」などの方法で、仕事内容や職場の雰囲気、企業風土などを肌で感じられます。

インターンシップは、大学生などが就職先を決定する前に行われることの多い制度です。コロナ禍では、オンライン形式で実施する企業もあります。

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リターンシップの関連語句

リターンシップには関連語句があります。2つの語句を解説します。

  1. ダイバーシティ
  2. インクルージョン

①ダイバーシティ

多様性を意味する言葉です。年齢や性別、人種や国籍、障がいの有無や趣味嗜好、価値観など表面的な違いや深層心理なども含めて多様性を認め、お互いを尊重します。

企業活動では、多様性を雇用形態などの働き方や人材登用、イノベーションの創造などに活用することを示すのです。

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②インクルージョン

英語の「Inclusion」で、包含や包括、含有や含有物、内包物や社会的な一体性、受け入れといった意味のある言葉です。

インクルージョンを広義で捉えると、「社会的孤立のリスクがあるものへの支援」「個別の事情を汲んだ教育ニーズへの対応」といった、社会学的・教育学的視点における意味もあります。

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3.リターンシップが注目される背景

リターンシップが注目される背景は下記の3つです。

  1. 少子高齢化による労働人口不足
  2. ダイバーシティ&インクルージョンの実現
  3. 専門家や有識者など即戦力の確保

①少子高齢化による労働人口不足

厚生労働省の発表によれば2019年の国内出生数は86万4千人。政府が予想していた出生数の減少ペースより2年早い減少で少子化のスピードが加速していたのです。このペースで少子高齢化が進行すれば、40年後、労働人口が4割減少するという予測もあります。

将来発生する可能性の高い労働力不足へのリスク回避のため、なんらかの事情で退職を余儀なくされた人を活用するリターンシップで、労働力を確保しようと動く企業が増えているのです。

②ダイバーシティ&インクルージョンの実現

ダイバーシティとは多様性、インクルージョンとは包括や受容を意味する言葉です。「ダイバーシティ&インクルージョン」とは、多様性を認め、お互いを尊重して受け入れながら、能力を生かしていくこと。

それぞれの能力を適材適所で生かせれば、企業の競争力や価値、生産性を高められます。

③専門家や有識者など即戦力の確保

専門知識や技術を持つ識者の採用や育成は、容易にできません。そのため、専門的知識や技術を持ちながらさまざまな事情で退職した人の再就職を支援する動きが始まっています。

このような取り組みによって、ポテンシャルの高い人材を即戦力として確保できるため、人材プールの確保とあわせて今後、ますます増えていくでしょう。

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4.リターンシップの具体的施策

ここでは、リターンシップの具体的施策として下記3つの施策を解説します。

  1. 正社員として採用
  2. イベントの開催
  3. 大学との連携

①正社員として採用

リターンシッププログラムを経由して労働者を正社員として採用すること。リターンシッププログラムでは、スキル訓練や企業文化の伝達、メンターの設置など、個々の課題に合わせたプログラムが実施されます。

ただしスキルやメンタリング、コーチングなどの支援プログラムを提供してリターンシップを省略し、そのまま社員を雇用するケースもあります。

②イベントの開催

採用候補者を集めるため、イベントを開催するのも有効です。イベントの開催では人材の評価を行えるので、事前に参加者を募集して選定、承認します。当日は参加者が生の情報を入手できるよう、採用や職場情報を提供し、マッチングを図るのです。

③大学との連携

多くの大学には、設けられている就職支援センターには、就職先を探す大学4年生や既卒者が企業情報、就職情報の収集に訪れます。このような就職支援センターと提携し、リターンシップ先を探している学生や既卒者にアプローチを行うのです。

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5.企業におけるリターンシップの事例

企業におけるリターンシップの事例があります。それぞれについて解説しましょう。

  1. アマゾン
  2. 雪印メグミルク
  3. コジマプロダクション
  4. ニトリ
  5. 日本マイクロソフト
  6. 横浜銀行
  7. テプコム
  8. 富士通

①アマゾン

アマゾンは、ジェンダー間の賃金格差是正に対処するためリターンシップを実施。育児や介護などで女性が退職して労働市場から離脱したり、離脱した労働市場に戻る機会がなかったりするといった現状を打破するためです。

具体的には、下記のような体制が構築されています。

  • 1年以上職に就業していない離職者を募集する
  • 有給の16週間の職場復帰トレーニングをオンラインプログラムとして実施する
  • トレーニングに必要な機材も提供する
  • メンター制度を導入する
  • トレーニング後は自社採用だけでなく協力NPO団体を通じて別の会社へ応募も認める

②雪印メグミルク

雪印メグミルクは、以下の要件でリターンシップを実施しています。

  • 対象は、2016年10月1日以降中途退職した社員やそれ以前の中途退職した社員で、すでにジョブリターン制度に登録済みである
  • 募集職種は、事務営業系と技術系
  • 雇用形態は、正社員、契約社員、パート社員、嘱託社員のいずれか
  • 給与は、経験、能力、年齢を考慮の上、規定により決定
  • 勤務時間は、全事業所共通の年間所定労働時間1,890時間
  • 諸手当、昇給、賞与、休日休暇、福利厚生なども対象

選考方法は、面接と書類審査で行われ、採用後は本社および全国の事業所となっています。

③コジマプロダクション

コジマプロダクションは、2022年1月から出産や育児、介護や配偶者の転勤などやむを得ない理由でキャリアを中断している人を対象としたキャリア再開、職場復帰を支援する「リターンシッププログラム」を実施しています。

「6~12カ月間の有給職場復帰プログラムの実施」「上司や同僚の仕事の様子を観察するジョブシャドウイング」「プログラム終了後の面談」が行われ、面談の結果によって、フリーランス契約や社員就業といった道が開かれるのです。ブランク期間・性別などの条件も一切ありません。

④ニトリ

2014年7月より、下記を条件としてリターンシップを行っています。

  • 自社の総合職社員、もしくはエリア限定総合職社員として2年以上勤務経験がある
  • 結婚、出産、育児、介護などやむを得ない事情、転職や留学などによるキャリアアップを理由に退職した
  • 退職後、15年以内である
  • 心身ともに健康である

選考は、Webエントリー→書類選考→一次面接→最終面接→内定といった流れで行われます。労働者の働き方が多様化している点を背景に、労働者が働きやすい環境作りに取り組んでいるのです。

⑤日本マイクロソフト

2018年2月から、下記のような「リターンシッププログラム」を実施しています。

  • 働き方改革の推進
  • ダイバーシティ&インクルージョンへの取り組み
  • 「いつでも仕事に戻れる環境の整備」への社会貢献

プログラムの概要は以下のとおりです。

  • 出産や育児、介護や配偶者の転勤などを理由に、現在正社員として就業していない女性やIT業界での就業やテクノロジー領域の就業経験がある女性
  • 3~6カ月間の有給インターンシップを実施
  • プログラム終了後は、アセスメントを経て正社員化の検討
  • 採用人数は初年度で5~10名程度

⑥横浜銀行

横浜銀行では、下記すべての要件を満たした人を再雇用する「ジョブリターン制度」を実施しています。この制度で採用された人は正社員として働けるのです。

  • 結婚や出産、転職といったさまざまな理由で退職した横浜銀行の元行員
  • 原則、過去10年以内に退職した横浜銀行の元行員
  • 在職中に培った能力や知識、経験を再度発揮したい横浜銀行の元行員

履歴書と職務経歴書を送付したあと、面接や書類による選考が実施されます。元行員を再雇用するため、教育コストの低減が期待できるのです。

⑦テプコム

テプコムでは、退職者の再雇用制度であるジョブリターン制度を実施。応募資格は、下記を満たした人です。

  • かつてテプコムの正社員であった
  • 退職時の勤続年数が1年以上であった
  • 転職や留学などのキャリアアップ、妊娠や出産・育児・介護・配偶者転勤帯同などが退職理由である
  • 現状、退職時の事由が解消もしくは解消の見込みがある
  • 選考は、下記のような過程を経て、実施されます。
  • 履歴書、職務経歴書の郵送
  • 在職時の勤務実績等の勘案
  • 社内の人材ニーズの確認
  • 書類選考および面接の実施

⑧富士通

富士通では、下記を目的としたカムバック採用と呼ばれるリターンシップ制度を導入しています。

  • 社員の多様な働き方の支援
  • 多様な価値観を生かしたイノベーションの創造

育児や介護、配偶者の転勤や学業や転職によりキャリアアップなどを理由に退職した社員が対象で、「富士通での正規従業員としての勤続が1年以上ある」「富士通を退職後5年以内であること」といった要件があります。

選考方法は、書類選考や面接など。勤務形態は、受入職場や本人の希望などが考慮されます。