逆求人とは、自分が希望する企業ではなく、自分を求める企業からアプローチを受けるタイプの就職活動で、これまでの日本の就職活動の流れとは大きく異なるものです。そんな逆求人が広まった背景とは一体何でしょうか。
利用者が増加している逆求人の特徴や、メリット・デメリット、おすすめの逆求人サービスなどについて詳しく紹介します。
目次
1.逆求人とは?
逆求人とは、学生側がインターネットや逆求人イベントを通じて自己アピールを行い、企業から声が掛かるのを待つ仕組みの就職活動のこと。
逆求人は、知名度の低い企業でも積極的に採用を考えている中小企業と、企業名にはこだわらず幅広い選択肢から就職先を見つけようと考える学生とのマッチングに効果を発揮しています。
2.ダイレクトリクルーティングとは?
ダイレクトリクルーティングとは、企業がSNSや人材バンクなどから必要な人材に直接声をかける採用手段のこと。
このような本式を英語ではDirect Sourcing(ダイレクトソーシング)といいます。従来の応募を待つタイプではなく攻めの姿勢で採用を進めるのが特徴で、この手法のひとつが逆求人です。
ダイレクトリクルーティングでは、優秀な人材に狙いを定めてピンポイントでコンタクトを取れるため、スピーディーかつ効率的に採用活動を進めることができます。
3.逆求人が広まった背景
逆求人が広まる背景には、以下のようなことが挙げられます。
学生の間に高まるニーズ
新卒の就職活動は長い期間を要する場合が多く、会社説明会への参加や会社ごとに必要なエントリーシートの作成などに手間も時間も取られます。
しかし逆求人型の手法なら、一度自己PR文などを作成すれば、自分の持つ知識やスキルに興味のある企業からオファーをもらえることが増えるのです。手当たり次第にアプローチをかける通常の就職活動と比べて工数は少なくなるでしょう。
また、自分を高く評価してくれる企業と出会える確率も高まるため、特に研究などで忙しい理系の学生にニーズがあると報告されています。このような理由から、近年逆求人が注目されているのです。
企業規模に関係なく採用につなげられる
大手企業や有名企業には比較的多くの人材から応募がありますが、あまり名の知られていない中小企業やベンチャー企業の募集には応募が少なく、思うように採用が進まないことも。
しかし逆求人なら、企業側から興味のある人材に直接コンタクトを取ることができるので、積極的な採用活動が可能です。
逆求人を利用する学生は企業規模にこだわらず、自分の思考やスキルなどにマッチすることを重視して就職先を探す傾向にあります。そのような人材とじっくり話すことで、採用のマッチング度も高まるでしょう。
さまざまな人材と出会える
逆求人は、ダイバーシティ採用が主流になりつつある昨今の流れに合致する採用方法です。従来、自社に興味のある人材からの応募を待つしかないという限られた条件内で採用活動を進めなければなりませんでした。
しかし逆求人では、興味や関心のない(自社を知らない)人材とも積極的にコミュニケーションを取ることができるため、多様な人材獲得を実現できます。業界や自社の魅力を知らない人材にアプローチすることで、優秀な人材に出会える確率も高まるでしょう。
4.逆求人の特徴
逆求人は、学生にも企業にもメリットがあります。そんな逆求人の特徴を詳しく見ていきましょう。
学生に合う企業から連絡が来ることも
逆求人は、企業側が自社に合う学生を探し出してオファーを送る採用手法です。学生は、知らない企業や興味のない業界の企業からアプローチされる場合も多いため、自身では気付かなかった自分にマッチする企業に出会える可能性があります。
さまざまな企業や業界を知ることで、より自分に見合った志望先を絞り込めるでしょう。
自己PRのブラッシュアップができる
逆求人では自己PRが重要なキーポイントになります。自己PR文などをブラッシュアップすることで、企業により深く自分自身を知ってもらうことができるのです。
洗練された自己PRは、就職活動だけでなく就活以降もさまざまな場面で活用できます。どうしたら企業に自分の魅力が伝わるかを熟考することで、企業目線で考えられる人材に成長するでしょう。
どういった企業から注目されているか分かる
逆求人のための専門サイトには、企業に何回閲覧されたかをデータで表示してくれるサービスを提供しているところも。こうしたデータを参考にすると、自分が「どのような企業から注目されているか」を把握できます。
企業や業界研究にも役立つため、興味がないからと選り好みせずに、一社一社確認することが大事です。
5.逆求人のメリット
企業側と学生側のそれぞれについて、逆求人を利用するメリットを見ていきましょう。
企業
企業側から見たメリットには、下記のようなものが挙げられます。
コストや時間がかかりにくい
通常採用の場合、会社ごとに会社説明会の開催や採用募集の公告などを出稿しなければならないため、多くの時間やコストがかかります。
しかし逆求人の場合、逆求人サイトを活用したり、逆求人イベントやフェスティバルなどに出向いて採用活動を行えたりするため、コストや時間を抑えられるのです。
業種別のイベントに参加すれば、自社に合った働く意欲の高い学生にピンポイントで出会える確率も高まるでしょう。
さまざまな人材にアプローチ
すべての学生が自社を知っているとは限りません。逆求人ではさまざまな学生に声を掛けることができるので、まだ自社を知らない人材やこれまで関心を持っていなかった人材に自社を知ってもらう絶好の機会となるのです。
逆求人イベントなどでは、自社に合いそうな学生と1対1で面談できるため、面接のような堅苦しい場面では見られない学生の一面を見ることも可能です。多角的な視点から自社の採用条件に見合う学生にアプローチできるのは逆求人のメリットでしょう。
採用条件に合致した人材を見つけ出せる
逆求人では、学生一人ひとりの自己PRを見てピンポイントに声を掛けることができるので、通常よりも自社の採用条件に合致した人材と出会いやすくなります。
企業側にとって採用確度の高い学生を絞り込めるため、より踏み込んで自社が必要としている理由を伝えるなど、人材の心に届くアプローチが可能です。
熱心なアプローチを受ければ、自社に興味がなかったり知らなかったりした学生でも、就職先として志望してくれるようになるでしょう。
人材(学生)
学生側から見たメリットには、下記のようなものが挙げられます。
自らを知ることができる
企業からより多くのオファーをもらって内定につなげるには、自分を深く分析して、上手に自己アピールすることが大切です。逆求人で多様な企業からさまざまなアプローチを受ければ、自身の未知の長所などを発見できるでしょう。
またインターンシップのオファーを受けてビジネスの現場で実際に働いてみれば、自身の価値観や強み弱みが浮き彫りになるため、自己成長へとつながります。プロフィールを作成する際にも大いに活用できるでしょう。
自発的になる
逆求人では、従来型の就職活動と比べたより積極的な自己アピールが求められるため、自発性が育ちます。たくさんのオファーをもらうには、いかに魅力的な自分であるかをどれだけ企業にアピールできるかが肝となるのです。
自発的に動かなければ、プロフィールの内容を充実させることはできません。積極的にさまざまなことを経験し、自己PRの内容をブラッシュアップしていく過程で、自信も次第についてくるでしょう。
さまざまな企業と出会える
会社説明会や就職サイトなど企業を知る方法はたくさんありますが、自分自身で検索して知ることができる企業の数には限りがあります。しかし逆求人を利用すれば、自分が知らなかった企業と知り合うことができるのです。
またオファーをくれる企業は、自分に関心のある企業がほとんど。自分の経験やスキル、ポテンシャルに合う企業であれば入社後のミスマッチも起こりにくくなります。そのような企業から選択すれば、学生時代に学んだことを活用できるでしょう。
6.逆求人のデメリット、問題点
メリットの大きい逆求人ですが、デメリットや問題点についても見ていきましょう。
企業
企業側から見たデメリットには、下記のようなものが挙げられます。
自社に合う人材と出会えるとは限らない
逆求人ではさまざまな人材と出会えるためダイバーシティ採用を進める上でも役立ちますが、当然、出会った人材が必ずしも自社に合う人材とは限りません。ミスマッチを防ぐためにも、学生の自己PRをしっかり見極め、慎重に採用活動を進める必要があります。
入り口は逆求人でも、採用のステップを進める際はこれまで通りにきちんと面接して自社にマッチする人材かどうかの判断が必要となるのです。
手間とコストがかかる
従来型の採用活動と比べて手間やコストがかからないとはいっても、逆求人イベントや逆求人サイトでの情報発信のために準備が必要です。自社に合う学生を選びアプローチをかけた後は、自社についての説明をしなければなりません。
せっかく自社の採用条件を満たす優秀な人材に出会っても、自社の魅力が十分に伝わらなければ自社を志望してもらえません。採用につなげるには、それなりに手間もコストもかかることを押さえておきましょう。
人材
学生側から見たデメリットには、下記のようなものが挙げられます。
アピールが苦手だと声掛けにつながらない
自己アピールに苦手意識を持っていると、自分の魅力を十分に伝えられず、企業からオファーをもらえる確率が低くなってしまいます。上手な自己アピールには、学生生活で経験したことや学んだ知識を棚卸しした綿密な自己分析が必要です。
逆求人は、通常の就職活動よりも手間も時間もかからないので、集中した熟考が重要となります。自己分析をしっかり行って自分がこれまでやってきた実績を整理できれば、自分に自信を持てるようになり、苦手意識も克服できるでしょう。
合わないオファーが来ることも
オファーを出してくれた企業が必ずしも自分に合う企業とは限りません。また自分のやりたいことができる企業ではないこともあります。オファーをくれたからといって安易に飛びつくのではなく、自分なりにきちんと企業分析を行うことが重要です。
これまで興味のなかった業界からのアプローチであれば、業界自体の研究も必要でしょう。自分の思考やスキル、価値観と照らし合わせて、本当にマッチする企業かどうかを見極めることが大切です。
7.逆求人を使う際のポイント
逆求人を使用するときのポイントを押さえて、逆求人を使いこなしましょう。
企業
企業が逆求人イベントに参加する際には、下記のようなことに注意しましょう。
イベントでは親近感を
企業の担当者があまりに硬い態度で接してしまうと、学生が萎縮してしまいます。相手を萎縮させては、長所や個性、人となりなどを正しく知ることはできません。
逆求人のイベントはお互いを知り合う場と捉え、学生と心を開いて話せるような親近感のある場にできるよう意識しましょう。できるだけカジュアルに笑顔で接することを心掛けてください。
気になる人材には積極的に連絡を
気になる人材に事前に連絡を取っておくと、自社のことを気に掛けてもらえる確率が高くなります。イベント当日に行き当たりばったりで学生に接触するよりも、前もってある程度目星を付けておくことも大切です。
事前連絡をしておけば当日スムーズに話を進められるでしょう。限りある時間の中で、より深い質問を投げかけることもできます。
人材(学生)
学生が逆求人を使う際には、下記のようなことに注意しましょう。
写真
従来型の就職活動と同じく、清潔感があって自分らしさがきちんと伝わる写真を用意しましょう。企業がオファーを出す際、自己PRやプロフィールと同じように写真も大きな判断基準になります。
髪型やスーツなどもきちんと整えて、しかるべき写真館でプロに撮影してもらうとよいでしょう。撮影した写真は、自分が納得することはもちろん、他者に自分らしさが伝わる写真かどうか判断してもらうことをおすすめします。
アピール文
自分が学生時代に何をしてきたか、自身の強みは何か、どんなスキルを持っているかなど、簡潔かつ分かりやすくまとめたアピール文を用意しましょう。
逆求人サイトに掲載するためだけでなく、イベントなどで実際に企業の採用担当者と会ったときにも役立ちます。自分の言葉でスムーズに自己紹介できれば、良い印象を与えられるでしょう。
8.おすすめの逆求人サービス
おすすめの逆求人サービスを4つ紹介します。詳細を見ていきましょう。
ガクセン
掲載されたプロフィールや学生のインタビューから、自社に合う人材を探し出してアプローチできるサービスです。登録されている学生のタイプは、「自己成長型」「トラウマ克服型」の2つ。
- 自己成長型:プランを立てて積極的に動くタイプ
- トラウマ克服型:苦境をバネに問題解決するタイプ
文系男性の登録者が最も多く、学歴はMARCHや関関同立、国公立大が上位を占めています。新卒以外の登録もあり、学校名や学生の特徴などから検索することも可能です。
キミスカ
登録された学生のプロフィールを見て、気になる人材にスカウトメッセージを送ることができる仕組みです。学生はスカウトの理由などを確認して、興味があれば返信します。
何度かメッセージをやりとりして信頼関係を築いた上で、会社説明会や面接など次のステップに進むのです。プロフィール情報はサイト内にとどまるため、学生同士でプロフィールを確認できません。検索にヒットすることもなく安心して利用できます。
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19万人以上の学生と5,700社を超える企業が登録する、新卒逆求人専門のOfferBox。
学生は、写真や動画などを用いて自分らしさを自由にアピールでき、企業は、バラエティ豊かなプロフィール情報から一人ひとりの学生の情報をチェックして、厳選してオファーを送ることになります。プロフィールを見られるのは企業だけなので安心です。
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JOBRASS新卒(ジョブラス)
登録された学生の写真や自己PRをもとに、企業はオファーを出すことができます。オファーには「マッチングオファー」「インターンオファー」「新卒紹介オファー」の3つ。
学生はプロフィールを充実させることで、抽選式のイベントに参加できたり、検索順位が上がってスペシャルオファーを受けられたりします。また学生から気になる企業にアピールすることも可能です。専任エージェントに相談できるのもメリットでしょう。