力量管理とは? 重要性やメリット、力量管理表の作り方を解説

力量管理とは、従業員のスキルや能力を客観的に評価する仕組みです。品質マネジメントシステムの「ISO9001」にも含まれており、企業の運営において重要な取り組みとして認知されています。人事部門や管理職層が正しく理解することで、人材の活用を促進し、企業の競争力を高めましょう。

この記事では、力量管理の基本やメリット、管理表の作り方、効率化のポイントまでを網羅的に解説します。

1.力量管理とは?

力量管理とは、従業員のスキルや知識、経験を客観的に評価し、人材を適切に管理する手法のことです。この仕組みによって、組織は従業員の能力を把握し、効果的な人材配置や育成計画を立てられるようになります。

力量管理の目的は、個々の能力を最大限に引き出し、組織全体の生産性や競争力を高めること。具体的にはスキルマップと呼ばれる管理表とそれを活用した定期的な評価によって、従業員個人の成長を促進します。

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力量とは?

力量とは、特定業務を遂行するために必要なスキルや知識、資格、およびそれらを実践する能力のこと。組織におけるマネジメントでは、このような従業員の力量を正確に把握し、適切に活用することが重要になります。

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2.力量管理が必要な理由

力量管理が必要な主な理由として、以下の4つが挙げられます。それぞれ確認してみましょう。

  1. ISOで求められる管理を実現するため
  2. 適材適所の人材配置を可能にするため
  3. 従業員の能力を向上させるため
  4. 企業の競争力を強化するため

①ISOで求められる管理を実現するため

品質マネジメントの国際規格に「ISO9001」というものがあります。この規格では、サービスや商品の品質を担保するうえで業務に必要な力量を明確にし、従業員の能力を把握して必要な教育を行うことを組織に求めています。

つまり、よい品質を保つために従業員の力量管理が必要であるという考えです。ISO9001の規格を満たすことで、顧客満足度や競争力の向上にも期待ができます。

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②適材適所の人材配置を可能にするため

適材適所の人材配置には、力量管理が欠かせません。力量管理を適切に行うことで、まずは業務に必要な能力を明確にし、次に従業員が持っている能力や経験を正確に把握します。

これにより、組織は各ポジションに最適なスキルを持つ人材の選定が可能です。各従業員の能力を最大限に活かせると、業務効率の向上や従業員のモチベーション向上につながります。

③従業員の能力を向上させるため

力量管理は、従業員の能力向上に大きな効果をもたらします。というのも、力量管理ではまず「必要とされる能力」と「従業員の現在の能力」のギャップを特定します。このギャップを埋めるための適切な教育や訓練プログラムを実施することで、計画的かつ効果的に従業員の能力を向上させられるのです。

また育成において、主観的な情報だけでは行き詰まってしまうこともあるでしょう。客観的な評価でそのような事態を防ぎ、学習と成長のサイクルを循環させることで、従業員の満足度や定着率の向上、組織全体の知識や技能のレベルアップにもつながります。

④企業の競争力を強化するため

企業の競争力を強化するには、人材の活用が欠かせません。力量管理に取り組むと、従業員の能力向上と適材適所の配置により、アウトプットの質が上がり、品質の高い製品やサービスを提供できるようになります。

結果として、顧客満足度の向上、生産性の向上、イノベーションの促進など、様々な面で企業の競争優位性を高められます。

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3.力量管理の基本的な考え方(カッツ理論)

カッツ理論は、ハーバード大学のロバート・カッツ教授が提唱したマネジメント理論です。以下のように3つの要素で構成されています。それぞれについて詳しく解説します。

  1. コンセプチュアルスキル(概念化能力)
  2. ヒューマンスキル(対人関係力)
  3. テクニカルスキル(業務遂行能力)

①コンセプチュアルスキル(概念化能力)

組織全体を俯瞰して複雑な状況を分析、理解する能力です。とくに管理職や経営層など、上層部の人材に求められるスキルとして重要視されます。主なコンセプチュアルスキルには、以下のスキルが挙げられます。

  • クリティカルシンキング
  • 戦略的思考力
  • 問題解決能力
  • 俯瞰力
  • 創造性

このように、組織全体を見渡しながら適切な判断を下し、全体を導くために必要な能力です。

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②ヒューマンスキル(対人関係力)

人間関係を円滑に構築するためのスキルです。たとえば、以下のような能力が該当します。

  • コミュニケーション能力
  • チームワーク
  • リーダーシップ
  • プレゼンテーション能力

くわえて職位が上がるにつれ、ヒアリング能力、コーチング能力、交渉力などの重要性も高まります。

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③テクニカルスキル

テクニカルスキル(業務遂行能力)は、業務を遂行するための実用的なスキルや、専門的知識・技術のことです。例えば以下のような例が挙げられます。

  • 営業職:商品知識、顧客理解、提案力
  • 事務職:パソコン操作スキル、事務処理能力、資料作成力
  • 企画職:市場理解、データ分析力

このように、テクニカルスキルは職種や業務によって大きく異なります。

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4.力量管理のメリット

力量管理には、以下のようなメリットがあります。

従業員と組織の強みと弱みを把握できる

各従業員のスキルや能力を客観的に評価することで、組織の強みと弱みが明確になります。例えば、特定の分野で高い専門性を持つ従業員を把握したり、反対に組織全体で不足しているスキルの領域を明らかにしたりすることが可能です。

力量管理で明らかになる情報は、組織の人材管理や採用戦略の策定にも応用できます。

能力やスキルを明確にし、効率的に人材を育成できる

力量管理によって各従業員の能力やスキルを明確にし、個々の従業員に適した育成計画を立てられます。

また、従業員が自身のスキルを理解する機会としても有効です。たとえば、特定のスキルが足りないと判明した場合、そのスキルを強化するための研修を実施したり、OJTを通じて実践的な経験の場を提供したりできるでしょう。

一人ひとりの力量を管理することで、組織全体の能力向上につながり、他社との競争力の強化にも寄与します。

適材適所の人材配置により生産性を向上できる

力量管理によって従業員の能力が可視化されると、適材適所の配置が可能になり、生産性が向上します。従業員が培ってきたスキルや知識を最大限に活かせる環境が整うことで、アウトプットやモチベーションが改善するためです。

結果的に、力量管理によって組織のムダが削減され、業務効率の向上にもつながります。

従業員のエンゲージメントが向上する

力量管理のメリットのひとつが、従業員のエンゲージメント向上です。力量管理を通じて、従業員は以下のような効果を感じられます。

  • 自身の強みや成長のステップを客観的に把握できる
  • 組織が従業員の成長を重視していると感じられる
  • 適切な評価と育成機会を得られる

このような効果により、従業員は組織を「自身の能力を高めていける場」としてとらえるようになり、帰属意識やモチベーションが向上します。これは、離職率の低下や組織の一体感の醸成にもつながる重要な要素です。

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5.力量管理の課題

力量管理を導入しても、その効果を十分に発揮できない企業が存在するのも事実です。そのような場合の課題として、おもに以下の点が挙げられます。

  • 管理や運用に多大な労力がかかる
  • 部署ごとに管理を行うことで、組織全体での情報共有が困難になり、全社的な生産性向上につながりにくい
  • 力量管理を活かした具体的な教育プログラムの実施が不十分
  • 自社に適したスキル体系やスキルマップが構築されていない

これらの課題は、事前に対策することで解消することも可能です。全社員が力量管理の意義を理解し、効率的に運用するための仕組みづくりが不可欠と言えます。

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6.力量管理表(スキルマップ)とは?

力量管理表(スキルマップ)は、従業員が持つスキルや能力を可視化するためのツールで、エクセルなどを使って一覧表にする形式が一般的です。表の縦軸にスキル項目、横軸に従業員名を記載するものが多く、各セルには従業員のスキルレベルを記入します。

力量管理表を作成すると、誰がどの分野のスキルを持っているかを一覧化でき、かんたんに確認できます。

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7.力量管理表の作り方

力量管理表の作成は、以下の7ステップで進めます。

  1. 活用目的を設定
  2. 対象を設定
  3. スキル項目を設定
  4. 力量評価の基準を設定
  5. 評価者を選定
  6. 試験運用とフィードバック
  7. 全社で運用を開始

①力量管理表の活用目的を設定する

力量管理表の作成にあたって、まずは明確な活用目的を設定することが重要です。たとえば、人材育成や適材適所の人員配置、品質の向上などが目的になるでしょう。目的によって必要な項目や評価基準が異なるため、この段階で組織の課題や方針と照らし合わせ、ズレがないと確認しておきます。

その際、経営陣や人事部門、現場の管理者などと協議し、全社的な合意を得ることが重要です。まず目的を明確にしておくことで、その後の作業がスムーズに進みます。

②対象を設定する

次に、力量管理表の対象範囲を決定します。例えば、「営業部門」や「技術部門」などです。特にテクニカルスキルを管理する場合は、業務によって求められる能力が異なるため、対象が広すぎると当然うまく運用できません。

部門や職種、チームなど、小さく分割した組織を対象とするのがよいでしょう。また、どの部署から導入するかという疑問が出てくるかもしれません。その際はまずスキルを定義しやすい技術部門から始める判断も有効です。

③スキル項目を洗い出し設定する

目的と対象を決定したら、力量管理表に記載するスキル項目を選定していきます。対象部門の業務内容を分析し、必要なスキルを細かく洗い出したうえで、必要な項目を取捨選択するとよいでしょう。その際、現場の管理者や従業員の意見を取り入れると、実態に即したスキル項目を設定できます。

④何段階評価にするか、力量評価の基準を設定する

スキル項目ごとに評価基準を設定します。一般的には、3段階から5段階程度の評価スケールです。

たとえば、「1:基本的な知識がある」「3:自立して業務遂行できる」「5:他者に指導できる」など、各段階の定義を明確にし、客観的に評価できるようにします。評価基準は具体的かつ簡潔に記述し、評価者や被評価者が共通の理解を持てるようにするのが重要です。

⑤評価者を選定する

適切な評価者を選定することが、力量管理の信頼性を高める上で重要です。通常は直属の上司や部門長が評価者となるものの、客観性を保つため、評価者を別に設定することもあります。

また、評価者には基準や方法について十分な研修を行い、公平で一貫性のある評価ができるようにします。なお、評価項目や対象者を増やしすぎたりして、評価者に過度な業務負担がかからないよう配慮することも大切です。

⑥試験運用しフィードバックをもらう

本格的な運用の前に、小規模な試験運用を行います。これは評価プロセスの問題点や改善点を洗い出すことが目的です。

具体的には、評価者と被評価者の双方からフィードバックを収集し、スキル項目の妥当性、評価基準の明確さ、運用上の課題などを確認します。必要に応じて項目や基準の見直しを行い、より実効性の高い力量管理表に改善しましょう。

⑦全社で運用を開始する

試験運用での課題を解決したあと、事前に設定した対象範囲で本運用を開始します。本運用を開始する際には、目的を理解するための説明資料や、各従業員がスムーズに記入できるようなマニュアルを共有しておくと安心です。

本運用を開始したら、定期的な評価サイクルを設定し、評価結果を人材育成や配置転換などに活用します。また継続的に改善を行い、組織の変化や新たなニーズに対応できるよう、柔軟な運用を心がけます。

8.力量管理を効率化する方法

力量管理を一から行うと、多くの労力がかかってしまいます。ここでは効率化する方法を紹介します。

タレントマネジメントシステムを活用する

タレントマネジメントシステムは、従業員の能力や経験、スキルなどの情報を一元管理するためのツールです。このようなツールを活用すると、力量管理の大幅な効率化が図れます。

たとえば、カオナビでは、ツール上でスキルマップの作成も可能です。情報のデータベース化、リアルタイムでの更新・閲覧が可能になると、人材配置や育成計画の立案も容易になります。

また評価プロセスの自動化や分析機能により、客観的かつ迅速な力量評価が可能です。結果として、人事部門の業務負荷が軽減され、戦略的な人材の活用につながります。

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職業能力評価シートを活用する

厚生労働省が提供する「職業能力評価シート」も、力量管理の効率化に役立ちます。職業能力評価基準に基づき、職種や職務をレベル別に定めた評価シートで、無料でダウンロードが可能です。

業界標準のスキル項目が網羅されているため、自社の特性に合わせて必要な項目を選択・カスタマイズできます。また客観的な評価基準が設定されているため、公平な評価ができることもメリットです。これにより、力量管理の導入や運用にかかる時間と労力を大幅に削減できます。

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9.力量管理のポイント

せっかく力量管理を始めるのであれば、効果を最大限に引き出したいところです。ここでは、効果的に運用するための4つのポイントを紹介します。

目的や目標を周知する

力量管理の効果を最大化するには、その目的や目標を全社員に明確に伝えることが重要です。なぜ力量管理を行うのか、どのような成果を目指しているのか理解してもらうことで、従業員の協力と積極的な参加を促せます。

たとえば、キャリア開発の機会や公平な評価につながると強調すれば、従業員のモチベーション向上にもつながるでしょう。また、定期的な説明会や社内通知を通じて周知することで、形骸化させないことが大切です。

スキル項目を絞る

力量管理を効果的に行うには、スキル項目の絞り込みが重要になります。項目が多すぎると評価や管理が煩雑になり、実効性が低下するためです。そのため、各部門や職種の核心となるスキルに焦点を当て、適切に絞り込みます。

たとえば、製造業の技術部門では、基礎的かつ欠かせないスキルとして、製品の設計に関する知識などが挙げられるでしょう。力量管理を行う目的から、徐々に絞り込んでいくのがおすすめの方法です。

スキルマップ(力量管理表)を定期的に見直す

業界の変化や技術の進歩に伴い、必要とされるスキルも変化していきます。そのためスキルマップは定期的な見直しと更新が不可欠です。目安としては年に1回程度、スキル項目や評価基準の妥当性を検討し、必要に応じて修正をくわえます。

また、従業員のスキル向上状況はそれよりも高い頻度で定期的に更新し、最新の情報を反映させることで、より効果的な人材活用が可能になります。

継続的な運用のための仕組みを構築する

力量管理を一時的なものではなく継続的なものとして運用していくためには、組織内に仕組みを構築することが重要です。たとえば、年間スケジュールに評価期間を組み込み、人事評価や育成計画と連動させることで、定期的な更新・継続的な運用が可能になります。

また、力量管理の責任者や担当者を定め、役割分担を明確にすることも効果的です。さらにITシステムを活用しデータ管理や評価プロセスを自動化することで、運用の負担を軽減し、より継続的かつ効果的な運用が可能になります。