リンゲルマン効果とは、集団の中の怠惰現象です。ここでは、リンゲルマン効果の意味や具体例、原因などについて解説します。
目次
1.リンゲルマン効果とは?
リンゲルマン効果とは、集団で共同作業を行う際に発生する「社会的手抜き」を指す言葉です。具体的には、一人で作業する場合に比べ、集団で行う作業は、作業を行う人数が増えるにつれて一人当たりの生産性が低下してしまう現象です。フランスの農学者であるマクシミリアン・リンゲルマンが提唱しました。
ここでは下記4つについて解説します。
- リンゲルマン効果の意味
- リンゲルマン効果の具体例
- 企業におけるリンゲルマン効果の例
- 傍観者効果との違い
2.リンゲルマン効果の意味
リンゲルマン効果は、集団として協働作業を行う際、集団人数が増えると一人当たりの課題遂行量は減少する現象です。
これは、ドイツの心理学者リンゲルマンが行った集団効率の実験で明らかになりました。リンゲルマンの名を取って「リンゲルマン効果」と呼ばれているほか、「社会的怠惰」「フリーライダー現象」などともいわれます。
リンゲルマン効果は、
- 肉体的パフォーマンス
- 認知的パフォーマンス
の両方で確認される現象です。
傍観者効果との違い
傍観者効果とは、「誰かが行うべき作業」「参加すべき事象」があった場合、その作業や事象に自ら率先して行動しないこと。作業や事象の参加者が増えるほど傍観者が増える、つまり傍観者効果はリンゲルマン効果に近いです。
3.リンゲルマン効果の具体例
リンゲルマン効果の具体例として知っておきたいのは、ドイツの心理学者リンゲルマンの綱引き実験です。リンゲルマンは、「1人で綱引きをする」「複数人で綱引きをする」2つのケースで、1人が綱を引く力を比較しました。
1人で綱引きをする際の綱を引く力を100%とした結果、「2人で綱を引いた場合の一人当たりの力は93%」「3人で綱を引いた場合の一人当たりの力は85%」「8人で綱を引いた場合の一人当たりの力は49%」となったのです。
っこのように集団の人数に反比例して、個人の綱を引く貢献度が低下すると分かりました。
企業におけるリンゲルマン効果の例
企業におけるリンゲルマン効果の例は、業務中のネットサーフィンです。
国際ニュース週刊誌Newsweekによると、「アメリカ全土の従業員のうち90%が業務中にネットサーフィンをしている」「従業員の84%は職場で私的なメールを送信している」と分かりました。
また「個人よりも集団での成果を評価される会社員だから起こる」「業務と業績が直結するフリーランスなどでは起こりにくい」といわれています。
4.リンゲルマン効果が起きる原因
どうしてリンゲルマン効果が起きるのでしょうか。その原因を4つ、解説します。
- 責任感の欠如
- 集団における同調行動
- コミュニケーション不足
- 勤怠管理システムの未整備
①責任感の欠如
社会生活を営む上で、責任感を持つことは重要です。仕事でも人間的に信頼され、社会的な信用を得るためには、責任感は不可欠でしょう。しかし責任感がない場合、「仕事の能率を低下させる」「他人任せになる」といった行為につながります。
②集団における同調行動
同調行動とは、周囲の人たちの言動などに迷いながらも合わせてしまう行動のこと。「周囲に受け入れて欲しい」「自分自身の判断に自信を持てない」「周囲からの圧力を感じる」など、さまざまな理由で同調行動が起こると、リンゲルマン効果につながります。
③コミュニケーション不足
集団として活動する場合、メンバー同士のコミュニケーションは重要です。
しかしコミュニケーションが十分にできていない場合、「集団への帰属意識」「メンバーへの仲間意識」が欠落して、自分でも知らない間に疎外感を覚えながら怠業に移行していくケースがあります。
④勤怠管理システムの未整備
勤怠管理システムは、勤怠やモチベーションなどを管理できるシステムのこと。勤怠管理システムが未整備だと管理されている緊張感から開放され、結果、手を抜く場面が多くなります。勤怠管理システムは、リンゲルマン効果の抑止に効果的です。
5.リンゲルマン効果の弊害
リンゲルマン効果には、多くの弊害があるのです。ここではリンゲルマン効果の弊害3つについて、解説します。
- 生産性の低下
- フリーライダーの増加
- モチベーションの低下
①生産性の低下
従業員個々の怠業が蔓延すると、企業や組織全体の生産性は低下します。企業にとって生産性の低下は、経営をひっ迫させる最も危険な因子のひとつ。リンゲルマン効果による怠惰・怠業の蔓延は、企業にとって恐ろしい弊害と考えられています。
②フリーライダーの増加
フリーライダーとはただ乗りのことで、「組織目標の達成に貢献しない」「ほかメンバーの貢献にただ乗りする」といった特徴があります。
フリーライダーの増加は、「真面目に仕事をするメンバーの負担増加」「集団としてのモチベーションの低下」につながるのです。
③モチベーションの低下
集団の人数が増えれば増えるほど、個人に対する注目度は低下します。
「自分は注目されていない」「自分は評価されていない」といった感情が強くなれば、モチベーションも低下。それによってさらなる怠業につながるといった悪循環を生み出します。
6.リンゲルマン効果から考えるチームのあり方
リンゲルマン効果からチームのあり方を考えた場合、押さえるべきポイントがあります。ここでは、下記3つのポイントについて解説します。
- チームに必要なものを明確にする
- 聞き手を割り当てる
- 理想はチームメンバーのミックス
①チームに必要なものを明確にする
「メンバーへの職務」「役割の配分」「コミュニケーションのネットワーク構築」など、チームに必要なものを明確にします。また「明確な目標の設定と共有がなされている」「目標に対する行動の結果をフィードバックする」もあわせて確認するのです。
②聞き手を割り当てる
メンバー一人ひとりの怠業を阻止するためには、集団内でのコミュニケーションが欠かせません。「話を聴いて受け止める」聞き手を、組織の中にあらかじめ割り当てておくとよいでしょう。
③理想はチームメンバーのミックス
「チームメンバーのミックス」とは、さまざまな属性や経験、スキルのある人材を集団に所属させ、お互いに交流させること。女性の社会進出や外国人労働者の受け入れなどを上手に活用し、異質なチーム構成を考えていくことが求められています。
7.リンゲルマン効果の対策
リンゲルマン効果による怠業に対する対策があります。下記6つの対策について解説しましょう。
- 評価の可視化
- 当事者意識の創出
- 役割の明確化
- 相互評価システムの構築
- 応援される・認められる状況をつくる
- 1on1ミーティング
①評価の可視化
自分の仕事ぶりへの評価が可視化されれば、怠業につながりにくくなります。そのためには、仕事や評価、報酬といった関連性を分かりやすい形で示すのです。「仕事に対する評価を可視化しやすい」「評価と報酬の関連性が分かりやすい」制度設計が鍵となります。
②当事者意識の創出
組織の所属人数が多いほど、個人の存在感は薄くなります。怠業を阻止するためには、やる気を持って積極的に活躍してもらう必要があるでしょう。
そこで「組織に自分のポジションがある」「直接プロジェクトにかかわっている」といった、当事者意識を持たせるようにするのです。
③役割の明確化
組織における自らの役割や分担、責任をはっきりと認識できれば、「組織内で自分の存在価値を認識できる」「自分の役割について責任を持てる」などが実現できます。
大きな集団でも、組織における一人ひとりの役割を明確にしておくと、怠惰の防止にもつながります。
④相互評価システムの構築
相互評価システムとは、お互いをチェックするシステムのこと。通常はダブルチェックの意味で使われます。
単なるミスの発見だけでなくリンゲルマン効果による怠業がないかどうか、互いにチェックしながら取り組めれば、より正確で安全な作業を実現できるでしょう。
⑤応援される・認められる状況づくり
「応援してもらっている」「自分の仕事が評価された」といった喜びは、積極的・前向きな労働への後押しとなります。「上司から部下へ」「同僚同士」など、チーム全体でお互いに応援できる関係を構築するとよいでしょう。
⑥1on1ミーティングを行う
1on1ミーティングとは、上司と部下が定期的に話し合うこと。「個人の目標設定」「目標やプロセスの共有」「成果や課題のフィードバック」などを定期的に行います。
「個人がクローズアップされる」「上司から応援される」「個人が評価される」ため、リンゲルマン効果対策として非常に有効です。
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