稟議とは、導入したい事項について関係者の承認を得ることです。ここでは、稟議、稟議書について解説します。
目次
1.稟議とは?
稟議(りんぎ)とは、官庁や会社などの組織の中で導入したい事項が生じた際、その内容を説明する書類を作成し、関係各所へ回覧して上位関係者の承認を受けること。
稟議の「稟」には「申し出る」、「議」には「相談する」という意味、つまり新規導入事項に関する関係各所への申し出と相談といった意味になります。
稟議をあげる事項は、会議など話し合いの場を用いるまでもない軽微な事項が多いです。
稟議と決裁の違いは?
決裁とは、権限を持つ上位者が、部下からの提案内容についての可否を決定すること。稟議も最終的に上司などの上位者に承認を受けるため、稟議は決裁手続きの一部といえます。
大企業では稟議と決裁が同時に行われる場合も珍しくありません。最終的な決定は上位者が行うにしても、それまでの過程で関係各所に内容説明、相談するために稟議を回す場合が少なくないからです。
稟議書とは?
稟議書とは、会議を開くほどでもない軽微な事案について、承認や決裁をもらうための書類のこと。
- 担当者が稟議を起案し、稟議書を作成する
- 係長、課長、部長の順に回覧し、承認印やサインをもらう
- 社長の承認を得る
といった過程を経て稟議書の決裁が下ります。
2.稟議制度のメリットとデメリット
稟議制度は日本特有の制度で、メリットとデメリットがあります。稟議制度をより深く理解するために、稟議制度が持つメリット・デメリットを知っておきましょう。
稟議制度のメリット
稟議制度のメリットは、3つです。稟議の多くは、事前に提案書を回覧して合意ができる事案に対して、合意や再調整の最終確認に用いられます。そのため、下記のようなメリットが得られるのです。
- 全関係者のスケジュールを調整した会議開催の手間を省ける
- 会議を開催しなくても関係者全員に企画内容を理解、承認してもらえる
- 稟議制度を用いれば、「根回し」と呼ばれる日本特有の文化を活用しながらスムーズに合意形成できる
稟議制度のデメリット
稟議制度のデメリットは、2つです。
- 稟議書を作成し、関係者全員に回覧して承認を得るといったように手間や時間がかかるため、ビジネスチャンスを逃してしまう場合も
- 稟議書を回覧し関係者全員から承認を得る方法では、稟議事案が全員の合意によるものとなり、責任の所在が不明確になる
3.稟議書の構成
稟議書には、必ず記載しなければならない項目が4つあります。実際に稟議書を作成する際に参考にできるよう、稟議書がどのように構成されているのか、4つの項目から解説します。
- 稟議の事柄
- 稟議の目的
- 稟議の理由
- 承認して欲しい内容
①稟議の事柄
まず稟議書がどのような事柄について書かれているものなのか、一目瞭然にしておかなければなりません。
稟議書を作成する際は、「承認をする関係者が稟議内容を簡単に把握できる」「承認者以外の者でも稟議内容が確認できる」ことが重要です。そこでどのような事柄について稟議をあげているのかが誰の目にも明らかになるよう、稟議書のトップに記載します。
②稟議の目的
稟議の事柄は理解できても、その稟議をあげてどういった目的を達成しようとしているのか説明がないと、関係者が稟議書を承認する際、疑問を持ってしまいます。稟議書の中身を正しく理解した上で承認してもらうため、稟議書で稟議の目的を伝えるのです。
- どのような事柄について
- どのような目的で
稟議をあげたのかが分かるように、記載します。
③稟議の理由
- どのような事柄について
- どのような目的で
が明確になっているだけでは、稟議書に記載されている提案内容に対する理由が書かれていないため、承認の材料としては不十分といえます。稟議内容に決着したのはどうしてか、理由を書くと稟議書の内容を正しく理解できるようになるのです。
理由を書く際は、コンパクトかつ丁寧な記載・説明を心掛けましょう。
④承認してほしい内容
稟議書には、「稟議の事柄」「稟議の目的」「稟議の理由」など、さまざまな内容が記載されています。承認するために必要な多くの情報が記載されている一方、承認が必要なのはどこなのかが分かりにくいといったケースもあるでしょう。
そこで承認して欲しい内容を明確に記載し、どの部分について最終的な合意を得たいのかを誰にでも分かるようにしておくのです。
4.稟議書作成のポイント
稟議書は、多くの関係者が閲覧する書類です。そのため多くの人が理解しやすいよう、できるだけ簡潔かつ明瞭に作成します。ここでは、稟議書を作成する際に気を付けたいポイントについて解説しましょう。
- リスクや費用対効果を書く
- 背景や経緯を書く
- プラス面、マイナス面を明確にする
- 工夫を凝らす
①リスクや費用対効果を書く
稟議書にリスクや費用対効果を記載すると、「会社にもたらされる不利益や損害を事前に検討するきっかけ作りに役立つ」「稟議書を承認する際の重要な判断基準になる」といったメリットが生じます。
また稟議を承認した責任者の責任の範囲を明確にするために、「物品を購入する際のコストパフォーマンス」「サービスの購入に伴うリスク」などを定量化し、稟議書に記載するのです。
②背景や経緯を書く
稟議書を読む関係者が事業内容の全体をくまなく把握しているとは限りません。事業規模が大きければそれだけ関係者の数も増え、稟議書を業務に間接的に関わる人が目にする機会も増えるでしょう。
誰が稟議書を見ても分かるよう、「稟議の背景や経緯」が記載されていれば、承認に向けた流れをスムーズにできます。
③プラス面、マイナス面を明確にする
稟議書には一般的に、プラス面とマイナス面の両方が記載されています。それは稟議がプラス面の材料のみで判断されるのではなく、マイナス面も併せて検討した結果、稟議内容に異論がなければ承認というプロセスが一般的だからです。
稟議内容についての検討、精査は慎重に行わなければなりません。そのためには、あらゆる角度における情報の記載が重要になるのです。
④工夫を凝らす
稟議書が論文のように長いと、承認者は結論がつかみにくくなったり内容を見落としてしまったりします。そこで稟議書を作成する際、下記のような工夫を凝らすのです。
- 必要な書類を別途、添付書類とする
- 視覚的に見やすいデータやグラフで説明する
- 箇条書きなどで要点を整理して記載する
5.稟議申請を電子化して得られるメリット
近年、稟議申請を電子化することがトレンドになっています。手間と時間がかかると思われていた稟議申請ですが、電子化することで稟議が簡単に申請できるようになるのです。ここでは、注目される稟議申請の電子化について解説しましょう。
コスト削減
稟議を電子化するためのさまざまなアプリケーションやソフトが市販されており、それらを活用すれば、下記が実現します。
- 稟議書の作成が簡易的にできる
- 稟議書の承認の滞留先がわかる
- 承認者が外出中でも出先からチェックや承認ができる
紙に出力するコストや承認遅滞に伴うさまざまな経営コストの削減ができれば、企業にとっても助かるでしょう。
監査時の効率がアップする
稟議申請を電子化すると、監査もスムーズに進みます。監査の際、さまざまな書類の提出を求められますが、稟議書がさまざまな部署でさまざまな種類によって作成されていれば、ファイルから探し出すのも手間になるでしょう。
電子化された稟議書があれば、データから取り出していつでもどこでも簡単に手元に稟議書を用意できます。大量の書類の提出を求められる監査時は、稟議書の電子化が役に立つのです。
保管スペースが作れる
稟議書を電子化すると、稟議書を紙ベースで作成したり保管したりする必要がなくなるのです。電子化して稟議書をデータとして保管できれば、従来、ファイルに綴じて保管していたスペースを活用できます。
- 空いたスペースを別の用途で有効活用できる
- ファイルの準備が不要になるため稟議書を管理する手間も省ける
- 紙の劣化に悩まされない
などを理由に、稟議書の電子化だけでなく、社内基盤を見直す企業も多くあるのです。
紛失の危険性が減る
稟議書を紛失してしまったら大変です。紙ベースで稟議書を管理すると、稟議書を紛失してしまう場合も珍しくありません。稟議書を電子化しておけば、下記の効果が期待できるため、効率よく稟議を実行できるのです。
- 稟議書の閲覧状況を把握できる
- 閲覧途中で稟議書を紛失するリスクがなくなる