稟議書とは? 稟議書の必要性や書くべき項目、通りやすい稟議書の特徴について

稟議書とは、会社や役所などで決裁を求めるための書類。今回は、稟議書がなぜ必要なのか、記入するべき必須項目や通りやすい稟議書の特徴について解説します。

1.稟議書とは?

稟議書とは、会社や役所などで決裁を求めるための書類のこと。会議で討議する必要のない事案についての決裁を仰ぐためのものです。ここからは、稟議書の英訳や稟議と決裁の違い、会社ごとで異なる稟議書の保存期間について説明します。

稟議書の英訳

稟議書を英訳すると「Approval documents」。「approval」は「承認」という意味、「documents」は「文書」を意味します。ほか英訳には、「request for managerial decision」や「circular letter intended to get the approval of a decision」などがあるのです。

稟議と決裁の違いについて

稟議と決裁は、同じ意味で使用される場合があるものの、厳密には異なります。

  • 稟議:複数人に書類を回して得る承認
  • 決裁:決裁の権限を持つ特定された役職者から得る承認

つまり両者は承認を得ることを意味するものの、承認を得るための過程が違うのです。しかし会社によっては、稟議と決裁を同じ意味で使用しています。

稟議書の保存期間は会社によって違う

ビジネス書類の保存期間は法令により保存期間が定められているものの、稟議書は法令による保存期間の定めはありません。そのため会社や役所によってその保存期間は異なり、短いところで5年、長ければ永年保存などさまざまあるのです。

なかには文書の性質上、永年保存としている企業もあるとされています。

会社や役所などで決裁を求めるための書類である稟議書とは、会議で討議する必要のない事案について決裁を仰ぐための書類です

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2.稟議書で書くべき必要項目

法令で稟議書の書式は決められていないものの、会社によって稟議規定や書式が決められている場合もあります。ここでは、稟議書に書く必要のある項目について、解説します。

件名・表題・タイトル欄

タイトルには、用件と何が必要なのかを分かりやすく記入しましょう。たとえば「コピー機の買い換えについて」とか「社内送別会の費用について」など、一見して誰でも内容が理解できるタイトルを付けるのです。

提出先の部署と担当者名

稟議書には、決裁の承認を求める上長の宛て名を記入します。記入にあたっては個人名だけではなく、役職名も書き入れましょう。たとえば「課長 山本健太様」のように記入すると宛先が明確になります。

自分の部署と氏名

稟議書を作成した者の氏名の記入も必ず記入しなくてはいけません。その際、氏名だけではなく、自分の役職名を氏名の前に書きましょう。稟議書の決裁の承認を求める上長の宛名の記入で注意することと、同じです。

金額

金額は、できる限り正確に書きます。物品購入の案件では、購入のための見積書や製品カタログなどを添えると分かりやすくなるでしょう。添付できないときは、稟議書に「稟議にかける物品の詳細」を記入します。

詳細内容

稟議書の目的とその詳細について、A4サイズの用紙1枚に簡潔に分かりやすくまとめましょう。そのためにも概要は、箇条書きで書き出します。それにより誰もが全体像を一見して把握できるようになるのです。

管理番号と作成年月日

稟議書には通算した番号と作成年月日を記入します。それにより複数ある稟議書が、きちんと管理できるようになります。

受領印欄と備考欄

稟議書を管轄する部署が、受理されたと確認するための捺印欄を作成しておきましょう。作成者の氏名を書く欄にも自分が捺印できるスペースを作っておきます。

また稟議書を承認する上司が意見やコメントを書き込める欄も作っておくのです。万が一稟議書が却下された場合、理由をこの欄に記入できます。

稟議書を作成する際は、「承認を求める上司の宛て名」「作成者の氏名」「目的とその詳細」「管理番号と作成年月日」「コメント欄」などを忘れずに記載しましょう

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3.通りやすい稟議書を作るには?

通りやすい稟議書を作成するには、どうしたらよいのでしょう。ここでは通りやすい稟議書を作成するために必要なポイントについて、解説します。

  1. 必須項目が書かれている
  2. リターンは具体的に明確に表記
  3. 簡潔に分かりやすくまとめる
  4. 根回しも稟議書を通すためには必要

①必須項目が書かれている

稟議書に記載すべき不可欠な項目は、「案件の具体的内容や目的」「かかる費用」「案件が実行された場合に得られる可能性のあるリターン」です。

案件が実行された際に考えられるリスクがあれば、内容と対処法も書いておきます。それによって丁寧な稟議書と見なされ、通りやすくなるのです。

②リターンは具体的に明確に表記

案件が実行された場合に得られるリターンは、稟議書に必ず記載する必要のある項目です。この項目は承認を下す上司が、稟議書のなかでも注目する部分です。リターンについて、具体的で丁寧な説明を記載しましょう。

③簡潔に分かりやすくまとめる

簡潔で説得力のある稟議書を作成すると、通りやすくなります。稟議書の作成は短時間で承認を得るための手段。読み手に分かりやすく要点を伝えることが重要なポイントになるのです。

④根回しも稟議書を通すためには必要

稟議書を提出する上司に、前もって案件について意見を聞いておきましょう。上司の意見をふまえて稟議書を作成できるため、通りやすくなります。

通りやすい稟議書を作成するためのポイントは、「必須項目が書かれている」「リターンは具体的に明確に表記」「簡潔に分かりやすくまとめる」「根回しも稟議書を通すためには必要」の4つです

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4.稟議書は必要か?

会議を通さなくとも承認を得られる稟議書。ここでは稟議書を作成する必要性について、説明します。

稟議書は無駄と思われている

稟議書の作成は日本の会社特有の文化といえます。稟議書の作成には時間を要し、提案された案件を審査するのにも時間がかかるため、無駄なものとして捉えられる場合も多いのです。

また複数人が稟議書を回覧した後で決裁されるため、責任の所在が不明確となります。そのため案件の実行後にトラブルが起きると、解決が難しくなる場合もあるのです。

しかしなぜ稟議書が必要なのか

稟議書は、決裁までに時間を要しても、複数の関係者の意見を聞けます。また意思決定の過程を稟議書に残せるため、決定の責任は個人にかかりません。

大きい組織における意思決定をスムーズに進められる点において、稟議書は作成の必要性があるといえるでしょう。

会議に使う時間を省くため

もし稟議書がなかった場合、当該の案件について承認を得るために、その都度関係者を集めて会議を開き、案件について説明しなければなりません。都度、会議を開催すれば時間と人員コストがかかります。

稟議書を回覧すれば、会議を開くのと同じように関係者に内容を説明でき、案件の承認も得られるのです。

事前に取った合意や調整について再確認するため

稟議書の提出前に、関係者に提案書を提示したり、あるいは案件の計画が決まっていたりする場合もあります。こうした場合、稟議書は二度手間ではないかと思われがちでしょう。

しかし稟議書によって、案件についてすでに得られた合意を再確認できるため、社内での認識のすれ違いや失念を防げるのです。

稟議書作成の必要性は、都度会議を開かず総意として承認を得られ、すでに得た案件を再確認できる点にあります

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5.どんな時に稟議書が必要なのか?

稟議書の作成が必要なシーンは採用と購買、契約の3つです。それぞれについて解説しましょう。

採用稟議

新しい社員を採用する際、採用稟議が必要です。採用稟議書の作成では、一般的な記載必須項目に加えて、新しい社員の「採用予定日」「氏名・年齢・住所」「所属」「給与月給」「年俸」を記載します。

契約稟議

外部や他社と契約を結ぶ際に必要なのは、契約稟議です。契約稟議では、社内で共通の稟議書テンプレートを準備しておくとよいでしょう。契約を結ぶという目的にあわせて速やかに稟議書を作成できるため、承認を得るまでのスピードも早いです。

購買稟議

購買稟議は、備品などを購入する際に必要な稟議です。購買稟議書には、必須項目のほかに「支払方法」「支払日」など、物品を購入するための情報を詳細に記入しましょう。購買稟議によって、業務に必要な物品が円滑に購入できます。

稟議書が必要となるのは、「採用稟議」「購買稟議」「契約稟議」です。円滑に承認を得るためにも、案件が予算範囲内であるかどうか、気を付けておきましょう

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6.通らない!ダメな稟議書の特徴とは?

通らない稟議書にはどのような特徴があるのでしょうか。ここでは、6つの特徴を順にご紹介していきます。

  1. 必要な項目が書かれていない
  2. リスクに対する対処策が曖昧
  3. リターンについての記述が薄い
  4. まとまっていない
  5. すぐ稟議が通ると思ってしまっている
  6. 根回ししないで、稟議書を申請する

①必要な項目が書かれていない

通りやすい稟議書を作成するためにも、下記のポイントをおさえておきましょう。

  • 案件の具体的な「内容」
  • 案件を実行する「目的」
  • 案件に関してかかる「費用」
  • 案件を実行した場合に得られるであろう「リターン」
  • 案件を実行した場合に発生する可能性のある「リスク」

会社が用意している稟議書のテンプレートにこれら5項目が含まれていなくとも、きちんと記載すると稟議書は通りやすくなります。

②リスクに対する対処策が曖昧

決裁者が注目するのは、リターンよりもむしろリスクであるため、リスクについては明確に記載しましょう。会社に損失を与えるような案件を承認したら、決裁者に責任がかかるからです。

稟議書には、リスクの存在だけでなく、対処法の説明も必要となります。

③リターンについての記述が薄い

契約稟議でも購買稟議でも、経費を使用する以上、必ずリターンが求められます。たとえば、「高性能備品を購入すると業務の効率が上がり、売り上げが飛躍的に伸びる」などです。

案件を実行した場合にどのようなリターンの可能性があるのか、具体的かつ簡潔に説明しましょう。

④まとまっていない

稟議書は、読み手に内容がきちんと伝わる文章で簡潔に書きましょう。まとまりのない文章が長々と並んでいるだけでも、慌ただしい読み手にストレスを与えますし、これではいくら事前に根回しをしても、通るものも通らなくなる可能性が高いです。

内容を吟味し、必須項目をおさえて稟議書を作成することはもちろん、そのうえで適切な日本語を使用して、できるだけ短い文章で簡潔にまとめます。

⑤すぐ稟議が通ると思ってしまっている

稟議書を作成する際、稟議が通るまでの期間を長く見積もってスケジュールを組みましょう。

決裁者の不在などによって、稟議に日数が掛かってしまう場合もあります。そうなると案件に関するスケジュールが大幅に遅れ、再度稟議書を作り直すことになるかもしれません。

期間は長く見積もって稟議書をできる限り早めに作成し、稟議申請も早めに進めましょう。

⑥根回ししないで、稟議書を申請する

稟議書を上げたあとリスクによって却下されると、覆す理由を作るだけで大変な作業になります。そこで事前に伝えるのです。事前にダメ出しをされていれば、指摘された部分を修正することで、稟議書も通りやすくなります。

また稟議書の内容を説明する手間が省け、却下されるリスクも低くなるでしょう。事前に伝える際のポイントは、「稟議に関係するすべての人に事前に伝えること」。自分だけ聞いていないという人が出た場合、それがネックとなり却下される可能性があるためです。

通らない稟議書の特徴は、「必要な項目が書かれていない」「リスクに対する対処策が曖昧」「リターンについての記述が薄い」「まとまっていない」「すぐ稟議が通ると思ってしまっている」「 根回ししないで、稟議書を申請する」の6つです

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7.「稟議書」と混同しやすい類語とは?

最後に「稟議書」と間違われやすい「提案書」「依頼書」「決裁書」が使用される場面とそれぞれ違いについて、解説します。

提案書

提案書とは、企画やアイデア、意見などを提案するための文書のこと。稟議書が新たな社員の採用や備品購入などに関して上司に承認を得るものであるのに対して、提案書は改善点などに関するさまざまな意見を提案するものとなっています。

承認を得るための稟議書と提案をするための提案書では、書類作成の趣旨が異なっているのです。

依頼書

依頼書とは、取引先や社外の関係者に対して 何らかの依頼をする文書のこと。たとえば取引先に対して納期や支払い条件の変更を依頼するような場合に、依頼書を作成します。依頼書では、依頼するに至った経緯や理由について説明するのです。

決裁書

決裁書とは、実行したい案件について承認を求める文書のこと。その点では稟議書と同じ趣旨ですが、異なるのは決裁書には、決裁者が一人しかいないこと。決裁書の起案者は、決裁の権限をもつ上長一人の承認を得られれば、案件を実行できるのです。

稟議書は複数の上長から承認を得るための文書です。「提案書」「依頼書」「決裁書」とは、趣旨や承認の方法が異なります