「リスクヘッジ」とは危険を予測し、それを避けるよう対策を取ること。ここではリスクヘッジの意味や使い方、具体的例などについて見ていきます。
目次
1.リスクヘッジとは?
リスクヘッジとは、将来のリスクを予測し、被害を避けたり、最小限に抑えたりするために対策を図ることです。もとは金融用語でしたが、現在ではビジネスなど様々なシーンで使用されています。リスクヘッジではリスクを避けるだけでなく、リスクを適切に評価し、マネジメントの範囲に収めるという考え方も重要です。
元は金融取引で使われていた言葉
リスクヘッジという言葉はもともと金融取引で使用されていました。
1つだけの会社に投資を行った場合、株価の下落によるダメージも大きいものです。しかし投資する会社を分散しておくと、1つの投資先でマイナスが出てもほかの投資先で利益が得られる場合もあります。
こうした投資の分散などを目的に金融取引では「リスクヘッジ」と呼ばれていたのです。
英語では「ヘッジ」だけで同じ意味がある
リスクヘッジの「ヘッジ(hedge)」は、「防止策」という意味を持ちます。英語では「ヘッジ」のみで危険を回避するといった意味合いになり、金融業界でもしばしば「ヘッジ」だけが用いられることもあります。
2.リスクヘッジに似た用語
リスクヘッジは想定される危険を避けたり、対策を図っていくという意味を持つ言葉です。ここでは、リスクヘッジと混同されやすい用語「リスクマネジメント」、「リスクテイク」について詳しく解説しましょう。
リスクマネジメント
リスクマネジメントとは、「将来的に生じる可能性が考えられるリスクに向けて適切な対策や行動を取る」「起こり得るリスクの大きさをあらかじめ予測して、そのリスクに対応できる体制を事前に備える」ことで、危機管理自体を表す用語として使われています。
たとえば資産運用を行う際、資産価値の下落を最小限に抑えるために先物取引を利用してリスクを回避する方法がリスクマネジメントです。
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ニュースや新聞だけでなく、昨今ではビジネス書においても頻出する「リスクマネジメント」。書店でもこの「リスクマネジメント」の文字が記された本が多く並んでいます。
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リスクテイク
リスクテイクとは、リスクに立ち向かうこと。たとえば金融取引などで「リスクテイクをする」と使う場合、ハイリスクハイリターンの挑戦をする意味になるのです。
このようにリスクテイクは、危険性や損失が生じる可能性があることを承知した上での行動を指します。またリターンを得るためには必要なものと考えられているのです。
3.リスクヘッジの表現・例文・言い換え
金融取引や昨今のビジネスシーンで耳にすることが多くなったリスクヘッジですが、日常的に活用する状況も目立っています。リスクヘッジの具体的な表現や例文について詳しく解説しましょう。
リスクヘッジをする
リスクヘッジという単語を使った代表的な使い方に
- リスクヘッジをする
- リスクヘッジする
- リスクヘッジを取る
といった言い方があります。具体的な例文としては「リスクヘッジすることで、より大幅な利益を見込める」というものです。
また「万が一アクシデントが起こった際、対処が遅れないよう事前にリスクヘッジを行うことがポイント」といった表現もできます。
リスクヘッジのために~
また「リスクヘッジのために」という使い方も例として挙げられます。
具体的な例文としては
- リスクヘッジのために何回も市場調査をした
- リスクヘッジのためにいくつかの案を準備している
- リスクヘッジのために一箇所集中を避けて投資先を増やした
などです。
また同じような意味合いとして、「リスクヘッジ目的として……」「リスクヘッジとして……」といったフレーズも多くのシーンで使われています。
リスクヘッジを図る
「リスクヘッジ」は本来起こりうるリスク(危険)をできるだけ減らすために対策を取る、手段を見出していくことを表現する用語ですが、「図る」を組み合わせて使用した場合、「対策を練る」という意味合いが大きくなります。
「図る」は、特定のあるモノやコトに対して対策を考えるという意味を持つ用語です。「リスクヘッジ」と組み合わせた「リスクヘッジを図りましょう」といったフレーズも定型句として頻繁に使われています。
リスクヘッジが不十分
また「リスクヘッジが不十分」といった使い方も最近ではよく耳にすることも多いです。たとえば上司や先輩から「この資料は肝心な部分が抜けている。リスクヘッジが不十分だ」と指摘された場合、「対策不足」という意味合いになります。
危険を避けるための手段を示すリスクヘッジが不十分ということは、危険への予測が足りていない、あるいは対策が不十分といった状態です。また同様の意味合いのフレーズとして「リスクヘッジができていない」といった使い方もあります。
4.ビジネスにおけるリスクヘッジの使い方
近年、リスクヘッジは金融取引時のみならず、ビジネスシーンでも使用される機会が増えましたが、意味合いが異なる場合もあるのです。一般的なビジネスシーンで用いられる際のリスクヘッジについて見ていきましょう。
- 危険予測・不安材料・懸念事項
- アクシデントへの備え
①危険予測・不安材料・懸念事項
リスクヘッジは危険の回避を示すだけでなく
- 危険予測
- 不安材料
- 懸念事項
などを表す際にも用いられるのです。
「本案件のリスクヘッジにはどのようなものがあるか?」という指摘を受けた場合、危険を回避するというより、「危険予測」というカラーが強くなります。
上記のように上司や先輩から質問された際は、「スケジュールがタイトな点にやや不安を感じるので、業務管理が不可欠だと考えられます」というように、具体的な案を交えながら回答するとよいでしょう。
②アクシデントへの備え
またリスクヘッジは「リスクに向けた対策」という意味合いから、「アクシデントへの備え」というニュアンスで用いられることもあります。
リスクという言葉は危機的なものが連想されやすいですが、ビジネスシーンでの「リスクヘッジ」では、突発的なニュアンスが含まれているともいえるのです。
たとえば、イベントを開催する予定があり、参加者の申込を締め切る日が決まっていたものの、延長になる可能性が高いとしましょう。その場合、駆け込みでの参加希望を見込んで準備をしておくなどがリスクヘッジになります。
5.さまざまなリスクヘッジ
さまざまな分野でリスクヘッジという用語を耳にしますが、ビジネス用語として使われる機会もあれば、日常生活の中で使われることもあります。ここではさまざまな場面で用いられるリスクヘッジについて解説しましょう。
日常生活でのリスクヘッジ
日常生活で使われるリスクヘッジの例を見てみましょう。たとえば、転職活動です。この場合、在職中に転職活動をしたり、スキルアップのために専門性の高い資格を取得したりすることがリスクヘッジになります。
また病気などで仕事ができなくなる可能性を見据えて生命保険に加入したり、結婚をする際に離婚時の条件などを事前に決めておいたりすることもリスクヘッジに含まれます。
ビジネスでのリスクヘッジ
ビジネスで使われるリスクヘッジの例を見てみましょう。たとえば、「リスクヘッジのために、最低10以上はプランを用意しておこう」「あらかじめリスクヘッジをして、情報をチェックしておきましょう」といったものです。
また、不祥事などで企業イメージが傷ついたり損失をできるだけ小さくしたりするといった戦略として用いられることも増えました。
金融でのリスクヘッジ
金融業界でのリスクヘッジは「株や為替の相場変動によって、資産損失を避けること」を示します。
たとえば1社だけに投資していた場合、相場変動によって大きな損害を被ってしまう可能性も高いですが、いくつかの企業に投資を分散すると、1社の株価が下がっても、他社の株の利益にて損失をカバーできます。
具体的な使用例としては「リスクヘッジのために複数の銘柄に投資している」「リスクヘッジ手段として先物取引を行う」といったものです。
6.リスクヘッジ能力を高めるには
リスクヘッジ能力を高めるにはどうすればいいのでしょう。4つのポイントから解説します。
- 論理的思考をする
- 多角的に考える
- 終わったことを振り返る
- 普段から実践できるよう落とし込む
①論理的思考をする
論理的思考とは、単純ではない物事を合理的に整理し、因果関係を明らかにすることで、英語で「ロジカルシンキング」と呼ばれるのです。
論理的思考能力は、日々に起こるさまざまな体験を、
- なぜそうなるのか?
- どうしてこうなるのか?
と自分自身に問い続けると高まります。また1つの疑問が解決した際く、「なぜそれを疑問に感じたのか?」というように細部まで分析するとよいでしょう。
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②多角的に考える
決められた枠の中だけで物事を思考すると、最も優れたゴールから離れやすくなってしまったり、ある一定のアプローチでのみ考えたりする状況になってしまいがちです。
しかし多角的に考える、つまり視野を広げる先入観や固定観念を拭う、といった捉え方に基づいて思考すると、成功につながる場合が多々あります。これを習慣化するとリスクヘッジ能力も次第に高まるでしょう。
③終わったことを振り返る
1つ目の論理的思考と少々重なりますが、「なぜ起こってしまったのか?」と自分自身で改めて振り返ることは重要です。
何らかの対応ができたケースでも、「他によい手段はなかったか」と振り返ってみましょう。解決後、改めて振り返りや分析を行うと、新しい気付きや冷静に対処できるメンタルが得られるようになります。
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④普段から実践できるよう落とし込む
上記の3つを、普段から実践できるよう落とし込みます。方法は人それぞれで構いません。
たとえば
- 頻繁にメモを取る
- 感じたことをブログに書き綴る
- 仕事ができる先輩や上司の言動や行動を観察する
- 気付いた学びや情報を家族や友人、同僚などにわかりやすく説明する
などです。
さまざまな方法を試し、自分が一番いいと感じる方法落とし込みましょう。