離職証明書とは? 離職票との違い、添付書類、いつもらえる?

離職証明書は、会社を退職する社員がいる場合、事業主が当該社員に交付する書類のひとつです。離職証明書は退職後の社員の失業給付に関わってくる非常に重要な書類です。

離職証明書とは何か、離職証明書の発行や提出手続き、必要な添付書類などを具体的な記入例を用いながら解説するとともに、退職証明書との違いなどについても考えていきましょう。

1.離職証明書とは?

離職証明書とは、退職が決まった社員が離職票を請求できるようにするために事業主が交付する書類です。離職証明書は3枚複写の書類です。

  • 1枚目は事業主控
  • 2枚目はハローワーク提出用
  • 3枚目が雇用保険被保険者離職票-2

で構成されています。事業主は社員の退職が決まったら、3枚1組になっている雇用保険被保険者離職証明書と雇用保険被保険者資格喪失届をハローワークに提出し、当該社員の雇用保険脱退の手続きを行います。

離職票とは?

離職票は、退職した労働者がハローワークで雇用保険の失業給付(基本手当て)を受給する手続きを行う際に必要となる書類です。正式名称を雇用保険被保険者離職票といいます。

離職票は、労働者が退職した後、10日後ぐらいまでに会社から郵送などで退職者の手元に渡されるようになっています。失業給付を受給しない場合には必要のない書類となりますので、事業主はあらかじめ退職者に離職票が必要かどうかを確認しておくとよいでしょう

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離職票と離職証明書の違い

離職票と離職証明書は似ている名前ですが、用途はまったく違います。前述のように離職証明書は、事業主がハローワークに提出する3枚複写の書類です。一方、離職票は事業主が退職者に渡すことになる書類で、離職証明書の3枚目が雇用保険被保険者離職票-2となっています。

ちなみに、離職票には1と2の2種類があります。離職票-1は、求職者給付などの支払い先の銀行口座を記載する項目や、受給資格等決定年月日、離職年月日、賃金日額といった記載欄があります。

一方、離職票-2は離職の日以前の賃金支払い状況等が賃金支払対象期間ごとに記載され、離職理由を記した項目もあります。

退職証明書と離職証明書の違い

退職証明書とは、事業主が対象となる労働者が退職したことを証明するために発行する書類です。退職証明書は離職証明書と違って、ハローワークやその他の公的機関に提出しなければならない書類ではありません。

事業主は退職する労働者から作成してほしいという請求があった場合にのみ、その退職を証明するために作成・発行します。そのため、特に定められた様式というものはなく、企業ごとに作成しているというのが一般的となっています。

離職証明書のイメージ

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2.離職証明書の発行・提出に関する手続き

離職証明書の発行や提出に関する手続きには、いくつかの注意点があります。離職証明書をハローワークに提出する必要のない場合があるほか、離職証明書と一緒にハローワークに提出する雇用保険被保険者資格喪失届の作成、添付書類の準備などは、スムーズな退職手続きに必須な知識ですのでしっかり押さえておきたいところです。

雇用保険被保険者資格喪失届には提出期限もあります。さまざまな手続きをスムーズに行うためにも、離職証明書の発行・提出に関する手続きについて確認しておきましょう。

離職証明書を提出する必要がない場合とは?

労働者の退職に当たり、事業主が離職証明書をハローワークに提出する必要がないケースがあります。それは、退職する労働者が雇用保険被保険者離職票の交付を希望しないケースです。

当該労働者がハローワークで失業給付を受けない場合、離職票は不要になります。そうなると事業主は離職票を交付するための離職証明書をハローワークへ提出する必要がなくなります。雇用保険被保険者資格喪失届の⑦の欄に離職票交付希望無の「2」を記載する場合には、離職証明書の提出は不要です。

離職者からの請求に対して発行義務あり

仮に退職の際に労働者から離職票の交付を希望されない場合でも、退職後しばらくして離職者から離職証明書の交付請求があるケースも考えられます。その場合、事業主は離職証明書を作成し、離職者に離職票を交付しなければなりません。

退職後も離職者からの請求がある場合を考え、退職時に当該退職者に対して離職票の交付をしている事業主もいるようです。

雇用保険被保険者資格喪失届に雇用保険被保険者離職証明書を添えて提出

事業主は、雇用する被保険者が離職によって雇用保険被保険者でなくなった場合には、雇用保険被保険者資格喪失届に雇用保険被保険者離職証明書を添えて、ハローワークに提出します。

前述のように、被保険者が離職票の交付を請求していない場合には、雇用保険被保険者資格喪失届のみをハローワークに提出します。雇用保険被保険者資格喪失届や雇用保険被保険者離職証明書に記載してある情報によって失業給付の給付制限の有無などが判断されるので、正確な内容を記載することが求められます。

雇用保険被保険者資格喪失届とは?

雇用保険被保険者資格喪失届とは、雇用保険の被保険者である労働者が退職する場合、事業主がハローワークに提出する書類です。

雇用保険被保険者資格喪失届には、離職等年月日、喪失原因、1週間の所定労働時間、補充採用予定の有無、当該労働者のマイナンバー、被保険者の住所又は居所、被保険者でなくなったことの原因などを記載する欄が設けてあります。

雇用保険被保険者資格喪失届イメージ(※画像クリックで拡大します)

雇用保険被保険者資格喪失届の提出期限は、雇用保険の被保険者でなくなった日の翌日から数えて10日以内となっています。

資格喪失届の添付書類

雇用保険被保険者資格喪失届には、被保険者でなくなったことの事実や、その事実のあった年月日、離職理由などを証明することができる書類の添付が必要です。

たとえば、就業規則、雇用契約書又は労働条件通知書(写)、出勤簿又はタイムカード、賃金台帳、労働者名簿などです。退職する労働者によって、必要書類は異なり、そのほかの添付書類が必要になる場合もありますので、疑問点があればハローワークに確認し、不備のないようにしましょう。

離職証明書の添付書類

  • 就業規則
  • 雇用契約書又は労働条件通知書(写)
  • 出勤簿(又はタイムカード)
  • 賃金台帳
  • 労働者名簿等
  • 自己都合の場合は退職届
  • 契約期間満了の場合は最後の契約書
  • 定年の場合は就業規則(写)
①被保険者でなくなったことの事実およびその事実のあった年月日を証明することのできる書類

当該労働者が雇用保険被保険者でなくなったことの事実およびその事実のあった年月日を証明できる書類として、就業規則、雇用契約書又は労働条件通知書(写)、出勤簿又はタイムカード、賃金台帳、労働者名簿等があります。

労働者名簿や賃金台帳のように労働基準法で調整しなければならないと規定されている書類もありますので、日々、それぞれの書類の管理を徹底しなければなりません。

②離職理由を確認できる書類等

離職理由を確認するためには、離職理由によって添付する書類が変わってきます。自己都合で退職する場合には、当該労働者の提出する退職届が必要です。

契約期間満了での退職といったケースになると、最後の契約書を添付します。定年で退職する場合には、就業規則の添付が求められます。退職理由で添付書類が変わる点に注意が必要です。

③事業主印

添付資料ではありませんが、雇用保険被保険者資格喪失届をハローワークに提出する際には、事業主印を持参します。もし、事業主印を持参できないといった場合があれば、あらかじめ欄外に捨印を押印して提出しなくてはなりません。

提出期限と提出先

雇用保険被保険者資格喪失届をハローワークに提出する場合、提出期限が設けられています。雇用保険被保険者資格喪失届は、労働者が被保険者でなくなった事実のあった日の翌日から起算して10日以内に提出しなければなりません。

必要な書類に不備があるとスムーズに進まないので、ゆとりのある行動が必要です。必要な添付書類と共に、提出期限までにハローワークに提出しましょう。

失業給付の受給資格などに関わるため正確に記載すること

雇用保険被保険者資格喪失届および雇用保険被保険者離職証明書の記載内容は、離職者の失業給付の受給資格などに関わる非常に重要な情報が多く記載されています。

たとえば、雇用保険被保険者資格喪失届や雇用保険被保険者離職証明書に記載されている賃金支払状況、生年月日、被保険者であった期間、離職理由などの情報は、離職者の失業給付の受給資格だけでなく失業給付日額や所定給付日数、さらには給付制限の有無などの判断材料になります。内容は正確に記載してください。

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3.提出に必要な書類まとめ

提出書類 届出が必要とされる場合 提出先【提出期限】 添付書類
雇用保険被保険者資格喪失届 雇用保険の被保険者であったものが離職したとき(※1) 管轄の公共職業安定所(ハローワーク)【離職日の翌日から10日以内】
被保険者でなくなったことの事実、その事実のあった年月日及び離職理由を証明することができる書類
  • 就業規則
  • 雇用契約書又は労働条件通知書(写)
  • 出勤簿(またはタイムカード)
  • 賃金台帳
  • 労働者名簿等
雇用保険被保険者離職証明書 同上(※2、※3) 同上 ①被保険者でなくなったことの事実及びその事実のあった年月日を証明することのできる書類
  • 就業規則
  • 雇用契約書又は労働条件通知書(写)
  • 出勤簿(又はタイムカード)
  • 賃金台帳
  • 労働者名簿等
②離職理由を確認できる書類等
  • 自己都合の場合→退職届
  • 契約期間満了の場合→最後の契約
  • 定年の場合→就業規則(写)
③事業主印(持参できない場合は、欄外に捨印を押印して下さい)

※1 外国籍の方の雇用保険を喪失させる場合。雇用保険被保険者資格喪失届の備考(裏)に国籍、在留資格、在留期間等を記載して下さい
※2 従業員から離職票の交付希望があったときは、いつでも(退職後でも)会社は離職票を作成して下さい。
※3 離職時の年齢が59歳以上の者は、必ず離職証明書の作成をして下さい。

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4.離職証明書の記載方法と離職理由に関する注意点

事業主は、雇用していた被保険者が離職することにより雇用保険被保険者でなくなった場合、もしくは退職後に離職者からの請求によって離職証明書を作成する場合には、ハローワークが提示している「注意」書に従って記載します。離職理由は会社都合か自己都合かを記入します。

また、記入に際しては、1枚目の離職証明書(事業主控)、2枚目の離職証明書(安定所提出用)、3枚目の離職票-2の3枚を複写によって同時に記入するようにします。

離職理由とは?

「注意」書の中で最も注意が必要なのは、離職理由です。離職理由が会社都合か自己都合かによって、離職者の失業給付において差が出るからです。

離職理由は、離職証明書や会社と離職者双方の主張を確認できる資料をもとに判定していきます。場合によっては、事業主や離職者に離職理由の聴取を行うこともあるということは覚えておきましょう。

最後に総合的に見て、ハローワークが離職理由を判定することになります。

特定受給資格者の範囲

特定受給資格者とは、企業の倒産や解雇等の理由により再就職の準備をする時間的余裕がなく離職を余儀なくされた者を指します。

具体的な特定受給資格者の範囲には、

  • 倒産(破産、民事再生、会社更生等の各倒産手続の申立て又は手形取引の停止等) に伴い離職した者
  • 事業所の移転により、 通勤することが困難となったため離職した者
  • 労働契約の締結に際し明示された労働条件が事実と著しく相違したことにより離職した者
  • 賃金(退職手当を除く。)の額の3分の1を超える額が支払期日までに支払われなかったことにより離職した者

といったように、細かい条件があります。

特定理由離職者の範囲

特定理由離職者とは、

  • 特定受給資格者以外の者であって期間の定めのある労働契約が更新されなかったこと
  • その他やむを得ない理由により離職した者

をいいます。具体的には、

  • 体力の不足、心身の障害、疾病、負傷、視力の減退、聴力の減退、触覚の減退等により離職した者
  • 妊娠、出産、育児等により離職し、雇用保険法第 20 条第 1 項の受給期間延長措置を受けた者
  • 父若しくは母の死亡、疾病、負傷等のため、父若しくは母を扶養するために離職を余儀なくされた場合、又は常時本人の看護を必要とする親族の疾病、負傷等のために離職を余儀なくされた場合のように、家庭の事情が急変したことにより離職した者
  • 結婚に伴う住所の変更、育児に伴う保育所その他これに準ずる施設の利用又は親族等への保育の依頼などで通勤不可能又は困難となったことにより離職した者
  • 配偶者又は扶養すべき親族と別居生活を続けることが困難となったことにより離職した者

などが、特定理由離職者の範囲として規定されています。

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離職理由の判定の流れ

離職理由の判定の流れは次の通りです。まず、ハローワークは事業主が主張する離職理由を離職証明書の離職理由欄(⑦欄)により把握した後、離職者が主張する離職理由を離職票-2 の離職理由欄(⑦欄)により把握します。

さらに、両者の主張を把握するのみならず、それぞれの主張を確認できる資料による事実確認を行います。最終的な判定は事業主又は離職者の主張のみで判定するものではなく、ハローワークにおいて慎重に行います。そのため、ハローワークが離職理由を確認できるような資料の持参が不可欠です。

離職理由の記入方法

離職理由の記入に際しては、まず、離職者の主たる離職理由に該当するものを、「離職理由」の1~4の中で1つ選択します。左側にある「事業主記入欄」についても該当箇所に◯を記入したあと、「離職理由」の各項目に別途記載箇所がある場合には指示に従って空欄に内容を記載します。

「労働契約における契約の更新又は延長する旨の明示の有・無」といった選択項目にも回答し、その上で「具体的事情記載欄(事業主用)」の欄に、労働者が離職に至った原因や経緯、その他具体的事情を分かりやすく記載していきます。

必要な確認資料

ハローワークは事業主が記載した離職理由が適正であるかを確認するために、事業主にいくつかの添付書類を要求します。たとえば、事業主からの働きかけによる離職の場合には解雇予告通知書、退職証明書、就業規則など、労働者の判断による離職の場合には労働契約書、賃金台帳、採用条件及び労働条件が分かる労働契約書などです。手続きの際に提出を求められる書類もあれば、すでにハローワークに提出されている資料などで確認を行う場合もあります。

また、資料の提示や実際に事情聴取を実施するケースもあります。このように、離職理由の判定はさまざまな確認資料を参考にして行われます。