離職後に失業保険を受け取るためには離職票が必要です。この離職票の様式や発行手続きなどについて解説します。
目次
1.離職票の書き方とは?
離職票とは、離職者が失業保険を受け取るために必要な書類のひとつで「雇用保険被保険者離職票」という書類を指します。公的な文書であるため、会社側には発行義務があり、離職票の作成を求められた際と離職者が59歳以上の際、発行しなければなりません。
離職票の発行では、離職証明書や雇用保険被保険者資格喪失届、労働者名簿や出勤簿などいくつかの書類が必要になります。必要書類がそろったら会社からハローワークへ提出し、記載に不備がなければ離職票が発行されて会社へ送付されるのです。
しかし離職票の概要や離職票の書き方を知らない人も少なくありません。離職票の概要から書き方などの実践編に至るまで、解説します。
離職票の様式
離職票は「離職票-1(A4サイズ)」と「離職票-2(A3サイズ)」からなる2枚組の書類です。ハローワークから送付される書類であるため、こちらで様式は変更できません。
離職票-1は雇用保険資格喪失通知書を兼ねたもの、離職票-2は退職の理由や給与などが記載されています。ただし離職者の次の就職先が決定している場合、雇用保険被保険者喪失届が不要であるため、離職票-1のみが発行されるのです。
e-Gov(電子申請)にて雇用保険被保険者資格喪失届(離職票交付あり)を行う場合、会社のプリンターで離職票を印刷します。このときは離職票-2をA4サイズで印刷しても問題ありません。ただし離職票-1は必ず等倍で印刷しましょう。
雇用保険被保険者離職票―1の書き方
離職票-1は基本、離職者が記載します。離職者の氏名やマイナンバー、失業給付の振込先などを記入し、マイナンバーはハローワーク側での記入となるのです。
求職者給付等払渡希望金融機関指定届の記入欄には、失業保険が振り込まれる銀行口座を記入します。離職票をハローワークへ提出する際は、本人名義のキャッシュカードや通帳を持参しましょう。
雇用保険被保険者離職票―2の書き方
離職票-2は会社側が記載するため、間違いがないかよく確認します。また離職票-2は、左右に分かれた記入欄があるのです。
- 左側:会社や離職者の情報、出社日や過去半年間の賃金などが記載される
- 右側:離職理由が記載される
離職者は内容を確認して右下の欄に、離職理由について異議の有無を判断し、署名と捺印をします。
離職票の記入事項
離職票の記入事項は下記のとおりです。
- 被保険者番号
- 事業所番号
- 離職者氏名
- 離職年月日
- 事業所名・所在地・電話番号
- 離職者の住所または居所
- 離職理由
- 被保険者期間算定対象期間
- 被保険者期間算定対象期間における賃金支払基礎日数
- 賃金支払対象期間
- 賃金支払対象期間における基礎日数
- 賃金額
- 備考
- 賃金に関する特記事項
離職日は、資格喪失届に記入した離職年月日と同じ日付を書きましょう。なお離職者本人の記名押印または自筆による署名の必要な個所が、2つあります。
2.離職票の書き方の注意点
離職票を書く際、何に気を付ければよいのでしょう。ここでは下記4つについて解説します。
- 退職者に休業手当を支払った期間があるかを確認
- 育児・介護などで時短勤務をしていた期間があるかを確認
- 賃金支払状況等が1枚で収まるかを確認
- 離職票と間違えられやすい証明書に注意する
①退職者に休業手当を支払った期間があるかを確認
退職者の休業手当は、通常欄に記載しません。賃金支払対象期間で休業手当を支払った期間がある場合、備考欄に休業手当の日数と支払った金額を記載するのです。月の全日休業した場合は、「全休業」と記して休業手当の支払い額を備考欄に記載します。
②育児・介護などで時短勤務をしていた期間があるかを確認
時短勤務をしていた労働者が退職する場合、実際に支払われていた賃金にもとづいて失業給付の基本手当が決まりますし、倒産や解雇などの場合、通常業務時の賃金日額によって基本手当の日額が算定されます。
なお提出時には「雇用保険被保険者短縮措置等適用時賃金証明書」の添付が必要です。
③賃金支払状況等が1枚で収まるかを確認
離職票の賃金支払状況等の欄に記入する際、1枚で収まるかを確認しましょう。金支払状況等の欄は、退職日からさかのぼる2年の間で賃金支払基礎日数11日以上の月を、12カ月分記入する必要があるためです。
1枚でこれを満たせない場合、2枚目を用意して「続紙」として使いましょう。「被保険者番号」「事業所番号」「離職者氏名」「離職年月日」「事業主の住所、氏名」を記載し、賃金支払状況等の続きを記載します。
④離職票と間違えられやすい証明書に注意する
離職票を書く際の注意点として、離職票と間違えられやすい証明書に気をつけましょう。離職票と似ていてよく間違われやすいものに「退職証明書」「離職証明書」「雇用保険被保険者資格喪失届」の3つがあります。
それぞれの書類の内容と違いをしっかりと理解しておきましょう。
退職証明書
退職証明書とは、退職していると証明する書類のこと。離職票は公的機関の発行する公的文書ですが、退職証明書は企業が発行する私文書です。離職票は退職から10日以内の発行が義務付けられているものの、退職証明書は退職者から申請があってから発行します。
離職票発行に時間がかかる場合、退職証明書で国民健康保険や国民年金の手続きを進めるとよいでしょう。
離職証明書
離職証明書の正式名称は雇用保険被保険者離職証明書で、離職と雇用保険を脱退したと証明するものです。離職者が離職票を必要とする場合、会社が離職証明書をハローワークに提出すると、離職票が交付されます。
退職者が59歳以上の場合は離職票が必須となるため、離職証明書をハローワークに提出しなければなりません。
雇用保険被保険者資格喪失届
雇用保険被保険者資格喪失届とは、雇用保険の被保険者が退職したと届け出る書類のことで、ハローワークから離職票を交付してもらう際に必要となります。また退職者が、雇用保険の失業手当の受給手続きをおこなう際にも利用するのです。
所定の用紙に必要事項を記入し、ハローワークに届け出ると、労働者を雇用保険から外せます。会社は離職者や雇用保険を脱退する労働者が出た際、必ず届け出なければいけません。
3.離職票を発行する際の手続き
離職票の発行は、会社と離職者、ハローワークの3箇所を経由します。それぞれで何が行われるのか、見ていきましょう。
- 退職者から会社に離職票発行を依頼する
- 会社が「離職証明書」を準備する
- 会社からハローワークに「離職証明書」を送付する
- 会社から「離職票」を受け取る
①退職者から会社に離職票発行を依頼する
離職票を発行する際は、通常は離職者に離職票が必要かを尋ねるか、離職者から会社に離職票発行を依頼します。ただし離職する人が59歳以上の場合、希望の有無にかかわらず離職票を交付しなければなりません。
離職者の転職先が決まっていて失業保険を受給する予定がない場合、離職票の交付は必要ない場合も多いようです。
②会社が「離職証明書」を準備する
離職票を発行する際には、会社が離職証明書と雇用保険被保険者資格喪失届を作成します。離職証明書の作成後に、離職者が記載内容を確認し、間違いがなければ署名と捺印を行うのです。
また離職票とともに提出しなければならない書類も準備しておきましょう。「労働者名簿・出勤簿・賃金台帳・社会保険の届出控え・離職理由が分かる書類(退職届や就業規則といったもの)」などです。
申告後に有給休暇を消化してから退職する人もいるため、離職証明書を確認してもらえるよう退職日までの予定を確認しておきましょう。
③会社からハローワークに「離職証明書」を送付する
会社が離職証明書と雇用保険被保険者資格喪失届を作成したら、ハローワークに送付します。離職証明書の記載内容に不備がなければ、ハローワークは離職証明書を離職票として交付するのです。
④会社から「離職票」を受け取る
会社へ送付された離職票のうち、雇用保険被保険者資格喪失確認通知書(事業主通知用)と、雇用保険被保険者離職証明書(事業主控)は会社側で保管します。
雇用保険被保険者離職票‐1(離職票‐1)兼雇用保険被保険者資格喪失確認通知書(被保険者通知用)と、雇用保険被保険者離職票‐2(離職票‐2)は、退職者にわたるよう、離職者本人へ郵送または受取りの手続きを行うのです。
離職者は失業手当を受給するため、離職票-1と離職票-2、そのほか必要書類を持って、ハローワークで手続きを進めます。
4.もし離職票を無くした場合は?
離職票を無くしてしまっても、再発行できます。会社に依頼するか、離職者がハローワークで再発行の手続きを行いましょう。会社で再発行の手続きをする際は、人事に離職票の再発行を依頼します。ただし会社での再発行は退職日から4年間のみ可能です。
ハローワークで離職票を再発行してもらう方法
ハローワークへ離職票再交付申請書を提出すれば、いつでも離職証を再発行できます。ハローワークでの再発行には期限がありません。手続きは離職者が行い、本人を確認する写真付きの証明書として運転免許証やパスポート、印鑑が必要です。
ハローワークで申請書を記入する際は、雇用保険被保険者証や勤務先の住所や電話番号も必要になるので、あらかじめ準備しておきましょう。