RJP(Realistic Job Preview)とは? 効果や例をわかりやすく

RJPとは、企業が求職者に対し、仕事・組織の実態について良い面と悪い面を含めた、ありのままの情報を提供することです。RJPについて詳しく解説します。

1.RJP(Realistic Job Preview)とは?

RJP(Realistic Job Preview)とは、企業が求職者に対し、仕事・組織の実態について良い面と悪い面を含めた、ありのままの情報を提供すること

Realistic Job Preview(現実的な仕事情報の事前開示)の頭文字を取って「RJP」と呼ばれています。採用活動の時点で企業と求職者のミスマッチを防ぐのが目的とされており、企業への定着率を高める効果が期待されているのです。

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2.RJPのメリット

RJPは、人材を獲得するうえでさまざまなメリットがあります。それぞれについて解説しましょう。

  1. 企業への信頼性が向上
  2. 採用コストの削減
  3. ミスマッチの低減
  4. 離職率の低下
  5. 応募者の質向上

①企業への信頼性が向上

求職者に対して企業の良い面ばかりを伝えても、入社後に「こんなことは聞いていなかった」と思われてしまえば、労働者の不満や不信感につながってしまうでしょう。

採用活動時、包み隠さずネガティブな面も伝えておけば、求職者は企業に対して誠実で真面目な印象を持つため、高い信頼を得られます。また入社後のミスマッチも防ぎやすくなるのです。

②採用コストの削減

採用活動で十分に企業の情報を提供できていないと、求職者は企業との相性を判断しにくくなります。それにより、企業との適性が低い人材が応募してくる可能性も高まるでしょう。

また多くの応募が集まっても、そのなかからターゲットとなる人材を選ぶのに、時間や手間など多くのコストがかかってしまうのです。

企業に関する情報を適切に開示していれば、募集の時点で求職者自身が相性を見極められるため、アンマッチな人材は応募しなくなります。企業が求めているターゲットのみが応募するようになるため、結果的に採用コストを下げられるのです。

③ミスマッチの低減

採用時、求職者に対して企業の悪い面も明示しないと、入社後に「こんなはずではなかった」と思われる場合があります。

旧職に不満を持って転職を考え、採用に応募してきた人もいるでしょう。そういった人は新しい環境に大きな期待を抱いているため、入社後、ミスマッチに気づいたときの落胆は大きくなります。

このようなミスマッチが起きた場合、労働へのモチベーション低下にもつながり、労働者と企業、相互にとってマイナスになるもの。募集の時点で悪い面も伝えておけば、お互いのミスマッチを減らせるうえ、モチベーションの低下も防げるのです。

④離職率の低下

入社してから自分の理解していなかった悪い面に気づいてしまうと、労働に対するモチベーションが低下してしまいます。現場の実態が自身の希望や期待と大きく乖離していると感じて、早期離職してしまうかもしれません。

せっかく採用活動をしてもミスマッチにより離職されてしまえば、採用コストにも悪い影響が現れます。

しかし募集時の印象が入社後とそれほど変わらなければ、人材が入社後のギャップに苦しむこともありません。それにより人材が企業に定着しやすくなり、早期の離職率低下が期待できるのです。

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⑤応募者の質向上

企業の悪い面を提示すると、求職者によっては「自身にとってネガティブなポイント」ととらえるでしょう。全体で見れば、応募数が低下する可能性もあります。

しかしそれでも応募をしてくれる応募者は、企業にマッチングしている人材だといえるでしょう。つまり自社に適した人材が集まりやすくなり、応募者全体の質向上にもつながるのです。

企業側はマッチングしやすい母集団を獲得しやすくなるため、選考や面接、入社後に発生するコストの削減にもなります。

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3.RJPのデメリット

RJPはメリットだけでなく、デメリットもあると理解しておかなければなりません。次のようなデメリットについて解説します。

  1. 企業イメージの悪化リスク
  2. 応募者数の減少

①企業イメージの悪化リスク

採用時にネガティブな面を公開するため、企業のイメージが下がってしまう可能性もあります。もし公開した情報でネガティブな面が目立ったり多かったりしてしまうと、応募者は魅力的な職場ととらえにくくなるでしょう。

企業の情報を公開する際に大切なのは、ネガティブな面とポジティブな面のバランス。どちらの情報もバランス良く伝えられれば、応募者じゃ比較検討しやすくなり、企業価値も損なわず採用活動を進められます。

②応募者数の減少

ネガティブな情報を公開すると、応募者のなかには、「自分が働くのに向いていない」「条件が合わない」と考える人も出てくるでしょう。よって応募者数が減少する可能性もあります。

それにより応募者数が絞り込まれて採用しやすくなる側面もある一方、人手不足が深刻な場合は応募者数が少ない点に不安を感じる場合もあります。ただしネガティブな情報を理解したうえで応募してくれる人材の場合、長期の就労が期待できるでしょう。

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4.RJPの4つの効果

RJPには、次に挙げるような4つの効果が期待できます。それぞれについて詳しく解説します。

  1. セルフ・スクリーニング効果
  2. ワクチン効果
  3. コミットメント効果
  4. 役割明確化効果

①セルフ・スクリーニング効果

採用活動のときに、企業の情報を包み隠さず開示して、求職者が企業に適した人材か判断できるようにすること。目的は、企業と求職者のミスマッチによる早期退職を防ぎ、業務効率を高めることです。

最近の採用活動は「企業が人材を選ぶ」のではなく、「企業と求職者の双方が選ぶ」という考え方に変わりつつあります。

応募者の立場からすれば「企業に選んでもらった」のではなく、「自分が働きやすい企業なのか選定する」という変化が見てとれるのです。セルフ・スクリーニングの導入により、こうした応募者の考え方に対応できるようになります。

②ワクチン効果

入社後のギャップに対して免疫を作っておくこと。

就職や転職では、働く環境が変わります。前職に不満をもって転職活動をしている労働者もおり、希望をもって転職活動をしている人も少なくありません。もし希望の企業に転職できたとしても、入社後にギャップを感じてしまうことがあるのです。

募集の時点で企業のメリットだけでなくデメリットも開示しておけば、入社前から企業の実態について免疫ができます。入社後に感じる理想と現実のギャップを軽減できるので、思いもよらないモチベーションの低下を防げるのです。

③コミットメント効果

ネガティブな情報も開示して企業の誠実さを伝え、愛着心や帰属意識を高めること。

採用活動をする企業が、ポジティブな情報だけでなくネガティブな情報も載せることは、一見するとマイナス面が大きいように見えるかもしれません。

しかし求職者から見ると、「包み隠さず情報を開示してくれている」「求職者と同じ立場で向き合おうとしてくれている」「この企業は自信をもって事業に取り組んでいる」ように映ります。

従業員はネガティブな面も含めて自分の意思を貫き通すので、自発性の向上も期待できるのです。

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④役割明確化効果

採用活動のときに、応募者に対して「入社後にどんな役割を果たして欲しいか」という本音をはっきり伝えて、求職者が「その期待に応えたい」という意欲を導き出す効果のこと。

また求職者や学生が、役割・ミッションを深く理解できるので、明確な意思を持って企業と話し合える点もプラスに働きます。

入社後の職務内容や期待している働き方などを企業が明確にしていないと、求職者は企業に対して不信感を持ちます。意欲的に働いてもらえるよう、採用活動をする際は底上げしたいポジションについて、明確に説明できるようにしておくとよいでしょう。

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5.RJP導入のガイドラインとは?

経営学者の金井壽宏氏は、研究論文でRJPのガイドラインを示しています。研究では、次のような5つのガイドラインが示されています。

  1. RJPの目的を求職者に説明し、誠実に情報を提供する
  2. 提供する情報に見合ったメディアを使用し、信用できる情報のみを提供する
  3. 現役の社員が実態に合った情報を提供する
  4. 組織の実態に合わせて開示する良い情報と悪い情報とのバランスを考慮する
  5. こうした情報開示を採用活動の早期段階で行う

求職者が驚いてしまうようなネガティブな実情でも、その背景を丁寧に説明し改善していく姿勢を伝えれば、企業への信用が高まって採用成功につながるのです。

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6.RJPの注意点

採用活動でRJPを活用する際は、下記の4点に注意するとよいでしょう。それぞれについて解説します。

  1. バランスのよい情報発信
  2. 受け入れ部署との連携
  3. 情報の正しさを確認
  4. 求職者がイメージしやすい内容に

①バランスのよい情報発信

ネガティブな情報は、2~3割のイメージで提示するとよいでしょう。またネガティブな情報は具体的に伝え、それに対する企業の対応をポジティブな情報として伝えるのです。

たとえば、「きつい仕事です」「残業が多く辛いです」といった表現でネガティブな面を目立たせては、求職者は魅力に感じてくれません。

「納期の直前は残業が発生するといったきつい部分もあります。しかし残業代も支払われるほか、休日出勤になれば代休を取っていただきます」といったように、ネガティブな部分に対して見返りが用意されていることを伝えるのです。

ただし、ポジティブな部分は実態に合った内容にしましょう。

②受け入れ部署との連携

採用担当者と受入部署が人材に望んでいるイメージにズレがあると、現場が理想としている求職者が集まらない可能性もあります。とくに仕事の難易度や現場環境の実態などについては認識の相違が生まれやすいもの。

認識にずれが出ないよう人事部と現場の部署が連携を取り、RJP理論を実践する必要があります。

③情報の正しさを確認

発信した情報が間違っていると、求職者が企業に対して不信感を抱いてしまいます。たとえば「ネガティブな情報を伝えたものの実態はもっときつかった」「ポジティブな要素が実現不可能なものだった」など不正確さが現れると、求職者はギャップを感じるのです。

RJPを用いた採用活動の際は現場に確認を取りながら正しい情報を発信しましょう。

④求職者がイメージしやすい内容に

近年、売り手市場に変化しているといわれています。それまでは「企業が求職者を選ぶ」と考えられがちでしたが、「求職者に自社を選んでもらう」という視点を持つことの重要性も考慮する必要があるのです。

そのためには求職者の立場になって採用情報を組み立てるとよいでしょう。企業で働くイメージを持ってもらいやすいよう、工夫して情報を発信していきます。

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7.RJPの取り組み例

実際にRJPを取り入れて採用活動をしている企業もあります。ここでは下記3社の取り組み、それぞれのRJP活用方法や目的などについて、見ていきます。

  1. エン・ジャパン(体感転職プログラムの事例)
  2. プレッソ(コーディング面接の事例)
  3. ノバレーゼ(面談用パスポートの事例)

①エン・ジャパン(体感転職プログラムの事例)

人材採用や入社後活躍サービスを提供しているエン・ジャパンでは、RJPを用いた採用活動として「体感転職プログラム(入社前職場体験)」を取り入れています。

この体験を通じて、職場の雰囲気・仕事の内容・社員について、よく知ってもらえるようにしているのです。

体感転職プログラムを通じて企業のポジティブな面とネガティブな面の両方を知り、企業の実態を感じてもらうことを目的としています。この取り組みは面接後に行うものの、入社促進が目的ではありません。

プログラム導入前は、中途入社した社員らの1年以内の退職率が37%でしたが、プログラムを体験して入社した人に限ると退職率が0%になりました。

②アプレッソ(コーディング面接の事例)

IT企業のアプレッソでは、ITエンジニアの採用について「コーディング面接」を実施しています。

一般的な面接ではこれまでの経歴・自己PRといった内容が求職者に求められています。一方のコーディング面接ではそうした面接とは別に、実際に書いたソースコードをベースに面接を進めるのです。

企業と求職者、双方のエンジニアとしての実力を測れるため、ミスマッチを解消できます。

③ノバレーゼ(面談用パスポートの事例)

ブライダルやレストラン事業などを手がけるノバレーゼでは求職者に面談用パスポートを支給し、最大10回面談ができる仕組みを作っています。

複数回の面談を積み重ね、企業側が採用したいと思う人材の志望意欲を湧き立たせる効果が期待できるのです。また入社する意欲の低い人材は面談回数が少なくなるので、志望度も測れます。

採用活動としては、人材をふるい落とす「選抜」という意味合いが小さくなるのです。現場スタッフ・マネージャーなど現場で働く人とも面談できるので、企業の実態を適切に見てもらえるでしょう。