論理的思考とは、物事を筋道立てて考えることです。論理的思考を身につけるメリット、鍛え方などについて解説します。
目次
1.論理的思考とは?
論理的思考とは、物事を体系的に整理したり、道理にそって筋道を立てて考えること。ロジカルシンキング (Logical Thinking)とも呼ばれており、ビジネスパーソンの基本的なスキルとして重要視されています。
論理的思考を身につけていれば、「なぜそうなったのかを解明して解決する」「複雑な内容をわかりやすく説明する」などできるのです。よってビジネスにて、企画立案や課題解決に役立ちます。
2種類の方法
論理的思考には、2種類の手法があります。それぞれの手法をしっかり理解したうえで、実際の場で活用しましょう。
- 帰納法
- 演繹法
①帰納法
帰納法とは複数の実例を挙げて共通点や傾向を見つけ、そこから結論につなげるもの。なるべく多くの実例を偏らないように挙げると、説得力が高まります。
一方、「実例に誤りがある」「共通点を探す際、論理に無理がある」「共通点から結論を導く際、論理に無理がある」といった場合、帰納法は成り立ちません。
②演繹法
演繹法とは、すでにあるルールや客観的事実に新しい情報を結び付けて結論を導くもの。三段論法とも呼ばれています。
しかしルールや事実、情報のいずれの要素が間違っていたり存在しなかったりする場合、結論があやまった方向へ進んでしまう可能性もあります。
2.論理的思考とそのほかの「◯◯思考」の違い
論理的思考のほかにも思考方法はあります。それぞれについて解説しましょう。
- 直感的思考との違い
- 批判的思考との違い
- 水平・垂直思考との違い
①直感的思考との違い
道理や筋道を考えず無意識に結論を出す思考のこと。前置きや説明などがなく、論理的思考の対極にあるものです。「ぱっと思いついて決断する」「なんとなく決める」といったこの直感的思考は、日常生活で多く使われています。
素早く結論に到達したりよいアイディアが浮かんだりする、といった面があるのです。
②批判的思考との違い
批判精神を持ち、物事の前提が正しいかどうかを検証したあとで、本質について見極めていく思考のこと。すでにある事実が正しいか、矛盾はないかを確実にしてから、最適解を見つけます。
筋道を立てて、分類して結論を導く論理的思考とは方法が異なるものの、相反するものではありません。双方を併用すれば、より思考が深まります。
③水平・垂直思考との違い
水平方向に視点を変えて、物事の本質や解決策を考える思考のこと。
常識や前提条件にとらわれず、柔軟な発想で進めていくのです。「過去や未来、時間軸をずらして想像してみる」「他者の立場になったつもりで心情を思いやる」といった方法があります。
垂直思考は、前提条件や道理、常識をもって、筋道立てて考える思考方法で、論理的思考と同じものです。柔軟な水平思考と論理的な垂直思考、場面に応じて使い分けると、さらに思考力が高まるでしょう。
3.論理的思考に活用できるフレームワーク
論理的思考を行う際、活用できるフレームワークをご紹介します。
- ピラミッドストラクチャー
- MECE
- マインドマップ
- ロジックツリー
①ピラミッドストラクチャー
結論を頂点とするピラミッドを作ること。
- 結論を頂点とする
- その下の階層でその根拠を置く
- さらにその下の階層で、結論の根拠に対する根拠を置く
を繰り返して、ピラミッド型に論理を構造化するのです。ピラミッドストラクチャーは、上下双方向から取り組めます。
②MECE
各要素を「モレなく、ダブりなく」分類し、分析して結論を導く方法のこと。MECEは下記の頭文字を取った言葉です。
- Mutually(お互いに)
- Exclusive(重複せず)
- Collectively(全体に)
- Exhaustive(漏れがない)
たとえばデータ分析の際、要素の分類がタブったり漏れたりしていると混乱し、正しい結果や真実に到達できません。そこでMECEでダブりや漏れを防ぐのです。
MECE(ミーシー)とは?【わかりやすく解説】フレームワーク
論理的にものごとを考える上で重要視されるMECE。ロジカルシンキングに欠かせないイメージはあるものの、具体的にどんな手法で、どんな風に問題が解決できるようになるのか分かりません。
そこで本記事では、
...
③マインドマップ
思考を紙面に書いて、アイディアを浮かびやすくする方法のこと。具体的な書き方は、下記のとおりです。
- 用紙の中央にメインテーマを配置する
- テーマから連想されるアイディアを周囲に書く
- テーマとアイディアを線で繋げる
- 分岐させるように放射状に展開していく
「関連するキーワードを想像し、整理する必要があるため、記憶力・理解力・発想力が向上する」「アイディアや複雑なテーマを見える化できる」といったメリットがあります。
④ロジックツリー
問題をツリー状に分解して課題の理由を掘り下げ、解決策を導き出す方法のこと。目的に応じた4種類があります。
- What:要素分解ツリー
- Why:原因追求ツリー
- How:問題解決ツリー
- KPIツリー
ロジックツリーを作成する際、「MECEである」「問題の定義を明確化する」「要素分解の切り口は仮説から行う」といった注意点があります。
4.論理的思考を身につけるメリット
論理的思考を身につけると、さまざまなメリットが得られます。
- 問題解決能力の向上
- 文章作成力の向上
- プレゼンテーション力の向上
- 企画立案のスピードの向上
- 情報の取捨選択能力の向上
- コミュニケーション能力の向上
①問題解決能力の向上
論理的思考を身につけると、問題解決能力が向上します。困難にあっても、
- 問題を細分化し、整理して分析し、自ら解決策を導き出せる
- 客観的かつ論理的に問題の本質を把握できるので、同じようなトラブルを繰り返さない
などが可能になります。
②文章作成力の向上
論理的思考は文章作成の際、下記のようなメリットが得られます。
- 事象を正しく的確に伝えられる
- 文章の組み立て方が向上する
- 文章表現が豊かになる
言葉の表現力がアップすると、相手への思いやりやねぎらいの気持ちを表せるでしょう。それによってコミュニケーションがより円滑に進みます。
③プレゼンテーション力の向上
プレゼンテーションでは、相手に自分の思い、つまり「結論」を理解してもらうため、結論の根拠を挙げて相手に説明します。論理的思考を取り入れれば、より理解されるプレゼンテーションができるでしょう。
④企画立案のスピードの向上
自分の提案をとおしたいときはまず、相手を納得させる必要があるのです。そのとき論理的思考で説明すれば、相手の理解が得られるでしょう。なぜなら提案がとおるかとおらないかの決め手が、説明の仕方による場合が多いからです。
⑤情報の取捨選択能力の向上
身の回りには、多くの情報があふれています。論理的思考ができると、さまざまな情報から本当に必要な情報を選んで物事を考え、正しい結論を出せます。つまり不必要な情報に振り回されたり、誤った判断をしたりせずに済むのです。
⑥コミュニケーション能力の向上
論理的思考が身についていると、さまざまなコミュニティにて円滑なコミュニケーションができます。論理的思考により、相手の意見を理解する力と自分の意見を伝える力が高まるからです。
論理的思考に裏付けられたコミュニケーションはビジネスの場だけでなく、友人関係や親戚、地域や趣味サークルなどでも活用できるでしょう。
5.論理的思考ができない人の特徴
論理的思考ができない人には、どのような特徴があるのでしょう。
- 無根拠
- 無批判
- 権威性だけを見る、他人のせいにする
- 積み上げ思考をする
①無根拠
根拠のない話、つまり話の結論に対する、客観的事実や根拠がありません。たとえば「何となくそう思ったから」「思いつきで話している」といった特徴があります。
②無批判
批判や議論を避け、無条件に肯定する傾向にあります。そこには「議論や批判で、相手と対立のが苦手」「議論の場で自分が責められているように感じる」などの理由があるのです。しかし組織やプロジェクトには、前向きで創造的な議論は必要といえます。
③権威性だけを見る、他人のせいにする
役職や地位のある人の発言をそのまま信じ、結論だけを受け入れます。「なぜ、そうなのか」という筋道や理由を理解しようとしません。何かあったときに「上司がそう言ったから」などと、他人のせいにします。
④積み上げ思考をする
「今できることをやれば成果につながる」という積み上げ思考をしています。
たとえば「上司に言われたからやる」「ネットで紹介されていたからやってみる」などです。そのため成果につながらない場合もあります。本来、課題やゴールを意識した行動が望まれているのです。
6.論理的思考を鍛える方法
論理的思考はいつでも鍛えられます。日常生活の中で取り組める、論理的思考のトレーニング方法を紹介しましょう。
- 具体的に話す
- セルフディベートをする
- 判断結果を予想する
- 本質的な問いを考える
- 事実をもとに考える
①具体的に話す
あいまいな言葉を使わず、具体的に説明する習慣をつけましょう。数値や固有名詞を含んで説明すると具体的になるのです。「ほどほど・そこそこ・結構」「多い・少ない・早め・遅め」などは、あいまいな表現は誤解を招きやすくなります。
②セルフディベートをする
相反する2つの意見を立て、それぞれの正しさを証明するために、自分自身で交互に意見を展開するのです。「肯定派と否定派の両方の意見を考える」「客観的な事実と主観的な解釈を分ける習慣をつける」などがポイントになります。
③判断結果を予想する
「自分の判断が将来的にどんな影響をもたらすのか」予想するのも、効果的です。問題の解決策を考える際は、それがどんな結果につながるのか、想像力を働かせましょう。繰り返すとスムーズに予測できるようになり、成果につながって自信がつきます。
④本質的な問いを考える
問題に対し、本質的な問いを考えるのが重要です。表面上ではなく、「真にどのような課題を解決するためのものなのか」を理解します。そのためには問題を分解し、背景を確認する作業が必要です。
⑤事実をもとに考える
事実をもとに考えようとすると、「一次情報や第三者情報を利用する」「定数データで説明する」ためより具体的になります。上記に相反する憶測や伝聞による情報、数値化できないデータは利用を控えましょう。
7.論理的思考を活用する際の注意点
最後に論理的思考を活用する際の注意点について、解説しましょう。
- 事実が複数存在するのを忘れない
- 最終目標を見失わない
①事実が複数存在するのを忘れない
たとえば初期段階で存在したデータにより結論Aが導かれたとします。しかしのちに新しいデータが見つかり、その結果、結論はBかもしれないとなるかもしれません。客観的な結論を導くためにも「事実は1つでない場合もある」と覚えておきましょう。
②最終目標を見失わない
相手の感情を考えずに正論のみをもって働きかけると、人間関係がこじれ、説得やプレゼンテーションに失敗してしまいます。意思決定やコミュニケーションの円滑化、問題の解決など、何のために論理的思考を活用するのか、最終目的を見据えておきましょう。