SaaSとは、クラウド上にあるソフトウェアまたはサービス形態のこと。インターネット環境下であればどこでも利用でき、とくにビジネス系のシステムやツールにはSaaSが多くあります。
今回はSaaSとは何かをふまえて、SaaSのメリット・デメリットや選び方のポイントなどを詳しくご紹介します。
目次
1.SaaS(Software as a Service)とは?
SaaSとは、インターネットを経由して利用できるクラウド上にあるソフトウェア、またはサービス形態のこと。ソフトウェアのインストール不要でインターネットからアクセスするだけで利用できます。
SaaSは「Software as a Service」の略で、直訳すると「サービスとしてのソフトウェア」を意味します。読み方は、「サース」または「サーズ」です。
インターネット環境であればどこでもアクセスできるため会社にいなくてもツールが利用できるだけでなく、PCやスマホなど複数デバイスでも利用できます。また、複数人でひとつのファイルを共有しながら、同時に編集や管理も行えるのです。
ソフトウェアやサービスの利用に必要なシステムやサーバーは、提供するベンダーが保有しているものを使用するため、自社で構築・運用保守のコストが発生しません。サービスは年額・月額で契約して利用するほか、無料で利用できるサービスもあります。
クラウドサービスとは? 具体例、メリット、セキュリティ
クラウドサービスは、インターネットを経由してハードウェアやインフラ機能の提供をするサービスのこと。クラウドの仕組みのほか、メリット・デメリット、代表的なサービスなどについて解説します。
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2.SaaSと関係深いクラウドファーストとは?
クラウドファーストは、システムの開発または更新時にSaaSなどのクラウドサービスを優先して検討すること。「クラウド・バイ・デフォルト原則」ともいわれます。
2018年6月「政府情報システムにおけるクラウドサービスの利用に係る基本方針」の初版が発表されたため、クラウドでのシステム開発やサービスの導入が注目を集めました。これにより、DX推進などデジタル化を推奨する流れが活発となったのです。
クラウドサービスは高い利便性とは裏腹に、情報漏洩などのリスクが危惧されて導入がなかなか進まない状況にありました。
そのような状況を改善して早期にデジタル化を進めるため、政府が主体となってクラウドサービスの利用を後押しする狙いがクラウドファーストです。
参考 政府情報システムにおけるクラウドサービスの利用に係る基本方針政府CIOポータルクラウドファーストとは?【意味をわかりやすく】政府、理由
クラウドファーストとは、システムの開発や更新時にクラウドサービスを優先的に検討する考え方のこと。ここではこのクラウドファーストの意味や考え方について詳しく解説します。
1.クラウドファーストとは?
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3.SaaSとPaaS、IaaSの違い
SaaSに類似する言葉に、PaaSやIaaSがあります。ここでは、SaaSとそれぞれの違いを解説します。
SaaSとPaaSの違い
PaaSは、ネットワークやサーバーシステム、OSやミドルウェアなどアプリケーションの実行に必要なプラットフォームを提供するサービスのこと。SaaSはソフトウェアを提供し、PaaSはソフトウェアを利用するためのプラットフォームを提供するに違いがあります。
またPaaSとは「Platform as a Service」の略で、直訳すると「サービスとしてのプラットフォーム」を意味するのです。なお、読み方は「パース」になります。
PaaSのサービス例として挙げられるのは、Amazon Web Services(AWS)やGoogle cloud Platformなど。ベンダーから開発に必要な開発言語や管理システムが提供されるため、自社で手軽にソフトウェアを開発・運用できます。
利用できる言語はベンダーから提供されるものに限るものの、開発環境を整備する必要がありません。
SaaSとIaaSの違い
IaaSは、インターネットを経由してネットワークやサーバーシステムなどシステムの稼働に必要なインフラを利用できるサービスのこと。
IaaSは「Infrastructure as a Service」の略で、直訳すると「サービスとしてのインフラストラクチャー」を意味します。なお、読み方は「イアース」です。IaaSはベンダーに構築や保守管理といったインフラの運用が任せられます。
SaaSとの違いは、PaaSと同じく提供するサービスにあるのです。ただしIaaSはソフトウェアやアプリケーションの提供はなく、インフラの提供に特化しています。たとえば、Amazon EC2やGoogle Compute Engineなどです。
4.SaaSのメリット
SaaSのメリットは、以下4つです。それぞれについて見ていきます。
- 場所やデバイスを問わずに利用できる
- 導入コストが安い
- 運用コスト・負担が少ない
- 必要に応じて機能を選べる
①場所やデバイスを問わずに利用できる
SaaSなら、インターネットがあればどこでもアプリケーションやソフトウェアを利用可能です。そのため、外出先や自宅からでも社内と同じツールやシステムが利用できます。
また基本、SaaSはデバイス単位ではなく、ユーザー単位でのライセンス。1つのアカウントで多様なデバイスからログインできるため、リモートワークの促進にも有効です。
②導入コストが安い
自社でシステム構築したり、高額なパッケージを購入したりする必要がないため、導入コストをおさえられます。またソフトウェアやアプリケーションをインストールするだけで利用開始できるため、導入にかかる時間や手間もおさえられるのです。
また、利用したいユーザーが増減した場合もアカウントの追加や削除で柔軟に対応できます。サブスクリプションであるため利用を辞めたいときもスムーズです。
③運用コスト・負担が少ない
インフラもベンダーが提供するため、自社で保守管理する必要がありません。障害やトラブルが起こった際もベンダーが対応するため、自社でそうしたリソースを確保する必要がない点は大きなメリットでしょう。
またアップデートもベンダーが行うため、つねに最新の状態でサービスを利用できます。ランニングコストが大幅におさえられるため、業務効率化や人件費の削減にも有効です。
④必要に応じて機能を選べる
料金プランに応じて、利用できる機能の幅が多様なソフトウェアもあります。SaaSならまずは無料トライアルや最低価格プランでスモールスタートできるため、導入時のリスクが軽減できるのです。
サービスの比較検討もしやすく、必要に応じて使いたい機能だけを利用できます。
5.SaaSのデメリット
一方で、SaaSには下記のようなデメリットもあります。それぞれについて見ていきましょう。
- セキュリティの懸念がある
- カスタマイズの自由度が低いサービスもある
- トラブルやベンダーの事情によって利用制限がかかる
- データ移行が難しい
①セキュリティの懸念がある
SaaSはインストール型のソフトウェアに比べると、不正アクセスといったセキュリティ面で懸念があります。
しかし、インターネットを介している以上、セキュリティのリスクはつきもの。基本、ほとんどのSaaSは高度なセキュリティ対策を導入しているため、そのなかでもより信頼できるサービスを導入するとよいでしょう。
一方、利用場所を選ばない点で、リモートワークや外出先での漏えいリスクも懸念されます。こうしたリスクに対しては、従業員の意識改革が必要です。
②カスタマイズの自由度が低いサービスもある
すべての機能はベンダーが提供するため、提供されるサービス以上のものを自分でカスタマイズはできません。ただし、提供されている範囲内でのカスタマイズは可能であり、サービスによってはカスタマイズ性の高いものもあります。
こうしたデメリットをおさえるためにも、提供されるサービスが自社のニーズに合っているか、確認しておきましょう。
利用したいサービスに使いたい機能がない場合は、別途自社で対応する、またはサービス内容に合わせて運用や業務形態を変更する必要があります。
③トラブルやベンダーの事情によって利用制限がかかる
インストール型はデバイスに問題がない限り、通信回線に影響されません。しかし通信回線やシステム障害が起きた場合、ベンダー側の影響によって利用が制限される場合もあります。
トラブル発生時はベンダーが対応してくれる点で手間はかからないものの、業務に支障が出てしまうのは避けられません。
④データ移行が難しい
SaaSを乗り換える際、多くのケースでデータ移行が難しくなるのです。なかにはデータ移行に対応しているものもあります。しかし一度導入したSaaSから別のSaaSに変更しにくい点はデメリットです。
また、データ移行だけでなく、新サービスの扱いに従業員が慣れるまで時間がかかる点も考えなくてはなりません。なるべく変更が生じないよう、トライアルを活用してしっかり判断するとよいでしょう。
6.SaaSの選び方
目的や課題、ニーズに合ったサービスを選ぶことが重要であるため、SaaSを導入する際はさまざまなサービスを比較検討することがポイントです。その際、どういったポイントから選べばよいのでしょうか。
- コスト
- 機能
- サポート体制
- セキュリティ体制
- 導入実績
①コスト
SaaSは導入や運用にかかるコストを抑えられる一方、企業規模によっては、従業員が多いことで高額なコストがかかる場合もあります。
また小規模な企業では、定額制だと割高になるケースも。しかしコストをおさえたいがために、必要な機能が使えなくなっては意味がありません。
くわえて、運用コストについてもみておきます。本当に自社で運用管理する必要がないか、どこまでベンダーが対応してくれるのかをチェックしましょう。
②機能
導入にあたって自社に必要な機能を定義し、そのうえで導入を検討しているSaaSに機能が備わっているか、チェックしましょう。サービスによって機能はさまざまであるため、自社で必要な機能の優先度を明確にしておくことがポイントです。
たとえば、業務効率化を求める場合は、ほかシステムとの連携性もチェックするとよいでしょう。
導入してから必要な機能がないと、導入コストが無駄になりかねません。同じ機能でもサービスによって使い勝手が異なる場合もあるため、トライアルで実際に試してみるのをオススメします。
③サポート体制
どれほど機能が充実していても、使いこなせせば宝の持ち腐れです。運用するなかでわからないことやトラブルに対してどれだけのサポート体制がとられているか、もチェックしましょう。
チェックポイントは、問い合わせ方法の種類や多さなど。とくにITに強い人材が十分に確保できていない企業には、サポート体制の手厚いサービスがオススメです。
④セキュリティ体制
SaaSの導入で主に懸念されるのはセキュリティ。
導入を検討しているサービスがどういったセキュリティ対策を講じているかをチェックしつつプライバシーマークやISO27001、ISO27017やISMAPなどのセキュリティ基準を取得しているかも確認するとよいでしょう。
あわせて、万が一の事態に備えてデータの自動バックアップ機能があるかもチェックします。
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⑤導入実績
導入実績はベンダーの信頼性を示すため、導入実績が豊富であればそれだけ評価が高いもの。初めてのサービス導入には、実績の豊富な企業が安心です。またそういった場合は運営体制もしっかりしているため、突然サービスが終了するリスクも少ないといえます。
7.SaaSの代表例
下記は、SaaSの代表的なサービスです。
- Microsoft365(オフィスソフト)
- Gmail(メールアプリ)
- Slack(チャットツール)
- ChatWork(チャットツール)
- Zoom(WEB会議システム)
- freee(会計ソフト)
- カオナビ(タレントマネジメントシステム)
メールアプリやWeb会議システム、チャットツールや会計ソフト、勤怠管理システムやデータ管理システムなど、SaaSにはさまざまなサービスがあります。
とくに、ビジネスツールの多くはSaaSです。ニーズや課題に合わせて、最適なサービスを導入しましょう。